犬・犬・犬(ドッグ・ドッグ・ドッグ)

犬・犬・犬(ドッグ・ドッグ・ドッグ)

異常だが超然とした性質を持つ伊達賢と、彼に関わる人間たちの織りなすドラマを描いた作品。作家花村萬月による原作は、本作のために書き下ろされた。

正式名称
犬・犬・犬(ドッグ・ドッグ・ドッグ)
ふりがな
どっぐ どっぐ どっぐ
原作者
花村萬月
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
関連商品
Amazon 楽天

概要・あらすじ

京都の小さな町工場で働く青年伊達賢は、虫も殺せなさそうな優男ぶりとは裏腹に、眉一つ動かさずに人を殺す異常者。小学生のときに自分の両親を殺している。そのため陰では「麻痺してる賢ちゃん」という意味の「マヒケン」というあだ名で呼ばれ、ヤクザからも恐れられていた。賢は同じ工場で働き始めた宮下道男から、絵の描き方を習うようになる。

そして道男と賢の愛人佐藤佐和子は、次第に恋仲となり、二人で賢の親代わりになることを考える。だが、賢は自分の過去を捨てて生きることを恐れるのだった。

登場人物・キャラクター

伊達 賢 (だて けん)

京都の町工場九条金属で働く青年。「麻痺してる賢ちゃん」という意味の「マヒケン」というあだ名を持つ。柔和で虫も殺せなさそうな優男だが、平然と殺人を犯す異常性を持つ。殺人は大した理由もなく行われ、一切の証拠を残さないのでヤクザからも恐れられている。小学生のころに両親を殺害し、施設で育っているが、その時期の記憶は曖昧。 両親や施設の人間から虐待されたためか、痛覚や色覚などさまざまな感覚が麻痺しており、身の回りのあらゆることを他人事のように感じている。絵を描くことに興味を持ち始め、宮下道男から絵を習い始める。駐車してある大型バイクを盗んで乗り回すのが趣味。生まれ育った家を両親の墓のように感じており、異常な執着を見せる。一日の終りには、何があっても家に帰ろうとする。

宮下 道男 (みやした みちお)

九条金属で働き始めた中年の男。かつては東京に住む売れっ子の画家だったが、スランプに陥って失踪し、数年前から京都に住んでいる。基本的に笑顔で、人畜無害そうな人柄。伊達賢から話しかけられたことがきっかけで、賢に絵を教えるようになる。次第に賢の描いた絵に天才性を見出すようになり、賢を画家として世に出すことに使命感を感じ始める。

佐藤 佐和子 (さとう さわこ)

雄琴の高級ソープ嬢で伊達賢の愛人。賢には強い執着心を抱いている。賢のデッサン練習のモデル役をしていることがきっかけで宮下道男と知り合い、道男とも恋仲になる。そのうち道男と二人で賢の親代わりをしたいと思うようになり、賢を連れて旅に出ようと考える。

高沢 (たかざわ)

長髪をオールバックにしているチンピラの男。綾佑会天羽組・森村の運転手をしているが、正式な組員ではない。伊達賢のことは知らず、路地でわざと賢のつま先を轢いてしまい、その落とし前として、左手の小指を詰められる。そのことで賢と組長を恨み、丸学商会の男から買った拳銃で二人を殺そうとするが、失敗。賢や組員たちから拷問を受ける。

組長 (くみちょう)

初老のヤクザの男。組員15人ほどの綾佑会天羽組の組長。人心掌握術に長ける。伊達賢のことを高く評価しているが、同時に恐れており、愛憎入り交じった感情を抱く。そのため、賢を可愛がりつつも組には引き入れようとせず、腫れ物を触るように扱っている。

鳥井 (とりい)

殺人で少年院に入った経験を持つ19歳の青年。背が低いことがコンプレックス。九条金属に勤め始め、伊達賢や宮下道男たちと仲良くなる。自己中心的な性格で「天下を取る」ことが夢だったが、賢と遊びまわっているうちに賢の傑出した部分を感じ取り、自分の凡庸さを思い知る。その後、賢をきっかけにして知り合った綾佑会天羽組に入ることを決意する。

森村 (もりむら)

メガネをかけたヤクザの男。綾佑会天羽組の組員で、キャデラックを所持。何となく面倒を見ていた高沢に運転手をさせていたが、そのせいでトラブルを呼びこむ。高沢の死後は、鳥井に運転手をやらせるようになる。

丸学商会の男 (まるがくしょうかいのおとこ)

本名不明の拳銃ブローカーの男。貧しい身なりの老人だが、競馬の八百長レースで儲けるなど、拳銃の仲買以外にも手広く商売をしている。警察にも顔が利く裏社会の実力者。拳銃を買いに来た高沢や鳥井のことを「松井」と偽名で呼ぶ。

後藤 (ごとう)

画商の男。宮下道男の古い知り合いで、銀座に自分の画廊を持ち、業界内での発言力が強い。長年音信不通だった道男から伊達賢の描いた絵を見せられ、即座に賢の個展を開催することを決意する。

クレジット

原作

花村萬月

SHARE
EC
Amazon
logo