概要・あらすじ
美濃国の商人である松波庄五郎は、大怪我をした猿彦の命を救ったことをきっかけに武士となった。やがて庄五郎は猿彦を参謀として合戦で手柄を挙げ、祐向山城の城主となって「西村勘九郎」と改名する。さらに大水害を契機に稲葉山城に移った後、美濃の名門一族を継承して「斎藤利政」を名乗るようになった。そして利政率いる軍勢は、美濃国の守護代職の座を巡る敵対勢力を倒し、美濃国の覇権奪取を目指す織田信秀軍との、長良川を挟んでの一大決戦に挑むのだった。
登場人物・キャラクター
松波 庄五郎 (まつなみ しょうごろう)
美濃国で大八車に荏胡麻油を乗せて売り歩いていた青年。のちに「西村勘九郎」「斎藤利政」と名を変えていく。粗末な小屋で妻と二人暮らしをしている。幼い頃は寺で坊主の修行をしていたこともあり、薬の調合ができる。命を救った猿彦の手助けを得て武士になる夢を叶え、その後は政治的な手腕を発揮しつつ、美濃国の守護代職の座を目指す。 数々の合戦に挑む野心家でもある。実在の人物である斎藤道三がモデルとなっている。
猿彦 (さるひこ)
右目に眼帯をした伊賀忍者の青年。忍術と剣術の達人であり、同時に陰謀術策に長けている。命の恩人たる松波庄五郎の野望実現のための片腕的存在となる。古代中国の戦術様式に詳しく、合戦の際の参謀としても非凡な才能を発揮する。
かえで
松波庄五郎の妻。夫の庄五郎に献身的に尽くす美人で、裁縫や料理など家事もてきぱきとこなす働き者。大怪我を負った猿彦の命を救うため、「困った時はおたがいさま」と、寝ずの看病をするほどに優しい性格の持ち主でもある。
長井越中守 (ながいえっちゅうのかみ)
土岐正房に仕える家老。大きな手柄を立てた油商人時代の松波庄五郎の卓越した資質を見抜き、彼が武士になるための後押しをする。物分りがよく、豪放磊落な性格だが、味方を信頼し過ぎるという危うい一面も持っている。実在の人物である長井長弘がモデルとなっている。
土岐 正房 (とき まさふさ)
川手城の城主で美濃国を収める守護大名。おおらかな性格で、家来である長井越中守からの口利きで、引見した松波庄五郎を大いに気に入る。武士たるものは武芸の心得が必要、という信念を持っているものの、肉親の意見を受けて一度決めたことを撤回するような、優柔不断な一面がある。実在の人物である土岐正房がモデルとなっている。
藤左衛門 (とうざえもん)
土岐正房の家来で、自身の武芸の実力を過信している武士。一介の油屋風情に過ぎない松波庄五郎が重用されることに、激しい敵愾心を燃やす。気に食わない相手には闇討ちを仕掛けて殺害を謀る、という武士らしからぬ卑怯な性格。
土岐 頼芸 (とき よりあき)
美濃国の鷺山城の城主で、土岐正房の弟。長井越中守を信頼しており、彼の推薦で商人だった松波庄五郎を家臣にする。機嫌が良い時は、杯を手に大声で笑う無類の酒好き。斎藤利良とは無二の親友で、お互いを信頼し合う飲み仲間でもある。実在の人物である土岐頼芸がモデルとなっている。
土岐 盛頼 (とき もりより)
土岐正房の嫡男で、正房亡き後に美濃国の守護大名となる。猜疑心の強い性格で、町人出身の松波庄五郎を敵視しており、彼を召し抱えようとする正房にも意見していた。のちに国盗り合戦の渦中に巻き込まれ、波乱万丈の人生を送ることとなる。実在の人物である土岐頼武がモデルとなっている。
斎藤 利良 (さいとう としなが)
稲葉山城の城主で、美濃国の名門である斎藤家の当主。土岐頼芸とは、いつも酒を酌み交わして談笑することを楽しみにしているほど親しい間柄。政治にはあまり関心がなく、困った時は頼芸の忠告に従うという穏健な性格。実在の人物である斎藤利良がモデルとなっている。
織田 信秀 (おだ のぶひで)
尾張国を収める戦国大名。美濃国の土岐一族とは親しい間柄。斎藤利政(松波庄五郎)によって越前国に追われていた土岐盛頼と組んで兵を挙げ、利政軍と一戦を交えることとなる。統率力に優れ、戦術にも長けた武将。実在の人物である織田信秀がモデルとなっている。
お館 (おやかた)
伊賀の里に住む伊賀忍者軍の総帥。白髪を長く伸ばした眼光鋭い老人。猿彦の師匠にあたり、猿彦にはしばしば忍者としての役割を説き聞かせる。また、猿彦が窮地に陥った際には、手下を使って救いの手を差し伸べる。
場所
長良川 (ながらがわ)
美濃国を流れる大きな河川。戦国時代の合戦時にたびたび要衝地点となった。天文4(1535)年の大豪雨では、死者2万人以上もの被害をもたらした。この時の大災害を契機に、西村勘九郎(松波庄五郎)は「水害から国を守る者が美濃国を制す」という意識に目覚め、国盗りの意思を強めていくこととなる。