概要・あらすじ
明治維新後の日本、士族反乱などで増える罪人を収容するため、政府は湖の上に脱獄不可能な監獄「獄門処」を作った。獄門処に罪人を護送する橋渡しを担当するのは、曇神社の曇三兄弟である、長男の曇天火、次男の曇空丸、三男の曇宙太郎だった。このころ、曇三兄弟の住む町の空は、300年に一度という長期の曇天となっていた。
この時現れ、人々に災いをもたらすという「大蛇の器」と呼ばれるものがあった。大蛇は復活するため人間にとり憑き、器とする。器となったものは大蛇復活を阻止するため、封じなければならない。ある時、天火の身体に器の影響か、大蛇の鱗が現れ始めた。そのことに気付いた天火は自ら死刑を選んでしまう。
登場人物・キャラクター
曇 天火 (くもう てんか)
曇三兄弟の長男で、曇神社第十四代目当主。明るく破天荒な性格だが、死んだ両親に代わって弟たちの面倒を見ている、弟思いな一面も持っている。かつては犲に所属していたが、ある時弟をかばって大怪我を負い、回復に使った新薬が蛇細胞を含んでいた。それに侵されていることを知り、犲を抜ける。死ぬまでの時間を弟たちと過ごそうとしていたが、大蛇の器の影響で身体に鱗が現れ始め、国と兄弟を守るために死刑を選んでしまう。
曇 空丸 (くもう そらまる)
曇三兄弟の次男。まじめで努力家だが、自由な兄弟たちの間に挟まれ、振り回される苦労人。曇家の家事はすべてこなしており、学校には通わず、独学で勉強している。自由で適当な兄の天火に対して、いつもは文句を言ってばかりだが、本当は曇家を支える兄に憧れており、兄のように強くなりたいと、蒼世に弟子入りを志願する。
曇 宙太郎 (くもう ちゅうたろう)
曇三兄弟の三男。天火のことが大好きで、強く尊敬している。天火の言うことなら、どんな無理難題でも素直に聞き入れ、必ず実行する。まだ幼くで、少々危なっかしい面もあるが、兄たちに近づこうと努力している。語尾に「っス」を付けて話すクセがある。
金城 白子 (きんじょう しらす)
曇家の居候。10年前、大怪我をしていたところを曇天火に助けられ、今では曇三兄弟の面倒を見ている。天火に名づけられた金城白子を名乗っているが、その正体は風魔一族の末裔で、本名は風魔小太郎。普段は大人しく心やさしい性格だが、いざ戦闘になるとすさまじく強い。
安倍 蒼世 (あべの そうせい)
右大臣直属部隊・犲の隊長。頑固な性格で、常に凛としており自信に満ち溢れている。安倍家の跡取りだったが家族と引き離され、その後、曇三兄弟の父である曇大湖によって犲に引き入れられた。かつての大親友であり、相棒であった曇天火が犲を抜けたことを許しておらず、天火に対して冷たい態度をとっている。
牡丹 (ぼたん)
表向きは曇宙太郎が通う学校の教師だが、その正体は600年前に大蛇の封印を目的として作られた安倍家の式神。曇天火が大蛇の器を探していると知って、協力を申し出る。600年前も変わらない姿をしており、封印に成功すると消え、また大蛇の器が出る年になると現れる。
比良裏 (ひらり)
滋賀県警の警官。生まれつき隻腕だが、西南戦争では警視隊に選ばれたほどの実力の持ち主。600年前の前世は安倍比良裏といい、陰陽師であったが才能が全くなく、自身を落ちこぼれと称していた。しかし、左腕を失いながらも大蛇封印に大きく貢献した。
武田 楽鳥 (たけだ らくちょう)
右大臣直属部隊・犲の若手隊員。8歳のとき、人質にとられた妹を助け出した犲に憧れ、入隊を志願した。犲の隊員である鷹峯に、日本酒と引き換えに稽古をつけてもらっている。しかし、最も憧れている安倍蒼世が曇空丸の稽古をつけていることに嫉妬している。
嘉神 直人 (かがみ なおと)
長州出身の殺人鬼。新政府打倒を目論んでいる。曇宙太郎に曇天火の処刑の真相を教えるなど、行動が読めない謎多き人物。
錦 (にしき)
獄門処の看守であるが、その正体は風魔の末裔で、かつては金城白子の下についていた。髪の色や目の色が、半分だけ風魔一族のものであり、風魔の半端者と言われていた。獄門処の看守をしていたところ、曇空丸と出会い、曇家の新しい居候になる。
集団・組織
犲 (やまいぬ)
『曇天に笑う』に登場する組織。安倍蒼世を隊長とする右大臣直属部隊。大蛇の器の発見と破壊を目的とし、隊員は高い戦闘技術を持っている。かつては曇天火も所属していた。
風魔 (ふうま)
『曇天に笑う』に登場する組織。大蛇の復活を望む集団。白髪と紫色の目が特徴。かつて風魔一族は滅んだが、生き残りの何人かが風魔の末裔として大蛇復活のために動いている。
場所
獄門処 (ごくもんしょ)
『曇天に笑う』に登場する施設。明治維新以降、日本国内は士族反乱などで多くの犯罪者を抱えるようになり、さらに脱獄も後を絶たなかった。そこで政府が絶対に脱獄不可能な監獄を作ろうと考え完成したのが、滋賀県の琵琶湖に浮かぶ、巨木の中の監獄、獄門処である。
その他キーワード
大蛇の器 (おろちのうつわ)
『曇天に笑う』に登場する用語。300年に一度という長期の曇天の時に現れ、人々に災いをもたらすといわれている存在。大蛇復活のためにとり憑かれた人間が、大蛇の器であるとされる。器となったものは大蛇復活を阻止するため、封じなければならない。
関連
煉獄に笑う (れんごくにわらう)
戦国時代を舞台に、大蛇の力を手に入れ、天下統一を狙う者たちの闘いを、史実をからめながら描く和風ファンタジー活劇。明治時代を舞台に曇三兄弟の成長を描いた『曇天に笑う』の前日譚。2014年1月より連載開始... 関連ページ:煉獄に笑う