概要・あらすじ
刀の鑑定を始め、芸術方面で多岐にわたる活躍を見せた本阿弥光悦の玄孫、本阿弥光健は、女郎屋の勘定が払えずに奴隷船に乗せられていた。曽祖父譲りの「目利き」の才能をもつ光健は、「人の器」を見ることにより、捕まっていた奴隷たちの心を掌握し、奴隷船を乗っ取らせることに成功する。江戸を目指す光健の思惑とは別に、捕まっていた奴隷たちは、それぞれが別の思惑をもって行動し始めるのだった。
登場人物・キャラクター
本阿弥 光健 (ほんあみ こうけん)
金を持たずに女郎屋で遊び、奴隷船に売り飛ばされた男。本阿弥光悦の玄孫にあたる人物で、優れた「目利き」の才能を持つ。「人の器」を鑑定し、その人物にあった「銘」を名付けることにより、他人に行動を起こさせたり、説得したりする術に長ける。船底で手を縛られていたが、同じく捕まっていた奴隷たちを扇動し、船を乗っ取らせることに成功する。
赤ネズミ (あかねずみ)
本阿弥光健と同じく、奴隷船に捕まっていた若い男。難破船を襲って生計を立てていた村の出身。出稼ぎに出ていた父親が村人に殺されているのを見てしまい、そのショックが原因で落ちぶれた、という過去を持つ。光健によって、その過去と「将の器」を見出され、「自分の過去に赤面するネズミ」という意味の「赤ネズミ」という銘を与えられる。 それによって過去と決別し、船の主導権を握るべく、ほかの奴隷たちの指揮を執り始める。
とっつぁん
奴隷船の船室に拘束されている男。左腕と右足は欠損しており、義手と義足を付けている。奴隷船の雇われ船頭で、船の構造は知り尽くしているが、食りの権藤との確執から拘束されていた。隠れキリシタンで、奴隷船の乗組員からは「キリシタ」と呼ばれていた。本阿弥光健からは、自分でも気づかぬうちに「目利き」をされており、「父なる神」の意味を持つ「とっつぁん」という銘を与えられる。 権藤から船を奪還した後は、船の主導権を掌握し、奴隷船を使って新酒番船に参加しようとする。光健の才能を認め、部下として使おうと考えながらも、同時に彼のことを危険視してもいる。
権藤 (ごんどう)
奴隷船の持ち主の男。自分に逆らう人間を殺して食うことから、「食(ばむ)りの権藤」という通り名を持つ。本来は気性の荒い倭寇で、自分の部下からも恐れられている。何かを探しているが、その在処(ありか)はとっつぁんが知っている。奴隷たちが反旗を翻した際に伴児の手にかかって死亡。
伴児 (ばんじ)
船乗りの中でも最も勇敢とされる天渡乗り(鯨獲り)の少年。高い身体能力を持つ。普段はおとなしくしているが、命令があると躊躇なく敵を殺してしまう「刃刺し」と呼ばれる状態になる。そのため、親から疎まれて捨てられた過去を持ち、人の心が知りたいと思っている。
その他キーワード
新酒番船 (しんしゅばんせん)
年に一回開催される、灘でできた新酒を江戸まで船で運ぶ競争のこと。その年一番に入港した船には、莫大な賞金と名誉が与えられる。開催には、諸外国の大型船に対抗するために、高速船の開発が必要という幕府の思惑がある。