妄想男子の恋と欲望の物語
入退院を繰り返している三津谷小秋と高校3年生の時から付き合っている大学生の酒島泳太は、小秋の見舞いに訪れた際にOLで彼女の従姉・夏川夏澄と出会う。夏澄は小秋と仲がいいだけではなく、姉妹のように雰囲気と容姿がよく似ていた。この出会いをきっかけに泳太は、性欲を我慢したままで小秋と浅い関係を続けていることを自覚する。その様子を見抜いたように思わせぶりな言動を繰り返す夏澄に心が揺れ動く泳太は、花火大会の夜に彼女と体の関係を持ってしまう。欲望に溺れる泳太とさまざまな女性たちが織りなす、夏の花火のように鮮烈で儚い恋愛模様が、エロティック・サスペンスや繊細な心理描写を交えながら耽美なタッチで描かれる。
ヤりたい盛りの主人公の性衝動が人間関係を拗らせる
主人公の泳太は、昔から体の弱い小秋と「浅い付き合い」を続けていた。体の関係がなくても「深い付き合い」をしていると言い聞かせて満足していた泳太だったが、小秋にそっくりな従姉の夏澄と出会ったことで心境に大きな変化が訪れる。心の奥底では小秋と肉体関係を持てないことに不満を覚えていた泳太は、流されるままに夏澄と体を重ねてしまう。その後も夏澄の持つ不思議な魅力と欲望に溺れて何度も彼女と体を重ねながらも、小秋に対して気まずさと罪悪感を募らせる泳太だったが、ある日を境に夏澄と連絡が取れなくなってしまう。
恋の儚さと切ない恋心
夏澄とまったく連絡が取れなくなっていた泳太は、夏澄を忘れたい一心でアルバイト先の同僚・菜々と付き合い始める。その後、菜々とあっさり別れたあとは友人に紹介された佐保と付き合うようになった泳太だったが、佐保からは小秋と別れるようにうながされる。佐保と正式に付き合うために小秋に別れを告げる泳太だったが、小秋から最後の花火大会だけはいっしょに行ってほしいと言われ、彼女と最後の夜を過ごすことになる。しかしそこで判明したのは、小秋が抱え続けていた予想外の本音や切実な思いとともに、しばらく会えなくなっていた夏澄の秘密だった。小秋が選択した衝撃的な決断や、夏澄が泳太を誘惑していた本当の理由も明かされる。
登場人物・キャラクター
酒島 泳太 (さかしま えいた)
とある大学に通う男子で、三津谷小秋の彼氏。本屋でアルバイトをしている。高校3年生の時から小秋に思いを寄せており、彼女の体が弱いため、恋人になっても「深い付き合い」はできないと理解しつつも告白し、交際を始める。19歳の頃、小秋の見舞いに訪れた際に小秋の従姉の夏川夏澄と出会う。夏澄に小秋の面影を感じ、やがて小秋と付き合いながらも夏澄に惹かれていき、肉体関係を持つようになる。夏澄と会えなくなってからは、性欲のはけ口を求めるかのように、同僚の菜々や同じ大学生の佐保とも体の関係を持つようになる。
三津谷 小秋 (みつや こあき)
酒島泳太の彼女で、穏やかな性格の女性。昔から体が弱く、現在も入退院を繰り返している。茶髪のボブヘアに青白い肌の華奢な体型で、バストサイズも控えめ。高校3年生の時に泳太に告白され、自分と付き合っても「深い関係」にはなれないと告げたうえで交際を始める。従姉の夏川夏澄とは容姿や雰囲気が似ている。しかし泳太からは、「小秋が女装したら夏澄に似ている」と揶揄されていた。夏澄とは実家で何度か同居した仲で、姉妹のようになんでも話せる良好な関係を築いている。
夏川 夏澄 (なつかわ かすみ)
会社員の女性で、三津谷小秋の従姉。黒髪をセミロングに伸ばした美人で、小秋と容姿や雰囲気が似ているが、豊満なバストを持つ。小秋の見舞いに訪れた際に、酒島泳太と出会う。泳太に対してはミステリアスで意味深な言動で煙に巻いている。やがて泳太と肉体関係を持つようになり、彼と二人きりのときは自らのことを「小秋」と呼ばせている。また、泳太とはあくまで肉体のみの関係を貫こうとしており、性行為のとき以外は二人で会うのを断っていた。しかし、何度か体を重ねたあとは泳太と距離を置くようになり、連絡もしていない。