清少納言と申します

清少納言と申します

のちの清少納言である清原なぎ子が、橘則光と橘光子をはじめとする周囲の人々を巻き込みながら、平安時代を軽やかに躍動する姿を描いた平安絵巻。「BE・LOVE」2019年9月号から掲載の作品。

正式名称
清少納言と申します
ふりがな
せいしょうなごんともうします
作者
ジャンル
ラブコメ
レーベル
BE LOVE KC(講談社)
巻数
既刊8巻
関連商品
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あらすじ

ギリイモの秘密

時は天元の春。橘氏長者の長女・橘光子は、昔から溺愛している弟の橘則光が光子よりも先に婿入りすることが決まったことで、一人ため息をついていた。内心ではショックを受けつつも、則光の幸せを応援することに決めた光子だったが、彼の結婚相手の清原なぎ子は、癖毛をなびかせて独特な唐衣の袴をまとい、トンボのような日よけを身につけているなど、およそ平安の常識からは外れた変わり者であった。輝く美貌と独特なセンスを持ったなぎ子は、光子はもちろん周囲を驚かせるが、そんななぎ子の女子力の高さに感心すると同時に不安になった光子は、則光がなぎ子と男女の契りを未だに交わしていないことを知る。直接会いに行った光子は、なぎ子の言動を不審に思い、二人の離縁を画策する中で彼女の悪い噂を調べようとしていた。だが、召使いたちになぎ子の調査を頼んでも、彼女の周辺は護衛の夏夜冬朝によって固くガードされており、まともな身辺調査すらできなかった。召使いからなぎ子が夜遅くに護衛をつけて出かけているという情報を得た光子は、こっそりなぎ子のあとを尾行して自ら調査を試みる。しかし、光子の尾行はとっくに夏夜たちに気づかれており、危機感を覚えた彼女を連れて、なぎ子は美しい夜明けが見られるお気に入りの場所に向かう。二人で夜明けを見た光子は感動し、なぎ子の言葉と横顔にまぶしさを感じるが、そこに野盗が現れてなぎ子に服を脱ぐように要求する。するとなぎ子は堂々と着物を脱いでいくが、下半身があらわになった瞬間、なぎ子が女性ではなく男性であることが判明する。

定子の香合わせ

平安文化の最先端を走る清原なぎ子は誰よりも女子力が高く、奔放ながらも真っすぐな言動と美しい容姿で、周囲を驚かせつつも多くの人々の心をつかんでいた。そんななぎ子が男性だと知った橘光子は、結婚が決まった弟の橘則光との離縁をもくろんで試行錯誤する。則光はなぎ子が男だと知って衝撃を受けるものの、結局はなぎ子を好きな気持ちを捨てきれず、この心地いいような複雑で不思議な関係は、崩れることなくゆるやかに続いていた。なぎ子の秘密を知る幼なじみの藤原実方も加わり、彼らは騒がしくもにぎやかな日常を送っていたが、そんな中、一人の少女がなぎ子の部屋に迷い込む。その少女は藤原北家・藤原道隆の愛娘・藤原定子で、彼女に出会ったことでなぎ子の運命は大きく変わっていく。定子が屋敷に置いていった香炉の蓋を巡って騒動が起こり、どうするべきか悩んでいたなぎ子は、兄の清原致信に相談する。道隆や定子の名に傷がつかないように穏便に蓋を返すために、なぎ子は久しぶりに男装束をまとって馬飼いに変装し、道隆の屋敷に向かうことになる。みんなで考えた作戦は、もともと屋敷の護衛を依頼されていた致信の一行に紛れて行動し、彼と実方が門番の気を逸らしているうちに光子となぎ子が道隆の屋敷にこっそり潜入して、素早く蓋を返すというものだった。なんとか屋敷内に潜入することに成功し、光子は召使いに紛れて蓋を返しに部屋へと向かう。一方、軒下に隠れたままのなぎ子は、真上の部屋から定子の声が聞こえることに気づく。道隆の弟・藤原道長と女性たちの会話を盗み聞きしていたなぎ子は、今回の香合わせがただの遊びではなく、まだ幼い定子と懐仁親王のお見合いであったことに気づく。つい聞き入ってしまったなぎ子は、香炉の支度が始まることに気づいて急いで軒下から出るが、次の瞬間、彼の手を引いていたのは道長だった。

女房勤めのお誘い

男性と知らずにうっかり清原なぎ子と結婚してしまった橘則光は、多少のケンカやトラブルはありながらも、彼となんとなく居心地のいい関係に落ち着いていた。香炉の蓋騒動を経て、藤原定子藤原道長をはじめとした宮廷文化を担う人々に接したなぎ子は、不自由を強いられる定子を心配するとともに複雑な感情を抱いていた。そんな中、道長は以前から気に入っていたなぎ子を女房勤めに誘う。なぎ子はその話を受けたいと考えていたが、則光は猛反対し、ケンカの末に則光が夜になっても帰らない日が続く。さらに数日後には藤原道隆からも、なぎ子を藤原定子付きの女房にしたいという誘いを受ける。以前からなぎ子のことが気になっていた定子は、彼と再会するために思い切って父親の道隆に頼んで、自分の身の回りの世話をしてくれる女房として迎えることにしたのだ。なぎ子はあこがれの定子のもとで働けることに大喜びし、橘光子たちにも相談したうえで、定子の女房として働くことを決意する。だが、則光がまたしてもトラブルを抱えて帰ってきたことで、状況は大きく変わる。則光といっしょにいたのは、まだ幼い息子・おろ丸を連れた「朽葉」という名の女性だった。朽葉の父親であるおろ爺は光子と則光の知り合いで、則光はおろ爺の娘である朽葉を放っておけず、連れて帰ってきたのだ。則光の頼みで、父親を亡くして行く所がない朽葉とおろ丸は、なぎ子の屋敷に置いてあげることになる。いろいろあって女房勤めの件を則光に話し損ねたなぎ子は、一人で休んでいたところで道長と再会。なぎ子は道長の言葉に感化されて迷いが生じるものの、とっさに子供ができたことにして、彼の誘いを断る。しかし、子供を理由に道長の誘いを断った手前、定子からの誘いも断る羽目になってしまう。

望月の姫計画

仲のいい夫婦関係を続ける清原なぎ子橘則光を見守るうちに感化された橘光子は、今度は自分のために婚活を始めることを決意する。光子の決意を知ったなぎ子は、熱烈に応援するとともに必勝婚活計画を指導し、あらゆる方法で彼女をサポートするようになる。なぎ子の協力の末に完成した「望月の姫計画」によって、「望月姫」の名で噂される光子の評判は男性たちのあいだで広まっていき、都を中心にあちこちで大きな話題になっていた。光子は定期的に牛車に乗って男性たちと御簾越しに会話していたが、彼女の前には噂を聞いて集まってきた男性たちによる行列ができるほどになる。婚活を始めてから数か月経った光子は、最初は不慣れながらも多くの男性と話すうちになじんでいき、無意識に男性の品定めやダメ出しをするようになっていた。一方、宮廷では新たな帝となった花山帝が、傷心を癒す新しい恋愛を求めて悩んでいた。安倍晴明に占ってもらい、望月姫の噂を知ったた花山帝は、興味を示して会いに行くことになる。行列を押しのけていきなりやって来た花山帝が帝だと知らないまま、光子は彼と清明によってさらわれてしまう。その頃、藤原兼家が率いる藤原氏は、以前より計画していた花山帝退位作戦を実行に移す。花山帝が新たに女性を囲ったという情報を得た兼家たちは、それを利用して政権を握ろうともくろんでいた。そんな中、なかなか帰ってこない光子が何者かにさらわれたと知ったなぎ子は、藤原実方清原致信、そして遅れて帰ってきた則光と共に、彼女を奪還すべく行動を開始。さまざまな思いと思惑が交錯する中で、自分をさらった男が帝だと悟った光子は、花山帝と直接話をするうちに、彼がかつての自分と似ていることを感じ取る。

登場人物・キャラクター

清原 なぎ子 (きよはらの なぎこ)

歌人で名高い清原家の血筋で、橘則光の結婚相手。女性の格好をしているが本当は男性で、そのことを知るのはごく一部の者のみとなっている。癖のある茶髪のロングヘアで、独特な唐衣の袴とサングラスのような日よけを愛用している。毒舌だがお世辞を好まず、自分が心から思ったことしか言葉にしない。他人と違うことを恐れず、真っすぐで強い心の持ち主。のちの清少納言であり、ほかの貴族とは違った独特なセンスを持ち、和漢の才に長け、雅をこよなく愛する。いわゆる意識高い系で、スキンケアや爪の手入れを欠かさないなど、女子力が非常に高い。ふだんは清原家別邸で護衛の夏夜、冬朝と共に暮らしている。男性だと知らないまま一目惚れした則光に求婚され、両親が勝手に結婚を決めたが、当初は則光のことを夫と認めていなかった。義姉の橘光子に男性だと知られ、則光にも正体を知られたために離縁することになると思っていたが、則光とはなんだかんだで円満な夫婦関係を築いている。弱者を見捨てない則光の優しいところを気に入っているが、価値観が異なる彼とは時折、すれ違いを起こしたりケンカをしたりすることがある。幼少期は「那岐」という名の中性的な少年で、姉の清原なみ子がいる。なみ子にあこがれを抱き、彼女と二人の時に限り、女性の服装や髪型に変えるのを楽しんでいた。しかし、なみ子が亡くなったのをきっかけに名を「なぎ子」に変えて女装し、女性として生きるようになる。女性が不自由を強いられる世の中に苦悩していた彼女への手向けとして、常識にとらわれず自由に生きて幸せをつかむことで、女性が幸せな人生を選べると証明することを目指している。屋敷に迷い込んだ藤原定子を溺愛しているが、恋愛というよりはいわゆる「推し」に近い感情を抱いている。また、定子に出会ったのをきっかけに藤原道長をはじめとする宮廷に近い貴族とも出会い、時には則光や光子と共にトラブルに巻き込まれている。のちに則光が連れ帰った朽葉の息子である「おろ丸」を養子として引き取り、朽葉のことは乳母として迎える。実在の人物、清少納言がモデル。

橘 光子 (たちばなの みつこ)

橘氏長者の長女で、貴族の女性。切りそろえた黒のロングヘアで、ふくよかな体型をしている。早くに亡くなった母親の代わりに、幼少期から育ててきた弟の橘則光を溺愛しているブラコン。イケメン好きで惚れっぽいところもあるが、面倒見がよく弟思いな性格をしている。則光が先に婿入りしてしまい、未だに独り身なことにコンプレックスを抱いている。則光の結婚相手である清原なぎ子を快く思っておらず、二人の離縁を画策する中で、なぎ子の正体が男性であることを知る。なぎ子を警戒する一方で、彼の異様な女子力の高さと世の常識にとらわれず自由に生きている姿には、あこがれのような感情を抱いている。則光がなぎ子と離縁せずに不思議な夫婦関係を築いてからも、時折なぎ子に嫌がらせをしようともくろむが、結局は二人との心地よい関係やにぎやかな日常に絆され、楽しい日々を送っている。のちに、なぎ子の過去と女装している本当の理由を知り、女性が不自由な世の中を変えたいという彼の思いに共感するようになる。婚期を逃したことから結婚をあきらめていたが、ケンカやトラブルに巻き込まれながらも円満な夫婦関係を続けているなぎ子と則光を見るうちに感化され、自分を見つめ直しながら婚活を決意する。この際になぎ子の熱烈な応援と協力を受け、彼女の作戦で流れた噂の数々によって、かぐや姫をイメージした「望月姫」の名で都に評判が広まる。その後は望月姫を名乗りながら、姿を隠した状態で牛車に乗り、御簾を下ろしたままで訪れた男性と会話する活動を、なぎ子たちと共に数か月ほど続けていた。ようやく婚活に慣れてきた頃に、望月姫の噂を聞いた花山帝に興味を持たれ、いきなりやって来た彼にさらわれてしまう。ふくよかな体型を気にしてダイエットを考えたこともあったが、ありのままの自分が好きという理由で、婚活も体型を変えないままでスタートした。

橘 則光 (たちばなの のりみつ)

橘光子の弟で、貴族の青年。一目惚れした清原なぎ子の屋敷に熱心に通い詰めて結婚が決まるが、それは清原家が勝手に決めたことで、肝心のなぎ子からはなかなか認めてもらえないことに悩んでいる。目の前の問題を先送りにしたり、困ったらすぐ光子に頼ったりするヘタレで優柔不断な一面もあるが、一途で優しく思いやりのある性格の持ち主。幼少期に母親を亡くして以来、姉の光子が母親同然だったために自由奔放に育ち、狩猟や蹴鞠を趣味としている。恋文や短歌をはじめ、作法や文芸のセンスは皆無に等しく、武芸しか能のない朴念仁を自認している。昔から光子に溺愛されているとともに、無骨だが誰よりも真っすぐな心を持っていると評されている。結婚してからしばらく経った頃に、なぎ子が男性だと知って愕然とするものの、なぎ子を好きな気持ちは変わらず、今後の身の振り方に悩むこととなる。しかし結局は踏ん切りがつかず、なぎ子と離縁することなく不思議な夫婦関係を続けている。なぎ子とは価値観の違いなどからケンカやすれ違うこともあるが、光子や藤原実方も交えて騒がしくもにぎやかな日々を送っている。身分の低い人を見捨てずに手を差し伸べる優しさを持つが、困った人を放っておけずにトラブルに巻き込まれることがある。のちに朽葉が身投げしている場面に遭遇し、なぎ子に懇願して彼女の息子・おろ丸を養子に迎えた。義兄となった清原致信とは出会ってすぐに意気投合し、今ではすっかり彼の舎弟と化している。なぎ子が光子の婚活を手伝うようになってからは彼との交流が減り、彼が出かけているあいだに、こっそりどこかに通うようになる。実在の人物、橘則光がモデル。

夏夜 (なつよ)

清原なぎ子の従者を務める少女。おかっぱ頭で、中性的な風貌をしている。冬朝と二人でなぎ子の護衛から雑用まで幅広くこなしている。なぎ子のそばにいつもいるため、橘光子の従者たちが身辺調査をしてもまったくスキを見せなかった。護衛のための暗器を隠し持っており、感覚も非常に鋭い。冬朝が拾ってきた子猫をかわいがるなど、動物が大好き。なぎ子の周りをうろついていたトーマとは、いろいろことがありながらも友達となる。

冬朝 (ふゆあさ)

清原なぎ子の従者を務める少年。長髪をポニーテールにまとめ、中性的な風貌をしている。夏夜と二人でなぎ子の護衛から雑用まで幅広くこなしている。なぎ子のそばにいつもいるため、橘光子の従者たちが身辺調査をしてもまったくスキを見せなかった。護衛のための暗器を隠し持っており、感覚も非常に鋭い。唐から渡来した火薬を改造して花火を作るなど、いつも謎の入手ルートで珍品を手に入れている。子猫のようなか弱い小動物が苦手。

藤原 実方 (ふじわらの さねかた)

清原家と代々旧知の仲である藤原家の貴族で、清原なぎ子の許嫁を名乗る青年。若くして左近衛将監を務める。いつもキラキラ輝いているイケメンで、美しいものをこよなく愛し、美の前では性別や年齢などあらゆる区別がナンセンスという信条を持つ。ふだんは温厚な性格で、紳士的なナルシストながら怒ると口調が荒くなり、特に烏帽子を馬鹿にされると激怒する。実力はあるものの、その怒りっぽさが原因であまり出世できずにいる。変わり者で時折、毒を吐くこともあるが女性には優しく、友人思いな一面がある。ポエマーとして知られ、心のままに詩を詠む癖がある。なぎ子の幼なじみであり、彼が男性であることも昔から知ったうえで、彼の美貌や人柄を高く評価している。実際はなぎ子とのあいだに婚約関係はなく、幼少期は彼の姉である清原なみ子にプロポーズを繰り返し、初恋の相手である彼女の許嫁を気取っていた。今でもなみ子の死を忘れられず、彼女を慕っていたなぎ子の過去や女装している理由を知っているなど、彼のよき理解者でもある。なぎ子や橘光子には優しいが、橘則光のことは見下して小馬鹿にすることが多い。実は病的なまでの寝取り属性を持ち、人妻とわかると見境なしに口説いており、8歳の時に初めてできた恋人も人妻だった。このため女性関係は複雑で、光子からも恋愛対象ではなく観賞用と割り切られているが、多くの女性から非常にもてる。なぎ子と再会してからはよく彼の屋敷に遊びに来ており、トラブルに巻き込まれがちな彼に協力することが多い。実在の人物、藤原実方がモデル。

藤原 定子 (ふじわらの ていし)

清原なぎ子の屋敷に迷い込んだ謎の美少女。切りそろえた黒のロングヘアで、左右の髪をリボン状の紐で結っている。その正体は藤原道隆の愛娘であり、まだ幼いが非常に聡い子供で、初対面のなぎ子が男性であることもすぐに見抜くなど、ただならぬ知性を持つ。愛くるしい仕草や言動でみんなをメロメロにし、もともと子供が苦手だったなぎ子をも虜にする。家族や女房たちの前では舌足らずな愛らしい子供を装っているが、本来は年相応のやんちゃさと好奇心を秘めており、笑いをこらえるときは扇で顔を隠す癖がある。道隆が開いた香合わせで懐仁親王と出会い、彼と婚約を交わす。周囲に愛されながら大切に育てられる一方で、幼くしてすでに結婚相手や将来を道隆に決められており、藤原北家が政権を握るための切札ともなっている。自分の人生を自由に選べない現状を憂いているとともに、本来の自分を見せたり対等に話したりできる相手が少ないことを嘆いている。このため、数少ない理解者である兄の藤原伊周の前では窮屈な演技をやめて、本来の自分と本音をさらけ出している。迷子のフリをする中で出会ったなぎ子に興味を持ち、あらかじめくすねていた香炉の蓋をわざと彼の屋敷に残すことで、再会の機会をうかがっていた。のちに道隆の提案で新しい女房を迎えることになり、なぎ子をスカウトした。叔父にあたる藤原道長のことが苦手で、彼の本性をうっすらと感じ取って警戒している。実在の人物、藤原定子がモデル。

藤原 伊周 (ふじわらの これちか)

藤原道隆の息子で、貴族の男性。藤原定子の兄。定子とよく似た黒髪の美少年。定子と同じく聡明なしっかり者で、女性にも紳士的に接する。馬飼いのフリをして屋敷にやって来た清原なぎ子たちが、ただ者ではないとすぐに見抜いていた。定子が本音や本性をさらけ出せる数少ない人物であり、窮屈で不自由な暮らしに悩む彼女のよき理解者として、いつも相談に乗っている。叔父にあたる藤原道長のことが苦手で、彼の本性をなんとなく感じ取って警戒している。元服したあとは、一族の役に立つために積極的に行動するようになる。実在の人物、藤原伊周がモデル。

清原 致信 (きよはらの むねのぶ)

清原なぎ子の兄で、貴族の男性。暴走族のリーダーのように振る舞い、部下たちもヤンキーや暴走族の格好をしている。虎模様の服やサングラスのような日よけを愛用している。弟のなぎ子からは、武に長けたオラオラ系だが悪い人ではないと評されている。風の向くまま気の向くままに行動し、突然謎の排気音を響かせながら、唐突に現れることが多い。武闘派なため、義弟となった橘則光のことを一目で気に入り、すぐに意気投合した。昔はただの不良少年だったが、現在は大貴族の郎党を務めており、藤原道隆からボディーガードを依頼されたこともある。なぎ子との兄弟仲は良好で、何かとトラブルに巻き込まれがちな彼らに協力することが多い。実はアレルギー体質で、動物好きだが猫アレルギーを持つ。実在の人物、清原致信がモデル。

清原 なみ子 (きよはらの なみこ)

清原なぎ子の姉で、貴族の女性。すでに亡くなっている。黒のロングヘアの聡明な美女で、なぎ子が昔からずっとあこがれを抱き、彼にさまざまな影響を与えた女性でもある。幼少期のなぎ子(那岐)をかわいがり、本当は女性の格好をしたいと思っている彼の本音を理解し、髪型を変えてあげたり似合う服を教えたりしていた。いつか素敵な男性に見初められ、幸せな結婚をすることを夢見る。しかし求婚を何度も袖にされ、しびれを切らせた地方貴族の男性に無理やり寝所に押し入られてしまい、その男性との結婚が決まる。それから間もなく、女性が結婚相手を自分で選べない世の中の不自由さに苦悩し、那岐には幸せになってほしいと願いながら自死を選んだ。

藤原 道隆 (ふじわらの みちたか)

藤原兼家の長男で、貴族の男性。藤原定子と藤原伊周の父親で、特に愛娘の定子のことは大切に思っている。個性的な藤原氏の中では温厚でまじめな性格の常識人で、兼家や妹の藤原詮子に振り回される苦労人。奔放な弟の藤原道長には手を焼いているとともに、どこか食えない彼を心底警戒している。父親の兼家をしのぐほどの力を誇るが、関白の地位が約束されているわけではないため、なんとしても定子の結婚を成功させることを目指している。これらの目的や立場から敵が多く、何者かによって屋敷に木簡の呪いを仕掛けられていたことがある。実在の人物、藤原道隆がモデル。

藤原 詮子 (ふじわらの せんし)

藤原兼家の次女で、貴族の女性。藤原道隆の妹で、藤原道長の姉。道長からは見た目だけの女性と評されており、美人だが少々わがままな性格をしている。円融帝の女御として嫁いで懐仁親王をもうけたが、円融帝が藤原遵子を気に入っているために中宮の立場が危うくなり、寵愛されている遵子に嫉妬している。円融帝と反りが合わない兼家の計らいで、円融帝の気を引くために東三条邸にこもったことがある。時折、道隆の屋敷を訪れては、姪の藤原定子に愚痴をこぼしている。実在の人物、藤原詮子がモデル。

藤原 道長 (ふじわらの みちなが)

藤原兼家の五男で、貴族の青年。藤原道隆と藤原詮子の弟。無造作にはねた黒髪のイケメンで、若い頃の兼家とよく似ている。末っ子であるために兄たちよりも立場が弱いが、ひょうひょうとした態度の裏にはどす黒い野心を秘めている。誰に対しても好意的に接して笑顔で人を魅了するが、何を考えているかわからないところがあり、底が知れない人物として身内の一部からも警戒されている。ふだんは明るくおちゃらけているが、時折不敵な笑みと、人を食らうような眼光を見せて恐怖を感じさせる。その一方で、病で寝込んでいる母親の藤原時姫を心配して気にかけるなど、優しい一面を見せることがある。また、時姫を放置して女遊びや政治ゲームに明け暮れている兼家には、ひそかに反感を抱いている。勘はもちろん感覚が鋭く、軒下に隠れている清原なぎ子に早くから気づくとともに、彼がとっさについたウソもすぐに見抜いた。なぎ子からは鬼のようだと評されて警戒されているが、初めて会った時から彼に興味を持ち、気に入っている。なぎ子や安倍晴明をはじめとした有能な人物には積極的に近づき、自分の野望のためにひそかにスカウトしている。幼子すら権力争いの駒にする貴族たちを馬鹿らしく思っており、本当に神仏が存在するならこんな悲惨な世の中になっていないと考え、呪いの類や神仏をいっさい信じていない。実在の人物、藤原道長がモデル。

懐仁親王 (やすひとしんのう)

藤原詮子と円融帝のあいだに生まれた第一皇子。藤原兼家の孫。まだ赤ん坊の頃に詮子に連れられ、藤原道隆が開いた香合わせで藤原定子と出会う。定子の婚約者となり、未来の帝として一族から大切にされている。数年後に定子と再会し、彼女の気持ちを察して優しく送り出すなど、幼いながら聡い少年に成長している。実在の人物、一条天皇がモデル。

円融帝 (えんゆうてい)

第64代天皇の男性。臣下の藤原兼家とは反りが合わず、よくケンカしている。藤原詮子とのあいだに懐仁親王をもうけるも、第一皇子を産んだ彼女ではなく、別の女御である藤原遵子にばかり愛情を注いでいる。このため、兼家と詮子の恨みを買っている。のちに花山帝に帝位を譲った。実在の人物、円融天皇がモデル。

トーマ

橘光子の屋敷にやって来た少年。陰陽師を名乗っている。無造作にはねた短髪で、袈裟をまとっており、光子からグッドルッキングガイの卵と期待されるほどの美少年。蘭丸というカラスを式神として連れている。横文字や若者言葉を多数交えて話すため、何を言っているかわからないことが多い。光子の依頼を受け、清原なぎ子と橘則光を離縁させるために嫌がらせをもくろんでいたが、屋敷を偵察中になぎ子たちにあっさりと捕まる。当初は大陰陽師の安倍晴明を騙っていたがただのインチキで、陰陽師の資格すら持っていない。なぎ子の周りを探っていた時に出会った夏夜とは、いろいろことがありながらも友達となる。のちに晴明本人にこれまでのことがバレてしまい、彼に弱みを握られて手下と化してしまう。

花山帝 (かざんてい)

円融帝に代わって即位した新たな帝。美青年だが、好色なうえに情緒的な性格をしている。寵愛していた女御が急死したショックで、死にたいなどと泣き言を漏らしながら、いつも憂鬱そうにしている。気晴らしのために絵や恋愛小説を書いているが、その内容は凡庸。新しい恋愛を求める中で、安倍晴明から聞いた「望月姫」の噂に興味を示して橘光子をさらう。帝になったものの所詮はだたのあやつり人形であることを自覚しており、藤原氏をはじめとする貴族たちの政治ゲームの駒でしかないことを嘆いているため、あまり自信とやる気がない。光子の姿を見た時は期待外れとがっかりしていたが、本当は寂しい思いをしていることを見抜かれるとともに、彼女に本音や悩みを相談するうちに友人関係になった。出かける時はパワーストーンを身につけていないと落ち着かない。世間知らずなため、女性を口説く時の言葉は曖昧になる。実在の人物、花山天皇がモデル。

安倍 晴明 (あべの せいめい)

宮仕えの大陰陽師の男性。占いや陰陽術を得意としており、管狐のような式神をあやつる。謎が多く食えない人物だが陰陽師としての実力は本物で、特に占いは百発百中と評判が高い。新たな出会いを求める花山帝に、望月姫の噂を教え、彼と共に橘光子をさらう。憂鬱そうな花山帝をあの手この手で励ますが、彼の相手は心底面倒臭いと感じている。異なるものや奇なるものを「風」と称し、欲望と争いが渦巻く世の中を循環させる風をつねに求めている。望月姫の噂を探る中で、新たな風となる人物の気配を感じ取る。実在の人物、安倍晴明がモデル。

朽葉 (くちは)

橘則光が連れ帰ってきた女性。ボサボサのロングヘアで、長い前髪で顔のほとんどが隠れている。いつもおどおどしており落ち着きがなく、非常にネガティブで心配性なところがある。「おろ丸」という名の幼い息子を連れている。かつて橘家に仕え、幼少期の則光の世話もしていた「おろ爺」という名のおじいさんの娘。父親が亡くなったあとは結婚しておろ丸が生まれるが、夫が急死したために行き場がなくなり、崖から身投げしようとしていたところを則光に救われた。則光の頼みで清原なぎ子の屋敷に置いてもらえることになり、おろ丸は養子としてなぎ子たちに引き取られたため、乳母として彼を育てている。

藤原 兼家 (ふじわらの かねいえ)

藤原道隆と藤原道長の父親で、貴族の男性。藤原定子と藤原伊周の祖父。小柄な体型の童顔の老人で、孫たちをかわいがっている。ふだんはノリが軽く、愉快なおじいちゃんを装ってひょうひょうとしているが、その内には藤原北家を繁栄に導くための野心を秘めており、以前から摂政や関白の座を狙っている。若い頃からかなりの女好きで、かつては安倍晴明たちと共にアイドル御三家として有名だった。モテているが女性関係は複雑で、道隆たちの母親である藤原時姫をはじめ、多くの女性を泣かせている。円融帝とは反りが合わず、まだ幼い孫の懐仁親王を急いで帝に仕立て、定子とのあいだに子を産ませることで、将来的に政権を握ろうともくろんでいる。これらの目的を果たすために、一族を率いて円融帝の退位後に即位した花山帝を狙っている。実在の人物、藤原兼家がモデル。

書誌情報

清少納言と申します 8巻 講談社〈BE LOVE KC〉

第1巻

(2020-03-13発行、 978-4065189108)

第2巻

(2020-08-12発行、 978-4065205693)

第3巻

(2021-03-12発行、 978-4065226711)

第4巻

(2021-08-12発行、 978-4065245422)

第5巻

(2022-03-11発行、 978-4065272954)

第6巻

(2022-10-13発行、 978-4065292501)

第7巻

(2023-06-13発行、 978-4065317556)

第8巻

(2024-01-12発行、 978-4065342435)

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