阿片と共に栄え、阿片と共に滅びた満州国
本作の舞台となる第二次世界大戦開戦前の満州国は、阿片による収益が国家財政の柱となっていた。日本人の日方勇と中国人の麗華は、満洲全土の阿片で収益を得ている日本陸軍満洲駐屯部隊・関東軍と、阿片密売で裏から満洲を牛耳っている中華民国の秘密結社・青幇の目を掻い潜りながら、高純度の真阿片を売り捌(さば)こうとしている。
史実と疑うほどのリアリティ
本作の細密な世界観は当時の陰鬱で退廃的な時代の雰囲気を醸し出しており、非常に痛々しく感じる。元関東軍の開拓移民でしかなかった日方勇が、母親のペスト感染をきっかけに高純度の阿片の製造と密売を始め、麗華と共に仲間を増やしながら成り上がっていく。その過程は完全フィクションでありながらも、キャラクター各々の複雑な生い立ちや繊細な心理描写が、実在人物をモデルにしているのではと錯覚するほどのリアリティがある。
阿片売買を巡る苛烈な争い
勇たちの敵となるのは元々満洲で阿片を密売していた青幇と、満州国皇帝を裏であやつりながら満州国中の阿片を管理しようとしている関東軍である。双方共に阿片の売買で収益を得ているため本来は対立関係にあるが、勇の生成する真阿片が高純度すぎることが原因で、阿片中毒者がふつうの阿片を吸わなくなるとの危機感を抱き、一時的に手を組んで勇たちを殺害しようとしている。
登場人物・キャラクター
日方 勇 (ひがた いさむ)
坊主頭の素朴な雰囲気を漂わせた少年。元関東軍兵士で、初登場時の年齢は18歳。昭和12年に関東軍に徴兵され、満州国へ家族と共に移住して来た。兵役中に銃で右目を撃たれて失明し、農業義勇軍に配属される。家族のために大金が必要となり、農業義勇軍でいっしょだった陣内茂が密栽培していた阿片芥子(けし)から阿片を作り出した。もともと植物が好きで、野草の知識に長(た)けていただけでなく、右目の視力を失ってから嗅覚が異常に発達し、匂いだけで食用の野草を識別できるようになった。麗華から「天才製作者」と評されるほどの極上の阿片を作り、その阿片は一吸いでもすれば異常なほどの依存性と快楽を得られる。
麗華 (りーふぁ)
中国人の女性。中国秘密結社「青幇」の三大ボスの一人である杜月笙の娘。絶世の美女と評されるほどの美貌を誇る。自らが運営していた阿片窟に日方勇が売りにきた自作の阿片の完成度に目をつけ、青幇を裏切って勇と共に阿片の密売を始める。販路開拓や販売戦略などの作戦立案を担当している。立国してから空席となっている満洲国の王座を狙っている。日本語をしゃべることができる。
クレジット
- 原作
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門馬 司
書誌情報
満州アヘンスクワッド 18巻 講談社〈ヤンマガKCスペシャル〉
第1巻
(2020-08-11発行、 978-4065204672)
第2巻
(2020-11-11発行、 978-4065213421)
第3巻
(2021-02-10発行、 978-4065222928)
第4巻
(2021-05-12発行、 978-4065233405)
第5巻
(2021-08-11発行、 978-4065243398)
第6巻
(2021-11-05発行、 978-4065258750)
第7巻
(2022-02-04発行、 978-4065268278)
第8巻
(2022-04-06発行、 978-4065274774)
第9巻
(2022-06-06発行、 978-4065281079)
第10巻
(2022-09-06発行、 978-4065291160)
第11巻
(2022-12-06発行、 978-4065300329)
第12巻
(2023-03-06発行、 978-4065310571)
第13巻
(2023-06-06発行、 978-4065320303)
第14巻
(2023-09-06発行、 978-4065330135)
第15巻
(2024-01-09発行、 978-4065343012)
第16巻
(2024-04-05発行、 978-4065352427)
第17巻
(2024-07-05発行、 978-4065362709)
第18巻
(2024-10-04発行、 978-4065372616)