侍火消、源吾の新たな挑戦
本作は、現代の消防士にあたる江戸時代の「火消」に焦点を当てた時代劇アクション。「ぼろ鳶」と揶揄(やゆ)される火消集団「新庄藩火消組」の再建を軸に、「あきらめない者たちの再生と再起」をテーマに熱いドラマが展開される。主人公の源吾は、江戸随一の侍火消「火喰鳥(ひくいどり)」の異名を持ち、新たな仲間を集めながら組織の立て直しに挑む。作中では火消の専門用語も丁寧に解説されており、現代とは大きく異なる江戸時代の火事事情を学びながら楽しむことができる。また、リアルな画風で描かれる源吾たち火消の命懸けの勇姿や、迫力満点のアクションシーンも見どころとなっている。
「火喰鳥」の再起と、「ぼろ鳶」再建への道
かつて「火喰鳥」の異名を持ち、江戸随一の侍火消として名を馳せた源吾。しかし、ある出来事をきっかけに定火消を辞めて以来、妻を心配させるほどの貧しい暮らしを送っていた。そんな中、羽州新庄藩の御城使、折下左門が源吾の自宅を訪れ、「新庄藩火消組」の再建を依頼する。その火消組は頭取を失って以来、「ぼろ鳶」と揶揄されるほど壊滅的な状態に陥っていた。お調子者の新之助が頭取並を務めているものの、組は深刻な人手不足に悩まされていた。限られた予算の中でこの難題を引き受けることになった源吾は、早くも頭を抱えるのだった。
「訳あり」の仲間たちとの絆
源吾は「頭取一人が優れているだけでは、火消組は成り立たない」と考え、現役の鳶たちの訓練を進めると同時に、経歴を問わず優れた才能を持つ人材の発掘に奔走していた。まずは怪力無双の壊し手となり得る人物を求め、新之助と共に町へ出た源吾は、かつて「荒神山」として大活躍していた幕内力士の寅次郎と出会う。その常人離れした膂力(りょりょく)に惚れ込み、すぐに火消組への加入を誘うが、寅次郎はケガによる連敗が続く中、母親のために力士を辞められないと断る。こうして源吾は、一癖も二癖もある「訳あり」の仲間たちを集めていく。彼らはそれぞれの過去と向き合いながら、共に業火に立ち向かう熱い活躍を見せるのが魅力となっている。さらに、江戸で頻発する不審な放火事件にまつわる謎や、その背後に潜む陰謀も次第に明らかになっていく。
登場人物・キャラクター
松永 源吾 (まつなが げんご)
かつて江戸で一番の定火消として数々の火事場で活躍し、「火喰鳥(ひくいどり)」の異名を持つ凄腕の元火消の男性。算術に優れた倹約家で、美しい妻、深雪を持つ。ある火事で負傷して以来、一線を退いていたが、羽州新庄藩の御城使、左門の訪問を受け、新庄藩火消組の新たな頭取として召し抱えられる。現場では特異な聴力と卓越した統率力を発揮し、個性豊かな部下たちと共に業火に立ち向かう。また、他者の才能を的確に見抜く慧眼(けいがん)を持ち、褒め上手で人材育成にも長けている。好きなものは冬に吸う煙草で、苦手なものは茄子とぬめぬめしたもの。
鳥越 新之助 (とりごえ しんのすけ)
新庄藩火消組の頭取並を務める少年。明るくお調子者で、人の懐に入り込むのが得意なため、組のムードメーカー的存在となっている。一度見た光景を決して忘れない驚異的な記憶力を持ち、優れた剣術の才能も兼ね備えている。その「一刀流剣術」と「居合術」は、かつて火消よりも武士になることを目指し、武芸や学問に励んでいた時期に身につけたものである。殉職した火消の父親に対しては複雑な思いを抱いており、特に動物の命を救うために命を落とした父親の最期を軽蔑している。好きなものは酢味噌和(すみそあ)え。
クレジット
- 原作
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今村 翔吾
書誌情報
火喰鳥 羽州ぼろ鳶組 2巻 秋田書店〈少年チャンピオン・コミックス〉
第1巻
(2025-09-08発行、978-4253003483)
第2巻
(2025-11-07発行、978-4253005012)








