あらすじ
第1巻
ある日、ワーデルセラム王国内で義賊「狼の爪」として活動しているルカ・ロビンソンとシルヴァン・オウレットは、王宮に来るようにと呼び出しを受ける。「狼の爪」としての活動が明るみになり、処罰されるのではないかと不安を抱くルカだったが、実際に対応したのは王女のノエル・オンス・ワーデルセラムだった。ノエルは国内の治安維持のために宮廷捜査官を結成しようとしており、ルカとシルヴァンに協力を依頼しようと考えていたのだ。その申し出をルカとシルヴァンは、報酬がもらえることもあって快諾。しかし実際に宮廷捜査官として活動する際には、ノエルも同行するという。こうして三人は宮廷捜査官として活動を始め、悪徳貴族を告発していく。そしていっしょに過ごす時間が増えるにつれ、ルカとノエルはお互いを意識するようになる。そんな中、ベアール伯爵の身辺で若い女性が行方不明になる事件が相次ぎ、ノエルは人身売買が行われているのではないかと疑う。事件を解明するため、ドレスアップしたノエルと女装をしたルカは、ベアール伯爵の屋敷で催されるパーティーに参加する。
第2巻
宮廷捜査官のルカ・ロビンソン、ノエル・オンス・ワーデルセラム、シルヴァン・オウレットはベアール伯爵の屋敷に潜入し、みごとに事件を解決する。しかしそんな中、ルカは古くからの知人であるリリーが事件にかかわっていたことを知り、内心動揺する。その後もルカたちの宮廷捜査官としての活動は続き、迷子のミコト・ニシキと出会ったり、脱走したエディの愛猫であるオパールの捜索を行ったりしていた。そんな中、ノエルのもとに許嫁のゼロ・ベラフィネールが訪ねてくる。ゼロはノエルが宮廷捜査官として活動していることを知り、危険だから今すぐ辞めてほしいと懇願。同時にゼロは、ルカの前でノエルにプロポーズをする。ノエルに好意を抱いているルカはそれを阻止したいと思いながらも、身分の差から言い出すことができない。一方で、ルカに好意を抱くノエルも内心ではゼロのプロポーズを嫌がりながらも、一国の王女として個人の恋愛感情を優先していいものかと悩む。
第3巻
ノエル・オンス・ワーデルセラムはゼロ・ベラフィネールと結婚することを決意し、ゼロの父親がおさめるベラフィネ王国へとあいさつに赴く。身分の差から結婚を阻止することのできないルカ・ロビンソンだったが、天気の予測が得意なグレン・クロフォンドからもうすぐ強い嵐が来ると聞き、険しい道を通るノエルの身を案じてあとを追う。予想どおり天候は突然悪化し、ノエルは崖から落ちそうになるが、それをルカが救出。そして二人は、初めてお互いに思い合っていることを認識する。しかし、その時はそれが異性としてなのか、友達としてなのかを確認できずに終わってしまう。結局距離は縮まらないまま、ルカとノエルは宮廷捜査官として活動を続けていくが、ルカは捜査中にライラと再会。久しぶりに顔を合わせたルカとライラが親しそうにしている姿を見て、ノエルは思わず嫉妬してしまう。ノエルはルカが自分をどう思っているのか知りたいと行動を起こすが、ルカは生きるためとはいえ過去に窃盗をしていたことや、リリーに関するトラウマを知られたくないあまり、ノエルを強い言葉で拒絶してしまう。
登場人物・キャラクター
ルカ・ロビンソン
シルヴァン・オウレットと共に義賊「狼の爪」として活動している青年。年齢は18歳。両親はおらず、非常に貧しい孤児院でリリーと共に育った。生きていくために市場の食べ物を盗んでいた経験から、窃盗のスキルは高い。また当時、城下町にお忍びでやって来ていたノエル・オンス・ワーデルセラムから剣術の手ほどきを受けており、剣の基本的なスキルも習得している。酷い飢えとリリーからの裏切りに遭って、孤児院を飛び出したことをきっかけにシルヴァンと出会い、「狼の爪」を結成する。のちにノエルから依頼を受けて狼の爪の活動を一時休止し、宮廷捜査官として活動することになる。また、ノエルといっしょの時間を過ごすうちに恋心を抱くようになるが、身分の差もあって気持ちを伝えられずにいる。なお、ノエルから好意を向けられていることには気づいていない。誕生日は7月10日。好きなものはグレン・クロフォンドの作ったスパゲッティで、嫌いなものは幽霊や怪奇現象といった理屈では説明できないホラー全般。
ノエル・オンス・ワーデルセラム
ワーデルセラム王国の第17代目王女。年齢は16歳。細身ではあるが剣術の達人で、ルカ・ロビンソンを簡単に打ち負かすほどのスキルの持ち主。幼い頃にはたびたび城下町にお忍びで遊びに行き、その際に出会ったルカに剣術を教えた過去を持つ。明るく素直な性格で、好奇心が人一倍旺盛。また、国民の幸せを強く願っており、宮廷捜査官の指揮を執るようになった。城下町で行動をするときには、ルカの弟と立場を偽り、男装をして過ごしている。ルカといっしょの時間が増えていくうちに恋心を抱くようになるが、自分の独りよがりではないかと不安を抱き、気持ちを伝えられずにいる。なお、ルカから好意を向けられていることには気づいていない。許嫁のゼロ・ベラフィネールに対しては決して嫌ってはいないものの、恋愛感情は持てずにいる。また、兄で王子のアルバート・オンス・ワーデルセラムからも溺愛されるなど、周囲の男性から好意を寄せられることが多い。誕生日は3月4日。好きなものは肉料理で、嫌いなものは水泳。
シルヴァン・オウレット
ルカ・ロビンソンと共に義賊「狼の爪」として活動している青年。年齢は21歳。ワーデルセラム王国から北の位置にある「ベラフィネ王国」出身で、両親はおらず孤児院で育つ。ベラフィネ王国にはいい思い出がなく、過去のことに触れると機嫌が悪くなる。故郷からワーデルセラム王国にやって来た際、バーで威張り散らしていた貴族の存在が気に入らず、貴族から金品を奪うためにルカと共に「狼の爪」を結成する。のちにノエル・オンス・ワーデルセラムから依頼を受けて一時活動を休止し、宮廷捜査官として活動するようになる。非常に整った容姿をしており、城下町の女性から絶大な人気を誇る。女性に対しては優男を装っているものの、実際は腹黒く計算高い一面を持つ。ノエルには本性を知られているため、本来の性格のまま接している。誕生日は2月15日。好きなものは野菜や果物で、嫌いなものは肉料理。
グレン・クロフォンド
ワーデルセラム王国の城下町で、バーを経営している男性。年齢は28歳。バーを営む一方で情報屋としての裏の顔を持ち、義賊「狼の爪」に悪事を働いている貴族たちの情報を流している。ワーデルセラム王国王女のノエル・オンス・ワーデルセラムとも通じているなど、広い人脈を持つ。犬並みの嗅覚を持ち、空気の匂いから天気の変化を予測する能力を持つ。誕生日は11月26日。好きなものは甘い食べ物、お金、お酒、葉巻で、嫌いなものは禁煙と禁酒。
アルバート・オンス・ワーデルセラム
ワーデルセラム王国の王子で、次期国王候補の青年。年齢は24歳。妹のノエル・オンス・ワーデルセラムを溺愛し、宮廷捜査官のルカ・ロビンソンとシルヴァン・オウレットに対しては、義賊「狼の爪」として活動していたために警戒している。特にルカに対しては敵意をむき出しにすることが多い。誕生日は6月15日。ノエルからは「アル兄さま」と呼ばれている。
ミコト・ニシキ
ワーデルセラム王国と海を隔てた隣国の「ミカゲの国」からやって来た少女。年齢は9歳。好奇心からワーデルセラム王国行きの荷物が積まれている馬車に乗り込み、単身入国を果たした。入国してすぐにシルヴァン・オウレットと出会い、一目ぼれ。両親が迎えに来たものの、シルヴァンがいるからとそのままワーデルセラム王国に滞在することを決めた。生まれつき大きなマナを持ち、強力な回復魔法を使うことができる。また、水を自由に扱うこともできる。誕生日は4月8日。好きなものは魚料理とシルヴァンで、嫌いなものは退屈な時間。
ライラ
ワーデルセラム王国内の貴族から雇われ、用心棒を務める女性。年齢は22歳。スタイルが非常によく、初対面のノエル・オンス・ワーデルセラムが思わず敗北感を覚えたほど容姿端麗。義賊「狼の爪」として活動する以前、ルカ・ロビンソンに今後のアドバイスや戦いの技術を教えた縁もあり、ルカをまるで弟のようにかわいがっている。明るくサバサバとした性格で、細かいことはまったく気にしない。誕生日は8月30日。好きなものはお宝と戦闘で、嫌いなものは曲がったこと。
ゼロ・ベラフィネール
ワーデルセラム王国から北の位置にある「ベラフィネ王国」の王子で、次期国王候補。年齢は24歳。ノエル・オンス・ワーデルセラムの許嫁でもある。あくまで国同士の政略的な結婚としてノエルが許嫁になっているものの、本当にノエルに好意を抱いている。そのため、ノエルが宮廷捜査官として活動していることを心配し、辞めてほしいと反対している。誕生日は12月20日。好きなものは寝ることで、嫌いなものは早起き。
エディ
ワーデルセラム王国の城下町で宝石商を営んでいる年齢不詳の女性。非常にサバサバとした性格で、細かいことは気にしない大胆さを持つ。義賊「狼の爪」が貴族から強奪した金品を買い取っていたことから、ルカ・ロビンソンとシルヴァン・オウレットと親しくなる。城下町で男装をしているノエル・オンス・ワーデルセラムを王女とは知らず、かわいいとしつこくちょっかいを出していた。誕生日は4月22日。好きなものは恋愛話とかわいいもので、嫌いなものは虫。オパールという名前の白猫といっしょに暮らしている。
オパール
エディの飼っている白猫。毛足が長く、首輪として高価な宝石の付いたネックレスをしている。基本的にエディが営む宝石店の中で過ごしているが、来客が扉を開けたスキに外に出て行くなど脱走癖を持つ。高いところが好きだが、のぼったきりで降りることができない。
リリー
ルカ・ロビンソンと同じ貧しい孤児院で育った青年で、年齢は18歳。盗みのうまいルカを慕っていたがそれは表向きだけで、実際は彼を利用するだけして、大人にばれた時にはルカに罪をすべて被せて裏切った。その出来事がルカのトラウマになっていることをリリー本人も気づいており、偶然ルカと顔を合わせた時にはわざと挑発的な言動で、反応を楽しんでいた。現在はリリーも孤児院を出ており、ベアール伯爵やゼロ・ベラフィネールと通じるなど謎の行動が多い。誕生日は9月17日。好きなものは人をだますこと。
王女 (おうじょ)
ワーデルセラム王国の王女で、ノエル・オンス・ワーデルセラムとアルバート・オンス・ワーデルセラムの母親。二児の母とは思えないほど美しく若々しい外見をしており、いつも笑みを絶やさない穏やかな性格の持ち主。整った外見の者には性別と異なる服装を着せたがる変わった趣味を持ち、幼い頃のノエルによく男装をさせていた。現在はシルヴァン・オウレットに目をつけ、女装をしてほしいと何度も声を掛けている。国王のことを心から愛しているものの、結婚する以前は別の男性に恋をしていた過去を持つ。そのため、ルカ・ロビンソンに好意を抱くノエルの最大の理解者でもあり、よけいな口出しはせずに恋の行く末を見守っている。
クルル
ノエル・オンス・ワーデルセラムが世話をしている伝書鳩。ルカ・ロビンソンたちが宮廷捜査官として行動をする際、情報をいち早く王宮の兵に伝える役割を担う。ノエルにはよく懐いているが、ルカに対しては激しく悪態をつく。
ダリウス・モンタギュー
貴族の男性で、密輸入をした金品を高値で売りさばく悪事を働いている。義賊「狼の爪」に目を付けられ、金品を奪われる被害に遭う。
ベアール伯爵 (べあーるはくしゃく)
ワーデルセラム王国で伯爵の爵位を持つ青年。人当たりがよく穏やかな雰囲気を漂わせ、容姿も整っていることから貴族の娘たちの人気を集めている。また、ベアール伯爵自身の婚約者探しを兼ねたパーティーをたびたび催している。そのパーティーに参加したと思われる貴族の娘が行方不明になる事件が相次いだため、人身売買をしているのではないかと疑われ、宮廷捜査官の潜入調査を受けることになる。好きなタイプは女装したルカ・ロビンソン。
集団・組織
狼の爪 (おおかみのつめ)
ワーデルセラム王国で活動する義賊。メンバーはルカ・ロビンソンとシルヴァン・オウレットの二人で、ターゲットは悪事を働く貴族だが、相手を直接傷つけることはない。のちにノエル・オンス・ワーデルセラムと、宮廷捜査官になる契約を結んで以降は活動休止状態となる。
宮廷捜査官 (きゅうていそうさかん)
貴族たちの不正の横行を憂いたワーデルセラム王国の国王が結成した集団。悪事を働いていると噂される貴族の屋敷などに忍び込み、告発するための証拠を集めることを目的としている。ノエル・オンス・ワーデルセラムが中心となって指揮を執り、義賊「狼の爪」のルカ・ロビンソンとシルヴァン・オウレットに協力を依頼して発足した。実際に活動する際には三人で行動する。
場所
ワーデルセラム王国 (わーでるせらむおうこく)
花好きの国王と王女がおさめる国。王子はアルバート・オンス・ワーデルセラムで、次期国王といわれている。第17代目王女はノエル・オンス・ワーデルセラム。年中穏やかな気候に恵まれており治安もいいが、義賊「狼の爪」の存在が世間を騒がせている。また、裏では一部貴族たちの不正行為が問題になっており、国王が秘密裏に宮廷捜査官を結成するなど治安維持のために動いている。
その他キーワード
マナ
個人が潜在的に持つ魔法を使える能力のこと。誰もがマナを持って生まれてくるものの、大きさによって実際に魔法が使えるかどうかが変わってくる。ミコト・ニシキは大きなマナを持っており、強力な回復魔法や水をあやつることができる。