無重力少年

無重力少年

いたって普通の女子高校生・小波風子は、思い人にして重力を自在に操る能力を持った少年・船越流風からその能力を伝染されてしまう。さらに、同じく流風から能力を伝染された夏希と浜名夕海を含めた彼女ら四人のあいだで渦巻く感情を描く、超能力ラブコメディ。「りぼん」2001年9月号から2002年9月号にかけて連載された作品。

正式名称
無重力少年
ふりがな
むじゅうりょくしょうねん
作者
ジャンル
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あらすじ

第1巻

高校1年生の小波風子は、船越流風に密かに思いを寄せていた。そんなある日、風子は流風が壁を歩いている姿を目撃。その正体を知るため、思い切って流風にアタックするうちに、流風が「重力を自由にあやつれる能力」を持つ事を知る。さらにその能力は流風の近くにいる人にも伝染してしまうらしく、風子にも重力を操る能力が宿ってしまった。何はともあれきっかけを作り流風に近づく事ができた風子だが、流風の事を知れば知るほど恋心が募っていく事に気づく。そんな中、風子の前に夏希浜名夕海が現れる。二人は流風と中学時代からの付き合いであり、風子は彼ら三人のあいだには何か深い事情がある事を察する。風子は疎外感を感じながらも、流風たちから話してくれるまではと、今まで通り友達として接する事にするのだった。

第2巻

ある日、小波風子が能力を使っている姿を盗撮した写真が、風子のカバンの中に入れられていた。犯人は中学生の頃に少しだけ風子と付き合っていた潮崎鉄郎だった。鉄郎は一方的に自分をふった風子とよりを戻すためにアプローチするが、風子が本気で船越流風が好きだと知ると諦めて身を引く。鉄郎との事で風子は流風への恋心を再認識し、思い余って告白もしないうちに自分からキスをしてしまう。しかし、流風は特に責めるでもなく、その事には一切触れずにいた。

やがて春休みが始まり、夏希の紹介で風子と流風、浜名夕海の四人は沖縄のリゾートホテルでアルバイトをする事になった。沖縄で過ごすうちに、風子は夏希が沖縄で事故に遭って左耳が聴こえなくなってしまった事、そしてそのきっかけを作ったのが、夕海と能力を伝染させてしまった流風である事を知る。この事が三人の仲をぎこちなくしていると気づいた風子は、それぞれの本音を引き出させ、和解させる事に成功する。

第3巻

沖縄から帰って来てからというもの、夏希浜名夕海の能力が弱まっていた。もともと大人になると能力は消えるといわれていたが、なぜいきなり能力が消えつつあるのかは不明のままだった。そんな時、船越流風の叔父・凪沢修が山で行方不明になってしまう。慕っている修を助け出すために流風は一人で山へ向かうが、小波風子にはばれてしまい、チョロと共に捜索する事になった。修が見つからず山小屋で休んでいる最中、風子は流風が幼少の頃から辛い思いをしてきた事を聞かされる。その後無事に修を救出し、修から流風の幼少の頃の話を聞いた事で、風子は夏希と夕海の能力が突然弱まってしまった理由に気づく。これが流風の中にある心のわだかまりを解くきっかけになると確信した風子は、すぐに彼に伝えようと走り出す。

登場人物・キャラクター

小波 風子 (こなみ ふうこ)

高校1年生の女子で、クラスはC組。セミロングの茶髪で、くせっ毛を気にしている。活発な性格をしており、物事に白黒をきっちりつけたがる性質。船越流風の不思議な能力に気づいてからは積極的にアプローチして、彼の正体を知る事になる。流風といっしょにいたために能力が伝染し、流風ほどではないがある程度重力をあやつれるようになり、壁を歩いたり自分の体重を変化させる事を自然と行うようになった。 流風に対しては初対面の頃から心を惹かれており、知り合ってから恋心を確信した。潮崎鉄郎とは中学生の頃付き合っていたが、友人から恋人になる事に違和感を覚え卒業直前に一方的に別れを告げ、それ以来避けるようになった。しかし潮崎自体を嫌いになったわけではなく、流風への思いを伝えたのちは友人として付き合っている。

船越 流風 (ふなこし るか)

高校1年生の男子で、小波風子と同じC組のクラスメイト。ぼさぼさの黒髪で右耳にはイルカ型のピアス、左耳には丸型のピアスを付けている。重力をあやつれる超能力を持っており、無重力状態にして浮いたり、自身の体重を自由に変化させる事や、好きなところに重力を働かせて壁などを歩く事ができる。また、流風の近くに一定期間いると、その相手に能力が伝染する事がある。 ただし、伝染に必要な距離や時間などは不明で、大人には伝染せず、また能力者となった場合も、大人になると徐々に能力が弱くなり消えてしまうといわれている。なお能力が伝染した者は誰もが流風のように自在に重力をあやつれるわけではなく、個人差によって扱える能力に幅が出る。詳細は不明だが、流風の家系では時おりこの能力を持つ者が生まれており、流風の前には流風の曽祖父が能力者であった。 浜名夕海や夏希とは中学生の頃からの付き合いで、夏希に誘われダイビングを始め没頭するようになったが、夏希に能力を伝染させた事で間接的とはいえ夏希の耳を不自由にし、ダイビングの夢を諦めさせてしまった。その後悔から自身も海を敬遠するようになり、自戒のためにピアスを開けた。 夕海に対しては淡い恋心を持っていたが、夕海が夏希しか見ていないことに気づくと二人を応援するようになった。風子に対しては当初鬱陶しい存在だと思っていたが、話すうちに少しずつ惹かれるようになり、無意識に嫉妬したり自分から誘うようになっていった。風子にキスをされてからはさらに意識をするようになったが、恋人になる事で関係が崩れる事を恐れ、しばらくは現状維持の関係でいた。 幼い頃に自身の能力のせいで弟の船越流宇を傷つけたため、家族に迷惑をかけないようにと自から距離を置き、凪沢修の家に下宿するようになった。しかし両親との関係は悪くはなく、定期的に電話をしたり連絡を取り合っている。

浜名 夕海 (はまな ゆみ)

高校1年生の女子で、小波風子と同じC組のクラスメイト。黒髪をショートカットにしている。あまり表情が変わらず感情がわかりにくいが、相手の事を中心に考える優しい性格。船越流風と夏希とは中学時代からの知り合いで、夏希に対してはずっと恋心を持ち続けていた。夏希の耳が不自由になってから夕海の方から告白し、恋人同士となったが、しばらくはお互いの気持ちをわかり合えずぎこちない関係になっていた。 しかし風子の手助けもあり和解し、気持ちの通じ合った恋人になる事ができた。風子からは「ユミユミ」と呼ばれ、知り合った当初は戸惑っていたが時間が進むにつれて打ち解けるようになった。流風の影響で重力をあやつる事ができるが、壁を歩いたりなどの比較的簡単なコントロールしかできない。 夏希と気持ちを通じ合わせてからはその力も弱まっている。

夏希 (なつき)

高校1年生の男子で、クラスはD組に所属している。金髪のロングヘアをしている。苗字は不明。軟派な性格で小波風子とはそりが合わず初対面の頃から口喧嘩をしており、風子の事を「ブー子」と呼んでいる。船越流風と浜名夕海とは中学生時代からの仲で、流風の影響で重力を多少あやつる事ができるが、壁を歩く以外は風子ほど自在にはできない。 ダイビングが趣味で中学生の頃は頻繁に潜っていたが、夕海が落としたアクセサリーを拾おうとした際に崖から海に転落し、水圧の影響で左耳がほとんど聞こえなくなりダイビングもできなくなってしまった。夏希自身はその事に関しては流風も夕海も責めておらず水に流しているが、自分のせいで二人の心を縛っている事を気にしている。 夕海に対しては恋心を持っていたが、夕海は流風の事が好きだと勘違いしており、耳が聴こえなくなったあとに夕海から告白してきたので、自分に同情し罪滅ぼしをするために付き合っていると思っていた。しかし風子の手助けにより自分の勘違いだと気づき夕海と和解する事ができた。父親は沖縄でリゾートホテルのオーナーをしており、いわゆるお金持ちであるがそういった雰囲気を見せずに生活している。

チョロ

フェネックギツネの子供で尻尾の付け根にハートマークのような模様がある。船越流風が拾って来て学校の目立たないところで飼育している。人間ぎらいで最初は流風にしか懐いていなかったが、連れ去られて売られそうになった時に小波風子が命がけで助けてくれたため、風子にも懐くようになった。もともとは凪沢修が撮影用に借りてきたのだが、撮影中に逃がしてしまい、後日流風によって発見されたところを拾われた。 修が撮影時にフラッシュを焚いて驚かした事が人間に懐かない原因となっている。

凪沢 修 (なぎさわ おさむ)

船越流風の叔父で、年齢は31歳。職業はフリーのカメラマン。色黒の肌に顎ひげを生やし、黒い長髪を結び基本的にサングラスを着用している。親元を離れた流風を引き取って同居しているが、撮影のため家を空ける事が多い。カメラマンとしては有名で、プロカメラマンを目指す潮崎鉄郎から尊敬されている。幼少の頃から流風と親交があり、理解者の一人として流風からも慕われている。

潮崎 鉄郎 (しおざき てつろう)

高校1年生の男子。クラスは不明だが小波風子とは別のクラスである。短髪にツリ目が特徴で制服のブレザーの下にパーカーを着ている。写真部に所属しており、将来の夢はプロのカメラマンで凪沢修を尊敬している。中学生時代は風子と恋人同士だったが、中学校を卒業する前に風子から一方的に別れを告げられた。そのことに納得しないまま、同じ高校に入った。 しかし、別のクラスになったうえ、風子が関わりを避けていたため疎遠になっていた。そんな時、風子が船越流風と知り合って超能力を身につけ、その能力を使っている姿を目撃すると、それを撮った写真をネタにして再び話すきっかけを作った。当初の目的は風子とよりを戻す事だったが、風子が流風を好きだとわかると身を引いて友人として付き合う事にした。 風子の超能力自体には偏見を持っておらず、写真を撮ったのも他人に言いふらしたりするためではなく、風子と話すチャンスを作るためだけであり能力を使う風子に対しては自然体で接している。

船越 流宇 (ふなこし るう)

船越流風の弟。見た目は流風に似ているが目つきが鋭い。幼少の頃に流風から伝染した能力をコントロールできずに壁から落下してしまい頭に大ケガを負ったが、現在は薄く傷跡があるだけで健康に過ごしている。

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