あらすじ
読書好きが高じて、市立図書館に司書として勤務している柏木和華は、両親が海外に転居する日を目前にしながらも、蔵書の多さで一人暮らしをする部屋が見つからずに困っていた。そんなある日、勤務中の和華に一人の男性が声をかけてくる。その男性は高校時代の同級生で、一度だけ一方的にキスをされたことのある上条忍だった。忍はこの街に仕事で赴任して来たと告げ、和華に新居探しを手伝ってくれないかと頼む。そこで和華も転居先を探していると知った忍は、破格の条件を提示し、いっしょに住まないかと誘う。最初は戸惑っていた和華だったが、部屋の広さや家賃の魅力に抗えず、同居生活を受け入れる。(第一話「もう恋なんてしないなんて」)
以前は忍から不意にされるキスを避けていた和華だったが、いっしょに暮らすうちに、自然と受け入れるようになっていた。そんな中、忍の誕生日である2月22日がやってくる。和華はあくまで日頃のお礼として、忍の誕生日のサプライズパーティーを計画するものの、当日忍は夜遅くまで帰宅しなかった。こういう日もあると、好きなことをして過ごそうとする和華だったが、好きな読書にも集中できず、自らが忍を大いに意識していることを自覚する。(第五話「ねこの日だよ、にゃー。」)
和華が勤務している市立図書館で、古典を題材とした講演会が開かれることになる。その担当者になった和華は、ゲストに呼ぶ予定の文学部教授の助手を務める、高校時代の同級生、鈴木岳と再会する。岳は和華との再会を喜びつつ、彼女が忍と連絡を取り合っていると知ると、三人で飲み会をしないかと提案する。和華は忍と交際しており、すでに同居もしていることを岳に打ち明けるのがなんとなく恥ずかしくなり、忍との関係を濁してしまう。(第九話「もうひとりの同級生」)
ある日の休日、和華はリビングに置かれていた忍の眼鏡を踏んで壊してしまう。視力の悪い忍のために、和華は地元の眼鏡店を訪れるが、特殊な部品が使われているため、すぐに修理できないことが判明する。こうして和華は忍の眼鏡が直るまで、彼をフォローして生活することを決意。日頃から忍にお世話になっている和華は、この機会に恩返しをしようと張り切るが、なかなかうまくいかない。(第十三話「見えているのは私だけ」)
ある日、和華が来客の対応をしようとドアを開けると、そこには高校時代の忍にそっくりな少年が立っていた。動揺する和華に対して、忍はドイツで暮らしている弟の上条薫だと紹介する。薫は忍に連絡もせず、学校の休暇を利用して、忍に会うためにやって来たのだった。和華は忍を慕う薫の様子を見て心を和ませる。そして次の日、仕事が多忙なために休みの取れない忍の代わりに、和華が薫の相手をすることになる。和華と二人きりになった薫は昨日と別人のように粗暴で、彼女に散々悪態をつくようになる。そして薫は、尊敬する忍がどのような女性と交際しているのか品定めするために、日本にやって来たのだと言い放つ。(第十七話「小さな訪問者」)
和華が勤務している市立図書館では、夏休みの夜に小学生を対象にした肝試しイベントが催されることになる。それを知った忍も、ボランティアスタッフとして参加することになり、準備を重ねて当日を迎える。和華は猟奇的なシーンの多いスプラッター映画が好きながらも、心理的な恐怖を与えるホラー映画を苦手としており、夜間の静まり返った図書館に不安を覚える。そして和華は、展示されていた幽霊の掛け軸に驚き、その場に倒れ込んで動けなくなってしまう。その様子を目撃した忍は、すぐに和華を図書館内にある救護室に運ぶ。(第二十一話「真夏の夜の夢」)
市立図書館に勤務している和華と、一般企業に勤務している忍の休みはなかなか合わず、久しぶりに二人きりで休日を過ごすことになる。すると突然マンションのチャイムが鳴り、海外に住んでいるはずの両親が和華を訪ねてやって来る。和華を驚かせようとして連絡もせずにやって来た両親だったが、忍と二人で住んでいることを知り、驚きを隠せない。両親は和華から「忍という人と住む」とは聞かされていたものの、その名前から忍を勝手に女性とカンちがいしていたのだった。それでも和華の母親は感じのいい忍を気に入るが、父親だけは二人の関係を素直に受け入れられないでいた。(第二十五話「君の名は」)
師走が近づき、昨年はクリスマスをいっしょに過ごせなかったこともあり、和華と忍は当日何をしようかとさまざまな計画を立てていた。そんな中、ドイツで暮らしている忍の母親が病で倒れ、日常生活が送れなくなってしまう。とりあえずドイツに向かう忍を見送る和華だったが、状況によってはしばらく会えなくなるのだろうと予感していた。そして和華の悪い予感は的中し、忍は家族のサポートのため、しばらくドイツに滞在することとなる。事情を把握して仕方がないと受け入れようとする和華だったが、しばらく会えない寂しさや、もう忍が日本に戻ってこないのではないかという不安から、情緒不安定になってしまう。その様子を見た岳は、まだ和華への恋心があきらめきれないこともあり、再度自分の気持ちを彼女に伝えることを決心する。(第二十九話「クリスマスキャロル」、第三十話「レイニーブルー」、第三十一話「クリスマス・イヴ」)
メディアミックス
TVドラマ
2021年7月から、本作『痴情の接吻』のTVドラマ版『痴情の接吻』が、ABCテレビ(関西)、テレビ朝日(関東)ほかで放送された。キャストは、柏木和華を中村ゆりか、上条忍を橋本良亮、鈴木岳を井上祐貴が演じている。
登場人物・キャラクター
柏木 和華 (かしわぎ わか)
市立図書館に司書として勤務する独身女性。年齢は20代。両親が海外に転居することになり、一人暮らしをするために家を探していたが本が多過ぎるため、家賃との折り合いがつかずに困っていた。そのタイミングで高校時代の同級生である上条忍と再会し、破格の条件を提示されて同居することになる。高校生の時に忍から一方的にキスをされたことがあり、いっしょに暮らし始めてからも、警戒している。半年前までは恋人がいたが交際で心身ともに疲れてしまい、恋愛はしばらくしたくないと思っていたが、柏木和華に好意を寄せる忍のペースに巻き込まれていく。和華自身は気づいていないが、清楚で知的な雰囲気を漂わせた美人で、学生時代は忍をはじめ鈴木岳など、男子生徒たちにひそかにモテていた。現在も非公式ながら、来館者のあいだでファンクラブが設立されるなど、異性から好意を寄せられることが多い。家事能力もそれなりに高く、見た目はモザイクがかかるほど悪いが、味は絶品の料理を作ることができる。
上条 忍 (かみじょう しのぶ)
柏木和華が住む街に赴任してきた独身男性。年齢は20代。海外にも支社のある有名企業に勤務している。和華とは高校時代の同級生ながら両親の都合により、ドイツに引っ越した過去を持つ。実家はまだドイツにあり、弟の上条薫はドイツで暮らしている。学生時代から和華に好意を抱いており、学生時代に図書館で二人きりになった際、思わずキスをしてしまったことを後悔している。和華と再会したあとは、転居先がなかなか見つからずにいた彼女に破格の条件を提示し、強引に同居生活をスタートさせる。喜怒哀楽を表に出さないクールな性格のイケメンで、ミステリアスな雰囲気を漂わせている。仕事も家事もすべて器用にこなすタイプで、これという欠点はないものの、一つの物事に熱中できないことにコンプレックスを抱いている。誕生日は2月22日。
鈴木 岳 (すずき がく)
柏木和華が住む街にある大学の文学部教授の助手を務める独身男性。年齢は20代。和華と上条忍の高校時代の同級生で、お互いに顔見知りの間柄。和華が勤務する市立図書館で、鈴木岳自身が助手を務めている教授が講演会を行うことになり、その縁で和華と再会する。高校時代にひそかに恋心を寄せていた和華が忍と交際していると知り、ショックを受けつつも、未練を断ち切れずにいる。爽やかなルックスの好青年で、明るく親しみやすい性格をしている。忍に対しては、和華を巡るライバル関係ながらも友好的に接している。
上条 薫 (かみじょう かおる)
上条忍の弟で、両親と共にドイツに住んでいる高校生。なんでも器用にこなす忍のことを尊敬しており、彼に彼女ができたと聞き、休みを利用して柏木和華と兄が同居するマンションに遊びにやって来た。忍の前では素直でかわいらしい弟として振る舞っているが、和華の前ではいっさい笑顔を見せず、態度が豹変する。自分から忍を奪った和華をライバル視しているが、その一方で彼女の人柄のよさや美人であることは認めている。見た目は高校生の頃の忍と瓜二つで、非常に整った顔立ちをしている。
アンナ
ドイツに住んでいる上条薫の同級生。父親がドイツ人、母親が日本人のハーフの美少女で、日本語が堪能。幼い頃からドイツの上条家に出入りしていたこともあり、上条忍とも親しい。日本に遊びに来た際、柏木和華と忍が住む家に立ち寄ったことで、和華とも知り合いになる。薫に好意を抱いているが、薫はアンナが忍にあこがれているとカンちがいしているため、なかなか二人の関係は進展していない。
吉川 (よしかわ)
柏木和華と同じ市立図書館に司書として勤務する独身女性。和華にとって先輩にあたり、仕事だけでなくプライベートでも仲がいい。和華が上条忍と再会し、交際するまでの流れを知っており、二人の関係を心から応援している。イケメンが大好きで、図書館にイケメンがやって来ると、すぐに誰かに報告したくなる。ふだんは落ち着いた性格の穏やかな人物ながら、市立図書館で官能小説の朗読会を開催するなど、破天荒な企画を持ち込むこともある。
松浦 (まつうら)
柏木和華と同じ市立図書館に司書として勤務する独身女性。年齢は20代。和華の後輩にあたり、新人時代は彼女が教育係を務めて松浦を指導していた。和華にとっては初めての経験だったこともあり、上手に教えられなかったと後悔しているが、松浦自身はまったく気にしておらず、むしろ面倒見のいい和華に感謝している。霊感があり、図書館に幽霊がいることを察知する特殊能力の持ち主でもある。
関連
痴情の接吻~官能的回顧録~ (ちじょうのせっぷん かんのうてきかいころく)
本さえあれば幸せなお一人様女子・柏木和華と、彼女を偏愛するハイスペック男子・上条忍。二人の恋愛を描き、A.B.C-Z橋本良亮主演でテレビドラマにもなった『痴情の接吻』のスピンオフ。番外編「春よ、来い」... 関連ページ:痴情の接吻~官能的回顧録~
書誌情報
痴情の接吻 8巻 小学館〈フラワーコミックス α〉
第1巻
(2019-05-10発行、 978-4098704620)
第2巻
(2019-09-10発行、 978-4098705696)
第3巻
(2020-01-10発行、 978-4098707805)
第4巻
(2020-05-08発行、 978-4098710164)
第5巻
(2020-09-10発行、 978-4098711215)
第6巻
(2021-03-10発行、 978-4098712717)
第7巻
(2021-06-10発行、 978-4098713509)
第8巻
(2021-09-10発行、 978-4098714346)