概要・あらすじ
アルバイトでゲームのデバッガーを務める女子大学生の玖波島礼香と庸子は、ある日突然、謎の迷宮に迷い込む。そこは、行けども行けども畳の和室が続く不思議な異空間だった。まったく状況がつかめない中、なんとかもとの世界に戻ろうと和室を突き進んだ2人は、やがて古びたちゃぶ台に置かれた1枚の書き置きを見つける。そこには連絡を欲する文章と、メールアドレスが記されていた。
2人はどうにか書き置きの主である多神大介との接触に成功するが、彼は、この不思議な空間について何かを知っている素振りを見せながらも、多くを語ろうとしない。情報を小出しにする彼に力を借りながら奔走する礼香と庸子は、次第にこの不思議な世界に隠された、予想を上回る真実へと近づいていく。
登場人物・キャラクター
玖波島 礼香 (くばじま れいか)
ゲームが大好きな女子大学生。ただし、ゲーム好きとは言っても、純粋にプレイするよりも、仕様のバグを見つけ出すことを一番の楽しみとしている。その趣味と実益を兼ね、ルームメイトの庸子とともに、ゲームデバッガーのアルバイトをしており、アルバイト先のゲームメーカー「クラインソフトウェア」の所有する社宅で、礼香と同じ部屋で暮らしている。 ある日突然、庸子とともに裏世界に迷い込み、現状を把握しようと探索を行うこととなる。ゲーム以外には興味を持たず、他人とのコミュニケーションも苦手。崩壊した家庭環境で育ったこともあり、いつも自分の居場所を探していた。そのため、突然降って湧いたゲームのようなありえない現状を、苦にするどころかむしろ楽しんでいる節が見受けられる。 常に楽観的でポジティブな考え方をするが、好奇心が強く無茶をしがち。
庸子 (ようこ)
玖波島礼香のルームメイトの女子大学生。ゲームのバグを探すデバッガーのアルバイトをしており、アルバイト先のゲームメーカー「クラインソフトウェア」の所有する社宅で、礼香と同じ部屋で暮らしている。常に物事を冷静にとらえ、自身の感性に基づいて判断するしっかり者。がっしりした大柄な体格で、ルックスには恵まれていない。庸子本人もそれを自覚しており、女性らしく振る舞おうとせず、基本的にぶっきらぼう。 一方で友達想いでまっすぐな性格の持ち主であり、変わり者の礼香の扱いにも慣れている。何かと1人で突っ走りがちな礼香を心配しながらも、一方で、彼女の優れた思考能力を信じ、頼っている部分がある。もう1つのアルバイト先の、ゲームセンターで知り合った暁と付き合っている。 ある日突然、礼香とともに裏世界に迷い込み、現状を把握しようと探索を行うこととなる。
多神 大介 (たがみ だいすけ)
ゲームメーカー「クラインソフトウェア」開発5部のディレクター。20代の男性。ゲームの企画からプログラミングまでを1人でこなす天才ゲームデザイナーで、ゲームソフト「ダンジョンテール」の制作者。しかし、個人情報の多くは未公開で、ゲーマーたちの間でも謎の人物として知られている。裏世界に迷い込んだ玖波島礼香と庸子に、ちゃぶ台に書き置きを残してコンタクトを取った。 裏世界の存在を2年ほど前から知っており、「ダンジョンテール」も裏世界をモデルに開発したものである。
パックンモンスター
裏世界に存在する、大きな口の丸い怪物。前触れなく突然姿を現して、建物を丸ごと飲み込む。飲み込まれた物がどうなるのかはわかっていないが、建物がなくなった後の空間は、真っ黒な暗黒空間となる。「パックンモンスター」の名前は建物を飲み込む様子を見た玖波島礼香が付けたもので、多神大介は「ルームシャーク」と呼んでいる。
密漁者 (みつりょうしゃ)
裏世界や表世界に存在する首のない怪物。胴体の中心に目があり、長い手足を持っている。人間を狩り、食肉に加工しようとする宇宙人のような存在とされている。裏世界でインターネットに接続し、通信状態を長く維持していると、その場所に現れる傾向にある。動くものを認識しやすく、動かないものに対しては興味を示さない。腕につけているブレスレットを使い、裏世界や表世界を自由に制御することができる。
暁 (あきら)
庸子の彼氏。何かとトラブルに巻き込まれやすく、いつも逃げ回って隠れる毎日を送っていた。庸子のアルバイト先であるゲームセンターのトイレを、避難所代わりに利用している。これが、閉店時に店から客を退店させる「追い出し係」としてやって来た庸子と出会うきっかけになった。そのためか、女性に頼りがいを求めており、ルックスはイマイチながら堂々としている庸子に惚れ込み、自ら告白した。 表世界で生活しているが、現在はそこに庸子がいないため、庸子の存在が自分の思い込みによるものであり、現実には存在していないのではないかと思い悩んでいる。
彼ら (かれら)
密漁者を取り締まる存在。宇宙人のようなものとされている。彼らや密漁者のいる世界では、人間は保護対象となっている。その人間を捕獲し、肉に加工しようとする密漁者を取り締まるため、人類側の協力者として多神大介を選び、事前にメールで接触していた。
場所
裏世界 (うらせかい)
玖波島礼香と庸子がある日突然迷い込んだ、迷宮のような異空間。ボロアパート内部のような畳部屋が、物理法則を無視したさまざまな形で繋がっており、どこまでも続いている。また、ところどころに無限にループする場所や、空間がねじ曲がっているような不自然な場所が存在している。建物の外には広大な樹海が広がっているが、樹海の地面も畳敷きであり、ひざ下あたりまで水没している。 迷い込んだ礼香と庸子以外に、人の気配はない。連なっている畳部屋の中にある家具や物には生活感があり、部屋を構成している物が、礼香と庸子が住んでいたアルバイト先の社宅と酷似している。そのため、2人にはゲーム会社「クラインソフトウェア」と関係があるのではないかと考えられている。 建物を丸ごと飲み込む大きな怪物のパックンモンスターや密漁者など、危険なものが存在している。
表世界 (おもてせかい)
世界同時多発失踪事件により、現実世界から行方不明になった人々が存在している世界。一見、現実世界と同じようではあるが、すべてはそこに存在する人々の記憶のみによって作られているため、ほとんどが張りぼてでできている。この世界では、密漁者は人間たちから見えない存在となっており、玖波島礼香と庸子も、ゲームコントローラーのステルス効果により、この世界に存在する人間からは見えない。
イベント・出来事
世界同時多発失踪事件 (せかいどうじたはつしっそうじけん)
1か月ほど前、世界中で10万人を超える大勢の人が突如行方不明になった事件。行方不明になった人々に共通点はなく、自分も消えるのではないかと、皆が不安を抱えて暮らしていた。新聞やテレビ番組でも連日報道されていたにもかかわらず、何故かある時期を境に、突然誰もその話題を口にしなくなった。
その他キーワード
ちゃぶ台 (ちゃぶだい)
裏世界の畳部屋に存在する、レトロな円形のテーブル。裏世界の至るところに存在しており、上に何か乗せると、その状態が同形のちゃぶ台すべてに反映される。そのため、1つのちゃぶ台の上に書き置きを乗せれば、裏世界中のすべてのちゃぶ台にその書き置きが乗った状態を作ることができる。このちゃぶ台の上に荷物を乗せておけば、いちいち持ち歩かずに済む。 また、ちゃぶ台の上にちゃぶ台を乗せると、合わせ鏡のような効果が生じ、天高く連なるちゃぶ台の塔が一瞬でできあがる。この事実に気づいた玖波島礼香は、武器として活用することを考え出した。
ダンジョンテール
ゲームメーカー「クラインソフトウェア」が制作したゲームソフト。日常を舞台にしたごく普通のお使いゲーム。このゲームを手掛けたゲームディレクターの多神大介が、「ゲームにおいてバグが悪とは限らない。それをも楽しめてこそ真のゲーマー」という趣旨の発言をしたため、制作者側の怠慢である、とインターネットで叩かれることとなった。
スマフォ
裏世界の畳部屋で手に入れることができるスマートフォン。裏世界ではわりと手に入りやすいが、通信状態を続けると密漁者に見つかる恐れがあり、あまり長くは使えない。多神大介からの指示により、裏世界からの脱出に必要不可欠なアイテムの1つとして指定された。
ゲームコントローラー
裏世界の畳部屋で手に入れることができる、モーションセンサー付きのゲームコントローラー。多神大介からの指示により、裏世界からの脱出に必要不可欠なアイテムの1つとして指定された。これをスマフォとペアリングし、トリガーを引きながら空に扉を描くと、一時的なポータルを作ることができる。そこから表世界への移動が可能になる。 また、ステルス効果があり、これを持っていると姿が見えなくなる。