概要・あらすじ
新東京国際空港発、大阪国際空港行きのジェット機179便がハイジャックされた。同便に乗り合わせていた「犯罪交渉人」の峰岸英太郎は、乗客の協力のもと、空港管制塔の副室長である安井忠俊と連絡を取ることに成功する。英太郎のアドバイスに従って交渉を始める安井は、燃料不足でジェット機が墜落する危機を回避するため、ハイジャック犯には知られないように、平壌から金浦空港へルートを変更するよう機長に命じる。
そんな中、主犯格の金勝一が、見せしめのためにスチュワーデスに銃を発砲、機内は緊張状態に陥る。
登場人物・キャラクター
峰岸 英太郎 (みねぎし えいたろう)
警視庁刑事部特殊捜査課の交渉班に所属している、「犯罪交渉人」を務める若い男性。童顔で虚弱体質ゆえに頼りなく見えるが、大胆不敵な行動に出ることが多い。行動科学を専攻しており、犯罪者の行動の先を読むことを得意としている。声に不思議な魅力があり、それが交渉術の最大の武器でもある。
酒堂 アイ (さかどう あい)
警視庁刑事部特殊捜査課に専門職として勤務することになった、臨床心理士の若い女性。交渉のサポートを担当する。かつて窪山仁が起こした誘拐事件をきっかけに、臨床心理士を目指すこととなった。峰岸英太郎に興味を持ち、彼の交渉術をいつも固唾をのんで見守っている。
平光 (ひらこう)
警視庁刑事部特殊捜査課の交渉班に所属し、現場リーダーを務める中年男性。元捜査一課の鬼刑事で、捜査一課の面々が現在も一目置く存在。性格は暗いが、現場に出ると昔の捜査一課魂が騒ぎ出す。右足を引きずって歩くが、その原因は不明。
小太りの男性 (こぶとりのだんせい)
警視庁刑事部特殊捜査課の交渉班に所属する若い男性。小太りでメガネをかけている。普段は立てこもり犯に対する交渉マニュアル作りをしている。誰にでも親切な人物ながら存在感が薄い。
蓮見 (はすみ)
警視庁刑事部捜査一課の刑事で、峰岸英太郎の同期の男性。少々天然なところがあり、当初は英太郎を「耕太郎」と間違えて呼び続けていた。英太郎の才能を肌で感じてからは、左遷された英太郎が交渉班に復帰できるよう上司に嘆願するなど、熱血漢でもある。
早乙女 乙女 (さおとめ おとめ)
エピソード「case:1 hijack」に登場する。ハイジャックされた飛行機で峰岸英太郎の隣の席に座っていた若い女性。はじめは英太郎を頼りなく思っていたが、英太郎が人質になった時には連絡係を務めるなど、時間が経つにつれ、英太郎との連帯感を強めていく。
金 勝一 (きむ すんいる)
エピソード「case:1 hijack」に登場する。ハイジャックの主犯格の男性。メガネをかけた中背で細身の容姿をしている。朝鮮民主主義人民共和国の特殊工作員でもあり、大韓民国に抑留されている同志38名の即時解放を要求しているが、大義のために人を傷つけることにジレンマを感じている。
金 聖愛 (きむ そんえ)
エピソード「case:1 hijack」に登場する。ハイジャック犯の1人で10代の女性。ジェット機のエンジン音を聞き分けられるほど耳が良く、異例の早さで日本語も習得した。金勝一ら仲間の役に立ちたいと思っている孤独な少女。爆弾製作時に負傷したため左手が不自由。
昌海 (ちゃんへ)
エピソード「case:1 hijack」に登場する。ハイジャック犯の1人。身長が190センチ近くある巨漢の男性で、ニット帽を被っている。根は優しく、不用意に人質を傷つけることを嫌い、暴走する金勝一を止めようと銃を向ける。
安井 忠俊 (やすい ただとし)
エピソード「case:1 hijack」に登場する。新東京国際空港管制塔副室長を務めるベテラン職員。峰岸英太郎に犯人側と直接交渉をしてほしいと要請される。冷静沈着な判断力を持ち、ハイジャック犯に知られないようにルート変更を機長に指示するなど、大胆不敵な一面がある。
若い男性 (わかいだんせい)
エピソード「case:1 hijack」に登場する。ハイジャックされた飛行機に乗り合わせた若い男性。峰岸英太郎と早乙女乙女の会話を聞き、船便に乗る際に使うつもりだった衛星携帯電話を渡す。「空路と燃料の不一致」示すコックピットの警告音を知っているなど、機械オタクでもある。
真里子 (まりこ)
エピソード「case:2 suicide」に登場する。自殺志願者の女子高生。峰岸英太郎のアパートの屋上で飛び降りようとした際、英太郎に説得される。母親の存在をプレッシャーに感じていることが自殺の動機だと話すが、それが本心ではないことを、自分でも気づいていない。
リーダー
エピソード「case:3 bank robbery」に登場する。銀行強盗の主犯格で元行員の若い男性。ずる賢く利己的な性格で、掘削班に罪をかぶせ、自分は人質を装って逃げようとする。フランスの有名な銀行強盗事件を模倣し、地下トンネルを掘って銀行の金庫に侵入する計画を立てた張本人。
掘削班 (くっさくはん)
エピソード「case:3 bank robbery」に登場する。リーダーをサポートする3人組で、内2人は兄弟。地下トンネルを掘って銀行の金庫に侵入したが、トンネルの落盤事故が発生して退路を断たれた。計画が失敗したため、リーダーと決定的に仲間割れする。
放送部の部長 (ほうそうぶのぶちょう)
エピソード「case:3 bank robbery」に登場する。峰岸英太郎の学生時代の女友達。英太郎と同じ放送部に所属し、部長を務めていた。非常に頭がいい女性で、「英太郎チャンは声がいいので警察官になっても必ず成功する」と当時から断言していた。
おっさん
エピソード「case:4 arson」に登場する。本庁から所轄へ左遷となった峰岸英太郎の上司となった中年男性。管轄は中華街で、台湾系移民の自警団と連携することもある。洞察力が鋭く、一見軟弱そうに見える英太郎の本質を、早くから見抜いていた。
増明 (せんみん)
エピソード「case:4 arson」に登場する。中華街の自警団のリーダーの男子高校生。台湾系の移民でもある。自分たちの街は自分たちで守るという強い信念を持ち、新参者の峰岸英太郎を敵対視している。仲間意識が強く義理堅い。
安怡 (あんいー)
エピソード「case:4 arson」に登場する。増明の仲間で、父親と密航船に乗って日本にやって来た台湾人の少女。父親を安くこき使い、死に至らしめた大陸系移民への復讐心を胸に秘めている。
タツ子 (たつこ)
エピソード「case:5 kidnapping」に登場する。酒堂アイの友達で、小学校2年生の時に誘拐された利発な女の子。学校帰りにアイと一緒に遊んだ後に誘拐されるが、これが日本の犯罪史上に残る大事件となってしまう。
窪山 仁 (くぼやま ひとし)
エピソード「case:5 kidnapping」に登場する。刑務所から脱走した死刑囚。タツ子を誘拐した男性。無口だが、ある宗教に傾倒していたと噂されている。人間離れした戦闘能力を持ち、不可解な行動で警察を翻弄する。
マウントスノー
エピソード「case:COUNTØ」に登場する。NY市警保安官事務所の警部。交渉人の研修に訪れた各国の研修生を指導する教官を務める。黒人でプロジェクト(政府が用意した公営住宅)の出身者。授業では、何故か峰岸英太郎に執拗に厳しく指導する。
ニーネ
エピソード「case:COUNTØ」に登場する。マウントスノーが峰岸英太郎に執着する理由に興味を持っている。18歳で結婚している女性だが、ミセスと呼ぶ英太郎に、思い込みは命取りだと警告する。
おばあちゃん
エピソード「case:6 vs. CULT」に登場する。峰岸英太郎の母方の祖母。30年近く診療所を開いている医者。英太郎に「死ぬときに最後に頼りになるのは聴覚だ」と教えた人生の師匠で、今でも英太郎の身体を診ている。
波多野 浩 (はたの ひろし)
エピソード「case:6 vs. CULT」に登場する。新興宗教団体「メシアの号令」の教祖で、坊主頭の巨漢の男性。教祖になる前は電気関係の仕事を営んでいたが、当時から野心家で、現実と妄想の区別がつかない言動も多かった。過去に係ったとされる犯罪は100を超えるといわれている。教団の信者には「お父様」と呼ばれている。
矢野 朱 (やの あかり)
エピソード「case:6 vs. CULT」に登場する。新興宗教団体「メシアの号令」内で、かつては「運命の子」「予言の子」と呼ばれ、教団のナンバー2であった10代の少年。6年前に突如教団から姿を消した。声で人を操れるという洗脳能力を持つ。他の信者から「使徒様」と呼ばれるほどカリスマ性がある。
未央 (みお)
エピソード「case:6 vs. CULT」に登場する。新興宗教団体「メシアの号令」の信者。矢野朱と矢野朱の母の脱走騒ぎの全容を知る10代の少女。自分の母親がその事件に係っていたという罪の意識から、朱に尽くしてきた。しかし、報われずに、やり場のない悲しみを抱えている。
中尉 (ちゅうい)
エピソード「case:6 vs. CULT」に登場する。矢野朱と行動をともにする仲間の少年。ニット帽を被っている。予知夢の能力を持っている。元国体出場の経歴があり、俊足を誇る。矢野朱と相沢伸之とは少年院で知り合った。
相沢 伸之 (あいざわ のぶゆき)
エピソード「case:6 vs. CULT」に登場する。矢野朱と行動をともにする仲間の少年。大男で頭に包帯を巻き、武闘派のように見えるが、意外に慎重なところがあり、仲間想いでもある。朱と中尉とは少年院で知り合った。仲間内では「アイボン」と呼ばれている。
洞馬 (とうま)
エピソード「case:6 vs. CULT」に登場する。矢野朱と行動をともにする仲間の少年。メガネをかけている。基本的にシニカルな性格だが、負けず嫌いで、時に感情を爆発させることもある。朱、中尉、相沢伸之に共通する秘密を知っており、峰岸英太郎の交渉が成功するはずがないと踏んでいる。仲間内では「メガネ」と呼ばれることがある。
矢野朱の母 (やのあかりのはは)
エピソード「case:6 vs. CULT」に登場する。矢野朱の母親で、喘息持ちだった朱を抱えて苦労していた女性。新興宗教団体「メシアの号令」に入団してからは、心から笑わなくなった。朱を教団に奪われそうになって脱走を試みるが、現在行方不明。
スキンヘッドの男 (すきんへっどのおとこ)
エピソード「case:6 vs. CULT」に登場する。新興宗教団体「メシアの号令」の信者で、教祖である波多野浩の側近。「決死隊」のリーダー的存在。細身で、スタンドカラーのシャツにスーツ姿の薄気味悪い男。侵入して来た矢野朱たちを始末しようとする。
集団・組織
メシアの号令 (めしあのごうれい)
エピソード「case:6 vs. CULT」に登場する。新興宗教団体。教祖の波多野浩が、20年前に現在の組織の原形を作り上げた。当時から教義の中で、「犯罪者の犯罪行為を認める」という意味の教えを説いていたため、警察にマークされていた。脱獄した死刑囚の窪山仁が起こした誘拐事件と、何らかの関連があるといわれている。 この教団への強制捜査のため、所轄に左遷されていた峰岸英太郎は、警視庁の交渉班に呼び戻されることとなった。
決死隊 (けっしたい)
エピソード「case:6 vs. CULT」に登場する。新興宗教団体「メシアの号令」で教団の汚れ仕事を一手に担う存在。顔も指紋も消して、教祖である波多野浩のために尽くす集団。教団の暗部の象徴でもある。リーダーはスキンヘッドの男で、隊員は顔に包帯を巻き、アフガンショールのような布を被った不気味な姿をしている。