概要・あらすじ
主人公・栗原一止は、内科医兼救急医として、松本市にある本庄病院に勤務している。彼が当直の日は救急外来に患者が押し寄せるため、「引きの栗原」とも呼ばれていた。そんな彼が奮闘し、医療にかける思いと共に、医療や医師が抱える問題が描かれる。
登場人物・キャラクター
栗原 一止 (くりはら いちと)
28歳の男性。四国出身。本庄病院に内科医兼救急医として勤務する医師。築20年のぼろアパート御嶽荘の桜の間に妻・栗原榛名とふたりで暮らす。遅刻魔な上、夏目漱石マニアで、時代がかった言葉遣いで話すような変人だが、フットワークと生真面目さは内科部長である大狸先生から天下一品と評価されるほど。 医療に対する熱い想いを持ち合わせており、患者に対して丁寧に対応するため、院内の他の医師、看護師、患者からの信頼は厚い。当直の日は救急外来に患者が押し寄せることが多いため、「引きの栗原」とも呼ばれている。
栗原 榛名 (くりはら はるな)
栗原一止の妻。山岳を中心としたカメラマンとして働いているため、海外を飛び回ることが多く、一止とはすれ違うことも多いが、日本にいる間は甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。一止の担当する患者が亡くなったようなときは、言葉にしなくても理解してくれるような勘のよさと優しさを持つ女性。 御嶽荘に引っ越してきたさい、一止と出会ったことをきっかけに結婚。旧姓は片島(かたしま)。幼い頃、両親を亡くしており、遠い親戚の家で育てられたため、両親の顔を知らない。髪型は長髪をポニーテールにしていることが多い。好きな山は御嶽山。特に冬の美ヶ原から見る御嶽山を最も好む。
内藤 鴨一 (ないとう かもいち)
栗原一止の上司。本庄病院で超ベテラン内科医として勤務する男性。消化器内科の副部長を務める。痩せた体をしており、4泊、5泊と病院で寝泊まりし、激務をこなしているためか、いつも顔色が悪い。一止から古狐先生とあだ名をつけられている。影が薄く、その場にいても気づかれないことがある。 患者に対しては真摯で、医者としての熱意や矜持は高い。また、人間関係の機微に聡く、問題把握をする。大狸先生とは医学生の頃からの親友。
大狸先生 (おおだぬきせんせい)
栗原一止の上司であり、指導をした医師。本庄病院で内科医として働く男性。消化器内科の部長を務める。大狸先生は栗原一止がつけたあだ名。ゴッドハンドとも呼ばれる名医で、患者に優しく接するため、仏様と呼ばれるほど人気がある。しかし、新人医師への指導は厳しく、閻魔を思わせるほど。 内藤鴨一とは医学生の頃からの親友。中学生の頃、病院への搬送が間に合わず母を亡くしたことから、誰もがいつでも診療してもらえるという理想的な医療を追求するようになった。あだ名が表すとおり、狸なところがある。趣味はゴルフ。
進藤 辰也 (しんどう たつや)
東京の病院から本庄病院に転院してきた医師。長野県松本市出身の男性。栗原一止とは同じ大学の医学部の同級で、将棋サークルのたった二人の部員だった仲。医学部を首席で卒業し、東京の有名大学の研修枠を勝ち取ったのち、血液内科を担当してきたエリートで、容姿に優れ、言葉遣いや人当たりも良く、医者として腕が立つ。 しかし、プライベートを重視し、時間外に患者を見ないなど、問題行動も。夏菜(なつは)という娘と、大学の頃、後輩として出会った千夏(ちなつ)という小児科医を務める妻がいるが、妻は東京に残っているため、娘とふたりで実家ぐらしをしている。
砂山 次郎 (すなやま じろう)
栗原一止と同じ本庄病院に勤務する同僚の医者。外科医の男性。北海道出身。一止とは医学部生時代からの知己で、同じあかまつ寮に住んでいた腐れ縁。そのため、軽口をたたき合う仲である。明るく、前向きな性格で、医者としての矜持も高い。看護師・水無のことが好き。
東西 直美 (とうざい なおみ)
本庄病院で主任看護師を務める28歳の女性。消化器内科を担当しており、栗原一止の診察も手伝う。本来は優しい性格だが、遅刻魔である一止には気が強く厳しい面を見せる。頼りになるため、院内の若手看護師から絶大な支持を得ている。
水無 (みずなし)
本庄病院に勤務する看護師の女性。南3病棟を担当している。病院に勤めて2年目の新人のため、経験が浅く、患者を看取ったことがない。そのため、患者が苦しむ様を見て動揺することも。末期の膵臓ガンで入院していた田川を担当し、懸命に看護するなど、仕事に対して熱心で真摯。外科医・砂山次郎の想い人。
安曇 (あずみ)
栗原一止が担当する患者。末期の胆嚢がんのため本庄病院に入院する老婦人。温和で人当たりが良く、いつも笑顔で挨拶をしてくれるため、看護師から人気がある。山が好きで、体調の良い日はデイルームの窓から北アルプスを眺めている。夫は42歳の時、脳溢血のため急死。以降30年間は一人暮らしをしていた。 末期ガンであることを理解し受け入れている。
留川 トヨ (とめかわ とよ)
本庄病院に入院する92歳の老婦人。栗原一止のことが好きで、ファンクラブ会員を名乗っていたが、体調が崩れ、寝たきりになっている。木曽節が好き。夫は留川孫一、95歳。仲睦まじく、常にトヨのそばに付き添っている。
橘 仙介 (たちばな せんすけ)
御嶽荘の住人の男性。野菊の間に住む。信濃大学文学部哲学科の大学院生を自称する男性。出雲出身。眼鏡をかけている。栗原一止のアパートの友人で、同じく住人である男爵と共に、夜な夜な3人で酒盛りをしている。大学ではニーチェを研究しているとのこと。 古今東西の書物に通じ、非常に博学。橘楓の弟。
男爵 (だんしゃく)
御嶽荘の住人の男性。桔梗の間に住む。栗原一止のアパートの友人で、橘仙介と共に夜な夜な3人で酒盛りをしている。画家を自称しているが、絵を描いている様子はあまり見られない。ガサツで口が悪く、プライドが高い一面はあるものの、友達思い。男爵はパイプで喫煙する様から一止がつけたあだ名。
内藤 千代 (ないとう ちよ)
内藤鴨一の妻。栗原一止が妻の栗原榛名と花見をしていたさい、内藤と共に散歩に来ており、ふたりと知り合う。この時、榛名と気が合い、交流が生まれる。穏やかな性格で、家に帰らない内藤のことも仕事のためと認め、ひとり家を切り盛りする。
場所
本庄病院 (ほんじょうびょういん)
『神様のカルテ』に登場する病院。栗原一止の勤務先。長野県松本市の中ほど、松本城の城下にある。地方都市としては大きめな総合病院で、一般医療から緊急医療まで幅広い役割を果たす総合病院。本来の診療時間は平日午前9:30~11:30、午後1:00~4:30、土曜午前中だが、患者は24時間、365日受付している。 また、入院用の病床もある。慢性的に医師不足で、患者は増加の一途をたどっているため、常に人手不足。医師が数日泊り込むことが常態となっている。院長は本庄忠一。
クレジット
- 原作
-
夏川草介