あらすじ
PROLOGUE-復活-(第1巻)
ごく普通の女子高校生である古月渚は、兄の古月豊が考古学者で、また恋人で同級生の将吾も考古学好きため、考古学を嫌っていた。ある日、豊が持ち込んだ古いランプを掃除しようと磨いたところ、ランプの精のヤシムが出現。成り行きで、いっしょに大魔神、アフマドークを倒すことになってしまう。折しも首都圏では、人が急激に腐敗する事件が頻発していた。ヤシムによると、アフマドークがかかわった事件では、死んだ人間が恐ろしい速さで腐敗するのだという。渚はヤシムと協力し、事件を起こしていたパメルを倒すことに成功する。
小さな預言者-願い事は星の彼方に(第1巻)
失敗したパメルの代わりに、アフマドークは少女、香月を利用し、古月渚達に戦いを挑んでくる。しかし予知能力を持つとして脚光を浴びる香月の力は、アフマドークが、裏ですべて予知を実現させていたものだった。アフマドークは香月を使って大量殺戮を企てていたのだ。渚は戦いの中で、香月が死んだ両親を生き返らせると騙されて、アフマドークに協力していたことを知る。
夢の埋蔵金-欲望の理由(第1巻)
アフマドークは次に、ホームレスをしながら豊臣埋蔵金への出資者を募っていた江波に目をつけ、人の欲望に火をつけて世を混乱させるため、利用しようと目論んでいた。時を同じくして、NASAで宇宙考古学を専門とするマイケルが、古月豊に会うために日本を訪れるが、そこで古月渚の友達である加瀬しのぶが豊臣埋蔵金の発掘に参加すると知り、自らも発掘現場へと乗り込む。彼らを追い、アフマドークの企みを止めるため、渚とヤシムもマイケル達のあとを追うのだった。
絶望と希望-妖精メダの甘い罠(第1巻~第2巻)
人間の絶望をエネルギーに変える妖精、メダは、絶望した人間にしか見えない空飛ぶ帆船を作り出した。古月渚の後輩で、麻薬の売人をし己に絶望していた稲垣は、自殺しようとした屋上でこの帆船に出会う。メダに誘われて船に乗った稲垣は、絶望こそが希望だと思い込むようになり、意気揚々と麻薬を売り続ける。一方、渚のクラスメイトの平松は、空飛ぶ帆船から勇気を得て麻薬を買っていたと自供し、晴れやかな顔で拳銃自殺するのだった。平松の残した日記によって、麻薬売買の容疑がかけられてしまった渚は絶望し、そこで空飛ぶ帆船を発見。空飛ぶ帆船に乗っていたアフマドーク、メダ達に戦いを挑む。
月光の夢-海に消えた思い出(第2巻)
古月渚は、古月豊、ヤシム、将吾、市川、加瀬しのぶらと海辺のホテルへと旅行に出かけた。ところが、海岸では早朝に、釣り客がサメの大群に襲われて死亡する事故が発生しており、周囲は騒然としていた。これは、メダが人魚を使って起こした事件であった。浜辺で行われる花火大会を狙ってサメを差し向けるメダだったが、策略に気づいた渚とヤシムはサメ達に応戦。人魚を追い詰めていくが、そこでヤシムが人魚の計略にかかってしまう。
シンドバッドと幽霊船(第2巻)
5000年前のバグダッド。アフマドークは人間を操って部族同士の戦いを起こし、流行り病をばらまき、自分が直接手を下すことなく、人々を恐怖と絶望に陥れていた。バグダッドの大商人の息子のシンドバッドは、流行り病に倒れた多くの人々を救うために遠い異国に旅立っていたが、その帰り途に嵐に見舞われ、船がボロボロの状態で、幽霊船と遭遇する。シンドバッドはこれをチャンスと考え、積荷をすべて移し、幽霊船に乗り替えて帰還を試みる。そんな中、シンドバッドは幽霊船の中で、古びたランプを発見。こうして彼は、ランプの精、ヤシムと出会い、世界のさまざまな問題が、アフマドークの手により起こされたものであると知る。
雪の幻想-沈黙の美少女(第3巻)
ある日、ヤシムは女性の懇願する声を聞く。声の主は氷川しずなで、歩道橋から落ちそうになっていた妹の氷川いづみを助けてほしい、という内容だった。いづみはすでに歩道橋から落ちて亡くなった少女の霊で、死んだことが信じられず、何度も何度も歩道橋から落ち続けていたのだった。一方、姉のしずなは病院で昏睡状態のまま眠り続けており、いづみの霊は、しずなを身体に呼びもどしてほしいと願っていた。ヤシムから事情を聞いた古月渚は、自分の体を一時的にいづみに貸し出し、しずなの生霊を眠っている体に戻す手伝いをする。
真夜中の考古学-ピラミッドに眠る魔術師(第3巻)
地震と共に、三条中学校の校庭に突然、古代のピラミッドが出現した。先輩でもある三条中学校の教師の依頼を受け、古月豊はピラミッドの調査にあたることになった。また、日本にピラミッドが現れたのと時を同じくして、ケープ・カナベラルのケネディ宇宙センターで調査中のS島の地底ピラミッドが、突如消失するという事件が発生していた。情報をつかんだNASAのマイケルが急遽日本へ向かうが、彼が日本に到着する前に、再びピラミッドは姿を消す。しかも、調査団と中学校、そして中学校の生徒達もいっしょに消えてしまったのである。一連の事件は、ピラミッドに封印されている魔術師・サーダムを復活させるために、メダが仕組んだものだった。中学生達を助けるため、古月渚はピラミッドの中に瞬間移動し、内部からの破壊を試みる。
奇跡の花-悲しみは胸の奥深く(第3巻)
5000年前、まだ幼いヤシムは、病床に倒れた母親、イリューシャのために奇跡の花を探しに行った。その一方で、ヤシムの父親であり、イリューシャの夫である魔神一族の長は、イリューシャが弱っているのをいいことに、館に愛人のグラティガを招いていた。グラティガは一族一の美女で、のちに大魔神となるアフマドークの母親であった。アフマドークが、魔神一族では不吉とされる金髪で生まれたため、夫と子供を捨てた女だった。一方、親に捨てられた幼いアフマドークは、すべてに見捨てられた自分に仕えるという魔術師のサーダムと、運命的な出会いをするのだった。
プレイバックpart.1(第4巻)
5000年前にヤシムの主人だったシンドバッドのことを知りたい、という古月渚に応え、ランプは彼女を5000年前のバグダッドに転送した。アフマドークによって破壊されたバグダッドでは、ヤシムに力を授けられたばかりのシンドバッドが、苦手な魔法の修行に励んでいた。そんな中、アフマドークが放った獣人が現れ、町を襲い始める。渚は魔法で変身して、シンドバッドの代わりに戦おうとする。少女の渚ですら戦いに挑もうとする姿を見て、シンドバッドは自分のふがいなさに奮起。ついに魔法を力を己のものとし、獣人との戦いに臨む。
いつまでも君のそばに(第4巻)
現世に存在するエネルギーが足りなくなった妖精のメダは、自縛霊などを吸収し、なんとか生き長らえていた。自分の存在が消える前に古月渚を倒そうと考えたメダは、手当たり次第に人間を殺し、そのエネルギーを得て渚に最後の戦いを挑む。そんな中、事情を知らない将吾は、渚をかばって致命傷を受けてしまう。戦いの末に渚はメダを倒すことに成功するが、命をかけたメダの攻撃に、渚も大きなダメージを受ける。それを助けたのは、死んだはずの将吾であった。彼の体には、5000年前のシンドバッドの魂が甦っていたのである。そんな中、メダの消滅を予測していたサーダムは、アフマドークのために新しい下僕を用意する。それは、5000年前に亡くなったイリューシャとグラティガのクローンであった。
魔神宇宙の謎(第4巻)
砂漠の中にアフマドークの魔神城を発見したマイケルと古月豊は、城の調査へと旅立った。かつてサーダムは、魔神城の力を使い、アフマドークに強い暗示をかけていた。メダの死をきっかけに、暗示の効果が薄れてきたことを危惧したサーダムは、魔神城を呼びよせようと決意。そのエネルギー集めを、新しい下僕のイリューシャに任せた。イリューシャは白馬を使って人間のエネルギーを吸収し、駆けつけた古月渚とヤシムと対峙する。ヤシムは母親との思いがけない再会に動揺するが、これは本物の母親ではないと、身を切る思いで拒絶し、対峙する。一方、豊とマイケルは魔神城の奥で、宇宙空間のような部屋を発見していた。宇宙の中に球体が沢山浮いており、その中には竜などの生物が宿っていた。この空間こそサーダムが生命を生み出す部屋であり、サーダムはグラティガのクローン体を用いて、新たなアフマドークを生み出そうとしていたのだった。
登場人物・キャラクター
古月 渚 (ふるづき なぎさ)
17歳の女子高校生。4月19日生まれ、血液型はB型。身長は159センチで体重は46キロ。肩ほどのまでの髪を内側に大きくカールさせた、目が大きく闊達な少女。5年前に両親を飛行機事故で亡くしており、考古学者の兄、古月豊と二人暮らしをしている。同級生の将吾とは恋人同士で、同級生の市川と加瀬しのぶという二人の親友がいる。 偶然呼び出してしまったランプの精のヤシムによって精霊の魔力を与えられ、ひらひらのミニスカートに、頭に大きなリボンを付けた戦闘服姿へ変身し、アフマドークの手の者と戦うことになった。決め台詞は「日本人の怒りを思い知れ」で、手から魔力を放出し敵を倒す。ヤシムの魔法のじゅうたんに嫌われており、うまく操縦できない。
ヤシム
魔神一族の青年で、ランプの精でもある。膝まである真っ黒でウェーブがかったロングヘアに、尖った耳を持つイケメン。12月25日生まれ、血液型はA型、身長は189センチで体重は76キロ。もとは魔神一族の長の息子として生まれたが、人間好きな母親のイリューシャの影響を受けて、ヤシム自身も人間が好きになる。人間の女性、アイーシャに恋をして一族を追われ、ランプの精になった。 古月渚がランプを擦ったため、5000年ぶりに現代に甦った。ちなみに5000年前はシンドバッドに呼び出され、彼と共にアフマドークを封印したが、完全に殺すには至っていない。なお、アラーの神との約束で、ヤシム自身が直接誰かを手にかけることは禁じられており、5000年前にはシンドバッドに、現代では渚に精霊の魔力を与え、代わりに戦わせている。 ちなみに、渚の衣装がヒラヒラのミニスカートに大きなリボンとなったのは、現代の戦闘服がどんなものなのか解らなかったヤシムが、戦う魔法少女のアニメを見て、衣装をデザインしたため。空飛ぶ魔法のじゅうたんを持ち、運転もうまい。 渚からは名前ではなく、「ランプの精」と呼ばれることが多い。住み込み家政夫と思いこませる魔法を近所にかけて、古月家で暮らすが、渚を訪ねて来た将吾を初めて見た瞬間、将吾があまりもシンドバッドに瓜二つなため、甦ったのかと泣きだしてしまった。それほど、シンドバッドに思い入れが強い。
アフマドーク
5000年前の封印が解けて甦った大魔神の青年。見事な金髪の美丈夫だが、魔神一族の中では、金髪は不吉の象徴とされているため、幼い頃は両親にまでその金髪を疎まれる。母親のグラティガは、夫とアフマドークを捨てて、魔神一族の長の愛人となった。その後、唯一アフマドークに仕えたサーダムの教育を受けて育ったが、サーダムの冷酷な性格の影響を受けて破壊神となった。 一方で、短命で死んでいく下僕や妖精には心を動かされるなど、優しい一面も持ち合わせている。現代に復活してからは、下僕のパメル、イルメラを使って殺戮を開始。アフマドークのかかわった事件や事故で死んだ者の遺体は、急速に腐敗するという特徴を持つそのため、古月渚とヤシムに甦ったことを気づかれた。 しかし、車の事故で両親に死なれた幼い香月を預言者に仕立て上げて利用し、さらなる大量殺人を行った。メダの召喚で復活したサーダムと共に、世にさらなる破壊を広げようと画策する。
古月 豊 (ふるづき ゆたか)
考古学の教授で、古月渚の兄。少し吊り目のハンサムで、両親が亡くなっているため妹の渚と二人暮らし。最初は黒髪のロングヘアだったが、渚の言葉を受けて首にかかるほどの長さに切った。NASAのマイケルとは大学時代からの親友で、いっしょに調査や研究をすることもある。三条中学校で発生したピラミッド事件では、マイケルが密かに調べていたS島のピラミッドが消失したため、共同で調査にあたった。
マイケル
NASAで宇宙考古学を専門とする研究者の男性。現在はケープ・カナベラルのケネディ宇宙センターに勤務している。古月豊とは大学時代からの親友。金髪に垂れ目気味な甘いマスクで、眼鏡をかけた知的な風貌の持ち主。ひどい方向音痴で、日本を訪れた際も、迎えに来た豊に会えなかった。しかし、通りすがった加瀬しのぶが古月渚の親友だということは記憶しており、彼女のあとをつけて、一緒に豊臣埋蔵金の発掘に参加する。 機転の利く頭のいい人物で、発掘現場の地盤が弱いことを見抜き、ほかの場所から小判が出たと偽って、人々を安全な場所に誘導した。三条中学校で発生したピラミッド事件では、調査中のS島のピラミッドが消失したため、豊と共同で調査にあたった。
将吾 (しょうご)
17歳の男子高校生。古月渚の恋人。黒髪に大きな瞳の明るい性格の少年。考古学が大好きで、将来は古月豊の助手になりたいと考えている。ヤシムの前の主人であるシンドバッドに瓜二つで、のちに将吾の内にシンドバッドの魂が甦ることになる。
パメル
魔力によって生み出された女性。アフマドークの下僕。外見は妖艶な美人だが、かなり意地の悪い性格をしている。長くとがった耳、腰までの長さの明るい色の髪を、頭の高い位置で束ねている。大振りのイヤリングにビスチェ、だぼっとした腰巻きのようなズボン、といったアラビアンな衣装を身にまとっている。人間を操るのが得意で、アフマドークの命令で、トラック暴走事件や銀行立てこもり事件などを引き起こすが、古月渚に倒される。
イルメラ
魔力によって生み出された女性。アフマドークの下僕。長くとがった耳に黒髪の派手な美人。普段はパメルと同じくビスチェに腰巻きスカート、大振りイヤリング、チョーカーに腕輪といった服装。香月の母親に化ける際には、スーツに上品なまとめ髪のスタイルとなる。香月を助けに来た古月渚に倒される。
シンドバッド
5000年前のバグダッドの大商人の息子。短い黒髪の正義感にあふれた青年。アフマドークの命令で細菌をばらまき、バグダッドの民を2000人以上殺した時、異国へ薬を求めて旅立った。航海の途中で嵐に見舞われ、幽霊船と遭遇したが、ボロボロになった自分の船を捨てて幽霊船に乗り換え、無事に薬を持って帰国。幽霊船の中で、ヤシムが封じ込められていたランプを見つけて彼の主人となり、アフマドークと戦った。 自分の命をかけてアフマドークを封印したものの、殺すには至らなかった。当時、ランプの精であるヤシムが叶えてくれるという3つの願いのうち、2つ目までしか叶えていない。3つ目の願いは、5000年後に甦るであろうアフマドークを倒すことにしていた。 のちに、自分と瓜二つの外見をしている将吾の内に、魂を甦らせる。
香月 (かづき)
予知能力があると言われる幼い女の子。車の事故で両親を亡くしたところに現われたアフマドークと、両親を助けることを条件に契約を結んだ。普段は人間に化けたアフマドークとイルメラが、両親の代わりをしている。その後は、予知能力少女として事故や地震、山崩れなどを言い当てて日本中を驚かせたが、これらはすべてアフマドークの手によるもの。 これにより全国的に有名になり、ペンダントやリング、ピアスなどのアクセサリーやお守りが売られた。これらはすべてアフマドークの魔法がかかった呪いのアイテムで、人心をあやつるためのものであった。香月本人は気づいていないが、実際には両親とともにすでに死んでおり、動く肉体を持つ霊としてアフマドークに協力していた。
市川 (いちかわ)
高校2年生の少女。古月渚のクラスメイトにして親友でもある。ショートカットの髪型で、元気いっぱいの明るい性格をしている。パメルによって引き起こされたトラック暴走事件で母親を亡くしてしまうが、その後も気丈に振る舞っている。渚が魔法少女になって戦っているとは知らされていない。
加瀬 しのぶ (かせ しのぶ)
高校2年生の少女。古月渚のクラスメイトにして親友でもある。腰まであるロングヘアを背中のあたりでゆるく結んでいる。魔力に操られ、豊臣埋蔵金の発掘に出資するといって家出した。その途中で、偶然来日していたマイケルと出会い、いっしょに発掘に参加するが、マイケルの機転で危険から逃れることに成功する。渚が魔法少女になって戦っているとは知らされていない。
江波 (えなみ)
豊臣埋蔵金の古文書を見つけた考古学者。痩せてくたびれた雰囲気の中年男性。ぼさぼさの髪に太い眉、少し丸い鼻の冴えない風貌をしている。薄汚れた格好でホームレスをしながら出資者を募っていたところ、アフマドークに目をつけられて利用される。江波が発起人となって行われた豊臣埋蔵金発掘には、加瀬しのぶやマイケルも参加した。
メダ
架空の物語の中の妖精だったが、アフマドークによって命を与えられた妖精。カールしたロングヘアに花とリボンを付け、ぴったりとした妖精の衣装を着用している。バレエシューズのような靴をはき、膝付近までリボンを編み上げている。耳が長くとがっていて、眉が太く、目が大きくやや垂れ目の、愛らしい少女のような外見をしている。絶望を希望と思わせる能力を持ち、絶望した人間にのみ見える空飛ぶ帆船をあやつり、人間のマイナスパワーを集めている。 いじめられっ子で、麻薬の売人をしていた高校生の稲垣を利用し、古月渚を陥れようと目論んだ。ほかにもかつてアフマドークの側近であった魔術師、サーダムを、封印されていたピラミッドから復活させるなど、アフマドーク陣営にとって重要な仕事を果たす。
稲垣 (いながき)
高校1年生の少年。ワープロ同好会に所属しており、少女小説家を目指している。投稿する時のペンネームは「深見奈絵」。眼鏡をかけ、地味でおとなしい性格。同じワープロ同好会の古月渚に片思いをしていた。小説のワープロ打ちを、同じ同好会の平松に頼んでいた。親は会社を経営していて裕福だが、将来は親の会社を継ぐ事に悩みを持っていて、同じく親の会社を継ぐという悩みを持っていた平松と葉とは特に親しい。 不良に脅されて麻薬の売人をしており、平松にも麻薬を売っていた。そんな自分に嫌気がさして自殺しようとした時に、空飛ぶ帆船を見てメダに魅入られた。密かに渚が好きだったが、かつてふられており、メダに魅入られてからは渚を陥れようとする。
平松 (ひらまつ)
高校2年生の少女。ショートカットの髪型をした大人っぽい美女。ワープロ同好会に所属しており、後輩の稲垣とは、投稿小説をワープロ打ちして上げたり、親の会社を継がなければならない悩みを共有したりと親しく、彼から薬も買っていた。思い悩んで絶望していたが、メダに勇気を与えられ、真実を告白した直後に拳銃自殺した。同じクラスの生徒でイニシャルNFの人間も麻薬を買っていたと、日記に書き残したため、クラスで唯一同じイニシャルの古月渚が疑われたが、実際は稲垣のペンネームである「深見奈江」のことだった。
アーイシャ
5000年前の古代の人間の女性。ストレートのロングヘアに、アラビア衣装を身につけた美しい女性。魔神一族のヤシムを愛した罪で身を焼かれ、魂すらあの世に受け入れてもらえずにいる。ヤシムの悪夢の中に登場する。
アブジル
5000年前の古代バグダッドの初老の男性。バグダッド王主催の「アフマドーク対策会議」に参加している。爆薬を使ったアフマドーク退治を進言して王の信頼を得るが、実際は自分が主になろうと企んでいる。
氷川 いづみ (ひかわ いづみ)
ボブカットの髪型をした女子高校生。4年前に母親が死亡して以来、姉の氷川しずなと二人暮らし。当時、同級生たちのあいだで、しずなが不倫をして刺されたという噂がささやかれており、二度とその話をしないという約束で、歩道橋の細い手すりの上を歩いた。手すりから足を滑らせた落ちたところをヤシムに助けられたが、実際はすでに死亡しており、同じ光景を何度も繰り返している。
氷川 しずな (ひかわ しずな)
明るい色のさらさらのロングヘアをした優しげな美女。妹の氷川いづみと二人暮らし。妻子ある男性に金を貢がせ、その妻にめちゃくちゃに刺されたと噂されている。現在は病院のベッドで昏睡状態のまま眠っている。生霊となり、何度も歩道橋から落ちる悪夢の中にいるいづみを助けてほしいと、ヤシムに訴えた。
サーダム
魔神一族の中でも超一流の空間魔法と暗黒魔法の使い手として知られる魔術師。アフマドークの側近中の側近。サラサラのロングヘアに褐色の肌で、豪奢なアラビアの衣装を身にまとった、冷たい美貌の男性。アフマドークが忌み子として地底深く幽閉されている幼少時代から付き従っており、アフマドークの教育者でもあった。サーダム自身は魔神一族の長と人間の女の間に生まれたため、どちらにも属することができない。 そこで、アフマドークを支配者として、魔神の世界と人間の世界、二つを一つにしようと目論んでいる。ヤシムとは異母兄弟にあたるが、それはサーダムしか知らない。
イリューシャ
魔神一族最高位の女性。魔神一族の長の妻で、ヤシムの母親でもある。心優しく美しい人物。人間の乳母に育てられ、毒に侵された時に乳母が命がけで摘んできた奇跡の花によって一命を取り留めた。その後は、魔神一族の長の魔法で殺されかけるが、今度はヤシムが摘んできた奇跡の花によって救われる。しかし、サーダムの魔法で復讐の鬼と化したグラティガの夫に、グラティガの身代わりとなって殺されてしまう。 5000年後の現代、サーダムによってアフマドークの下僕のクローン体として甦り、白馬を使って人間の魂を集める。
グラティガ
魔神一族で一番の美女。派手な美人で、スタイルを強調する布地の少ない服で肌を見せ、豪華な宝石をたくさん身につけている。夫と子があったが、忌み子であるアフマドークを嫌い、魔神一族の長の愛人となった。魔神一族の長の妻、イリューシャが病に倒れた途端、魔神一族の長の館に招かれて住み着いた。魔神一族の長の寵愛をいいことに、イリューシャを殺そうと画策した。 5000年後、サーダムの魔術によってアフマドークの下僕のクローン体として甦る。
魔神一族の長 (まじんいちぞくのおさ)
魔神一族の長。妻はイリューシャ、息子はヤシム。長い黒髪、眉は太く二股に分かれており、鋭い目つきのワイルドな風貌をしている。美女のグラティカに心奪われ、イリューシャを高度な魔法で殺害しようとした。この計画は奇跡の花を持ち帰ったヤシムにより阻まれたが、そんなヤシムのことを可愛げのない息子だと忌み嫌っている。 イリューシャからは、誰も信じられない可哀想な男と評されている。
人魚 (にんぎょ)
マイナスエネルギーを吸収して現世に目覚めた伝説の魔物。上半身が人間の女性で下半身が魚、顔は爬虫類のようで口は大きく、尖った牙が生えている。歌声と称する不快な怪音波でサメを呼びよせることが可能。サメを操って船を襲い、人を殺し、魂を食らい、宝石を奪い取る。メダやアフマドークには「歌姫」と呼ばれている。
白馬 (はくば)
魔力によって生み出された美しい白馬。空を走り周り、その美しさに見とれた人間の魂を奪い取る。魂を奪われた人間は一瞬で白骨化する。普段は美しい白馬の姿をしているが、戦う時は悪魔のような醜い怪物に変貌する。この白馬を殺すには、白馬をあやっているイリューシャを殺すしかない。
場所
三条中学校 (さんじょうちゅうがっこう)
千葉県にある私立中学校。ある日地震が起きて、校庭にピラミッドが現れる。古月豊が調査団を組み、調査を開始する。ところが調査中にもう一度地震が起き、ピラミッドだけでなくこの中学校と生徒、調査団ごと跡かたもなく消えた。
ピラミッド
S島で極秘調査されていたピラミッド。サーダムが封印されていた。メダがサーダムを甦らせる儀式をしたために、S島から日本の三条中学校の校庭に突如現れた。そして集まった調査団と中学校自体、中にいた女子中学生達をさらった。ピラミッドの中は動物の胃袋のように脈打っていて胃酸の海がある。内壁からも強力な胃酸が出ていて、中学生達を助けるために入った古月渚の服を溶かした。
その他キーワード
魔神一族 (まじんいちぞく)
砂漠の真ん中の楽園に住む、不滅と謳われる一族。魔法を自在にあやつり、自然をも支配下に置いていた。人間からは恐れ崇められているが、魔神たちは人間を下等な生き物としてバカにしている。金色の髪は不吉とされ、忌み嫌われるため、金髪で生まれたアフマドークは幼い頃から魔力を封じられ、親の階級は下げられ、貧しい暮らしを余儀なくされた。
空飛ぶ帆船 (そらとぶはんせん)
妖精のメダが、人間のマイナスエネルギーを吸収して生み出した帆船。空を飛んでいるが、絶望している人間にしか見えず、姿を見た人間をメダが船に招き入れ、絶望を希望と信じ込ませる。そうやって集めた人間のマイナスエネルギーを貯めて力を増大させる。
奇跡の花 (きせきのはな)
魔の谷にだけ咲く花で、不思議な力であらゆる病を治す。魔の谷は魔神一族の魔法を精霊達がすべて封印してしまう谷で、魔神一族といえども簡単に近寄れない場所である。イリューシャが幼い頃にサソリ蛇の毒に侵されて死にかけた時に、イリューシャの人間の乳母が命がけで持ち帰り、イリューシャは一命を取り留めた。再び病に倒れたイリューシャを、今度はヤシムがこの花で助けることとなる。