るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-

るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-

和月伸宏の代表作。幕末の動乱、「人斬り抜刀斎」と恐れられた維新志士緋村抜刀斎は、新時代・明治の幕開けとともに突如姿を消してしまう。抜刀斎の名を捨て緋村剣心として生きる事を決めた彼は、「不殺」の信念のもと、決して人を斬る事のできない逆刃刀で10年間流浪の旅を続けていたが、ある日東京の下町で女剣士神谷薫に出会い、ひょんなことから薫の道場に居候することとなる。その後も、維新孤児の少年明神弥彦や、心に傷を負ったケンカ屋相楽左之助など多くの同士たちと出会い、仲間とともに様々な敵に立ち向かっていくこととなる。集英社「週刊少年ジャンプ」1994年19号から1999年43号まで連載。1996年1月のテレビアニメ化をはじめ、1997年12月の劇場版アニメ化、2012年8月の実写映画化など数多くのメディアミックスも行われた。

正式名称
るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-
ふりがな
るろうにけんしん めいじけんかくろまんたん
作者
ジャンル
バトル
 
時代劇
レーベル
ジャンプコミックス(集英社)
巻数
既刊1巻
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世界観

「誰もが平和に暮らせる世の中を」という信念のもと、剣心が弱い者を理不尽な暴力や争いから守っていくというのが本作の大まかな流れである。また、物語全体を通してテーマとなっているのが、過去に対する「贖罪の模索」であり、「人斬り」として多くの命を殺めた自分の罪に向き合いながら、その剣で大切な人たちを守っていこうとする剣心の姿が強く描かれている。

幕末から明治にかけ、佐幕派、勤皇派と2つに別れて争った者たちの深い溝、維新の動乱で大切な人を失ったり、孤児になった者たちの心の傷などが毎回浮き彫りになり、本当の意味で維新は完成していないことが語られる。時代に乗り遅れた幕府側の人間も、新時代を作った維新側の人間も、すべては自分の正義を貫くために戦ったのであって、どちらにも善悪をつけることはできない、という意図が含まれている。

明治時代初期の日本が舞台となっており、赤報隊事件、大久保利通暗殺事件など、実際の史実を絡ませながらオリジナルストーリーを展開していく。登場人物も、幕末、明治に実在した人物をモチーフに描かれており、主人公である緋村剣心は、幕末四大人斬りのひとり「河上彦斎(かわかみげんざい)」がモデルである。

剣心や薫の暮らす東京の町並みは、まだ江戸の雰囲気を残しつつも、文明開化の象徴である牛鍋屋や鉄道などが多く描写される。また、廃刀令が出た後ということもあり、刀を所持する剣心の姿は街では浮いてしまっている。

登場人物の名前には、作者の出身地である新潟にゆかりのある地名が多く見られる。作中のタイトルである「るろうに」は「流浪人」を表すが、本来の読みは「るろうにん」であり、作者が生み出した造語である。

作品が描かれた背景

時代物で、主人公が28歳の中年という設定は、当時の少年誌の中ではかなり異例であったが、女性からの熱狂的な支持を得たことで勢いがつく。連載が始まった1994年は「ジャンプ黄金期」の終盤にあたり、『SLAM DUNK』『幽☆遊☆白書』『DRAGON BALL』など、日本漫画史に名を残す名作ぞろいであった。しかし、94年から96年にかけてこの3作品が立て続けに終了。「週刊少年ジャンプ」の発行部数は急激に落ち込むが、それに歯止めをかけ、雑誌を支えていた看板作品が本作である。

作品誕生のいきさつ

るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』が連載される1年半前、物語のもとになった『るろうに-明治剣客浪漫譚-』という読み切り作品が、「週刊少年ジャンプ」の増刊号に掲載されている。かつては抜刀斎と恐れられた幕末の人斬りが、緋村剣心として流浪の旅をしている、という主人公の設定は同じだが、薫、弥彦、恵が血の繋がった姉弟として描かれており、悠久山安慈も雑魚キャラとして登場している。この読み切りが人気を得たことが、1年半後の『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』連載に繋がることとなった。

作品構成

全255話から構成され、エピソードは「第○○幕」と表記される。ストーリーは、大まかに3つのステージに分けることができる。剣心が東京に来て薫や弥彦、左之助たちに出会うまでの「東京編」、明治政府に恨みを持ち、日本征服を企む志々雄真実一派との戦いを描いた「京都編」、最後は、剣心に恨みを持つ者たちとの私闘を描いた「人誅編」である。「東京編」と「人誅編」ではバトルとドラマの2要素がバランスよく描かれているが、「京都編」ではバトルシーンにかなりの比重を置いた展開となっている。

物語序盤は、剣心の「最強」の名を手中に収めたい者たちが次々と戦いを挑んでくるという設定だったが、四乃森蒼紫率いる「御庭番衆一味」との戦いを皮切りに、多数の強者たちを相手に、仲間たちと分担して戦うというスタイルに変わっていった。剣心が相手にするのは毎回ラスボス的相手であり、「京都編」では志々雄真実、「人誅編」では雪代縁である。

ドラマ要素としては、剣心が薫や弥彦、左之助たちとの絆を強めていく過程を中心に、薫との恋愛模様も描かれる。とくに、自分の危険な宿命に薫を巻き込みたくないという剣心の複雑な気持ちや、いつ流浪の旅に出るかわからない剣心を想う薫の切なさが細部に描写される。

「東京編」では、剣心の過去については大まかな情報しか語られないが、次第に回想シーンも多くなり、謎に包まれた剣心の過去が徐々に明らかになっていく。例えば、「京都編」では剣心が孤児から人斬り抜刀斎になるまでのいきさつが、「人誅編」ではかつての妻である雪代巴との思い出が語られる。

あらすじ

幕末の動乱期、維新志士の中でも最強無比と恐れられた緋村抜刀斎は、明治の幕開けとともにぱったりと姿を消してしまう。佐幕派の人々を修羅さながらに斬りつけ、新時代を切り開くのに大役を担った彼は、もう二度と人を殺める事のないよう、逆刃刀に持ち替え、流浪人の緋村剣心として弱い物たちを守る旅に出てしまったのだ。

時は流れ10年後の東京下町。巷では「人斬り抜刀斎」と名乗る辻斬りが多くの罪のない人たちを殺めていた。道場で神谷活心流の師範代を務める少女・神谷薫は、辻斬りが自分の流儀を騙って悪事を働いていることを知り、犯人探しに乗り出す。ある夜、廃刀令にも関わらず刀をさしてあるく剣心を見かけた薫は、「人斬り抜刀斎、覚悟!」と打ち込んでいくのだが、軽やかな身の動きであっさりかわされてしまう。一方、10年前に捨てたはずの名を呼ばれた剣心は驚くが、自分の刀が逆刃刀であることを必死に証明し、なんとか誤解を解く。薫からすべての事情を聞いた剣心は、危険な真似はやめるよう説得して別れるのだが、ニセ抜刀斎が、薫の家伝である神谷活心流を騙って殺人を行っていると知り、人知れず犯人を探すことに。次の日、薫の道場に辻斬りが手下を連れて襲撃にくる。なんと黒幕は神谷道場の使用人であり、流儀を貶め道場を再起不能にした後、土地を買い取ろうとしていたのだ。真実を知った時にはすでに遅く、薫は辻斬りと手下たちに追い込まれてしまう。もはやこれまでか思ったその時、黒幕を突き止めた剣心神谷道場に現れ、見事な剣裁きで辻斬りたちを打破してしまう。薫に、本物の抜刀斎は自分である事を告げ、また流浪の旅に出ようとする剣心だったが、過去は気にしないという薫に止められ、しばらく道場に居候させてもらうことになる。

ある日、かつての宿敵で元新撰組の斎藤一が神谷道場に姿を表し、仲間に危害を加えたことで、自分の中に封印していた人斬りを呼び起こしてしまう。実は斎藤は政府の密偵として暗躍しており、政府の依頼を受けて、現在の剣心の実力をはかるために遣わされたものだったのだ。斎藤との激しい死闘の後、政府内務卿の大久保利通がじきじきに剣心を訪ね、かつて剣心の影武者を務めた志々雄真実が、政府転覆に向け京都で暗躍している事を伝える。すでに多くの犠牲者が出ている事を知った剣心は、仲間たちの強い反対を押し切り、一人京都に向かうことを決意する。剣心が去った事で悲しみに暮れる薫であったが、仲間たちとともに自らも京都を目指すことに。一方剣心は、志々雄との決闘を前に、10年以上も前に喧嘩別れした師匠、比古清十郎のもとを尋ねる。そこで奥義の習得を目指すことになるのだが、それはどちらかが命を落としかねない、想像を絶する危険なものであった。

登場人物

本作に登場するキャラクターは、幕末、明治に実在した人物や、作者の愛読する歴史小説からヒントを得て生み出されたものが多い。コミックス内の1コーナーである「登場人物制作秘話」では、キャラクターに込めた想いやモチーフになって人物、またデザインのいきさつなどが詳細に語られている。なかでも新選組に端を発するキャラクターは多く、世間のイメージとはかなりかけはなれた斎藤一のキャラ設定には、新選組ファンから多くの批判も受けたという。

特殊設定

本作に登場するキャラクターは、それぞれが架空の剣術や武術の使い手であり、いわば異種混同のバトルになる場合も多い。また、「京都編」第125幕に登場する十本刀の不二は巨人であり、第9幕で登場する鵜堂刃五衛は目から気を発し金縛りをかけるなど、人間離れした異形や特殊能力を持つ敵キャラも数多く登場する。

ちなみに、主人公緋村剣心の流派である「飛天御剣流」の使い手は、剣心とその師匠である比古清十郎の二人のみ。「剣の速さ」「身のこなしの速さ」「相手の動きの先を読む速さ」を活かし、多数の敵を一気に斬るという実践本位の剣術である。一方、神谷薫の家伝である神谷活心流は、人を生かす「活人剣」であり、殺すのではなく、制することを極意とし、真剣ではなく竹刀や木刀を使っての闘いを行う。斎藤一の必殺技である「牙突」は、実在の斎藤一の得意技であった「左片手一本刺突」を、少年誌で受けるようアレンジしたものである。

メディアミックス

アニメ

漫画連載スターとから2年後の1996年1月、アニメ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』が放送開始。主人公の声は、当時宝塚のトップスターだった涼風真世が担当した。アニメ化に関して作者の和月伸宏は、はじめは多少不満を抱いているようなコメントをしていたものの、途中から「徐々に安心して見れるようになった」と述べている。実際、アニメから漫画に影響を受けたことも度々あり、「京都編」のラストカットは、アニメのオープニング映像からインスパイアされたものである。

当時、アニメ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』の主題歌に使われた曲は必ず大ヒットするという社会現象をもたらした。

1997年12月には劇場版映画『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 維新志士への鎮魂歌(レクイエム)」が公開。1999年以降は、OVAとしてるろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 追憶編』『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 星霜編』『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 新教京都編』が制作される。また、世界中でもアニメが放送され国際的人気を博している。

実写映画

2012年8月には、佐藤健主演で実写映画『るろうに剣心』が公開。そのあとも、『るろうに剣心 京都大火編』、『るろうに剣心 伝説の最期編』と続き、全部で3部作となった。

キネマ版

2012年には、実写映画公開を受け、「ジャンプSQ.」より『るろうに剣心-キネマ版-』の連載が始まる。これは剣心の物語を一から描いたセルフリメイクで、パラレルワールド的な世界となっている。剣心や登場人物の設定には多少の変更が加えられ、それぞれの出会いもまったく違う形で描かれている。後に『るろうに剣心-特筆版-』として単行本化される。

小説

原作をベースとしたものや、完全オリジナルストーリー、実写映画版のライトノベル作品などが刊行されている。

CDブック

アニメ放送開始前の1994年から1995年にかけ、3作が発売された。登場人物の声優はアニメとはまったく異なる。

るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-のゲーム

プレイステーションを中心に、アニメのストーリーをベースとしたゲームが多く制作されている。ジャンルは、対戦型格闘ゲームやアドベンチャー、RPGなど。

ミュージカル

2016年2月から、宝塚歌劇団によるミュージカル化が決定している。

海外からの反応

世界23カ国以上で翻訳され、多くの海外ファンを持つ。昔の日本が題材ということもあり、海外におけるアニメオタクだけでなく、日本史の勉強として楽しむ人も多い。アメリカでは、アニメやOVAのタイトルを『Samurai X』と訳しているが、これは剣心の頬の十字傷にちなんだもの。作者の和月和宏もこの名を気に入っており、自身の作品である『武装錬金』には、「ソードサムライX」という武器が登場する。海外ではとくに、OVAの『追憶編』が大絶賛を受けている。

ファン層

当時の少年誌では珍しく、若い女性からの絶大な支持を得たことで知られる。コミックス2巻に書かれた作者コメントでは、男性より女性からのファンレターが多いことに触れ、「ジャンプ版の少女漫画か?」と言及している。実際、当時の読者層の割合は、7:3で女性が圧倒的に多かったという。

アシスタント

連載当時、作者和月伸宏のアシスタントを務めていたのは、『ONE PIECE』の尾田栄一郎や『シャーマンキング』の武井宏之といった、後に日本を代表する漫画家たちだった。

登場人物・キャラクター

緋村 剣心 (ひむら けんしん)

幼名は心太。短身痩躯で赤毛の優男で、左頬に十字傷がある。一人称は拙者、語尾は「ござる」。天涯孤独の身だったが、幼少のころ比古清十郎に拾われ剣心という名を与えられ、古流剣術飛天御剣流を教わる。幕末期には維新志士となり要人の暗殺などを行っており、卓越した剣の腕と冷徹さから「人斬り抜刀斎」と恐れられていた。 その頃に最愛の女性雪代巴を不測の事態から己の手で殺害しており、頬の十字傷の一つはその時についたもの。明治維新後は不殺(ころさず)を誓い、通常の刀とは逆の、反りのみが刃となった逆刃刀を下げ全国を流浪していた。ある日ひょんなことから神谷薫と出会い、彼女の道場神谷道場の食客となる。 幕末の維新志士、川上玄斎をモデルとしている。

神谷 薫 (かみや かおる)

神谷活心流師範代。明るくて気が強く活動的な女性で、剣術小町として名を馳せている美少女。人を殺すのではなく、助ける為に振るう活人剣をモットーに、門下生の明神弥彦の指導に当たっている。神谷道場を守った緋村剣心とは心を通わせており、最後には結婚。息子緋村剣路をもうけた。

明神 弥彦 (みょうじん やひこ)

神谷道場の門下生の少年。士族の子供だったが、幕末の動乱で孤児となり、ゴロツキの手下としてスリを働いていた。緋村剣心と出会ってからは、スリから足を洗って神谷道場に入門。神谷薫の一番弟子となる。プライドが高く生意気だが、自分の信念を曲げない強さを持つ。 薫とはしょっちゅう喧嘩をしているが、心の中では尊敬している。剣心の強さに憧れ、彼の隣で戦うことを望んでいる。

相楽 佐之助 (さがら さのすけ)

竹を割ったような性格で、兄貴肌。少年時代には、偽官軍として粛清された赤報隊に準隊士として参加しており、その時の恨みから新政府を快く思っていない。赤報隊隊長の相良総三の事を尊敬しており、同じ名字を名乗っている。その後は喧嘩屋という屋号で用心棒のような仕事をしており、その中で緋村剣心と対決。 剣心に敗れた後は新政府を恨む一辺倒の気持ちが徐々に変化していく。並外れた大きさの大剣、斬馬刀を振るう怪力と、非常に打たれ強い肉体の持ち主。後に悠久山安慈から奥義二重の極みを体得、やがては更に強力な三重の極みへと発展させた。新選組十番隊隊長、原田左之助をモデルとしている。

高荷 恵 (たかに めぐみ)

会津藩出身だが、西洋医学を研究するために脱藩した女性。豊富な知識に目を付けられて武田観柳により監禁、合成阿片を作らされていた。緋村剣心に助けられた時には、罪の意識から自首を望んでいたが剣心に説得されて思いとどまる。それからは医者として多くの人を救うために活動している。 剣心に思いを寄せ、彼を剣さんと呼ぶ。人をからかうことが好きな性格から、相良佐之助らから女狐と呼ばれることもある。

四乃森 蒼紫 (しのもり あおし)

御庭番衆の頭目。整った顔立ちだが、寡黙で無表情な男性。幼いころから隠密としての訓練を積み、歴代最年少の頭目となった天才。小太刀を武器とし、相手との間合いを詰めて拳や蹴りを叩き込む戦闘スタイル。後には小太刀を両手に持つ御庭番式小太刀二刀流を独学で極めた。大政奉還後、用済みとなった隠密御庭番衆の中で一人明治政府から職を斡旋されるも、部下たちの事を思い辞退し、用心棒稼業を始める。 過去に最強と呼ばれた緋村剣心を倒すことで御庭番衆の強さを証明しようと、剣心を付け狙うようになる。新選組副長、土方歳三をモデルとしている。

巻町 操 (まきまち みさお)

活発で男勝りな性格をした少女。祖父の柏崎念至は元御庭番衆の頭目で、四乃森蒼紫の師匠。蒼紫ら御庭番衆に合うために東京へと向かう途中で緋村剣心と会い、行動を共にすることになる。高い身体能力を持ち、また隠密御庭番衆から手ほどきを受けているため、戦闘技術も高い。蒼紫の事を心から尊敬しているが、彼が念至を倒した際には、対立することも厭わずに御庭番衆の頭目を名乗ったこともある。

比古 清十郎 (ひこせいじゅうろう)

第十三代目飛天御剣流継承者。屈強な体格で長身の男性。意地が悪く自信家。身よりのない心太を拾い、剣心と名前を授け、飛天御剣流を叩き込んだ。飛天御剣流が世の中に及ぼす影響を理解しており、剣心をも遥かに凌ぐ実力を有しているものの、戦いには滅多に加わらない。人間嫌いであり、現在は京都の山奥にて陶芸家新津覚之進として生活している。

石動 雷十太 (いするぎ らいじゅうた)

実戦的な真剣による殺人剣の復興を目論んでいた剣客。明治初期主流となっていた竹刀剣術を軟弱と蔑み、各地の道場に勝負を挑んでは看板を奪ってきた。優秀な剣客を集めて、自らが編み出した新古流に加えようとしている。しかし、思想が相容れない緋村剣心と対立、実は一度も人を斬ったことがないことを見抜かれ、敗北した上にプライドまで砕かれてしまう。 凄まじい剣圧で対象を真っ二つにする秘剣、飯綱を得意とする。

志々雄 真実 (ししお まこと)

弱肉強食を信条とし、強者が弱者を淘汰する社会の構築を目論んでおり、京都を中心に強力な派閥を作り上げていた。元は緋村剣心の後を継いで、佐幕派の要人暗殺に当たっていた維新志士だったが、その野心を警戒されて暗殺の対象となってしまう。命は助かったものの、全身に火傷を負ったせいで体中に包帯を巻いた姿になってしまった。 剣の腕前は剣心に匹敵し、暗殺の先任だった剣心を嫌味で先輩と呼ぶ。先の火傷の影響から、非常に高い体温を持つようになり、また戦闘中には時間と共に更に上昇する。体温が上がる程に技のキレや反射神経などが上がり、更に強くなるものの、あまりに上がり過ぎると危険なために、十五分以上の戦闘は医者から止められている。 愛刀は刃をノコギリ状にこぼすことで、殺傷力を一定に保つ刀無限刀。刃の隙間に斬った人間の脂が染みこんでおり、摩擦熱を利用して火を放つことが出来る。

瀬田 宗次郎 (せたそうじろう)

十本刀の一人。常ににこやかな笑みを絶やさない剣客。天剣の宗次郎と呼ばれ、十本刀で最強と目される。緋村剣心に匹敵する剣の才能を持ち、高速の移動術縮地の使い手。商屋の妾の子として産まれ、幼いころより家族から疎まれ、自己防衛から楽しい以外の感情を欠落させてしまっている。それ故に、相手に気配を読ませない強みも持つ。 全身に火傷を負い、死にかけの志々雄真実と遭遇、彼が説く「所詮この世は弱肉強食」という考えに触発され、家族を虐殺した。その後は志々雄の最初の部下となった。モデルは新選組一番隊隊長沖田総司。

駒形 由美 (こまがたゆみ)

夜伽の由美と呼ばれる妖艶な美女で、志々雄真実と深い絆で結ばれた愛人。力を持たない為に、志々雄の役に立てないことを歯がゆく思っている。かつては吉原で評判の花魁だったが、マリア・ルーズ号事件に対する明治政府の対応に怒り、憎しみを覚えている。

佐渡島 法治 (さどしま ほうじ)

十本刀の一人。作戦立案能力、実務能力に長け、志々雄真実一派の中で参謀的ポジションを占める。志々雄へ絶対的忠誠を誓っており、彼の為に責任を被り、自ら爪を剥いだこともある。元は明治政府の官僚だったが、組織の腐敗に嫌気が差して下野。志々雄に拾われて十本刀の一人となる。

悠久山 安慈 (ゆうきゅうざんあんじ)

十本刀の一人。元は東北地方で、戦争により身寄りを亡くした子どもたちの面倒を見ていた温厚な僧侶。しかし、廃仏毀釈のおりに政府から利益を得ようとする村長たちによって、寺と共に子どもたちまで焼き殺されてしまい怒りに目覚め破戒僧となった。修行を重ね、奥義二重の極みを編み出す。 世の中の救世を願い、手始めに腐敗した明治政府の打倒を考えるようになり、似た考えを持つ志々雄真実の配下となった。十本刀の中でも特別な扱いを受けており、志々雄から生殺与奪権を与えられている。相良佐之助の師匠でもあり、彼に二重の極みを伝授した。

魚沼 宇水 (うおぬま うすい)

十本刀の一人で、瀬田宗次郎に次いで二番目に強いとされている。十本刀加入前は幕末方の暗殺者だった。その時志々雄真実と対決し両目を切り裂かれてしまい、視力を失い幕府からも捨てられてしまう。しかし、山を流離っている時に自分の聴覚が異常に研ぎ澄まされていることに気が付き、盲目ながらもあたかも目があるように周囲の状況を把握できるようになる。 その後は志々雄に声をかけられて、いつでも殺していいことを条件に十本刀に加入。隙を見つけては志々雄に攻撃を仕掛けている。しかし、内心では志々雄の力に圧倒され、復讐を諦めかけている。琉球出身で、亀甲型の楯ティンベーと、石突きに鉄球の付いた槍ローチンを武器としている。

沢下条 張 (さわげじょう ちょう)

十本刀の一人で、刀の熱狂的収集家。逆立った長い金髪が自慢で、馬鹿にされるとキレる。刀は集めるだけでなく、それで人を斬ることも楽しみとしており、また扱いにも長けている。明るく陽気な性格をしている反面、赤子すら手にかける残忍さを持つ。緋村剣心と対峙し、敗れた後は齋藤一の下で密偵として働き始めた。 大阪出身であり、関西弁を使う。

雪代 縁 (ゆきしろえにし)

六人の同志の発起人。緋村剣心の元妻雪代巴の実弟。巴の事を溺愛し、彼女を殺害した剣心を憎悪している。若干十三歳にして大陸へと渡り、数々の修羅場をくぐり抜けながら成長。倭刀術を習得、また一大武器密売マフィアのボスとなる。全ては剣心への復讐が目的であり、日本に戻った後は同じく剣心に恨みを持つ者を集め、六人の同志を結成。 人誅と称し剣心の抹殺を計画する。狂経脈という異常体質で、長い間剣心を恨み続けたため神経が異常に発達した結果、飛天御剣流をも超える反応速度を手に入れた。自らの意思で発動することが可能。

雪代 巴 (ゆきしろともえ)

緋村剣心の元妻で、故人。幕末志士の許嫁がいたが剣心により殺害され、復讐の為に剣心に接近した。しかし剣心の弱点を探る内に、彼の人となりや弱さに惹かれていき、愛しあうようになってしまう。敵の策により、五感を失った剣心を助けるために飛び出すも、剣心により斬られてしまう。

武田 観柳 (たけだ かんりゅう)

合成阿片を密売している悪徳実業家。西洋医学に通じている高荷恵を監禁して阿片を作らせ、儲けた金で武器を扱い、更なる財を成そうとしていた。損得勘定のみで動く小悪党。緋村剣心たちが高荷恵を助けに来た際は、回転式機関砲(ガトリングガン)を手に立ちはだかった。新選組五番隊隊長、武田観柳斎をモデルとしている。

外印 (げいん)

六人の同志の一員。夷腕坊という名の機巧(カラクリ)で十本刀にも所属していたが、その際は自らの機巧(カラクリ)の中に入っていた。中世より続く、人形師の末裔であり、己の機巧(カラクリ)の性能を試すため、更なる物を作る為に戦いに身を投じている。黒子姿にドクロの模様が入った黒頭巾を被り、素顔を晒すことはない。

鯨波 兵庫 (くじらなみひょうご)

六人の同志一員の巨漢。元佐幕派の武士。幕末の動乱期に緋村剣心と対峙した際に右腕の肘から先を斬り落され、武人としての死を臨むも叶えられなかったために剣心のことを憎むようになってしまう。失った右腕に装着したアームストロング砲などの重火器を武器とする。

斎藤 一 (さいとう はじめ)

元新選組三番隊隊長。悪を憎む気持ちが強く、悪・即・斬という、独自の哲学を持っている。緋村剣心とはお互いに宿敵と認識しており、幕末に何度か剣を交えるも決着はついていない。明治維新後は藤田五郎と名乗る。表向きは警官だが、実は明治政府の密偵。不殺(ころさず)を誓う剣心とは相いれないが、志々雄真実や、雪代縁などの強大な敵を前にしては共闘をすることもある。 冷静沈着なリアリストであり、目的のためには手段を選ばない性格。卓越した剣の腕を持ち、片手平突きを極めた牙突を必殺技とする。ヘビースモーカーである。新選組の斎藤一をモデルにしたキャラクター。

鵜堂 刃衛 (うどう じんえ)

幕末にどこの派閥にも属さず、殺しを請け負っていた人斬り。殺しについて独自の美学を持つ。黒い笠を着用していることから、黒笠と呼ばれる男。強敵との戦いを好み、緋村剣心が過去最強の剣客と呼ばれていたことを知ると、神谷薫を拉致して剣心の怒りを誘い、戦いを挑んだ。実在した剣術流派、二階堂平法の達人。 目を合わせた相手を金縛りにする心の一方の使い手。幕末期に人斬り以蔵と恐れられた岡田以蔵をモデルとしている。

集団・組織

十本刀 (じゅっぽんがたな)

『るろうに剣心』に登場する集団。志々雄真実直属の腕利き十人を指す。長い間戦闘に参加出来ない志々雄の体質による弱点をカバーするために集められており、曲者が集う。志々雄の命令に忠実に従うが、その目的は各々異なっている。

隠密御庭番衆 (おんみつおにわばんしゅう)

『るろうに剣心』に登場する集団。江戸幕府が江戸城を護るために抱えていた隠密集団。高い実力を有し、最強を自認していたが明治維新後は雇い先を無くし、裏社会の用心棒などをして生計を立てていた。江戸時代に実在した、御庭番をモデルにしている。

六人の同志 (ろくにんのどうし)

『るろうに剣心』に登場する集団。雪代縁が発起人となり、結成された集団。緋村剣心の抹殺を目的としており、神谷道場に襲撃をかけた。それぞれが高い戦闘能力を持っているのに加えて、武器商人の縁が強力な道具を提供しているため、少人数ながらも強大な力を有している。

闇乃武 (やみのぶ)

『るろうに剣心』に登場する集団。関西に存在する幕府お抱えの隠密であり、実力は江戸の御庭番衆に匹敵するとされている。緋村剣心の弱点を見つけるため、雪代巴を送り込んだ。

場所

神谷道場 (かみやどうじょう)

神谷活心流の道場であり、緋村剣心や神谷薫の住居も兼ねている。

その他キーワード

逆刃刀 (さかばとう)

不殺(ころさず)を誓った緋村剣心が愛用する刀。見た目は普通の刀だが、通常の刃に当たる部分が研磨されておらず、峰の部分に刃が付いている。刀匠、新井赤空が鍛え上げた刀。

九頭龍閃 (くずりゅうせん)

『るろうに剣心』に登場する技。飛天御剣流の奥義。突進しながら、九つの斬撃を打ち込む高速の技。目に止まらぬ速さで多方向から打ち込むため、すべて回避することや防御は不可能とされる。

天翔龍閃 (あまかけるりゅうのひらめき)

『るろうに剣心』に登場する技。抜刀術だが、通常と異なり抜刀と同時に左足を踏み込むことで、斬撃を加速させ、目にも留まらぬ速度で剣撃を放つ超高速の抜刀術。初撃が躱されてもその高速の剣撃ゆえ、場に空気の渦が出来て相手を拘束、鞘を叩き付ける二段構えとなっている。飛天御剣流の奥義であり、継承者はこの技を使って師匠の九頭龍閃を破り、殺すことで伝授が完了する。 緋村剣心は志々雄真実らに勝つため、比古清十郎から伝授された。

二重の極み (ふたえのきわみ)

『るろうに剣心』に登場する技。破壊の極意とされる、あらゆるものを打ち砕く必殺技。攻撃の際に、衝撃を二回与えることにより、一撃目で対象の抵抗力を無くし、二撃目の衝撃を百%叩きこむ。悠久山安慈は、全身からこの技を放つことが出来る。相良佐之助は、右腕でしか放つことは出来ないものの、二撃目に加えて三回目の衝撃を放つ、三重の極みを編み出した。

飛天御剣流 (ひてんみつるぎりゅう)

『るろうに剣心』に登場する剣術。戦国時代発祥と伝えられ、多人数との戦闘を想定している。弱き者を護るために使われることをモットーとしており、またその強さから特定の思想に左右されない、自由の剣であることが信条とされる。伝承者は、代々比古清十郎の名を受け継いでいる。速さに重きを置き、その奥義天翔龍閃は目にも留まらぬ速さで繰り出される。

神谷活心流 (かみやかっしんりゅう)

『るろうに剣心』に登場する剣術。神谷薫の父、神谷越路郎により作られた流派。相手を殺さずに抑えることを目的とした活人剣であり、真剣は扱わない。刀の柄で相手の膝関節を破壊する柄の下段・膝挫や、相手の刀を手の甲で受け止め、柄で急所を狙って反撃をする奥義の攻め・刃渡りなどの技がある。

続編

るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚・北海道編- (るろうにけんしん めいじけんきゃくろまんたん ほっかいどうへん)

和月伸宏の代表作『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』の続編。前作から5年の歳月を経た明治16年(1883)の北海道を舞台に、緋村剣心や斎藤一達の新たなる戦いを描く。前作の時点では構想だけが発表されてい... 関連ページ:るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚・北海道編-

関連

弥彦の逆刃刀 (やひこのさかばとう)

和月伸宏の代表作『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』の後日談にあたる物語で、『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 完全版』第22巻に収録されている。緋村剣心から元服の祝いとして、逆刃刀を託された明神弥彦... 関連ページ:弥彦の逆刃刀

アニメ

るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-

幕末、数々の暗殺で幕府方に恐れられた維新志士、人斬り抜刀斎。その伝説的剣客・緋村剣心は明治を迎えた平和な世に決して再び人を殺めないことを誓い、罪を償うべく流浪していた。 旅の途上、少女剣士・神谷薫の道... 関連ページ:るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-

書誌情報

るろうに剣心―明治剣客浪漫譚― 1巻 集英社〈ジャンプコミックス〉

第1巻

(1994-09-02発行、 978-4088714998)

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