概要・あらすじ
中国北宋末期の徽宗皇帝の時代、悪徳役人や不正だらけの世の中で、武力と義侠心に富んだ者たちが、私欲を満たそうとする悪徳官吏や富裕者の理不尽な行いのせいで、アウトローの世界に向かわねばならなくなる。このような好漢(英雄)たちが、水に囲まれた天然の要塞「梁山泊」に一人また一人と集まり、やがては頭目百八人、兵力三万人の一大勢力となって行く。
終盤には悪徳政治のみならず、国家の危機にも立ち向かう。
登場人物・キャラクター
晁蓋 (ちょうがい)
序盤には登場しない。東渓村の庄屋で、剛毅な侠客として名を知られ人望もある人間。政府に送られる巨額の賄賂強奪の話に乗り、呉学人・阮三兄弟・一清道人らと実行する。これが元で梁山泊に入る。それまで梁山泊のリーダーだった王倫が度量の小ささを嫌われて殺されたあと、皆に請われて総首領となった。 以後、終盤まで、義侠心と人望で梁山泊を大きくする。
宋江 (そうこう)
序盤には登場しない。済州の役人で、面倒見がよく誰からも愛される男だった。晁蓋の犯罪を密告されるが、見て見ぬふりをして晁蓋らを逃がす。その後梁山泊よりお礼の手紙をもらうのだが、これを密告されそうになり、密告者を殺してしまう。それが元で、弓の名人花栄らと梁山泊に入る。 以後、外に出て戦うような際は、梁山泊を守る晁蓋に変わって総大将になるなどの働きを見せ、終盤以降は総首領となる。
高きゅう (こうきゅう)
宋国軍(禁軍)の司令官。元はチンピラであったが、遊びが上手だったのを徽宗皇帝に気に入られ、いつしか宋国の政治を行う四奸臣の一人となる。賄賂を集め、兵隊を私用に用い、自分勝手な人事を行う、『水滸伝』最大の悪人である。横山『水滸伝』の本編は、彼が軍司令官となり、自分の過去を知る禁軍師範の王進を捕まえようとするところから始まる。 作品中で、「細面の狐のような顔」と表現される。
史進 (ししん)
横山『水滸伝』に最初に出てくる好漢。高きゅうの追手から逃げた禁軍師範の王進が、宿を借りた庄屋の息子で、棒術を自慢していたが王進と戦って負け、以後、半年にわたって王進の指導を受ける。その後、山賊と戦って家を失い旅に出て、憲兵だった魯達(後の魯智深)と知り合う。 話はそこで他方に流れ、史進が次に登場するのは、後半になって呼延灼が青州で山賊と闘うときである。この時点で史進は、魯智深と一緒に山賊をやっていた。政府軍と闘う際、梁山泊軍が加勢にきてくれ、その縁で梁山泊に入る。体中に9つの竜の刺青があることから、九紋龍史進と呼ばれる。
魯智深 (ろちしん)
横山『水滸伝』ふたりめの好漢。史進が旅先で会った憲兵(この当時の名前は魯達)。酒場で泣いていた親子の頼みを聞いて悪徳肉屋を懲らしめに行くが、やりすぎて殺してしまう。殺してしまっては罪に問われるので逃亡し、寺に入って剃髪して、魯智深の名前をもらい僧となった。林冲と知り合い、彼が流刑で危機に陥った時に現れて助け、その後同行する。 物語の後半で青州の山賊として登場し、それから梁山泊入りをした。八十一斤の錫杖で闘う(1斤は約600グラム)。全身に刺青をしていたので、花和尚と呼ばれる(花は刺青を表す言葉)。
林 冲 (りん ちゅう)
魯智深が菜園の番人をやっていた時に知り合った。禁軍の教師だったが、妻が高きゅうの息子に言い寄られ、断ると林冲は罠にはめられ、罪人として流刑になる。魯智深に助けてもらいながら進むうち、流罪先の滄州の有力者である柴進の家に世話になる。牢城に着き、柴進の気配りのお陰で無事に暮らしていたが、執念深い高きゅうの指令で牢役人などから命を狙われたので、これを殺して逃亡する。 ふたたび柴進に救われ、梁山泊入りを勧められ、メンバーとなる。
呉 学人 (ご がくじん)
原典では呉用(智多星呉用)であるが、横山『水滸伝』では呉学人以外の表記はない。晁蓋の同郷で、晁蓋が十万貫の賄賂を強奪して悪徳官吏に一撃を与えた際、策略を担当した。その後、晁蓋や阮三兄弟らと梁山泊入りし、以後晁蓋・宋江の軍師となって戦略を練ったり、優秀な人材の誘致・説得を担当する。 作中で「智は諸葛孔明にせまると噂される」という紹介がなされる。
一清 道人 (いっせい どうじん)
原典では公孫勝(入雲竜公孫勝)であるが、横山『水滸伝』で一清道人以外の表記はない。姿も原典では道教の道士の格好だが、この作品中ではずっと剃髪した僧侶のように描かれるなど、原典との違いが見られる。晁蓋の十万貫強奪に参加し、そのまま梁山泊に入った。仙人である羅真人の弟子で、様々な幻術を用いる。
阮三兄弟 (げんさんきょうだい)
阮小二(げんしょうじ)・阮小五(しょうご)・阮小七(しょうしち)。兄弟で漁師をしており、水中での活動が得意。晁蓋の賄賂強奪に参加し、三人とも梁山泊に入る。高きゅうが私的な恨みで官軍に梁山泊を襲わせた時も、阮三兄弟は水軍の指揮をとったり、官軍を水に引きずり込んだりと、大活躍を見せた。
柴進 (さいしん)
由緒ある家柄の人間で、広大な屋敷に住む人格者。人望も非常に厚かった。流刑の途中の林冲を助けるなど、梁山泊との縁も深い。が、高きゅうのいとこで高唐州知事の高廉とその義弟に、理不尽な理由で父を殺される。柴進の食客となっていた鉄牛が怒って暴走し、高廉の義弟を殺してしまったため、柴進は監禁されて拷問を受け事となった。 梁山泊は彼を救うべく兵を挙げ、一度は高廉の幻術に苦しむも、これを撃破し高廉を殺し、柴進を救う。以後、柴進は梁山泊に入った。
花栄 (かえい)
弓の名手で、その命中精度は非常に高い。清風塞の司令官で、文官で賄賂で地位を得た劉高と仲が悪かった。宋江とは昔からの友人で、宋江が殺人を犯したとき彼を迎え入れる。しかし劉高の策略でふたりとも捕まってしまい、首都での死刑がきまる。ところが山賊たちが二人を助け、花栄は劉高を射殺す。 この後花栄と宋江は梁山泊に入った。以後、花栄はその弓の腕で何度も梁山泊を救うことになる。
戴宗 (たいそう)
一日に百里を走る術を使う。宋江が逮捕され入れられた江州の牢の役人。李逵は子分。呉学人の友人で、宋江の面倒を見る。宋江が酒場で起こした事件の処理でその術を使って大活躍し、結局、江州の牢にいられなくなり梁山泊に入った。
李逵 (りき)
最初に戴宗が本名を紹介したあとは、ずっと鉄牛と呼ばれ続ける。色の黒い大男で怪力、物事を深く考えるのが苦手で、二丁の斧を持って何かというと大暴れする。戴宗と一緒に梁山泊入りする。泳ぎが苦手で、水練に長けた張順に水中で戦って負けたことがある。いろいろな場所にお供について行き、感情を爆発させて暴れ、トラブルを呼びこむ。 やたらと酒が好きで、従者とする条件に禁酒を命じられても、すぐに飲んでしまう。
扈三娘 (こさんじょう)
作中では一丈青と呼ばれることが多い。梁山泊を滅ぼし、名を世に広めげようとした祝家荘の美女剣士。梁山泊の捕虜となるが、祝家荘の大将祝朝奉に見捨てられる。やがて梁山泊の策で祝家荘の城は内部から焼かれて滅び、扈三娘は梁山泊に入る。
呼 延灼 (こ えんしゃく)
高きゅうが命じた梁山泊討伐軍の総司令官。戦闘中は不気味な仮面をつけ、ニ本の鞭(べん)を持って闘う。また、連環馬と呼ばれる、鎧で覆った三十騎を横一列に鎖でつないだ強力な騎馬隊を使ったり、轟天雷が作った大砲で砲撃する。
盧俊義 (ろしゅんぎ)
北京一の金持ちで、武力も知力も優れている。晁蓋のあとに梁山泊の頭領になった宋江は、もっと能力の高い人間に頭領の座を譲ろうと思っていたところ、旅の僧に盧俊義の話を聞き、どうしても彼に梁山泊を治めてほしいと考えるようになった。そこで呉学人が策を練り、自ら演じて盧俊義を罠にかけて梁山泊に迎える。 その後盧俊義は、連れてきた従者の燕青とともに大活躍を繰り広げ、やがては国難と闘う梁山泊の主力となっていく。
洪大将 (こうたいしょう)
プロローグに登場する政府の高官。本編が始まる数十年前、仁宗皇帝は疫病を終息させるための祈祷を龍虎山の虚靖仙人に頼むよう、洪大将を使者として向かわせた。童子の姿の仙人に会い、どうにか使命を果たした洪大将は、山で「百八つの魔物が封印してある」という伏魔殿を見つける。そこには「洪に遭いて開く」と書いてあったので、洪大将は制止を振り切って封印をはずしてしまう。 これにより、中から激しい勢いで百八つの魔物が飛び出し、天に消え、梁山泊の百八の好漢へと転生することとなった。
場所
梁山泊 (りょうざんぱく)
中国東部にある(現在の山東省済寧市)、沼地と水路に守られた天然の要塞である。近くに梁山という山があったため梁山泊という名になった。ピーク時は百八人の頭領と三万の兵力を抱えていた。
ベース
水滸伝