概要・あらすじ
母星ウメ星が爆発し、宇宙で流浪の民となったウメ星人たち。その中でデンカたち王さま一家は、地球へ漂着し、ごく普通の少年である中村太郎に瓶(カメ)型の宇宙船ごと拾われる。当初は王族らしく偉そうに振る舞い、部屋を占拠する彼らを拒絶する中村家の人々だったが、気の毒な境遇に同情して居候を承諾。こうして王国の再建を夢見る王さま一家の、地球での奇妙な生活が始まった。
登場人物・キャラクター
デンカ
ウメ星王国の王子。母星ウメ星が爆発したため、王さまである父と、そのおきさきさまである母と共に、壺のような宇宙船に乗って地球に飛来。そして宇宙船を拾った中村太郎の家に居候することになる。念動力で物を動かしたり、空中に浮いたりすることが可能で、さらに口笛で呼ぶことができる壺のような宇宙船から、様々な便利な道具を出す。 前向きでさっぱりした性格で、母星が爆発したことは「くよくよしても仕方がない」とあきらめ、地球での生活を積極的に楽しんでいる。婚約者候補を探すための舞踏会が開かれたこともあったが、本人はまだ結婚や将来のことには無関心。ナラ子と半ば強制的にデートをさせられるエピソードでも、まったく会話が続かなかった。 興味の対象はもっぱら、野球やテレビなど、同世代の地球の男の子が好むものとなっている。
中村 太郎 (なかむら たろう)
デンカの地球人の友人。ごく普通の小学生だが、デンカたちが地球に飛来するのを目撃し、壺のように見える宇宙船を拾ったことから、自宅に王さま一家を居候させることになる。デンカには最初こそ家来と呼ばれたこともあったが、やがては友人として共に遊ぶようになる。ウメ星の人々には振り回されることも多いが、王さま一家に対しては常に優しい気持ちを忘れない。 最後は宇宙船の中が無限の空間であることに気が付き、宇宙船の中で生活すれば狭い土地でも王国の再建の足がかりになるという画期的な提案をした。
王さま (おうさま)
ウメ星王国の国王でデンカの父。作中に名前は登場しない。母星ウメ星が爆発したため、デンカとおきさきさまと共に、壺のような宇宙船に乗って地球に飛来。その後、家族で中村家に居候することになる。母星で王であったときの感覚がまだ抜けず、地球の庶民と考え方のギャップが非常に大きい。 特に、感謝の意を表すために授与する勲章を、地球人がまったく有難がらないことには戸惑いを隠せないでいる。人々の前に登場するときは、自ら口をラッパのようにして「パンパカパン」とファンファーレのような音を発する。性格は温厚で素直。しかし名誉を重んじるため、国旗で体の汚れを拭いて鼻をかんだそば屋とは戦争を構えようとしたこともあった。 初登場時は王冠にローブといった王様らしい服装だったが、それ以降は地球での生活に馴染むために着替えて和服の着流しと下駄を愛用。それに王冠という組み合わせで過ごしている。おきさきさまとは8歳のときに婚約しており、現在も仲は良好。人前で「愛しているぞよ」と言うこともはばからない。
おきさきさま
ウメ星王国の后でデンカの母。作中に名前は登場しない。母星ウメ星が爆発したため、デンカと王さまと共に、壺のような宇宙船に乗って地球に飛来。その後、家族で中村家に居候することになる。王さまとは5歳の春のときに婚約し、今も仲睦まじい。初登場時は裾がフリル状になったドレスに透け感のあるマントといった王族らしい服装をしていたが、その後は地球での生活に合わせてシンプルなワンピース姿となっている。 おっとりとした上品な性格だが、母星があった頃の感覚が抜けきっていないため、金銭感覚などが庶民とはかけ離れている。
ベニショーガ
ウメ星王国の王族一家に仕える侍従。デンカにはじいやと呼ばれる。デンカたちがウメ星から脱出する際にはぐれてしまい、娘のナラ子と妻をプロシキマ星に残して地球へ遅れてやってくる。忠臣ではあるが直情型の性格。それゆえにすぐに切腹して詫びようとしたり、あるいは王さまたちに対して尊敬の念が足りない地球人と衝突することが多く、なにかと騒動のもととなる。 かつての暮らしぶりを思えば、中村家に居候する王さまたちが不憫でならず、せめて独立した住まいを用意しようと奔走する一方で、レース編みや封筒貼りなどの内職で地道に資金を作ることも続けている。おてんば娘のナラ子には、人前では厳しく接しているが、人目のないところでは溺愛しているという一面も持つ。 なお、遅れて単独で地球に到着したため、個人用の宇宙船を所有。デンカが使っているものと同じく壺ぐらいのサイズだが、少し長細い形状をしている。
ゴンスケ
本来は、内職を教えこんで王国再建の資金を蓄えるためにベニショーガが購入したスーパーめしつかいロボット。正式名称は強力ゴンスケ号Sという、組み立て式のプラモデルである。しかしデンカたちが勝手に組み立ててしまったために歯車が余ったまま完成してしまい、主人よりも態度の大きいロボットになってしまう。 人間のような感情を持っており、みよちゃんに一目惚れをして彼女のためだけには誠心誠意尽くそうとする。また、玩具のロボットに情がうつって養子に迎え入れたこともある。お金を稼ぐことに才覚があり、封筒貼りの内職で得た資金を元手に土地を転売して大金を得たのを手始めに、ついにはマルカシ・ローンの社長の座に就いて金融業を営むようになる。 愛読書は時刻表や電話帳など、数字ばかりが並んでいる本。なお、『21エモン』に登場するゴンスケとは同一のキャラクター。作者の藤子・F・不二雄によると、本作の登場人物が好人物すぎるのでアクセントとして登場させたとのこと。
ナラ子 (ならこ)
ベニショーガの娘。普段は地球から4.3光年離れたプロシキマ星で母とともに暮らしているが、時々父の様子を見に地球へやって来る。たいへんなおてんば娘で、ひねくれた性格。言われたことと逆のことをやりたがる。また、頼まれた手伝いをデンカや王さまにやらせるなど、父のベニショーガとは対照的に王族一家に対する尊敬の気持ちをあまり持っていない。 腕力も非常に強く、ガキ大将のフグ田とその子分である三角程度であれば簡単にのしてしまう。その力を買われ、態度が大きくなりすぎたゴンスケに対して刺客のごとく送り込まれたこともあるが、その際はしばらく対峙したあと互いに力量を認め合い、結果的には意気投合することとなった。
パパ
中村太郎の父親。会社員。社内での役職は課長。作中にフルネームは登場しない。デンカたち国王一家に自宅の一室を占拠され、当初は警察に相談しようとするなど拒否反応を示していたが、母星が爆発して故郷を失ったと知ったため、同情して居候することを許す。また、会社の知人に王さまでもできそうな仕事をあたってみるなど、なにかと親身になって王さま一家の面倒を見ている。 ただし、庶民と王族の価値観が違いすぎて、振り回されることもしばしば。王さまには感謝され、勲章を授与されたり大臣に任命されたりしているが、そのことにはまったく無頓着で無関心である。
ママ
中村太郎の母親。専業主婦。作中にフルネームは登場しない。デンカたち国王一家のことを「迷惑な人」と思いながらも、食事を用意したり、なにかと気にかけている。ただしナラ子が居候として増えそうになった際は「こうなったらやけくそ」と思わず漏らしてしまうなど、ときおり本音を言うこともある。
みよちゃん
中村太郎のクラスメイト。成績優秀で、しっかりと自分の意見も持つ聡明な女の子。中村太郎とは、困ったことを相談し合う友人の仲。王さまの誕生日には「遠い星から来た人をさびしがらせるのは地球人の恥」だと主張し、できるだけ盛大にお祝いすることを提案した。また、ゴンスケに一目惚れされ、一方的に熱を上げられているが、そのことに関してはかなり困惑した様子を見せている。 なお、デンカの婚約者候補としてベニショーガに身辺調査されたこともあるが、デンカが婚約そのものに興味を示さなかったため、本人の知らないうちに失格にされている。
フグ田 (ふぐた)
中村太郎のクラスメイトで、町のガキ大将。三角を子分のように従えていることが多い。多少乱暴なところもあるが、王さまの誕生日のエピソードではお祝いをするために主導的な役割を果たすなど、情に厚い性格であることも描かれている。
三角 (さんかく)
中村太郎のクラスメイト。その名の通り、レンズの部分が三角形になった眼鏡を愛用。フグ田に従って行動を共にしているが、腕力に屈しているだけで、本心では仕返しの機会を狙っている。裕福な家庭に育ち、旅行先のアフリカからは自慢めいた絵葉書を友人全員に送りつけていた。
場所
ウメ星王国 (うめぼしおうこく)
『ウメ星デンカ』に登場する王国。かつてウメ星に存在したが、星そのものが爆発してしまったために消滅。デンカたち王さま一家は、宇宙のどこかで再び王国を再建することを夢見ている。建国記念日は11月2日。その日は国民の祝日となっている。また、作中には国旗と国歌も登場している。紆余曲折の末、最終的には宇宙船の中が無限の空間であることに気がついた中村太郎の提案によって、狭い土地に壺のような宇宙船を埋め、その中にビルを取り込んで暮らすことで王国の再建を現実のものとする。 ただし、土に埋めた壺に簡素な雨よけのトタン板をつけたせいで、地球人の目には肥溜めのように見えてしまう。
書誌情報
ウメ星デンカ 3巻 小学館〈てんとう虫コミックス(少年)〉
第1巻
(2018-02-28発行、 978-4091426789)
第2巻
(2018-03-28発行、 978-4091426796)
第3巻
(2018-04-27発行、 978-4091426802)