海商王

海商王

没落してしまった海商一族の火梨家を再興するべく、火梨家唯一の生き残りである火梨光児が奮闘する姿を描いた劇画アクション。物語は2部構成で、第一部は横浜を舞台にした赤船争奪戦、第二部は神戸を舞台とした洋上レストラン経営編となっている。

正式名称
海商王
ふりがな
かいしょうおう
原作者
雁屋 哲
作画
ジャンル
裏社会・アングラ
関連商品
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あらすじ

第一部・赤船争奪戦

火梨家唯一の生き残りである火梨光児は、世界を股にかける海商王になることで火梨家を再興することを誓う。最初の仕事で、光児は横浜の港で不正な取り引きを強要する山岡組を追い出すことに成功するが、光児とは別に山岡組を壊滅させようとしていた滝重吉が、自分の計画を潰されたことに激怒し、光児に対決を申し込む。対決の最中に滝から赤船の存在を知らされた光児は、赤船と火梨家滅亡がかかわっていることに気づく。だがその後、光児が赤船の引き上げを準備しているところに、火梨家を滅亡へと陥れた立原広造が立ちはだかり、赤船の引き上げの権利を強奪されてしまう。光児は広造から赤船を取り返すため、まずは滝と和解して結託するが、そこに広造の息子の立原輝一が現れる。輝一はヨーロッパの秘密結社「ハンザ」を率いて、父親の権力を剝奪したうえに自分の野望を果たそうと赤船を狙っていた。それに反感を抱いた光児は広造とも一時休戦し、輝一に立ち向かうために赤船の引き上げに成功するが、輝一の乗船を許してしまう。光児は船内で輝一から、赤船にはプラチナが積まれていないことを聞かされ落胆するが、その際に、輝一が赤船を狙った本当の理由が1冊の本であることを知る。その本には火梨家が滅亡したことの真実が記されており、それは火梨洋介がハンザに騙(だま)された証拠でもあった。すべての真実を知った光児はあえて輝一を見逃し、火梨家の復讐のためにさらに強い力をつけて、輝一が率いるハンザと再び戦おうと決意を新たにする。

第二部・洋上レストラン経営編

火梨光児は、火梨家再興のための資金を調達すべく神戸に向かった。そして光児は、そこで出会った沖仲仕のと、金貸しの銭屋の六助と結託。神戸の海に停まる客船で、ショーを行って金を稼いで資金を貯め、洋上レストランを開店する。しかし、それを快く思わない神戸中華連盟の理事長の周宗元は、光児たちのレストランを閉店させようと画策していた。

登場人物・キャラクター

火梨 光児 (ひなし こうじ)

火梨家の唯一の生き残りである若い男性。長髪で、青いジャケットを身につけている。没落してしまった火梨家を復興し、世界中の港を支配する海商になって、先代が建てた邸宅「七つの海の城」を取り戻すことを目標としている。悪人に対しては冷酷無比な性格となって乱暴に接するが、自分に害がないと判断した相手には明るく陽気に接する。小学生になる前までは裕福な家庭で育つが、火梨洋介が失墜したことで屋敷を追い出され、両親が亡くなったあとは小屋で大辻野枝と生活を共にしていた。小学5年生の頃から、ばあやに全国の港へ修行に出され、闘争心を磨いていた。頭脳明晰で、対峙した相手を策略をめぐらせてやり込めることを得意としている。身体能力も高く、プロボクサーや自分よりも体格のいい相手にも勝利している。戦闘の際は、その腕力だけでなく、飼い犬などの動物に命令して襲わせることもある。基本的に港の用心棒を務めており、トラブルの依頼があれば現地へ赴き自らで解決する。リーダーシップにも長(た)け、ばあやが集めた火梨家にかかわりのある大勢の人たちが顔を合わせた際も、自然な振る舞いで軍団を率いた。滝重吉とはライバル関係にあるが、赤船の引き上げの権利を立原広造に奪われた際、広造に対抗するために和解した。広造に対してはつねに反抗的な態度を取っていたが、結果を急ぐあまり卑怯な手段に出たり、状況判断を誤ってしまった際に広造から父親に成り代わって叱咤(しった)される。そこで自分の器の小ささを知って負けを認め、その後は広造に対しての態度は軟化させている。輝一との対決に勝利し、火梨家没落の真相を知ったあとは再興のために神戸に単身乗り込み、辰と銭屋の六助を誘って洋上レストラン「くらわんか!」を開店した。

大辻 野枝 (おおつじ のえ)

火梨家に代々使えるお手伝いの老齢な女性。白髪を結い和服を着用している。気丈な性格で、火梨光児が火梨家を復興するための教育をほどこした。光児からは「ばあや」、周囲からは「お野枝」と呼ばれている。ふだんは居酒屋の屋台を引いて収入を得ている。火梨家復興のため、光児に厳しく接しているが、ふだんは過保護な一面もあり、彼の顔に傷が一つ付いただけで大騒ぎしている。光児が修行の旅に出ているあいだは、火梨家の関連会社で働いていた人たちを集めて光児の味方となるように説得していた。水軍島の頭の一人娘として生まれ育ち、頭領になるほどの才能と度量を持っていたが、女性であることを理由に軍兵衛に頭領の座を譲った。左腕に、水軍島に入るための鑑札の入れ墨が入っている。

滝 重吉 (たき じゅうきち)

横浜市内を取り仕切る番長を務める若い男性。坊主頭の大柄な体型で、学生服を着ている。本牧番長連合のリーダーで、本牧の自治を取り仕切っている。横浜魚市場を牛耳ろうとしていた木村に加担したとして、火梨光児に対決を申し込んだ。戦闘力は光児に引けを取らず、闘いはつねに互角の勝負となっている。本牧沖に沈没した赤船に積まれたプラチナを手中に収め、それを資金に横浜を自由開港都市にしよう計画を立てていた。立原広造によって赤船の権利を奪われた際、光児からお互いの兵力を賭けた決闘を持ちかけられた。その結果、痛み分けとなったが、光児の野望の大きさを知り和解した。

立原 広造 (たちはら こうぞう)

火梨洋介の父親の親友だった男性。現在は火梨家の財産の半分以上を保有し、火梨家の邸宅に住んでいる。売却した快速艇を光児が購入したことで、光児とコンタクトを取って援助を申し入れるが、光児に拒絶されたことで光児を完全な敵と判断すると宣告した。しかし、これは表向きで、火梨家を陥れたのがハンザであることを知っており、光児が火梨家を復興することを願ってあえて悪役を買って出ている。親友の洋介を破産させたハンザを憎んでいることから、立原輝一とは折り合いが悪く、輝一が秘密結社と手を組んで事業を行うことには反対している。輝一がハンザを率いて、本格的に横浜市を乗っ取ろうとしていることを知り、間接的に光児と滝重吉のサポートを行っている。特に光児に対しては、親友の洋介に成り代わって叱咤激励して経営者になるための指導を行っている。輝一と決別したことで、事業の取り引き先のすべてが輝一側についたことで窮地に陥るが、秘密裏にハンザに反対する勢力をまとめあげ、逆襲を誓う。

立原 輝一 (たちはら きいち)

立原広造の長男。立原風子の兄。火梨光児とは小学生の頃の同級生。オールバックの髪型で、襟に牡丹の刺繡が入った白い学生服を着ている。冷酷無比な性格で、自分の野望を邪魔する者は親であっても敵とみなして全力で倒すと宣言している。自分を成長させるため、3年間ヨーロッパへ留学していた。日本を皮切りに、最終的には南太平洋一帯を取り仕切る大商人になるという野望を抱いている。珠理マルメゾンの婚約者となったことでハンザに認められ、ハンザの殺し屋や、武器を自由に使うことができるようになった。赤船の真実を知っており、赤船にあるハンザがかかわった不正の証拠となる書類を探し、それを抹消しようとしている。

立原 風子 (たちはら ふうこ)

立原広造の娘で、立原輝一の妹。高校1年生ながら気高く強気な性格で、火梨光児と初対面の際には無礼を諫めるためにムチを振るった。当初は光児に対して批判的な目を向けていたが、光児の情熱や懐の深さを知って徐々に親しくなる。その後は広造の策略を伝えたり、間接的な手助けを行っている。怒ると啖呵(たんか)を切ることがよくあるが、言ったあとにたしなめられると赤面してしまう、初々しいところがある。輝一が自らの野望を冷酷な手段で叶えようとすることに恐怖と怒りを覚え、父親のそばにつきつつ光児の味方になることを決意する。

火梨 洋介 (ひなし ようすけ)

火梨光児の父親。火梨家の三代目として家督を継いでいたが、ハンザの策略により破産してしまう。破産後5年間は、家族と共にアパート暮らしをしながら火梨家の再興を目指していた。しかし、立原広造が財産の半分を取得したことを知ると、失意のうちに倒れて亡くなる。

珠理 マルメゾン (じゅりー まるめぞん)

立原輝一が日本に招聘した女性。ハンザの大幹部の娘で、母親が日本人のハーフ。戦闘能力に長けており、飼い犬を使ったり鋼鉄の玉を弾(はじ)いて攻撃する。

軍兵衛 (ぐんべえ)

大辻野枝のいとこで、水軍島の頭首を務める男性。大柄な体型に無精ひげを生やし、甚平を着ている。豪胆な性格ながら野枝には一目置いており、唯一自分を殺せる人間だと認めている。火梨洋介に水軍の兵を貸したが、兵が帰ってこないことで殺されたと判断して火梨家を恨んでいる。火梨光児が協力を求めてきた際も最初は拒否したが、赤船が兵の失踪の謎を解く鍵になることを聞かされたうえに、光児の度量と覚悟を知ると納得して水軍を光児に託した。

シナマン兄弟 (しなまんきょうだい)

火梨光児に仕える双子の中年男性。元は火梨家の関連会社で船乗りとして働いていたが、火梨家の没落と共に息を潜めている。しかし、光児が火梨家復興のため本格的に動き出したことをきっかけに、大辻野枝がほかの船乗りと共に召集した。光児とは非常に年齢が離れているが、火梨家の誇りを受け継いで、再び船乗りとして働きたいという夢を託して、光児を「若」と呼び付き従えるようになる。

木村 (きむら)

火梨光児に初めての依頼をした仲買人の男性。山岡組の恐喝によって、正規の取り引きができなくなったことを光児に相談して解決してもらう。しかし、実際は木村自身が中心となって横浜魚市場を牛耳ろうと画策しており、最終的には滝重吉によって制裁を受けた。

入島 金一 (いりしま きんいち)

山岡組の幹部の男性。角刈りでもみあげが長い。横浜港に集められる水産物を安く買い叩いて高額転売するために、地元の水産業者を恐喝したことを火梨光児に咎(とが)められ、最終的に山岡組を脱退する血判状を書かされて追われる身となった。没落する前の火梨家の事情をよく知っており、光児が現れたことに驚いていた。

(たつ)

火梨光児が神戸に到着した際に出会った男性。大柄な体型で頰に傷があり、関西弁でしゃべる。沖仲仕として働いているが、神戸の暴力団が港を仕切ることを嫌がり、反発したことで命を狙われる。

銭屋の六助 (ぜにやのろくすけ)

坊主頭で小柄な体型の少年。関西弁でしゃべり、口論になると大人も言いくるめるほどに弁が立つ。金貸しを生業をしており、貸した相手が誰であってもしつこく返済をせまる。

周 宗元 (しゅう そうげん)

神戸中華連盟の理事長を務める若い男性。火梨光児が開店したレストラン「くらわんか!」が暴力団との関係を持ち、神戸が暴力団に支配されることを恐れて光児たちを妨害している。

集団・組織

山岡組 (やまおかぐみ)

横浜港での荷役作業を独占している広域暴力団。本牧沖に沈没した赤船を引き上げ、積まれているプラチナを手中に収めようとしている。

ハンザ

ヨーロッパの秘密結社。殺し屋を育成している集団で、幹部には世界的権力者が名を連ねている。火梨家は、ハンザの策略により破産させられた。

神戸中華連盟 (こうべちゅうかれんめい)

神戸の高級中華店のみが加入することが許されている団体。周宗元が理事長を務めている。神戸市場での大口取り引き先であるため、市場関係者を絶大な力で支配している。

場所

水軍島 (すいぐんとう)

東京湾沖にある、海賊が拠点としている島。鑑札がなければ島内に入ることができず、その場で襲われてしまう。海賊島としての歴史は長く、戦時中には海からやって来る敵襲の防衛を国から求められ、東京湾全体の支配権を得ることで同意した。その権利は現在も続いており、東京湾へ入る時には水軍島へ通行税を支払わなければならない。

その他キーワード

火梨家 (ひなしけ)

代々続く商人の家系。火梨洋介が火梨家の三代目として家督を継いでいた。国内外問わず事業を展開していたが、ハンザの策略により没落してしまう。現在は火梨光児だけが、その家系を引き継いでいる。隆盛時は富と名声を世間に知らしめるため、自動車を使わずに特注の馬車を移動手段として使用していた。

赤船 (あかふね)

横浜市の本牧沖に沈没している船。海面に沈んで船首全体が、赤く錆びついていることから「赤船」と呼ばれるようになった。船体には「白鶴丸」と描かれているが、その下には「ふあらおん丸」と描かれており、元は火梨家の所有船であった。赤船にはプラチナが100トン積まれていると噂されている。

クレジット

原作

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