春風ふるさと観光協会

春風ふるさと観光協会

大学も就職も人に勧められるままに流されるように生きてきた都会育ちの青年、風間春太は、一人旅で自然あふれる田舎での素朴な暮らしに魅力を感じ、東京から3時間の距離にある花村町観光協会への転職を決める。自らの人生を変えるために地方移住を決意した草食系青年のハートウォーミングな自分探しの物語。「COMIC BRIDGE online」で2018年7月から2019年12月にかけて配信された作品。

正式名称
春風ふるさと観光協会
ふりがな
はるかぜふるさとかんこうきょうかい
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
レーベル
BRIDGE COMICS(KADOKAWA)
巻数
既刊1巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

花村町への移住

冷凍食品会社の営業職をしている風間春太は、東京生まれの東京育ち。これまでの27年間、周囲に流されてなんとなく生きてきた風間は、そんな暮らしに虚しさを感じていた。ある日、同期で友人の山崎から勧められ、風間は一人で飛彈高山へのバス旅行に参加する。その旅先で合掌造りの家や自然の美しい山など、素朴な田舎の風景を目にして、自然の残る土地で住民たちと触れ合いながら働く、という新しい生き方を見つける。そして会社を辞め、東京から電車とバスを3時間ほど乗り継いだ場所にある花村町の観光協会に就職を決めた風間は、さっそく花村町に移住し、新天地での生活への期待に胸を膨らませる。職場である花村町観光案内所の所長、辻村や、パートの鈴宮は親切で人懐っこく、風間を温かく歓迎してくれた。しかし、年下ながら職場の先輩、古河勇刀は、東京から田舎にあこがれてやって来た風間に対し、冷たい態度を取っていた。そんな中、辻村が風間の住む場所として用意してくれたのは、勇刀の祖父がかつて住んでいた古民家。ムカデや虫に怯(おび)えながらも、生まれて初めての自炊も経験し、花村町での新しい暮らしが始まる。

ご当地キャラを作る

初めての田舎暮らしに戸惑う風間春太だったが、周囲の人々に助けられながら、充実した日々を送っていた。観光名所も名物もない花村町だったが、風間は観光案内のホームページを新しくしたり、自分で始めたブログで花村町の魅力を発信するなど、自分にできることに真摯に取組み、地元の人たちとも打ち解けていく。そんなある日、花村町もご当地キャラを使って地元をPRしようという案が出る。花村町には、すでに花ちゃんというご当地キャラがいたが、平凡で個性がないため、風間は新キャラを提案すると、古河勇刀が珍しく風間の意見に賛同するのだった。実は花ちゃんの着ぐるみには小柄な勇刀しか入れず、イベントでいつも着ぐるみを着せられることに嫌気がさしていたのだ。各自が新キャラのアイデアを持ち寄る中、風間の案は花ちゃんに町のイメージを盛り込んだ進化形態、鈴宮の案は五人の戦隊モノ風の花町レンジャー、所長の辻村の案は飼っている猫そのまんまだった。そして勇刀が考えてきた案は、花町村に住む人と遊ぶのが大好きな妖怪「花ぬらり」。その特徴は単純明確で背が高いこと。つまり長身の風間に着ぐるみを着させるためのデザイン案だった。その後、ブログで公開して意見を募ると、その奇抜なデザインがネット上で話題になるものの、役場の人たちの目に止まり怒られてしまい、新ご当地キャラのアイデアはお蔵入りとなってしまう。

1年の経過

風間春太が花村町に移住して1年が経過し、仕事にもだいぶ慣れてきていた。風間を遠ざけていた古河勇刀との距離も縮まり、風間の家に泊まることもあるほど打ち解けた仲となっていた。勇刀の祖父が亡くなり、勇刀は距離を置いていた父親の古河龍とも和解し、東京の専門学校への進学を決める。一方、風間の母親が突然花村町にやって来て、花村町で働くことに反対する一幕もあったが、風間は花村町を愛していること、自分のやりたいことを見つけたことを、はっきりと母親に告げる。勇刀が去った花町村観光案内所には、都会からの新スタッフも入り、風間の先輩としての2年目が始まる。

登場人物・キャラクター

風間 春太 (かざま はるた)

東京から電車とバスを3時間ほど乗り継いだ場所にある花村町の観光協会に勤務する男性。年齢は27歳。大学を卒業後、アパートで独り暮らしをしながら、東京の日丸(にちまる)食品で冷凍食品の営業を担当していた。地元のスーパーを回って新商品の売り込みのほか、自社の冷凍食品の補充や陳列整理の仕事をしていた。周りに流されやすい性格で、大学も就職先も人に勧められるままに選択し、不満はないものの、東京での日々の暮らしに虚しさを感じていた。そんな中、同僚の山崎の勧めで出かけた田舎への小旅行で、素朴な町での暮らしに惹かれ、日丸食品を退職して花村町の観光協会に転職した。子供の頃は母親との二人暮らしで、仕事で忙しい母親は家を留守がちだったため、寂しい思いをしていた。母親は風間春太が安定した食品会社の仕事を辞めて、田舎の観光協会に転職することに反対していた。恋人もなく、趣味もなく、意思もない草食系男子ながら、花村町の人々と打ち解けようと、肉体労働や雑務を頑張ってこなしている。花村町観光案内所の所長の辻村が用意してくれた古民家で一人で暮らしている。のちに家の近くで野良猫を保護し、生まれた子猫たちの面倒も見ている。八つ年下だが、職場の先輩である古河勇刀と打ち解けたいと考えている。

古河 勇刀 (こが ゆうと)

花村町観光案内所に勤務する小柄な男性。年齢は19歳。東京から転職してきた風間春太のことを、田舎にあこがれている変わり者だと偏見を抱き、冷たい態度を取っていた。つねにクールなポーカーフェイスで風間への態度は厳しいが、面倒見のいい一面もある。東京で活動するジャズプレイヤーの父親、古河龍と暮らしていたが、父親が各地を飛び回るため花村町にいる祖父のもとへ預けられた。現在、認知症の進む高齢の祖父と二人で暮らしている。「アズキ」という名前の犬を飼っている。

辻村 (つじむら)

花村町観光案内所の所長を務める男性。ぽっちゃりとした小柄な体型をしている。人当たりがよく、優しい性格の持ち主。インターネットによる人材募集の告知を見て応募してきた風間春太を面接し、採用した。気さくでノリもいいため、風間ともすぐに打ち解けた。

鈴宮 (すずみや)

花村町観光案内所でパートとして働く女性。広報と経理を担当しており、花村町観光協会のホームページも制作した。斗真、悠真という双子の男の子を持つ母親でもある。料理のできない風間春太におすそわけするなど、面倒見がいい。優しく朗らかな性格で、風間ともすぐに打ち解けた。

山崎 (やまざき)

日丸(にちまる)食品に勤務する男性。営業を担当している。風間春太とは同期で、5年の付き合いになる。仕事に悩みを抱えている風間とは対照的に要領よく仕事をこなしており、コミュニケーション能力も高い。彼女もおらず趣味もない、仕事に行き詰まっている風間に気分転換の一人旅を勧めた。その小旅行をきっかけに風間が転職することになり、非常に驚いていた。退職した風間とは現在でもSNSで連絡を取り合っている。ある日、車で花村町へやって来て、風間や古河勇刀といっしょにキャンプを楽しんだ。

田村 光莉 (たむら ひかり)

花村町出身の女性。古河勇刀の同級生で、両親は米農家を営んでいる。田舎を嫌って東京にある服飾専門学校に進学し、東京で暮らしている。東京行きに反対する父親とは大げんかしていた。初めての帰省で風間春太と出会い、わざわざ東京の暮らしを捨てて花村町にやって来た風間に呆(あき)れている。口調はきついが、風間にご飯の炊き方を教えてあげるなど面倒見はいい。

古河 龍 (こが りゅう)

古河勇刀の父親。東京でジャズプレイヤーとして活動している。長髪を後ろでまとめて無精ひげを生やし、帽子をかぶって眼鏡をかけ、いかにも自由人といった風貌をしている。幼い勇刀と二人で暮らしていたが、演奏で各地を回る関係で勇刀を花村町で暮らす父親のもとへ預けた。それ以来、認知症が進む父親の世話を勇刀に任せっきりにしているため、勇刀からは避けられている。勇刀とは対照的に人懐っこい性格で、初対面の風間春太に対しても自分のことを「リュウヤン」と呼んでくれと、いきなり距離を縮めていた。のちに勇刀との関係も改善し、東京でジャズバーを営んでいる。

書誌情報

春風ふるさと観光協会 1巻 KADOKAWA〈BRIDGE COMICS〉

第1巻

(2019-03-08発行、 978-4040655703)

SHARE
EC
Amazon
logo