東京を脅かす物ノ怪と戦う神使と巫
本作の舞台である東京には、「物ノ怪」と呼ばれる異形の存在が蔓延し、人々に危害を加えている。物ノ怪は、その巨体と怪力を駆使して物理的な破壊を引き起こしたり、人間の姿に変身して周囲を欺いたりと、さまざまな手段で社会に悪影響を及ぼしている。そんな物ノ怪に立ち向かうのは、神社の守護獣の加護を受けて戦う「神使」と、霊力を神使に分け与え、戦いを支援する「巫」である。彼らは人知を超えた力で、物ノ怪から東京の平和を守っている。玖音は「神狼」と呼ばれる守護獣の力を宿しており、神使の中でも群を抜く身体能力を誇る。しかし、その力を解放すると攻撃的になり、周囲の人々に被害を及ぼす危険な一面も持ち合わせている。
神使と巫を育成するエリート校
玖音が通う天慶高校は、物ノ怪の被害を防ぐために東京都に設立されたエリート校である。この学校には、犬や猫、狸、狐など、さまざまな守護獣を祀(まつ)る全国の神社や寺から神使や巫の候補者たちが集まり、物ノ怪に立ち向かう力を磨いている。特に、天慶高校の生徒会は、生徒会長の狐成をはじめ、狸屋大吉や猫間ルナといった各守護獣の力を最大限に引き出すエリートたちがそろっており、生徒だけでなく、多くの東京都民からも尊敬を集めている。ただし、生徒会に入るための条件は厳しく、「能力テスト」と呼ばれる試験を首席で通過する必要がある。また、天慶高校はその特性上、多くの物ノ怪に狙われやすく、そのための結界が張られている。しかし、最近では強力な物ノ怪によって結界が破られる事例が増えており、現在その安全性が懸念されている。
玖音と亡き兄、哮牙の確執
玖音は神使として非常に強力である一方、その能力や性格には不安定な要素を抱えている。この不安定さは、数年前に亡くなった彼の兄、哮牙との確執に起因している。玖音にとって心優しい兄であった哮牙は、神使の力に目覚めて以来、その力を家のために役立てようと努力を重ねていた。しかし、相棒となるべき巫がなかなか現れず、そのことを理不尽に責められた結果、精神的に追い詰められてしまう。そんな中、玖音と親しくなった采を見た哮牙は、彼女こそが自分の巫にふさわしいと考え、玖音から無理やり彼女を奪おうとした。哮牙の行動は次第にエスカレートし、ついには物ノ怪を利用してまで采を独占しようとする。昔の優しかった兄はもはやどこにもいないと悟った玖音は、自らの身体に眠る神使の力を解放し、全力で哮牙に立ち向かう決意を固める。
登場人物・キャラクター
大神 玖音 (おおがみ くおん)
天慶高校に通う1年生の男子。神狼の加護を持つ神使で、年齢は16歳。自らの巫である采が過激な行動をとることを懸念しつつも、何よりも彼女を大切に思っている。ふだんは優しく温厚な性格だが、ひとたび神狼の力を宿すと、危険な性格に変貌する。采を傷つけようとする者には殺意を抱き、かつて哮牙が見せたような采への独占欲を露わにすることもある。神使としての実力は非常に高く、走力、筋力、瞬発力、平衡感覚など、あらゆる身体的能力が群を抜いている。天慶高校の実力テストでつねにトップの成績を収め、巨大な物ノ怪を容易に撃破するほどの戦闘能力を誇る。しかし、持久力に乏しく、優れた巫である采の援護があっても、霊力がすぐに尽きてしまう。
宇津目 采 (うづめ さい)
天慶高校に通う1年生の女子。玖音の巫を務めている。年齢は16歳。巫としては珍しく前線で戦うことを好み、単身で物ノ怪を倒すほどの戦闘能力を持つ。幼い頃に家族を物ノ怪に殺害された経験から、強気な性格ながらも他者に対して心を閉ざしている。一方で、家族を失った際に優しくしてくれた玖音に特別な感情を抱いており、現在も彼を絶対的に信頼している。ただし、それはあくまで神狼の加護を受けていない状態の玖音に対してのみであり、彼が神狼の力を解放して暴走することをつねに危惧している。そのため、玖音に守られることを好まず、むしろ彼を守るためにさらなる強さを求めている。また、玖音を思うあまり過激な行動に出ることも少なくなく、そのことが玖音自身や生徒会長の狐成の悩みの種となっている。
書誌情報
東京§神狼 5巻 小学館〈フラワーコミックス〉
第1巻
(2024-07-25発行、978-4098726844)
第2巻
(2024-07-25発行、978-4098726851)
第3巻
(2024-11-26発行、978-4098727797)
第4巻
(2025-03-26発行、978-4098730032)
第5巻
(2025-07-25発行、978-4098731367)







