あらすじ
リトルグルメを巡る数々の騒動が収束してから、30年の時が流れた。なべやきコンブは、中年になった今でも相も変わらずお菓子をこよなく愛しており、料理の腕も衰えていなかった。だが、少年期に発揮した世渡りの上手さはすっかり鳴りを潜めてしまい、ジャガマートのアルバイトに精を出しながらも、日々の生活費に苦労したり、子供たちから「妖怪オバカシ」と呼ばれるなど冴(さ)えない日々を過ごしていた。友人の常夏パイ助の悩みを解決したコンブは、前田舞と出会い、鬼ぎりを振る舞ったことで懐かれる。さらに、舞の父親、前田リョウマや、夢見荘の大家、大家ひとみとも親しくなり、新しく考案したリトルグルメをつまみにして、彼らと酒盛りを楽しむことで交流を深めていく。そんな中、コンブはかつての旧友で、現在はジャガマートのオーナーを務めているムスビから連絡を受ける。かつてのコンブの活躍を知っているムスビは、自らの経営する食品関連の事業を拡張すべく、自らのコネクションを利用してリトルグルメを広める計画を立てており、その起爆剤となる商品の開発をコンブに依頼したいのだという。長らくアルバイト暮らしに甘んじていたコンブは、突如として少年時代のような大掛かりなプロジェクトに抜擢(ばってき)されたことに戸惑うが、リトルグルメが老若男女問わず笑顔をもたらすことを思い出し、プロジェクトに対して次第に前向きになる。舞やリョウマ、ひとみとの交流を重ねつつ、子供向けのリトルグルメ「5ミニッツアイス」と中年男性向けのリトルグルメ「俺だけの一週間」を開発し、ムスビとその傘下の役員たちを唸(うな)らせる。
登場人物・キャラクター
なべやき コンブ
夢見荘で、一人暮らしをしている中年の男性。幼い頃と比べると若干小太りとなり、一人称もかつての「オイラ」から「僕」に変化している。子供の頃から天才的な料理の腕と、お菓子に対する知識と応用力を持ち合わせており、その手腕は今でも衰えていない。小学生の頃はそれを活かしてさまざまなリトルグルメを作り出しては、常夏パイ助やムスビ、メンメンといった級友たちから絶賛され、世界を代表する料理人の一人として注目されていた。お菓子を好む性質は子供の頃と変わらず、購入したお菓子を、人目を気にせず公園で食べている。その習性は近所の子供たちからも知られており、勇太や一希から「妖怪オバカシ」と揶揄(やゆ)されることもある。子供の頃からの世渡りのうまさや、リーダーシップは鳴りを潜め、現在はすっかり冴えない中年になったものの、なべやきコンブ自身は本人なりに今を楽しんでいる。また、本来はおやつのバリエーションであったはずのリトルグルメを、酒のつまみなどに応用できるようになり、前田舞をはじめとした子供はもちろん、大家ひとみやパイ助といった大人の知り合いからも絶賛されている。かつて交際していたメンメンとは破局しているが、夢見荘の住人たちからは、未練を残しているのではないかとからかわれることもある。現在は、料理の腕を仕事に活かしておらず、ジャガマートの分店である「ジャガマート具留米店」で、アルバイトしながら生活を送っている。慢性的な金欠に悩んでいた際、ジャガマートのオーナーであるムスビからリトルグルメを利用した一大プロジェクトへの参加を依頼される。当初はプレッシャーからプロジェクトへの参加に及び腰だったが、かつての級友たちや夢見荘の住人たちと交流を重ねるにつれて、子供の頃の情熱を取り戻す。
常夏 パイ助 (とこなつ ぱいすけ)
なべやきコンブと同じ小学校に通っていた男性。パイナップルのような髪型で、子供の頃はコンブより痩せていたが、現在は逞(たくま)しい身体つきに成長している。交際していた女性に振られたり騙(だま)されて借金を背負わされたりと、悲惨な目に遭い続けており、そのたびにコンブに泣きついては相談に乗ってもらっていた。それからもコンブに負けず劣らずの冴えない生活を送っているため、やがてかつての前向きな性格は鳴りを潜め、当時勤めていた会社も辞めてしまう。しかし、コンブからリトルグルメ「サラダチキンのうまジャム合え」を振る舞われたことで、彼と共に楽しく過ごしていた少年時代を思い出して奮起する。その後は、動画配信サイト「YouTube」の配信者として活動を始め、やがてベトナムやヒマラヤなど、海外のさまざまな地域を巡って大成功を収める。
前田 舞 (まえだ まい)
夢見荘で、父親の前田リョウマと暮らしている小学生の女子。同じアパートで暮らすなべやきコンブとも面識がある。父子家庭であることからリョウマに溺愛されており、前田舞自身もリョウマを大切に思っている。物怖(お)じしない天真爛漫(らんまん)な性格で、コンブと初めて顔を合わせた時もまったく警戒せず、いっしょに遊んで欲しいとねだっていた。さらに、リトルグルメ「鬼ぎり」を振る舞われると、大喜びして彼に懐くようになる。また、コンブや大家ひとみと長時間鬼ごっこをしても疲れ知らずの体力を誇る。以前は何事にも全力で取り組んでいたが、これを心配したリョウマから「明日がんばるために、今日はがんばりすぎない」と言い聞かせられ、現在はこれを忠実に守っており、なかよくなったコンブや一希、勇太にも言い聞かせている。このことが、ムスビからリトルグルメの新作プロジェクトを任されたことで感じていたコンブのプレッシャーを取り除く一助となる。
前田 リョウマ (まえだ りょうま)
探偵業を営んでいる男性。娘の前田舞と共に夢見荘で暮らしている。チンピラのような外見をしており、言動もやや荒っぽい。特に一人娘である舞が絡むと、初対面のなべやきコンブを誘拐犯と疑ったり、その誤解が解けても舞に遊んでもらった礼を言わせようとするなど、途端に周りが見えなくなる。ただし、一度なかよくなった相手には誠実に接する。コンブから花見に誘われ、リトルグルメ「よっちゃんイカディップ」「桃太郎カクテル」をごちそうになると、彼の人柄や料理の腕を認めて、敬意を表するようになる。探偵だけあって洞察力と忍耐力に優れており、猫探しの依頼を受けた際は猫の気持ちを知るために服装を変えたり、浮気調査を頼まれた際はターゲットから一時も目を離さず、その場を離れなければならない時もコンブに代理の監視を頼むなど、仕事に対する熱意は本物。生真面目なところは娘の舞にも受け継がれており、彼女からは父親のようになりたいと思われている。これに対して「大事なのはがんばりすぎないこと」と諭すなど、大人らしい気配りも見せる人格者である。
大家 ひとみ (おおや ひとみ)
夢見荘で大家を務めている女性。ふだんは気さくで優しく、なべやきコンブをはじめとしたアパートの住人たちから慕われている。しかし酒癖が悪く、絡み酒でコンブや前田リョウマを困惑させることも少なくない。かつて夫を交通事故で失っており、かけがいのない人と突然別れる理不尽さを、身をもって知っている。そのため、アパートの住人たちには自分と同じ思いをして欲しくないとの気持ちが強く、お節介を焼いている。亡くなった夫がリトルグルメ「もちピザ」を好んでいたことから、大家ひとみ自身もリトルグルメに興味を持っている。コンブがリトルグルメの発案者であることを知らないが、彼が作ったリトルグルメ「アダルトもちピザ」を食べてからはコンブ彼を料理の名人として一目置くようになる。のちに、このことを前田舞やリョウマ、白石ちひろなど、夢見荘の住民たちに広く伝えた。なお、偶然出会った本間五九郎から好意を寄せられているが、まったく気づいていない。
メンメン
なべやきコンブと同じ小学校に通っていた女性。実家がラーメン屋を営んでおり、中華風の服を身につけている。子供の頃、常夏パイ助やムスビと共にコンブからリトルグルメを振る舞われ、メンメン本人も優れた料理人として一目置かれていた。幼い頃からコンブに思いを寄せており、青年期に交際していたこともあった。だが、なんらかの理由で破局を迎えており、現在は互いに連絡を取り合っていない。
ムスビ
なべやきコンブと同じ小学校に通っていた男性。おむすびのような顔と、子供と変わらない小柄な体格をしている。かつては気弱で几帳面(きちょうめん)な性格ながら、いざという時には勇敢な一面や意外な行動力を見せることがあった。現在は必要とあれば高額の報酬を提示したり、脅しに近い交渉も辞さないなど、強(したたか)な性格となる。ジャガ校長からジャガマートのオーナーの権利を譲られ、持ち前の手腕を発揮してジャガマートを世界に通用するほどの規模にまで成長させる。かつての同級生だったトン子と結婚しており、互いに携わっている事業の手助けをし合っている。コンブとは現在も交流があり、彼がジャガマートでアルバイトしていることや、彼の料理の腕が衰えてないことも知っている。かつて一世を風靡(ふうび)したリトルグルメを現代によみがえらせたいと願っており、役員たちと共にコンブを会社に招き、子供に向けたリトルグルメと中年男性に向けたリトルグルメの開発を依頼する。
トン子 (とんこ)
なべやきコンブと同じ小学校に通っていた女性。ムスビの妻。旧姓は「アブラミ」だが、ムスビとの結婚を機に苗字が変わっている。女性ながら身体能力に優れており、子供の頃はパワフルな振る舞いでコンブたちを振り回していた。かつては肥満体だったが、フィットネスクラブ「Tフィットネス」を経営しており、わずか2年でモデル体型の美女へと変貌する。トン子自身の美しさと、自らの身をもってフィットネスの効果を実証したことで老若男女問わずに高い人気を集めている。さらに、ジャガマートのオーナーとなったムスビのプロデュースにより、Tフィットネスを世界規模で運営できるようになり、彼とはやがて公私にわたるパートナーとなる。それから15年ほど経過した現在も、その美しさや体力はまったく衰えることはなく、オーナーでありながらTフィットネスのアイドルとしても有名。ムスビとの関係も良好で、彼からコンブに仕事を依頼すると聞いた時は、二人でコンブと会うことを楽しみにしていた。
本間 五九郎 (ほんま ごくろう)
ジャガマートの分店である「ジャガマート具留米店」の店長を務めている男性。年齢は44歳。かつて芸人として活動していたが、鳴かず飛ばずの状況が続いたため、やむなく芸人をあきらめて現在に至る。つねに明るくポジティブな性格で、アルバイトのなべやきコンブとも良好な関係。また、他者の笑顔を見ることが大好きで、本間五九郎自身も気配り上手でひょうきんな振る舞いを見せることから、周囲からの受けもいい。一方で、猜疑(さいぎ)心の強い一面があり、コンブがジャガマート系列のオーナーのムスビと親友であることを知ると、彼がジャガマートの上層部から送り込まれた監査役ではないかと疑い始める。そのため、なんとか自分の評価を上げてもらおうとコンブにいいところを見せようと奮闘し、実際にコンビニエンスストアの経営者として彼に高く評価されている。のちに誤解が解けると、疑ったことを心から詫(わ)びつつ、これまで以上にコンブに信頼を置くようになる。体力作りのためにコンブとジョギングを始めた際に、そこで出会った大家ひとみに好意を抱くようになる。
白石 ちひろ (しらいし ちひろ)
夢見荘に住んでいる女性。女優を志望しており、昼間は養成所でレッスンを受ける傍ら、夜はバーでアルバイトをしている。容姿と共に演技力もずば抜けており、ちょっと変装するだけでなべやきコンブの目を完全に欺くことができる。女優になるための努力を怠らない生真面目な性格で、私生活の中でもいつもの自分とまったく異なる姿、仕草をすることで演技力を磨いている。バーでのアルバイトも、お金のためというよりも違う自分を演じるためである。だが、よくも悪くも影響されやすいところがあり、中年男性に告白する役作りの際、大家ひとみからコンブを相手役にしてはどうかと勧められ、これに応じてしまう。その結果、ひとみの目論見どおりにコンブをうろたえさせることに成功する。
勇太 (ゆうた)
夢見荘の近所に住んでいる小学生の男子。坊主頭でランニングシャツを身につけている。元気一杯な明るい性格で、一希と仲がいい。実家は資産家ながら、つねにランニングシャツ姿なのも、貧乏な一希を気遣ってのこと。一方で、いたずら好きなところがあり、なべやきコンブがいつも外でお菓子を食べていることに興味を持ち、一希を誘って彼の観察に明け暮れている。コンブが前田舞と遊んでいた時は、コンブが舞を誘拐しようとしているのではないかと訝(いぶか)しみ、助けに入ろうとした。しかし、舞から説明され、不審人物扱いした非礼を詫びた。さらに、コンブからリトルグルメ「リトルワッフルチキン」を振る舞われると、一転して彼を尊敬するようになり、舞ともなかよくなった。
一希 (かずき)
夢見荘の近所に住んでいる小学生の男子。勇太とは親友同士で、自分を気遣ってくれる彼につねに感謝している。勇太の影響を受けてなべやきコンブを不審人物扱いしたこともあるが、前田舞によって誤解を解かれると、逆に思い悩んでいた彼を元気づけ、舞ともなかよくなる。そんなある日、一希自身の不注意により、勇太がケガを負ってしまう。勇太からは気にしていないと言われるものの、勇太の両親の怒りを買い、いっしょに遊ばないように釘(くぎ)を刺されてしまう。
ジャガ校長 (じゃがこうちょう)
なべやきコンブが通っていた小学校の校長を務めていた男性。ジャガイモのような顔で、語尾に「ジャガ」と付けてしゃべる。副業としてコンビニエンスストア「ジャガマート」を経営しており、のちにオーナーの権利をムスビに譲り渡した。既に故人だが、ジャガマートが全国規模のチェーン店に成長した現在、店舗の前にはジャガ校長の銅像が建てられるなど、創始者として広く知られている。
場所
夢見荘 (ゆめみそう)
大家ひとみが大家を務めているアパート。安アパート風の外観と内装をしている。なべやきコンブのほかに前田舞や前田リョウマ、白石ちひろが暮らしている。ひとみの意向により住人同士の交流が盛んで、コンブが作ったリトルグルメを味わったり、酒盛りを楽しんだりしている。また、コンブがリトルグルメの開発や、ムスビからの依頼の遂行をスムーズに行うことができるのも、住人たちとの交流によるところが大きい。
ジャガマート
ムスビが経営する大手コンビニエンスストア。かつてコンブの恩師だったジャガ校長が経営していたが、彼からオーナーの権利を譲り受けたムスビの手腕により、全国展開の大手チェーン店へと成長させた。各店舗の入り口の前には、初代オーナーであるジャガ校長の銅像が飾られている。なべやきコンブや本間五九郎が勤務する「ジャガマート具留米店」では、コンブが子供の頃から人気の特撮ヒーロー「ヘロヘロマン」を防犯対策に利用している。
その他キーワード
リトルグルメ
市販のお菓子やインスタント食品、身近なフルーツなどを応用し、なべやきコンブが独自に開発した料理。食べた者は例外なく、頰を膨らませつつ「OH!MYコンブ!」と叫びながら空高く跳び上がるという、独特の反応を見せる。この反応に至る理由は明かされていないが、前田リョウマにはこの反応がなんらかの薬物によるものではないかと疑われていた。レシピさえわかれば誰でも手軽に作れるという長所があり、常夏パイ助やメンメンもいくつかのリトルグルメを実際に調理したことがある。かつて小学生のコンブは、子供向けのリトルグルメを主に開発していたが、成長した現在は、子供と大人の両方に適したリトルグルメを作れるようになった。
クレジット
- 企画
-
秋元 康
前作
OH!MYコンブ (おーまいこんぶ)
子供たちが考え、子供たちが作り出す新しい料理「リトルグルメ」をメインに、食の楽しさを提唱する作品。基本スタイルは1話完結型のコメディ漫画だが、中期以降はシリアスな展開を伴う連続ストーリーもいくつか登場... 関連ページ:OH!MYコンブ