木島日記

木島日記

原作・大塚英志、作画・森美夏による『北神伝綺』の姉妹編。第二次世界大戦中、“組織”の命令で、この世にあってはならないものとそうでないものを仕分け、あってはならないものを始末する「仕分け屋」・木島平八郎と、木島に付きまとわれる折口信夫が奇妙な事件に関わっていくさまを描いたオカルト連作短編。各話のタイトルは折口信夫の作品名から取られている。

正式名称
木島日記
ふりがな
きじまにっき
原作者
大塚 英志
作者
ジャンル
オカルト
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概要・あらすじ

民俗学者・折口信夫は道に迷って古書店八坂堂へと迷い込む。怪しげな古代書が棚を埋める中、まだ書きかけのはずの自身の論文の本が置かれていた。不審に思った折口はその本を読み、木島平八郎の過去を知る。木島は“組織”瀬条機関の命令でこの世にあってはならないものとそうでないものを仕分け、あってはならないものを始末する「仕分け屋」だった。

そんな木島の周辺には、人魚や巨人、小人などオカルトと思われる、様々なこの世ならざるものの話が集まってくる。木島と知り合った折口もまた、それに巻き込まれてゆく。

登場人物・キャラクター

木島 平八郎 (きじま へいはちろう)

常に皮でできたような仮面を被った男。八坂堂という古書店を営みながら、“組織”の命令を受け、「あってはならないもの」と「そうでないもの」を仕分け、あってはならないものを始末する「仕分け屋」として活動する。また、折口信夫の名を借りて本を執筆している。それを八坂堂に陳列したり、折口に届けるなど、折口につきまとっている。 元は瀬条機関に所属する研究者だった。オカルティックなものに対して冷静に判断し仕分けているが、研究員の頃、恋人だった被験者月につながる情報を得たときには感情を表すことが多い。

折口 信夫 (おりぐち しのぶ)

国学院大学で国学の教授を務める初老の男性。柳田國男と並ぶ日本民俗学の創始者。眼鏡をかけている。極度の女嫌いの同性愛者で、高弟である藤井晴洋を愛している。道に迷って古書店八坂堂を訪問し、店主の木島平八郎と知り合う。のちに様々な厄介ごとに巻き込まれ、美蘭の父親代わりとなる。気難しく、ヒステリックな一面がある。 産みの母親が嫌いで、本当の母は妣(ひ)が国におり、自分はそこに生まれたのだという思いを抱いている。

美蘭 (めいふぁん)

アーヴィングによって見出され、満州から連れてこられた美しい少女。片足が悪く、常に杖を持ち歩いている。アーヴィングの話によると、満州皇家の遠い血を引くシャーマンの家系の出身で、他人の心理に感応し易いあまり、自己の存在価値を他人の中にしか見出すことのできない精神障害の患者であるという。そのせいか、自我が薄く、無邪気で、他者の望みを無条件に受け入れ、笑みをたたえていることが多い。 折口信夫が八坂堂を訪ねた際、誤って彼に預けられ、しばらく世話になった。のちに一ツ橋光治と結婚するさい父親代わりを務めてもらうなど、折口との絆が深い。結婚後、日本名を一ツ橋照子とした。

アーヴィング

東方教会に所属するユダヤ人の女性研究者。イディオット・サヴァン症候群の患者を記憶回路や集積回路にし、他人の心理に感応しやすい人間をその制御装置としたコンピュータを作成するなど、オカルトと科学を融合したような研究を行っている。来日したチャーチワードの秘書兼通訳と自称したときはウェルスと名乗った。目的や研究のためなら犠牲は問わない。

根津 (ねづ)

八坂堂に居候をする若い男。木島平八郎の助手として“組織”から送り込まれたが、実際のところは監視役と思われる。冷夏には餓死者が出るような寒村出身。常に日本刀を携えており、殺人に対する禁忌がない。

一ツ橋 光治 (ひとつばし みつはる)

陸軍で中尉を務める青年将校。のちに昇進して大尉となる。学者でもあり、工学博士の資格を持つ。アーヴィングの依頼により、折口信夫が研究していた口伝の物語を語る、イディオット・サヴァン症候群の少年の受け渡しを担当した関係から、折口や美蘭と知り合い、のちに美蘭の夫となる。人当たりがよく、人に取り入るのが上手い。

清水 (しみず)

陸軍で少尉を務める青年将校。一ツ橋光治の友人。2・26事件当日、部隊に参加し損ねたため生き残ってしまった皇道派の残党。現在は安江仙弘のもとで働いている。実直で不器用な性格だが、友達思い。

(つき)

木島平八郎が研究者だったころ出会った少女。川で発見され、木島の実験の被験者として連れてこられた。月という呼称は木島によって与えられたもの。アルビノのため、髪は白く目は赤い。また、身体の様々なところに、切り刻まれて縫われたような跡がある。時々自傷行動を起こし、体をかきむしったり髪を抜いたりするため、拘束具のような手袋をはめられている。 木島によって調べられたところ、骨の数が違う、三半規管が発達しているなど、魚に近い体組織と機能を保有していることが判明した。木島と出会ったころは言葉を話すことができず知的な障害があると思われていたが、のちに知識を吸収する。何か教えられているときは人形のように何の反応も示さないが、知識が完全に蓄積され消化されると、反応を示し、その知識を披露する。 木島とコミュニケーションを繰り返すうち、二人の間に愛情が芽生え、恋人になる。

安江 (やすえ)

陸軍で大佐を務める初老の男性。ハゲ頭にあごひげを蓄え、目は斜視。ユダヤ問題の専門家。フグ計画という、ユダヤ人を満州国に受け入れる移民計画を進めているため、利用できそうなものには強い興味を示し、瀬条機関、東方教会、どちらとも手を組む。海千山千で一筋縄ではいかない人物。

土玉 (どたま)

瀬条機関に所属する男。眼鏡をかけている。捉えどころのない性格。専門は水死体の研究であり、医者や科学者であると自称するが、専門知識があまりない様子がしばしば描写される。組織の使いで、度々木島平八郎のもとを訪れ、行動を共にする。木島と初対面のころはインターンだった。

集団・組織

瀬条機関 (せじょうきかん)

瀬条教授が中心となって動く研究機関。緑竜会を前身とする。野蛮な信仰の化学的根拠を探ったり、信仰を通じ神隠しなどを物理学で検証するなど、通常では研究対象とならないオカルティックな研究を行っている。活動は主に日本国内。軍閥と組んでおり、活動資金はそちらから出されている。東方教会とはライバルのような関係。土玉や木島平八郎が所属する。

東方教会 (とうほうきょうかい)

瀬条機関同様、研究者が集う研究機関。満州にいる“組織”の人間と関東軍、ナチスがスポンサーとなっている。活動は満州や海外がメイン。瀬条機関とはライバルのような関係にある。アーヴィングが所属する。

“組織” (そしき)

東方教会や瀬条機関など、国を超えて学者たちが所属する組織。各国の研究組織を統括する。学者の互助会のようなもので、東方教会も瀬条機関も“組織”の一部であるとされる。

場所

八坂堂 (やさかどう)

木島平八郎が店主を務める古書店。坂の上にある。『成吉思汗ハ源義経也』、『太古日本のピラミッド』など、怪しい古代書ばかりを扱うほか、木島が折口信夫の名で書いた偽書なども並べる。

クレジット

原作

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