殷周伝説 太公望伝記

殷周伝説 太公望伝記

紀元前の中国を舞台に、殷末期から周の建国までを描いた歴史物語。中国の伝奇小説『封神演義』などを題材にした作品。横山光輝の遺作となる。

正式名称
殷周伝説 太公望伝記
ふりがな
いんしゅうでんせつ たいこうぼうでんき
作者
ジャンル
その他歴史・時代
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概要・あらすじ

舞台は紀元前の中国大陸。夏が滅亡しの時代が始まりを告げた。600年後、の第30代王・帝乙に、後の紂王が生まれる。帝乙が死に、跡を継いだ紂王は悪霊に乗り移られた妲己と出会い、を崩壊の道へと歩ませるのだった。

登場人物・キャラクター

紂王 (ちゅうおう)

帝乙の第三皇子。父親の後を継いで殷の第31代王となる。文武両道に優れているが、血の気が多く平和な日々を退屈だと思う。ある日、殷を悪霊から守っている神、如媧御前の像を見てその美しさに魅せられ、自分の側室にしたいという詩を書いて如媧御前の怒りをかう。その後、悪霊にとりつかれた妲己と出会い暴君へと変貌していく。 歴史上の実在の人物とされる帝辛(紂王)がモデル。

帝乙 (ていいつ)

紂王の父で、殷の第30代王。期待を受ける紂王を後継者に決めるが、才能を持て余した紂王は太平の世に退屈を感じるのではないかと案じていた。歴史上の実在の人物とされる帝乙がモデル。

妲己 (だっき)

蘇護の娘で、紂王の元に后妃として差し出された美女。本来は心優しい性格だったが、紂王のもとに向かう途中、妖怪が出るという庁堂に泊ったところで悪霊に憑依されて、恐ろしい性格に変わってしまう。その後、紂王を意のままに操るようになり、殷滅亡の元凶となる。

姜皇后 (きょうこうごう)

紂王の妻。暴君の一途を辿る紂王をいさめようとするが、皇后の座を狙う妲己の罠にはまり、無実ながら謀反の罪をきせられる。拷問にかけられることになり、嘘の自白をすすめられるが、それを拒否。拷問の末、命を落とす。

蘇護 (そご)

妲己の父親で冀州候。清廉で剛直な性格で、紂王の側に仕える費仲らに賄賂を出さない。そのことに腹を立てた費仲の策略により、紂王から娘の妲己を后妃として差し出すようにいわれるがそれを拒否。紂王に愛想を尽かし謀反を起こす。

雲 中子 (うん ちゅうし)

終南山の道士。ある日、宮殿に宿った邪悪な霊を取り除くために紂王の元へやって来て、魔除けの宝剣を置いていく。

黄 飛虎 (こう ひこ)

武将。7代200年に渡り殷朝に仕えてきた家柄に生まれる。武術に優れ、人望がある。紂王に仕えながらも、その暴君ぶりに疑問を抱いている。処刑されそうになった殷郊、殷洪兄弟を陰で助け、姫昌の逃亡を助け、周建国を勧めた。しかし、妻の賈氏と妹の黄貴妃を紂王に殺されて殷に反旗をひるがえし、西岐へ帰順する。

商容 (しょうよう)

宰相。紂王の父の帝乙に仕え、聞仲太師とともに紂王の教育係を任される。紂王をいさめようとした上太夫の梅伯が処刑のために捕らわれたことに呆然とし、紂王が暴君と化したことを嘆く。このまま朝廷にとどまり殷が崩壊するところを見たくないと、歳をとって仕事がきつくなったという理由をつけて宰相を辞任し、田舎に引っ込んだ。

殷郊 (いんこう)

皇太子。父が紂王で母が姜皇后。嘘の証言をして母の姜皇后に無実の罪をおわせた刺客、姜環を咄嗟に殺してしまう。母を陥れた妲己を殺す決意をしたところ、父の紂王は、殷郊が自分を殺しに来ると勘違いし、謀反人として追われる。逃げ切れず捕まり、処刑されそうになるが、処刑の日、副宰相の比干により助けられた。

殷 洪 (いん こう)

父が紂王で母が姜皇后。皇太子の殷郊の弟。兄とともに母を陥れた妲己を殺す決意をしたところ、父の紂王は、彼らが自分を殺しに来ると勘違いし、謀反人として追われることになる。逃げ切れず捕まり、処刑されそうになったが、処刑の日、副宰相の比干により助けられた。

比 干 (ひ かん)

副宰相。紂王の叔父にあたり、帝乙より紂王の教育係を命じられた。謀反人として処刑されようとしていた皇太子の殷郊と弟の殷洪を救う。ある日、町で殺人の容疑をかけられた呂尚と出会い、紂王の元へ連れて帰る。数々の残酷な刑を行ってきた紂王に我慢ができなくなり諌めにいったところ、逆に不敬罪で処刑を言い渡され自ら命を絶つ。 歴史上の実在の人物とされる比干がモデル。

崇 候虎 (すうこうこ)

北伯候。出陣の道中で村から略奪を繰り返すため評判が悪い。紂王から謀反を起こした蘇護の討伐を命じられ、五万の殷兵を連れて蘇護がいる冀州へ向かうが惨敗する。

崇 黒虎 (すうこくこ)

曹州候で崇候虎の実弟。評判の悪い崇候虎とは性格が正反対で、蘇護と義兄弟の契りを結んでいる。崇候虎が紂王から謀反を起こした蘇護の討伐を命じられたと聞き、無益な戦をやめさせようと調停をしに戦地へやってくる。その後、兄・崇候虎の非道を見かね、崇候虎を捕えて西岐の丞相・呂尚に差し出す。

黄貴妃 (こうきひ)

黄飛虎の妹で非常に聡明な人物。姜皇后が謀反の罪に問われた時、紂王から取り調べ役を命じられた。その際、姜皇后が無実であり、誰かが仕組んだ罠だと察するがどうすることもできずにいた。姜皇后の二人の息子の殷郊、殷洪も謀反の罪を着せられ追われる身となったが、機転をきかせて二人を逃がす。

呂 尚 (りょ しょう)

兵法学、薬学、易を学んだ知識人。72歳だが40代の体力を持つ。40年間崑崙山で修行をした後、師匠の仙人・太乙真人から世直しをするよう命じられ下山。紂王の前で女性の姿に化けた妖怪の正体を暴いたのをきっかけに、宮廷に迎えられる。しかし紂王の暴君ぶりにあきれ愚か者とののしり、処刑を命じられたところを逃げ、妻の馬氏と離縁した後、西岐山へ向かった。 その後、そこで出会った文王姫昌に西岐城に迎えられ丞相となる。歴史上の実在の人物とされる呂尚がモデル。

馬氏 (ばし)

呂尚の妻。何の商売をやってもうまくいかない呂尚にいら立ち、文句ばかりいう。呂尚が宮廷に迎え入れられた時はとても喜んだが、紂王に逆らい逃げてきたことを知ると、自分には関係ないと呂尚に離縁を申し出る。

宋 異人 (そう いじん)

呂尚の古くからの親友。40年ぶりに崑崙山から下山した呂尚の面倒をみる。独り者の呂尚を案じ、親戚の女性、馬氏を紹介。自分が仲人となって二人を結婚させた。商売をやってもうまくいかない呂尚に、占師になることをすすめる。

聞仲太師 (もんちゅうたいし)

紂王の父の帝乙に仕え、紂王の教育係を任される。軍師でありながら、国事をつかさどる陰陽も管理している。紂王にとって親代わりであり、怖い相手。12年間、北海諸侯の反乱をおさめるために出陣していたが、帰国して殷の変わりように驚き紂王をいさめた。

費 仲 (ひ ちゅう)

諌太夫。本来の諌太夫の仕事である、間違いを諌める役目を果たさず紂王の機嫌ばかりとるので、忠義の臣からは嫌われている。また、立場を利用して諸侯から賄賂を取っている。妲己が紂王に寵愛されるようになり、妲己に取り入りはじめる。

武 吉 (ぶ きち)

きこり。素直な性格と大きな身体を持つ。柴を売りに町へ出た時、事故で文王の兵士を殺してしまい拘束されるが、年老いた母の面倒をみることが許されて一時拘束をとかれた。この際、渓谷で出会った老人の呂尚に身の上を相談し、その結果、彼に弟子入りすることとなった。その後、呂尚とともに西岐城に行き末将のひとりとなる。

杜 元銑 (と げんせん)

天文現象を観察し占う天台官。三代にわたり殷に仕えてきた、真面目な男性。子どもの頃から霊感があり、人の見えない物が見える。ある日、宮殿から異様な妖気を感じることを伝えに紂王に会いに行き、そこで妲己の正体を見抜く。しかし妲己の意見を聞いた紂王から国を混乱させる者と決めつけられ、処刑された。

梅 伯 (ばい はく)

筆頭大臣である上太夫。紂王が杜元銑を処刑したことに怒り紂王をいさめに行くが、紂王に「愚か者」と言ったために処刑される。凄惨な処刑方法として歴史に残る炮烙の刑の最初の犠牲者となった。

姫 昌 (き しょう)

西伯候。人徳があり、占いが得意で、よく的中することで有名。紂王に呼ばれて出向くが、そのまま幽閉されてしまう。7年後、恩赦により解放され文王という王位を与えられるが、紂王の意に背き朝廷から脱出。命からがら追手から逃れ、無事に帰国する。その後、呂尚と運命の出会いを果たし、天下を正すために立ち上がる。 歴史上の実在の人物とされる姫昌(文王)がモデル。

姫 発 (き はつ)

西伯候・姫昌の次男。病に倒れた姫昌に呼ばれ、「自分が死んだ後は丞相・呂尚を父として敬い仕えよ」と言い渡された。そして父亡き跡を継いで即位し武王を名乗り、紂王討伐を進める。歴史上の実在の人物とされる姫発(武王)がモデル。

伯邑考 (はくゆうこう)

西伯候・姫昌の長男。父である姫昌の幽閉を解いてもらうため、貢物の国宝を持参して紂王の元を訪ねる。しかし妲己の罠にはまって処刑されることになり、その肉体は切り刻まれ肉餅に加工され、幽閉されている姫昌の元に届けられた。

雷震子 (らいしんし)

西伯候である姫昌の100番目の子ども。姫昌が旅の途中で嵐に遭い、避難した森の中で捨てられていた赤ん坊を拾い100番目の子とした。そこに終南山で修行している道士の雲中子が現れ、この赤ん坊に雷震子と名付けて預かる。それから7年後、さまざまな術を身に付けた雷震子は、紂王が差し向けた軍に追われている姫昌を助ける。

哪吒 (なた)

李靖将軍の三男として生まれる。子どもの頃から常人とは違う身体能力を見せるが、7歳の時に地元武将の子の兄弟を殺めてしまう。その親が怒り哪吒と殺せと言ったため、李靖将軍は哪吒を病死したと見せかけこっそり崑崙山の仙人の太乙真人に預けた。以降、修行で様々な技を身につけ、太乙真人の命令により、紂王に謀反を起こした黄飛虎を救援する。

太乙真人 (たいいつしんじん)

崑崙山で修行する著名な道子で、呂尚の師匠。また、李靖将軍の三男に哪吒と名付け、後に哪吒の師匠となった。

女媧御前 (にょかごぜん)

殷の民衆が崇めている天女の像。紂王が一目見てその美しさに魅せられてしまい、持ちかえって側室にしたいという詩を壁に書く。それに対し、神の自分を快楽の対象にしたと怒った女媧御前は、邪悪の霊から殷を守る気はなくなったと天に帰る。

場所

(いん)

紀元前17世紀頃から紀元前11世紀まで続いた中国の王朝。実在が確認されている中国最古の王朝で周に滅ぼされた。紂王が第31代殷王となる。

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