作品の概要
基本情報
箱石達がペンネームを鹿子に改めてからの初連載作品。原作は『ギルティサークル』や『首を斬らねば分かるまい』など、多数の漫画原作を務める門馬司。
要旨と舞台設定
第二次世界大戦前の満洲国に、関東軍の兵士として赴任した日方勇が、戦地で右目の視力を失ったことで満蒙開拓義勇軍に転属となり、「真阿片」の製造・密売組織を築いていく物語。勇は、母親が患ったペストの治療費を工面するため、阿片の密造に手を染めることになった経緯がある。
ストーリー展開
物語は、新京、哈爾濱(ハルビン)、吉林など満洲国の各地を舞台に展開される。勇は麗華という女性との出会いを経て、売人の少女、リンとモンゴル民族の青年、バータルを仲間に加え、組織を拡大していく。その過程で、青幇、ロシアンマフィア、関東軍憲兵隊などさまざまな勢力との対立が描かれる。
ジャンル的特徴と位置づけ
本作は、満洲国における阿片専売制度や当時の社会情勢をテーマとした歴史サスペンス。阿片の製造工程や効果、流通経路などが具体的に描写され、歴史的背景と物語が密接に結びついている。
作品固有の表現技法と特徴
作品の特徴として、アナログ作画による緻密な人物描写と背景画が挙げられる。また、実在の歴史的事象と架空の物語展開を組み合わせた構成となっている。
世界観の構築と設定
満洲国の統治機構や阿片専売制度、民族間の対立、さらには社会階層の差異など、複雑な要素が物語の基盤を形成している。これらは、キャラクター間の関係性や事件の展開にも直接的な影響を与えている。
連載状況
講談社「コミックDAYS」で2020年4月9日から2021年9月16日まで連載されたのち、同社「週刊ヤングマガジン」に移籍し2021年43号から連載。
阿片と共に栄え、阿片と共に滅びた満州国
本作の舞台となる第二次世界大戦開戦前の満州国は、阿片による収益が国家財政の柱となっていた。日本人の日方勇と中国人の麗華は、満洲全土の阿片で収益を得ている日本陸軍満洲駐屯部隊・関東軍と、阿片密売で裏から満洲を牛耳っている中華民国の秘密結社・青幇の目を掻い潜りながら、高純度の真阿片を売り捌(さば)こうとしている。
史実と疑うほどのリアリティ
本作の細密な世界観は当時の陰鬱で退廃的な時代の雰囲気を醸し出しており、非常に痛々しく感じる。元関東軍の開拓移民でしかなかった日方勇が、母親のペスト感染をきっかけに高純度の阿片の製造と密売を始め、麗華と共に仲間を増やしながら成り上がっていく。その過程は完全フィクションでありながらも、キャラクター各々の複雑な生い立ちや繊細な心理描写が、実在人物をモデルにしているのではと錯覚するほどのリアリティがある。
阿片売買を巡る苛烈な争い
勇たちの敵となるのは元々満洲で阿片を密売していた青幇と、満州国皇帝を裏であやつりながら満州国中の阿片を管理しようとしている関東軍である。双方共に阿片の売買で収益を得ているため本来は対立関係にあるが、勇の生成する真阿片が高純度すぎることが原因で、阿片中毒者がふつうの阿片を吸わなくなるとの危機感を抱き、一時的に手を組んで勇たちを殺害しようとしている。
登場人物・キャラクター
日方 勇 (ひがた いさむ)
坊主頭の素朴な雰囲気を漂わせた少年。元関東軍兵士で、初登場時の年齢は18歳。昭和12年に関東軍に徴兵され、満州国へ家族と共に移住して来た。兵役中に銃で右目を撃たれて失明し、農業義勇軍に配属される。家族のために大金が必要となり、農業義勇軍でいっしょだった陣内茂が密栽培していた阿片芥子(けし)から阿片を作り出した。もともと植物が好きで、野草の知識に長(た)けていただけでなく、右目の視力を失ってから嗅覚が異常に発達し、匂いだけで食用の野草を識別できるようになった。麗華から「天才製作者」と評されるほどの極上の阿片を作り、その阿片は一吸いでもすれば異常なほどの依存性と快楽を得られる。
麗華 (りーふぁ)
中国人の女性。中国秘密結社「青幇」の三大ボスの一人である杜月笙の娘。絶世の美女と評されるほどの美貌を誇る。自らが運営していた阿片窟に日方勇が売りにきた自作の阿片の完成度に目をつけ、青幇を裏切って勇と共に阿片の密売を始める。販路開拓や販売戦略などの作戦立案を担当している。立国してから空席となっている満洲国の王座を狙っている。日本語をしゃべることができる。
クレジット
- 原作
-
門馬 司
書誌情報
満州アヘンスクワッド 22巻 講談社〈ヤンマガKCスペシャル〉
第1巻
(2020-08-11発行、978-4065204672)
第2巻
(2020-11-11発行、978-4065213421)
第3巻
(2021-02-10発行、978-4065222928)
第4巻
(2021-05-12発行、978-4065233405)
第5巻
(2021-08-11発行、978-4065243398)
第6巻
(2021-11-05発行、978-4065258750)
第7巻
(2022-02-04発行、978-4065268278)
第8巻
(2022-04-06発行、978-4065274774)
第9巻
(2022-06-06発行、978-4065281079)
第10巻
(2022-09-06発行、978-4065291160)
第11巻
(2022-12-06発行、978-4065300329)
第12巻
(2023-03-06発行、978-4065310571)
第13巻
(2023-06-06発行、978-4065320303)
第14巻
(2023-09-06発行、978-4065330135)
第15巻
(2024-01-09発行、978-4065343012)
第16巻
(2024-04-05発行、978-4065352427)
第17巻
(2024-07-05発行、978-4065362709)
第18巻
(2024-10-04発行、978-4065372616)
第19巻
(2025-01-06発行、978-4065381779)
第20巻
(2025-04-04発行、978-4065392232)
第21巻
(2025-07-04発行、978-4065401699)
第22巻
(2025-11-06発行、978-4065414019)







