海皇紀

科学技術文明が伝説のものとなっている超未来を舞台に、海洋民族海の民の一員であるファン・ガンマ・ビゼンの活躍を描く作品。個人の冒険談であると同時に、大国間の存亡を賭けた戦争を描く未来史物語としての側面も強い。また、主人公は船乗りであり、帆船と帆船による海戦の描写は非常に豊富かつ詳細なものとなっている。

概要・あらすじ

漆黒の帆船を操り、仲間と共に自由に海を駆ける男ファン・ガンマ・ビゼンは、航海を続けながら様々な人物と出会い、味方と敵を増やしていく。そして、ついには海の一族を率いて、西の大国ロナルディアと大陸平定を目指す騎馬の国ウォルハンによる戦争に介入していくことになるのだった。

登場人物・キャラクター

ファン・ガンマ・ビゼン

海の一族の一員であり、影船八番艦の艦長を務める男。自身を「怠け者」「大嘘つき」と称し、人をはぐらかすような言動を好む。その一方で、仲間を篤く遇する度量を持つため多くの者から慕われている。船乗りとしては超一流の腕を持ち、大嵐の中でも帆船を安定して航行させるほどの操船技術を持つ。武術の腕も凄まじく、剣術はもちろん、この世界では知られていない格闘術まで使いこなす。 さらに、戦略家・戦術指揮官としても突出した能力を誇る。先史時代から伝わる幻の名刀「ニホントウ」を得物とし、すでに絶滅したはずの鷹をルファと名付けて従えている。

トゥバン・サノオ

大陸一と名高い兵法者。滅亡した小国オンタナの遺児であるマイア・スアルを保護し、彼女と共にカガクを探す旅を続けていた。その途中でファンと出会い、マイア・スアルともどもファンが艦長を務める影船八番艦の客分となる。オンタナの禁域であるテラトーにおいて、魔獣の森守を撃退した唯一の人間であり、その剣の腕はすでに人間の域を超えているとも言われる。

マイア・スアル

西の大国ロナルディアの侵攻によって滅ぼされた小国オンタナの王女。母国復興の手段となるはずのカガクを探し求めている。自らの体を代償に、ファンにカガクの手がかりがあるという土地グリハラへの案内を依頼する。

カザル・シェイ・ロン

辺境の小国ウォルハンの若き王(ロン)。ファンの力を借り、自国を圧迫する隣国クアラに対して奇跡的な勝利を収める。これを皮切りに、かつての領土を取り戻すことを大義として、周辺の国々を併合し始め、同じく大陸に覇を唱えんとする大国ロナルディアと対立していく。

アル・レニオス・ウル・グルラ

放浪の大軍師として大陸中に知られるチャダの弟子。天才的な戦略家だが、まだ若く実績も無いため、任官している国を離れ、見聞を広める旅に出ていた。とある港でファンと出会い、旅を共にしようとするが、出発当日に任国ガルハザンがウォルハンとの戦争に突入するであろうことを知り、ファンと別れ任国への帰還を決意する。

ギルス・ヴェダイ

闇の魔人衆として伝説に語られる、イベルグエンの下人として育てられた男。ふてぶてしい態度と抜け目ない性格が、油断ならない印象を周囲に与える。装着者に遠視・暗視能力などを与える魔道具ルドランの目を身に着けており、常人離れした戦闘力を持つ。女を求めてマイア・スアルをさらい、ファンと剣を交えるが完敗、ファンの子分となって影船八番艦に乗り込む。

メルダーザ

カガクの秘密を知るという魔道師アナハラムの娘。アナハラムの痕跡を残す土地グリハラにてファンたちと出会い、客分として影船八番艦に乗り込むが、父の行方とその真意を確かめるために、ギルス・ヴェダイと共にロナルディアへと向かうことになる。実はアナハラムの実子ではなく、パンニャーの卵と呼ばれる一種の人工冬眠装置の中で眠らされていた子供であり、その脳の奥底には、カガクの一端である古代の言語や数式が隠されている。

ニッカ・タンブラ

海の一族のひとり。ファンの副官であり、影船八番艦の主計長を務める。優れた経済感覚と財務能力の持ち主で、一艦どころか一軍の物資運用や補給を賄える実力を持つ。常に冷静な態度を崩さないが、シニカルな発言も多く、ファンに対しても辛辣な言葉で応じることがある。

ジン・パベル

海の一族のひとり。ファンの副官であり、影船八番艦の航海士を務める。船乗りとしての腕も確かだが、それ以上に弓の名手として活躍することが多い。スキンヘッドで常に微笑んでいるような顔をしている。ソル・カプラ・セイリオスの騙し討ちにより、窮地に陥ったファンの盾となり命を落とした。

ギルゴマ・ジフン

褐色の肌をもつ大男。生まれは海の一族ではないが、漂流中に救助されたことで、海の一族の本拠である海都の住人となり、水門の門番として働いていた。怪力の持ち主で「海都の喧嘩王」の異名を持つ。拳を交えたファンを気に入り、ファン専属の艇長として影船八番艦に乗り込むこととなる。

アグナ・メラ・ジーゴ

海の一族と対立する部族ジーゴ・サナリアの大長の孫娘。ジーゴ・サナリアを味方に引き込むためにやってきたファンと出会い、その実力と誠心を認めてファンの許婚となる。教養には欠けるが、判断力は非常に高く、戦士としても優れた技量を持つ。得意の得物は投槍。劇中の女性の中では随一の巨乳である。

マリシーユ・ビゼン

ファンの実母であり、剣術、体術をファンに仕込んだ女性。ファンが持つ「ニホントウ」も彼女から授けられたものである。生地ビゼンの里から持ち出されたパンニャーの卵を探す旅の途中で、先の海王であるレグルス・マリキ・セイリオスと出会い、ファンを身篭る。外見は異常に若く、20代そこそこにしか見えない。 影船八番艦のクルーからは海子守(みこもり)と呼ばれ、慕われている。物語終盤に登場し、ファンたちと合流する。

ソル・カプラ・セイリオス

海の一族のひとりで、先代の海王であるレグルス・マリキ・セイリオスの息子。末子ではあるが、その才は兄たちを凌ぐと目されている俊英で、海王を継ぐ者として名乗りを上げる。しかし、ファンにも海王の後継者となる資格があることが判明し、王海走と呼ばれる帆船レースによって海王の座を争うことになる。 幼少時よりファンの能力と人望を気にかけており、ファンから勝利を得ることを渇望していた。

マルキュリ・オ・スクラ

海の一族のひとりで、ソル・カプラ・セイリオスの副官。「氷の懐剣(アイスダガァ)」の異名を持つ切れ者であり、ソルのためならば躊躇無く己の手を汚す忠臣である。ソルの意を汲んで、自らファンを暗殺せんとするが、ジン・バベルによってその刃は阻まれ、逆に命を落とすこととなった。

レグルス・マリキ・セイリオス

海の一族を統べる海王。公的には三人の息子を持つ。ファンたちが操る影船八番艦が海の一族の本拠である海都へ帰還した時点で、すでに死亡(乗艦と共に沈没)していたため、名前だけしか登場しない。後にファンの実父であったことが判明する。

オンブルワ・ゼ・フォレスト

ロナルディア海軍所属の軍人。カノン砲を搭載した最新鋭艦を指揮して、影船八番艦を追跡してきた。まだ若いが、艦長としての高い見識と技量を持ち合わせており、ロナルディアの黒幕であるクラッサ・ライからも高く評価されている。海戦にて一度はファンに敗れ、再戦を期して帰国の途に着く。

ディアブラス

ロナルディア海軍所属の軍人。オンブルワ・ゼ・フォレストの部下として海兵隊長を務める。恵まれた体格を活かした剛剣を振るい、ファンの「ニホントウ」と切り結ぶほどの技術も備えた優れた剣士である。

レアニ・ルヴァタ・ロナル

西の大国ロナルディアに君臨する女帝。自身が治めるロナルディアに絶対の正義があると妄信しており、その支配を拒む国の存在を許さない。その独善は自国民にも及んでおり、不都合な事実を隠蔽するために住民もろとも町を焼き払うといった非道を平然と行う。その苛烈さはある意味支配者にふさわしいものであるが、実際には黒幕であるクラッサ・ライとイルアンジャによって思考を誘導されている傀儡であった。

イルアンジャ

1000年を生きると言う伝説の大魔道師。エル・グリハラと呼ばれる古代遺跡でファン一行と出会う。しかし、その時点で精神に異常を来たしており、自らが発掘した古代のロボット土武者によって殺害されてしまう。後にイルアンジャとは個人の名ではなく、魔道が伝わる里から出てきた者を指す総称であり、海の一族も何代か前のイルアンジャに力を借りていたらしいという話がファンによって語られる。

クラッサ・ライ

イベルグエンを統べる謎の男。ロナルディアの女帝レアニ・ルヴァタ・ロナルに付き従い、大陸各地に放った配下から送られた情報をもとに様々な献策を行っていた。ファンすら圧倒するほどの超人的な体術を操る。

アナハラム

メルダーザの父であるはずの魔道師。カガクの力をもって神となることを望み、クラッサ・ライの協力を得てロナルディアを影から操っていた。物語のごく初期からその名が語られていたが、姿を見せたのは最終盤であった。登場と同時に、その正体が暗殺を逃れて野に下ったロナルディア先帝の弟、ムジク・タイ・ダ・ロナルであったことが判明する。

集団・組織

海の一族

『海皇紀』の主人公ファン・ガンマ・ビゼンが属する国。海を領土とし、海運によって国家経営が成されている。その海軍力は絶大であり、海上戦においては世界最強を誇っていたが、ロナルディアが魔道の兵器であるカノン砲搭載の軍艦を実戦配備し始めたことで、その座を脅かされつつある。代々の統治者は海王と称され、海都と呼ばれる小島を本拠地としている。

ジーゴ・サナリア

『海皇紀』に登場する部族。大陸西部のサナリア海諸島を縄張りとし、海賊を生業としている。戦士だけで7000人を数える集団であり、実質的には国家と言っても差し支えない。海運を根幹事業とする海の一族とは敵対関係にあり、過去何度となく武力衝突を起こしてきた。海に生きる民ではあるが、主に使用するのは櫓で動かす小船であり、帆船による外洋航行能力は持たない。 ファンにより海の一族側に立ち、ロナルディアとの戦に参加する。

イベルグエン

『海皇紀』に登場する集団。クラッサ・ライを頭目とし、「闇の魔人衆」とも呼ばれている。代々伝わる独自の戦闘術に加え、ルドランの目、ダンドーの耳などの魔道具を用いて、諜報・暗殺などの任務に従事する。一人前の構成員は「魔人」を名乗ることを認められ、その技量に達していないものは「下人」と呼ばれる。各地から攫ってきた子供を、「下人」として育てることで集団を維持してきたらしい。

場所

海都

『海皇紀』に登場する国家海の一族の都。小島ほどの大きさを持つ浮島で、海流に乗って大洋を回遊している。そのため、航行ルートを知らない者にはたどり着くことができない幻の都として知られる。海都そのものが、失われた古代文明の技術によって造られたと思われ、海の一族が持つ造船技術や航海法にも古代の知識の痕跡が見える。

ロナルディア

『海皇紀』に登場する国家。大陸の西に位置する帝政の国で、ラオン・グラを帝都とする。現在は女帝レアニ・ルヴァタ・ロナルによって統治されている。魔道師アナハラムによってカノン砲などの超兵器がもたらされたことで、爆発的に軍事力を高め、驚くべきスピードで周囲の国々を支配下に治めた。さらに大陸全土の覇権を求めて東進を画策している。

ウォルハン

『海皇紀』に登場する国家。大陸の東端の小国であったが、ファンの助力を得た当代の王(ロン)カザル・シェン・ロンによって、臣従を迫った隣国クアラを滅ぼす。以後、大陸東部諸国を次々と併呑し、急激に領土を拡張していく。騎馬民族の国であり、騎兵を中心とした神速の用兵を得意としている。

オンタナ

『海皇紀』に登場する国家。マイア・スアルの生国。小国ながら精強な騎士団を擁することで知られていたが、関係良好だったはずの隣国ロナルディアからの急襲を受け、滅亡した。ロナルディア軍は、この戦いでドルドルーヴォの火と呼ばれる魔道の兵器を使用したとされる。

その他キーワード

影船

『海皇紀』に登場する帆船。海の一族の代名詞とも言える海王直属の軍艦である。帆を含む全船体が漆黒に塗装されていることから、影船の名で呼ばれる。公式には七艦が存在し、それぞれが七つの海域で情報収集および監査任務に就いている。この時代の帆船としては突出した性能を持ち、単艦同士の戦いならば無敵との風評を得ている。 ファンが乗る八番艦は、すべての影船の原型となった零番艦を改修したもので、先代海王からファンの母親マリシーユ・ビゼンに与えられ、それを乗組員も含めてファンが引き継いだものである。

カガク

『海皇紀』に登場する太古の技術。いわゆる「科学」のことだが、技術文明が一旦滅び、内燃機関すら存在していない劇中世界では、「魔道」と同義の謎めいたものとして認識されている。ただし、各地に残る遺跡やオンタナにあるテラトーの禁域を守る魔獣(実際にはロボット)の森守が実在しているため、単なる伝説であるとは思われていない。 ロナルディアが用いたカノン砲やドルドルーヴォの火もカガクを再現したものだが、一般には「魔道の兵器」と称されていた。

書誌情報

海皇紀 全45巻 講談社〈講談社コミックス月刊マガジン〉 完結

第1巻

(1998年8月発行、 978-4063336375)

第2巻

(1998年11月発行、 978-4063336559)

第3巻

(1999年2月発行、 978-4063336672)

第4巻

(1999年5月発行、 978-4063336788)

第5巻

(1999年8月発行、 978-4063336900)

第6巻

(1999年11月発行、 978-4063337037)

第7巻

(2000年2月発行、 978-4063337136)

第8巻

(2000年5月発行、 978-4063337242)

第9巻

(2000年8月発行、 978-4063337334)

第10巻

(2000年11月発行、 978-4063337457)

第11巻

(2001年1月発行、 978-4063337556)

第12巻

(2001年5月発行、 978-4063337693)

第13巻

(2001年9月発行、 978-4063337815)

第14巻

(2002年3月発行、 978-4063338119)

第15巻

(2002年9月発行、 978-4063338423)

第16巻

(2002年12月発行、 978-4063338546)

第17巻

(2003年4月発行、 978-4063338744)

第18巻

(2003年7月発行、 978-4063338881)

第19巻

(2003年10月発行、 978-4063339031)

第20巻

(2004年3月発行、 978-4063339260)

第21巻

(2004年6月発行、 978-4063339376)

第22巻

(2004年9月発行、 978-4063709513)

第23巻

(2004年12月発行、 978-4063709636)

第24巻

(2005年3月発行、 978-4063709780)

第25巻

(2005年6月発行、 978-4063709919)

第26巻

(2005年9月発行、 978-4063710083)

第27巻

(2006年3月発行、 978-4063710335)

第28巻

(2006年6月発行、 978-4063710472)

第29巻

(2006年9月発行、 978-4063710588)

第30巻

(2006年12月発行、 978-4063710700)

第31巻

(2007年3月発行、 978-4063710830)

第32巻

(2007年6月発行、 978-4063710922)

第33巻

(2007年9月発行、 978-4063711080)

第34巻

(2007年12月発行、 978-4063711196)

第35巻

(2008年3月発行、 978-4063711325)

第36巻

(2008年6月発行、 978-4063711486)

第37巻

(2008年9月17日発行、 978-4063711615)

第38巻

(2008年12月発行、 978-4063711752)

第39巻

(2009年3月発行、 978-4063711875)

第40巻

(2009年6月発行、 978-4063711950)

第41巻

(2009年9月発行、 978-4063712056)

第42巻

(2009年12月発行、 978-4063712230)

第43巻

(2010年3月発行、 978-4063712339)

第44巻

(2010年6月発行、 978-4063712445)

第45巻

(2010年9月発行、 978-4063712544)

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