概要・あらすじ
西暦2482年、エア・カーから転落し死亡したレオナ・宮津は、ニールセン博士の手術で脳の大半を人工頭脳に代えられ復活する。しかし、それ以来彼には生物が無機物の塊に見えるようになってしまった。唯一、かれに人間らしく見えたのは、ある会社に所有されて働くロボット、チヒロであった。二人は密かに会ううちに愛し合うようになり、レオナ・宮津はチヒロを奪って逃走するが、吹雪に埋もれて立ち往生し、人間やその臓器を売り買いする密輸団の手に落ちてしまう。
そして二人は思わぬ形で愛を成就することになる。
登場人物・キャラクター
レオナ・宮津 (れおな・みやづ)
火の鳥の血を手に入れることに成功するが、横取りしようとする身内に殺害される。ニールセン博士の画期的な手術は、彼の脳の大半を人工頭脳に代えるものだったが、それにより彼は復活する。ところが、よみがえった彼には、人間などの生物が無機物の結晶体のように見え、無機物に親しみを持つようになり、脳の大半が人工頭脳なら、自分は人間なのかロボットと煩悶する。 やがてE・カーマイクル建設会社で働くロボット、チヒロ61298号と、お互いに愛し合うようになりレオナ・宮津は、チヒロを奪って逃走するが、人間やその臓器を売り買いする密輸団に捕らえられ、体をバラバラにされ密輸団のボスの体と足を合わされて再構成される。 その手術の際、記憶をすべてチヒロの電子頭脳に移し、人工頭脳の中でチヒロとレオナ・宮津の意識は一体となる。
ロビタ
人間に仕えるロボット。通常のロボットと違ってその人工頭脳は疲労を感じるので休養が必要。時には主人に口答えをするような人間くささがあり、親しみを込めて、ロボットではなくロビタと人々に呼ばれる。地上のロビタはすべて西暦3030年の集団自殺で失われるが、月で働いていた1体のロビタだけは自殺する代わりに自ら動力をきり、300年を月面に横たわって過ごし、宇宙を遍歴する猿田博士によって拾われ、その助手となる。
チヒロ
『火の鳥 復活編』に登場するロボット。型番はチヒロ61298号。E・カーマイクル建設会社で働くロボット。レオナ・宮津と愛し合うようになり、美しい小川のほとりでデートするように、煮えたぎる溶鉱炉を前に愛を語る。密輸団のボスのレオナ・宮津の合成手術でレオナ・宮津が体を失うとき、その記憶はすべてチヒロの人工頭脳へ移され、その体も改造されロビタの第1号となる。
トワダ
アメリカ、コロラド高原地帯ナバホ山附近の小屋に住む米国人の猟師。レオナ・宮津に雇われて火の鳥を追っていたが、レオナ・宮津がその生き血を採ることに成功すると、山の神の血を採ったと恐れ出す。レオナ・宮津の身内にやとわれ、事故に見せかけてレオナ・宮津を殺した。
ファーニィ
月潟宇宙運輸株式会社のボスの愛人アンドロイド。ボタン一つで怒ったり、甘えたり、気分が変わる。ロビタに中途半端にエネルギーを充填され、ボスに抱きついたまま停止、ボスは身動きできず、酸素がなくなった月面移動車で死亡。ロビタは結果的に殺人を犯したことになる。
行夫 (ゆきお)
親よりもロビタになついていた幼児。主人からアイソトープ農園へ送られたロビタを追っていき、放射能を浴びて死んでしまう。ロビタは行夫を農園へ誘い込んだとして有罪となり、溶解処分を言い渡される。
密輸団のボス (みつゆだんのぼす)
移民星へ労働力として人間を売り飛ばす密輸団のボス。眼球や内臓などもあつかう闇の商人。疲弊してきた自分の体をレオナ・宮津の体と合成することで蘇らせようとする。成功したかに見えた手術だが、1年後に体に異常が起き、錯乱して仲間と撃ち合い、アジトごと爆発してしまう。
珍 (ちん)
密輸団の一員。手塚治虫のレギュラー・キャラクター、ハム・エッグ。売り飛ばした臓器をつかった人間たちが、やがて、身体に異常をおこして死んでいくのをみて、人間には手を出してはいけない領域があると感じるようになる。
ドク・ウィークデイ
密輸団で医師として働く。二つの生物をばらばらにして、一つの生物にするという研究をしており、レオナ・宮津を密輸団のボスの体を一つにする。
猿田博士 (さるたはかせ)
『火の鳥 未来編』で登場した猿田博士の壮年時代。星から星へと飛び回り「生命の秘密」を探す旅の途中、月面で自ら動力をきって倒れているロビタを発見。助手とする。
月潟宇宙運輸株式会社のボス (つぎがたうちゅううんゆかぶしきがいしゃのぼす)
月面で倉庫の番人として暮らす。ロビタに間接的に殺害される。手塚治虫のレギュラー・キャラクター、ランプ。
ニールセン博士 (にーるせんはかせ)
事故で死んだレオナ・宮津を、人工細胞と人工頭脳によって生き返らせるという画期的な手術を成功させる。
火の鳥 (ひのとり)
アメリカ、コロラド高原地帯ナバホ山で、レオナ・宮津に撃たれ、燃えて復活する直前、生き血を2CC抜き取られる。レオナ・宮津と心で会話をする。
イベント・出来事
ロビタの集団自殺 (ろびたのしゅうだんじさつ)
『火の鳥 復活編』で扱われる事件。西暦3030年、人間の男の子行夫をアイソトープ農園へ誘い込んで殺したという罪を着せられ、容疑者とされたロボット、ロビタ10数体が溶解処分にされると、それにあわせて36200体のロビタが高熱爐に投身自殺をするという事件が起きる。溶解処分直前、すべてのロビタは昔、たった一人のロビタから分かれて増えた兄弟であり、一人を死刑にすればロビタ全員が死ぬと予告していた。
関連
火の鳥 (ひのとり)
火の鳥と呼ばれる超生命体が見守る古代から超未来にわたる人類の叙事詩。 関連ページ:火の鳥