あらすじ
第1巻
いよいよ西域付近へ入った玄奘 三蔵(通称・三蔵)、孫 悟空(通称・悟空)、猪 八戒(通称・八戒)、そして沙 悟浄(通称・悟浄)。彼らは馬車で逃げる村人たちと出会う。村人に襲いかかっていたのは妖怪の集団だ。その現場にジープが突っ込み、いつものように妖怪たちをあっさりと全滅させた三蔵たちだ。しかし、あまりの空腹に闘い終わってその場に行き倒れてしまう。助けられた村人の男タムロは、お礼に三蔵たちを村へ招待した。三蔵一行は山ほどの食事を振舞われ、風呂と寝床を用意してもらった。タムロが住む村では、妖怪の侵入を阻止するために跳ね橋を作っていた。そして村人は皆、夜は明かりもつけず息を潜めて暮らしていた。
その晩のこと。玲(れい)という村の女が勝手に跳ね橋をかけて、妖怪たちを村に引き入れてしまう。玲は夫を妖怪に殺されて頭がおかしくなっていた。三蔵一行が泊まっていたタムロの家も妖怪の襲撃を受けたが、三蔵たちが打ち倒した。やはりこの村にも長居は禁物。三蔵の指示で夜明けには退散した。まるで疾風みたいな人たちだったと、三蔵たちのことを語るタムロだった。(shot,1 突風)
今年も例年どおりに皆と桜の下で酒を酌み交わしていた観世音菩薩。そこへ何やら慌てふためいて来た次郎神がやってきた。次郎神は、ナタクが忽然と姿を消し天界中が大騒ぎになっていると言った。観世音菩薩はナタクのいなくなった玉座を見つめ、嵐が来るとポツンと呟いた。
一方、旅の終着点に近づいた三蔵、悟空、八戒と悟浄は、最後の難所に苦しめられていた。岩山ばかりの道で常にロッククライミングをするような状態だ。黙々と岩山を登り続ける4人。悟空が背負うリュックの中には重たい三蔵の金冠が入っている。悟空が金冠を捨ててしまおうと言うと、しかたなく金冠を被る三蔵。そうこうするうちに何とか岩山を登り切った一行だった。(shot,2 序章)
後日、ある村で、また妖怪の襲撃を受ける三蔵一行。妖怪はほどなく退治したが、今度はハゲタカの群れが襲来する。このハゲタカの群れに餌を与えている妖怪がいた。その妖怪の名は淀仁(タンジン)といい、ハゲタカやカラスを集めて餌付けをしていた。村では、この数年で子どもが10人亡くなっていた。それはあの淀仁のせいではないかと噂されていた。そんな時、三蔵たちは、人さらいの悪党が子どもを殺生する場に出くわす。三蔵は、村人に殺しているのは淀仁ではなかった事を伝えた。濡れ衣が晴れたと伝えに淀仁の元を訪れた悟空は、彼の本当の姿を見る。それは、屍を引き裂きハゲタカやカラスに餌としてくれている姿だった。(Shot,3 天葬)
登場人物・キャラクター
玄奘三蔵 (げんじょうさんぞう)
第31代唐亜玄奘三蔵法師、かつ北方天帝使と呼ばれる三蔵法師の一人。23歳の美丈夫。最高僧だが、仏道とは真っ向から反目し、己と己の信じるものだけを見て生きていくと決めている。仏道にあるまじき僧で、酒は飲むし、タバコは吸うし、賭博もする。プライドの塊のような人物で、人に弱みを見せることを嫌う。唯一、孫悟空だけがそんな彼の心を、少し柔らかくすることができる。 基本的に自己中心的だが、それに見合ったカリスマ性と能力を備えた人物。まとまりのない三蔵一行の一応のまとめ役。悟空の金冠を付け直すことができる。
孫 悟空 (そん ごくう)
普段はちょっとおバカで、食欲旺盛な18歳男子。武器は如意棒。三蔵一行のムードメーカーで、無神経な発言もするが、基本的に良い子。玄奘三蔵に拾われるまでは、山の頂近くの岩牢に500年間閉じ込められていた。額に妖力制御装置である金冠を付けており、外すと「斎天大聖孫悟空」として凄まじいパワーを発揮する。しかし、一度金冠が外れると付け直すのは容易ではなく、それが可能なのは玄奘三蔵、または観世音菩薩のみ。
猪 八戒 (ちょ はっかい)
温厚で礼儀正しい22歳の青年。普段は妖力制御装置で人間のふりをしているが、一応妖怪のくくりに入る。素行に問題のある玄奘三蔵、孫悟空、沙悟浄の保父さんと化している。西域に行くために必須な車であるジープの飼い主でもある。怒るとすさまじい目つきになり、三蔵一行にも、怒らせてはいけない人物と認識されている。
沙 悟浄 (さ ごじょう)
妖怪と人間のハーフの22歳の青年。ハーフのため、元々容姿は人間に近いが、真紅の髪と目を持つ。ヘビースモーカーで常にタバコを吸っている。生活態度や女癖は悪いものの、三蔵一行の兄貴分的な存在で、優しい一面を持つ。貧乏くじを引きやすく、自分のことを「器用貧乏」と称している。今回の旅では、兄である沙爾燕を捜すことも目的のひとつとしている。
ジープ
三蔵一行の足となる車に変身できる白い竜。普段は翼のある白い竜の姿をしているが、ジープに変身できるため、名前が「ジープ」になってしまった。変身中も、ある程度は自分の意思で動くことができる。
観世音菩薩 (かんぜおんぼさつ)
天界を司る5大菩薩の一人。慈愛と慈悲の象徴。しかし、天界人としては割と非常識な言動の目立つ、菩薩とは程遠い存在。両性具有だが、見た目は女性に近く、露出狂の気がある。三蔵一行の旅路を決めた人物で、彼らがどこまでやっていけるのか、楽しみながら見ている。
你健一 (にーじぇんいー)
牛魔王蘇生実験に関わる唯一の人間。現代科学の最高峰である生命工学の第一人者と言われている天才の男性。玉面公主のお相手をしながら、牛魔王蘇生実験に関わっている。飄々として、何を考えているかわからない人物だが、瞳に暗いものを秘めている。無天経文を持つ三蔵法師の一人だが、牛魔王蘇生実験に加担しているため、三蔵一行と敵対している。
玉面公主 (ぎょくめんこうしゅ)
牛魔王の側室。西域で牛魔王蘇生実験を主導している女性。李厘の母親で、紅孩児にとっては義母にあたる。牛魔王を愛しており、牛魔王を蘇生させるためならば、娘の李厘でさえ使うと言い切る。
紅孩児 (こうがいじ)
牛魔王を父親に、羅刹女を母親に持つ青年。異母兄妹である李厘の面倒もよく見ており、八百鼡や独角兕に慕われる存在。羅刹女の封印を解くために、玉面公主の命令に従って三蔵一行を殺そうとしている。
独角兕 (どくがくじ)
紅孩児の部下で、豪快な紅孩児一行の兄貴分。本名は「沙爾燕」で、沙悟浄の異母兄弟にあたり、幼少期の悟浄にとって唯一の心の支えでもあった人物。紅孩児に悟浄の姿を重ねて見ているところがあり、そのためついつい構ってしまう。
淀仁 (てんじん)
西域近くの村で鳥葬場の守り人をしている男性。妖怪だが異変の影響を受けず、正気を保っている。村のためにと、鳥葬場におり、自分の妻が命と引き換えに生んだ息子がいた。その息子も、鳥葬によって葬られている。
天羽 (てんば)
淀仁の扱う鳥。淀仁の息子の名前を付けられている。淀仁のそばにいることが多い。孫悟空とご飯の取り合いをするなど仲が良く、淀仁からは「自分以外に懐くのは初めて見た」と言われた。
哪吒 (なたく)
元々は孫悟空と仲の良い友達。気さくでありながら、闘神として名高かった人物。かつて父親からの呪縛を逃れようとして自害をし、地下で人造人間として見つかった。それ以来、何も言葉を発することなく、ただ座ったままでいたが、三蔵一行が西域へ入った時期に突然姿を消す。
波珊 (はっさん)
恒天部隊として活躍する紗烙三蔵法師直属の援護隊のリーダーを務める男性。リーダーとして周囲をまとめる気質のある男性で、元三蔵法師見習いだった。その頃から紗烙三蔵法師とは縁があり、今は従者として活動している。紗烙三蔵法師のことが好き。
紗烙三蔵法師 (しゃらくさんぞうほうし)
第28代羅漢紗烙三蔵の女性。常に銃を携帯しているところが、玄奘三蔵とよく似ている。恒天経文の所持者。機関銃を扱って村人を守る気概を持ち、人を守ろうという精神は玄奘三蔵よりも強い。タバコを嗜む。波珊の想いにも気づいている。
集団・組織
三蔵一行 (さんぞういっこう)
玄奘三蔵、孫悟空、猪八戒、沙悟浄の4人の集団。三仏神の命により集められた面々。当初三蔵は、このメンバーで本当に良いのかと考える場面もあったが、直ぐに今起こっている異変に対応できる面々だとして、信頼を置く。
場所
桃源郷 (とうげんきょう)
玄奘三蔵たちが暮らしている場所。現在、三蔵一行が桃源郷の端の西域に向かっている途中。妖怪と人間が共存する数少ない場所であったが、異変が起きてから、妖怪と人間は一緒に暮らせなくなってしまった。
西域 (さいいき)
吠登城のある場所。異変の影響が最も強いため、三蔵一行も西域に近づくにつれ、たくさんの妖怪に襲われている。紗烙三蔵法師が西域での異変を抑えるために、ここに留まっている。異変開始から数夜で大きな町は壊滅状態となり、小さな町だけがかろうじて残っている状態。
吠登城 (ほうとうじょう)
玉面公主が牛魔王蘇生実験を行っている場所。你健一ら研究者もここにいる。紅孩児や独角兕もここを根城にしており、ここから魔天経文、また他の経文を探すために、玉面公主に従って動いている。
その他キーワード
魔天経文 (まてんきょうもん)
玄奘三蔵が常に肩に付けている経文。外すと普通の巻物状になる。魔天経文は魔を払う力があり、力を解放すると妖怪を一掃することができる。聖天経文と対になる経文で、本来であれば聖天経文と一緒に三蔵が受け継ぐものだったが、三蔵の手元には魔天経文しかない。
聖天経文 (せいてんきょうもん)
牛魔王蘇生実験のため、玉面公主のもとにある経文。進化を促す経文で、もとは玄奘三蔵の師匠であった光明三蔵の持ち物だった。三蔵は西域で牛魔王蘇生実験を阻止するついでに、聖天経文も捜している。
天地開元経文 (てんちかいげんきょうもん)
経文を5つに切り分け、世界の行く末と共に、下界のものに委ねたとされる経文。その昔、釈迦如来が一典の経文を広げた。それにより有と無が生まれ、光と闇が生まれ、生と死を分かつ混沌の大地がここに創世された。如来は恒久なる繁栄を願ったとされる。
恒天経文 (こうてんきょうもん)
紗烙三蔵法師が常に肩に付けている経文。外すと普通の巻物状になる。恒天経文は防御の力を持ち、目に見えない障壁を張ることができる。それによって紗烙三蔵法師のいる場所が守られている。仏具を媒体として、広い面積の障壁を張っている。
異変 (いへん)
すべての妖怪において、突然の狂暴化や自我の喪失が見受けられる事象のこと。西域からその事象は始まっており、牛魔王蘇生実験におけるひとつの重要なものだと考えられている。異変のせいで、人間は妖怪に極度に怯えるようになり、妖怪は普通に暮らしていけないようになった。
妖力制御装置 (ようりょくせいぎょそうち)
孫悟空や猪八戒が身につけている金冠やカフスのこと。装着者の妖力を制御することで、人間と同じように行動できるようになり、人間のなかにも違和感なく溶け込める。悟空の妖力制御装置だけは特殊で、玄奘三蔵か、観世音菩薩にしか付け直しができない。
禁忌 (きんき)
科学と妖術の融合、または人間と妖怪の交わりのことを指す。人と妖怪が交わると真紅の目と髪を持つ。科学と妖術の融合は前例がないが、何がおこるか分からないと言われているため、禁忌とされている。
牛魔王蘇生実験 (ぎゅうまおうそせいじっけん)
玉面公主が主に取り組んでいる実験。玉面公主の夫だった牛魔王を蘇生させるための実験で、你健一や黄博士、王老師が参加している。牛魔王の蘇生のためには、玉面公主の娘である李厘が必要であり、実験のため、李厘を紅孩児一行のもとから拉致している。
前作
最遊記 (さいゆうき)
中国の伝記奇譚「西遊記」をベースにする、峰倉かずやの代表作。玄奘三蔵が孫悟空沙悟浄猪八戒という3人の妖怪を連れて牛魔王復活を阻止すべく天竺へ向かう。道中様々な敵と出会い、戦いながらそれぞれの過去を紐解... 関連ページ:最遊記
最遊記RELOAD (さいゆうきりろーど)
前作『最遊記』から約半年後を描いた続編。妖怪が自我を失い凶暴化した原因を排除すべく、玄奘三蔵と孫悟空、沙悟浄、猪八戒の三人の妖怪が、西域天竺を目指し旅をする途中、出会った事件や人々、それらに関連する各... 関連ページ:最遊記RELOAD
関連
最遊記外伝 (さいゆうきがいでん)
峰倉かずやの漫画『最遊記』と同じ世界を舞台にしたスピンオフ。『最遊記』からおよそ500年遡った時代の天界を舞台に、孫悟空と彼を取り巻く人々とのドラマを描く。スクウェア・エニックス「月刊Gファンタジー」... 関連ページ:最遊記外伝
最遊記異聞 (さいゆうきいぶん)
峰倉かずやの『最遊記』のスピンオフで、「最遊記」シリーズの原点ともいえる作品。本作『最遊記異聞』の主人公である峯明は、のちに「最遊記」シリーズに登場する玄奘三蔵の師となる人物・光明三蔵であり、峯明がい... 関連ページ:最遊記異聞