死化粧師

死化粧師

間宮心十郎は死者に化粧を施す死化粧師(通称エンバーマー)。不慮の事故などで亡くなった人と遺族が最後の時間を安らかに過ごせるように力を注ぐ姿を描く。作者の三原ミツカズが親友の葬儀を出した際、遺体の状況が良くなかったことが、この作品を描くきっかけになった。

正式名称
死化粧師
ふりがな
しげしょうし
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
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概要・あらすじ

間宮心十郎は、エンバーミングを生業とするエンバーマー。不慮の事故などで亡くなった人の身体の欠損部を生前の姿にし、防腐、殺菌処置を施す遺体の衛生保全をしている。米国でエンバーミングを学び、帰国後に知り合った神父から教会の外装は変えないことを条件に仕事場を教会内に設ける許可をもらっている。

神父の孫のアズキに惹かれているが、エンバーミング後に自分の体温が冷たくなる錯覚に襲われ、なりふりかまわず女性を抱く性癖があるため、アズキに手が出せないでいる。周囲の無理解や偏見を乗り越え、遺族が、さまざまな事情で亡くなった人との最後の時を安らかに過ごせるよう奮闘中。

登場人物・キャラクター

間宮 心十郎 (まみや しんじゅうろう)

日本人として数少ないエンバーマー。アメリカ人の父親と日本人の母親をもつハーフ。細身で長身のイケメンで瞳が緑色。髪は黒く染めている。アズキ曰く、ふだんはB型とインド人を足して2で割ったくらいアバウトだが、仕事に関しては真面目。アズキのことが気になってしかたがないが手を出せないでいる。 仕事が終わった後は人肌が恋しくなり、行きずりの女性とベッドインしてしまうクセに悩んでいる。本来は片付け魔だが、アズキと長い時間を一緒に過ごしたいがために、わざと部屋を汚くしている。エンバーマーだった父親を尊敬しており、父親以上のエンバーマーになるのが夢。故人の尊厳を守ることと遺族の悲しみを和らげることが信条。

夏井 アズキ (なつい あずき)

祖父が持っていた教会に住んでいる間宮心十郎が部屋を片付けないので、時折掃除にやってくる。女性を代わる代わる教会に連れ込んでいる心十郎を軽蔑している一方で、仕事にかける情熱は尊敬しており、惹かれている。

夏井 月満 (なつい つきみち)

夏井アズキの兄。父親が亡くなってから男手一つでアズキを育てて来た。製菓会社第5開発室に勤めている。見た目がチャラチャラしている間宮心十郎のことが気に入らないと同時に、アズキがなぜこの男に惹かれているのか理解できないでいる。心十郎の仕事に理解がなく「死体いじりでろくに働いていない」「害虫」と罵倒する。

夏井 月峰 (なつい つきみね)

アズキの祖父。教会の神父。どしゃぶりの雨の中、教会の前で雨宿りをしていた間宮心十郎に声をかける。役所をたらい回しにされ、絶望していた心十郎のエンバーミングの仕事に理解を示す。脳梗塞で倒れ、病院に付き添った心十郎に教会をエンバーミングの仕事に使ってもいいと告げる。 教会を守っているのは、アズキの結婚式に亡くなった父親の代わりに自分がエスコートする約束をしていたため。

ダドリー

間宮心十郎の父。アメリカ人。大使館に勤務しており、日本で亡くなった外国人の遺体をエンバーミングして本国に返す仕事をしていた。ほとんど家に帰らず、病床の妻を見舞うこともなかったが、ノゾミの死後は美しいままの姿にエンバーミングした。その後、軍属のエンバーマーとして中東に赴任するが、心十郎が医大生のとき、地雷により戦死。 十分なエンバーミングを受けられないまま帰国した父の遺体を見たとき、心十郎はエンバーマーになることを決意する。いつも心に「愛」「尊敬」「勇気」「理知」「誠実」「優しさ」「明朗」「厳正」「弱さを知り」「希望(のぞみ)を持つこと」の十の思いがあるようにと、息子に心十郎と名付けた。

ノゾミ

間宮心十郎の母。米軍キャンプのボーリング場でアルバイトをしているときにダドリーと知り合い、結婚。骨髄が繊維化する血液系の難病で長期入院しており、心十郎が受験したT大医学部の合格発表日に肺炎で亡くなる。自分の死後はダドリーにエンバーミングしてもらうことを生前に約束していた。

小林 恋路 (こばやし れんじ)

葬儀社の葬祭ディレクター。間宮心十郎にエンバーミングの仕事を斡旋している。小雪のことが気になっているが生真面目な性格なので、いつも袖にされている。1人の人間に対し社葬用と家族葬用、2度のエンバーミングを依頼されたとき、施術に立ち会う。

小雪 宵子 (こゆき しょうこ)

かつて間宮心十郎がエンバーミングの営業をしにいった病院の医師。思慕以上の感情を抱いていた上司の志坂がエンバーミングに理解を持ったことをきっかけに、興味を持ちはじめる。志坂が膵臓がんで亡くなり、サインした婚姻届を預けていたものの、届けられていなかったため、闘病中のやつれた姿のまま葬儀をしたことを悔やんでいる。 感染症で亡くなった患者の家族が、遺体に触る事ができるように心十郎にエンバーミングの依頼をする。心十郎の性癖を理解している。

スーザン・ギャレット (すーざんぎゃれっと)

ピッツバーグ葬儀大学の校長。ランチはいつも大量のドーナツ。コーヒーにも大量に砂糖を入れる大の甘党。間宮心十郎のことを何かと気に掛けてくれる気のいい女性。差し入れは大量のドーナツ。大学卒業式で心十郎に、ドーナツランチに1年間つきあったのはあなただけと言った。

李 長鎖 (りー ちゃんそー)

中国人。ピッツバーグ葬儀大学秋期入学生で間宮心十郎のルームメイト。アパートに押し掛けてきて、ルームシェアを強要した。以前はピッツバーグ大学でバイオテクノロジーを専攻していたが、エンバーミングに興味を持ち葬儀大学に編入した。実習中に弟が落盤事故で亡くなり、粗悪なエンバーミングのため遺体が痛んでいたのをきっかけに、留年。 一流のエンバーマーになると決意し、あらためて秋期入学に入りなおした。

ピーター・ラビット (ぴーたーらびっと)

アメリカ人。間宮心十郎がインターン時代に勤務したサンフランシスコのアジア系葬儀社の上司。遺体に触ると手が冷たくなり、仕事に迷いを感じている心十郎に肩の力をもっと抜いて遺体が語る声を聞くようにアドバイスする。

場所

ピッツバーグ葬儀大学 (ぴっつばーぐそうぎだいがく)

間宮心十郎がエンバーミングの技術を学んだ大学。彼の父・ダドリーもかつてこの大学で学んだ。卒業生のエンバーマー・ライセンスの合格率は99.9%、講義はすべて英語。卒業試験は文系100問、理系100問の問題を1日で解く。すべて記述式で国家試験より難しいと言われている。米国ピッツバーグ州にある。 心十郎は卒業試験をトップの成績で卒業した。

その他キーワード

エンバーミング

遺体のやつれや損傷を生前の姿に修復し、防腐、殺菌処置を施す技術のこと。遺体衛生保全術ともいう。遺体を洗浄して体表面の消毒を行い、肩などを小切開して動脈から防腐液を注入し、血液と交換する。再び遺体を洗浄したあと必要であれば修復し、服を着せ、化粧をして終了。本場アメリカと違い、日本では薄化粧が好まれる。一度処置された遺体は、安らかな姿を保ち続ける。 日本ではエンバーミング後、3~10日で火葬にする場合が多い。遺体の約65パーセントには肝炎、肺炎などが認められるため、感染防止として施されるケースがある。

エンバーマー

エンバーミングを生業とする人のこと。土葬中心の欧米では弁護士に並ぶ職業と言われるが、火葬の国、特に遺体に手を加えることを嫌う日本では宗教観の違いもあり、間宮心十郎曰く、誤解と偏見が多い。

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