あらすじ
第1巻
ある日、ハドリエル王国の王子アンドレアは、狩りをするため領地の城にやって来ていた。その城内では、王子をもてなすために下働きのアローがせわしなく働いていた。作業を進めながら、アローは王子の人となりを周りの下働きになにげなく聞いていた。しかし下働きの人達は、アンドレアと話をするどころか顔すら見た事もない有様で、結局アローは仕事に追われ、疲れて寝てしまう。 その夜、突如クーデターが発生し、アンドレアとアローの居る城が襲撃されてしまう。わけもわからず逃げ惑う中、アローはアンドレアとその部下であるライオネルに出会う。ひとまず身を隠すため、三人は城から離れた森にある、使用人達の小屋へと逃げる。その後、ライオネルは状況を探るため王都へ向けて出立する。国の一大事に巻き込まれてしまったアローは混乱するが、当のアンドレアは気にも留めぬ様子でアローに着替えと食事の用意を命じるのだった。こうして城を追われたアンドレアと、彼の従者に任命されてしまったアローは、新天地である森の中で優雅な逃亡生活を開始する事となる。
第2巻
森に住むイリヤとイリヤの祖父、そしてアローの世話になり、アンドレアは優雅な逃亡生活を続けていた。その暮らしの中で、アンドレアは領民の苦しい生活状況、身分の違いによる格差など、今まで知らなかった事を学んでいく。そんなある日、アンドレアとアローは、潜入した街でセリーナと出会う。彼女が町はずれで一人暮らしをしていると知り、親睦を深める一行。しかしセリーナは、アンドレアの命を狙うピゴットの部下ギルバートと旧知の仲であった。だがセリーナがギルバートを恋い慕っている事を知ったアンドレアは、民の結婚の承認をするのも王の務めだと、一肌脱ぐ事にする。結果、アンドレアはセリーナとギルバートの恋を見事に実らせ、真に領民の上に立つ王となるべく、近くの村で世直しを始めるのだった。
第3巻
近くの村で出会ったゴントから、民のための政治とは何かを学び、アンドレアは徐々に王としての資質を高めていく。そんな中、クーデターの首謀者アガレスは、ついに業を煮やして本格的なアンドレア討伐に乗り出す。さらにピゴットも兵を集め、アンドレアの住む森に兵を派遣する。絶体絶命の窮地に陥るアンドレア一行。しかし、王都で密かに同志を集めていたライオネルが帰還し、少ないながらも兵の準備ができた事を伝える。そこでアンドレアは、森の生活に別れを告げ王都を取り戻す事を決意する。そして一行は、ピゴットの住む城、さらにアガレスのいる王都へ攻め入るのであった。
登場人物・キャラクター
アンドレア
ハドリエル王国に住む、美しい顔立ちと巻き毛が特徴の青年。王子として何不自由ない生活を送っていたが、クーデターにより国を追われる。その際にアローと出会い、彼と共に王領森林に逃げ込む。基本的に一人では何もする事ができず、着替えや食事の準備、そして髪のカールなどすべてをアローに任せている。しかし、幼い頃から密かに剣の訓練をしており、普通の相手なら剣を抜かずとも倒す事ができる実力を持つ。 周りからは無能で天然の王子と揶揄されているが、実際は思慮深く心優しい性格で、下働きであるアローや出会う人々にも敬意を表し、対等に接している。森での生活を始めてからは、アローやイリヤの祖父、さらに近くの村に住むゴント達から、民の生活や領主が強いる重税など、国の現状を学んでいく。 そして真の王として返り咲くため、王都を取り戻す決意をする。
アロー
アンドレアが狩りをするために訪れた城で、下働きをしていた青年。しかしアンドレアの顔を見た事は一度もなかったため、どのような人物なのかはいっさい知らなかった。ある夜、住んでいた城がクーデターにより襲撃され、逃げ惑う中でアンドレアとライオネルと出会う。その後は身を隠すため、二人を王領の森林にある小屋に案内した。 それからはアンドレアの世話係として、彼の髪をカールで巻いたり、着替えや食事の準備をする。また、狩りをする際には獲物を追い立てる役を担っており、ありとあらゆる雑用を任されている。初めは何もできないアンドレアに対し、嫌気がさして逃げ出そうとしていたが、彼の優しい言葉と心遣いを受け、従者として仕える事を決意する。
ライオネル
ハドリエル王国で政務官を務める男性。普段はアンドレアのお目付け役として彼に同行している。まじめな性格で、アンドレアに狩りに誘われても断ったり、遊び惚けているアンドレアに苦言を呈する事もある。クーデターが起きたためアンドレアを連れて逃亡し、その道中でアローと出会う。初めはアローを刺客かと疑っていたが、アンドレアの制止により事なきを得る。 その後、現状を探るため王都に潜入し、密かに同志を集め、アンドレアが反撃に出るための兵も準備する。
ピゴット
アンドレアの狩りに同行していた青年。アンドレア曰く長年の狩り仲間であったが、実際はクーデターの首謀者であるアガレスと通じており、彼の計画に協力していた。しかし、クーデター当日にアンドレアに逃げられてしまう。その時はすぐに捕まえられると油断していたが、放った刺客をアンドレアによって返り討ちにされたり、イリヤを助けるためにアローが投げた石に当たったりと、散々な目に遭う。
ギルバート
王領森林を管理する森林官として働いている男性。領主であるピゴットの命令を受け、アンドレアの捜索に加わる。冷静沈着で思慮深い性格のため、当初からアンドレアの事を優秀な人物だろうと推測していた。その後、イリヤとイリヤの祖父がアンドレア達と関係しているのではないかと考え、イリヤの祖父を人質に取る。しかし、自ら助けに来たアンドレア達により作戦は失敗に終わる。 その後もピゴットの命令に従いアンドレアを捕えようとするが、セリーナの一件でアンドレアに恩ができたため、以降は彼に内緒でサポートにまわる。
セリーナ
アンドレアとアローが潜入したアゲートの街で出会った女性。男達にナンパされていたところを、アンドレアにより助けられた。現在は町はずれの小屋で一人暮らしをしているが、幼い頃はギルバートの家の近くに住んでおり、二人で遊んでいた。その時からギルバートに対し恋心を抱いていたが、森林官と農民という身分の違いを恐れた両親に反対される。 それからはギルバートと疎遠になり、さらに両親を亡くしてからは売春宿で働いていた。再会したギルバートに対し、かつてと同じく恋心を抱くも自身の過去があるため気持ちを隠そうとする。しかしアンドレアの説得および協力により最後はギルバートと結ばれる。
イリヤ
アンドレア一行が逃げ込んだ王領森林で出会った少女。普段は森の奥で祖父と二人で暮らしている。明るい性格で、アンドレア達と出会ってからはお茶やお菓子などを作って届けたりした。ある日の事、近くを見回りに来たピゴットと出会う。その際にイリヤが飼っている犬の事を咎められ、捕えられそうになるが、アローによって助け出される。
イリヤの祖父 (いりやのそふ)
孫のイリヤと共に王領森林の近くで暮らしている老人。アンドレア達と出会った際に森の近くに住む農民達の現状を訴えた。そのほかにも王領森林で暮らすための知恵を一行に授け、アンドレアからは「森の師匠」と呼ばれている。ある日、ギルバートにアンドレア達と関係しているのではないかと疑いをかけられる。その際、アンドレア達をおびき出すための人質に取られるが、動じる事はなく、アンドレア達の事をいっさい話さなかった。 のちにアンドレア達によって助け出されてからは、作物の育て方や動物の飼い方など、さらに多くの事をアンドレアに教えていく。
ゴント
世直しをするためアンドレアが訪れた村に住む老人。ほかの村人達がをアンドレアの事をもてはやす中、ただ一人彼に対し否定的だった。その理由は、いずれアンドレアが玉座に戻ったら、かつて自分達を苦しめた王達と同じく重税を課してくるに違いないという考えからだった。しかし本人と出会い、彼の真摯な態度を見て考えを改める。そして民達の現状、正しい政治の在り方をアンドレアに訴えた事で、彼から政治の先生だと尊敬されるようになる。 その後は村人達と協力し、ピゴットの動向などをアンドレアに伝えるなど、陰ながらサポートしていく。
アガレス
アンドレアのいとこであり、クーデターの首謀者である男性。アンドレアが狩りに赴き、そしてアンドレアの父親が外国を訪問しているところを見計らってクーデターを起こす。新国王となってからは軍備を増強し、敵国へ攻める予定だった。だが逃亡したアンドレアを捕える事ができず、さらには民を省みない政治を強いる事から反対派を結集させてしまう。 最後は持ち前の兵を動員してアンドレアを捕えようとするが、逆にゴントやギルバートなどの協力を得たアンドレアによって捕らえられてしまう。