精霊伝説ヒューディー

精霊伝説ヒューディー

大地が平面に広がる架空の世界を舞台に、精霊と人間の両面を持った少女が邪悪な力と対峙するアクションファンタジー。壮大なスケールの物語と、迫力あるアクションシーンが魅力。第1部「急ぎ歩きの迷子」、第2部「モノセロスの呪縛」の2部構成だが、未完のままとなっている。また、コミックス第3巻のみ、作者の名義が「おおのやすゆき」となっている。

正式名称
精霊伝説ヒューディー
ふりがな
せいれいでんせつひゅーでぃー
作者
ジャンル
ファンタジー
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概要・あらすじ

生まれたばかりで未熟な精霊である滸蝶は、自分の生き方について迷っていた。そんなある日、滸蝶が世話になっていた老人の李欣玄明に殺害されてしまう。李欣の敵を討つため、そして自分の未来を探すために旅に出る滸蝶。彼女が行き着いた先は、它省の首都・它蕃(ターファン)であった。この時它蕃には、近衛府特捜局による、奥の扉に眠る大帝を復活させて大地のすべてを支配しようという動きがあった。

滸蝶は、それを阻止するために戦う河川組合咬素らに協力し、その過程で本来の精霊の姿として覚醒するのだった。この事件以降も旅を続ける中で、やがて滸蝶は、の王女である紗叡と出会い、角角角によって何人もの精霊が捕らわれていることを知る。

自分と同じ精霊を救うため、滸蝶は角角角のいる角省へ向かうのだった。

登場人物・キャラクター

滸蝶 (ひゅーでぃー)

生まれたばかりで未熟な精霊。当初は少女の姿をしていたが、これは実体を持たない精霊の種子が人間の少女に宿り、種子だけが出て行って実体化した際に、その少女の姿や性格を受け継いだためである。世話になっていた李欣を玄明に殺害されたことで、玄明を倒すため、そして自分のために旅に出て它省の首都・它蕃(ターファン)にたどり着く。 そこで咬素や、自分と同じ精霊である香魂らと出会い、它蕃に渦巻く邪悪と対峙して大帝の復活を阻止するために戦いに挑む。この事件以降、完全に精霊として覚醒した滸蝶は、大人の女性の姿となって旅を続け、 潤など数々の国を滅ぼしたうえ何人もの精霊を捕えている角角角のもとへ、紗叡と一緒に向かうことになる。

玄明 (じゅあみん)

它省の特捜局副長の男性。政府内でも一・二を争う呪術の使い手である。特に強化甲冑を使用した独自の呪術を使用する。它省で過去に行われた国外文化調査に李欣とともに参加しており、その秘密を握る李欣を殺害した。その際に滸蝶と対峙し、精霊としての滸蝶に興味を持つ。そして本来の特捜局の任務を差し置いて滸蝶と戦うことに執着した結果、特捜局に反旗を翻す形となる。

咬素 (やおず)

河川組合のリーダーの男性。它蕃を訪れた滸蝶のことを調べ、政府に対抗するために滸蝶を仲間にした。大帝復活を目論む大内裏の動きを察知し、それを阻止して封じ込めるために民衆を引き連れて立ち向かうこととなる。呪術の能力は高く、河川組合の筆頭に立って戦う。河川組合を去る香魂に滸蝶のことを託された。

香魂 (じゃんはん)

河川組合と行動をともにしていた精霊で、女性の姿をしている。同じく精霊である滸蝶を呼び寄せ、精霊と人間の部分を両方持つ未熟な精霊である滸蝶に、精霊としての生き方や力の使い方などを伝授する。滸蝶と河川組合が大内裏の大帝復活に挑もうとした際には、他の生物に関与しないという精霊の本来の性質にならい、滸蝶のことを咬素に託して河川組合を去る。

仇生 (ちゅせん)

它省の特捜局局長の男性。かつて它省が行った国外文化調査においては多くの謎が残されたが、それは仇生の手引きによるものだったとの噂もある。近衛府と一緒に大帝の復活を目論み、その目的のために民衆や部下たちに多くの血を流させ、その血を大帝に捧げようとする。

大帝 (たいてい)

大内裏の大極殿にある奥の扉の向こうの異次元に眠っている存在。目覚める条件がすべて揃った年には、大地に無限の支配をもたらすとされている。その正体は強大な邪悪の固まりともいわれる絶遁であり、目覚めた時には巨大な口で它蕃の街や人々などを飲み込んでいった。

李欣 (りじん)

它省が行った国外文化調査で隊長を務めた男性。多くの謎が残されたこの調査において、生きて帰ったのは李欣と玄明のみであった。その後は第一線を退き、滸蝶の世話をしていたが、国外文化調査の秘密を狙う玄明に殺害されてしまう。この出来事が、滸蝶が旅に出るきっかけとなった。

慧小 (ひゅーちゃお)

它蕃(ターファン)における大帝復活を前に、市民が市外に脱出する船の順番待ちをしていた少女。その際に精霊の社を訪れ、滸蝶と出会う。小さい頃から、悪いことは精霊が払ってくれると言い聞かされて育っており、実際に精霊である滸蝶に会った時には感激していた。

天禄と辟邪 (ちゃんるうとびぐじい)

精霊が駆使することができる一対の使いの獣で、一本角の獣が天禄、二本角の獣が辟邪である。精霊としての戦い方を滸蝶 に教えていた香魂が滸蝶に与えたもので、普段はイヤリングの形をしており、身に着けることができる。戦いに際してだけではなく、飛行して移動する際などにも使える。

紗叡 (しゃるーえ)

潤の王女。潤の都が角角角の軍隊に侵攻され滅ぼされた時に、露宮によってアマツバメの姿に変えられて追われていたが、滸蝶に助けられた。同様に鳥の姿に変えられて捕らえられた綆王たちを救うため、角角角のもとに行って精霊を救うという滸蝶に同行する。呪術の腕が高く、露宮の術を中和することが可能で、夜には人間の姿に戻ることができる。

露宮 (るーごん)

角角角の最大の臣下であり、数々の国を侵略する際に軍隊の指揮を執る男性。民衆を操る他、呪術によって人間をさまざまなものに変化させることができる。この術により、紗叡をはじめとする潤の人間を鳥の姿に変えた。複数の戦艦を1人で駆逐できるほどの力を持ち、弱者を徹底的に排除しようとする。

角角角 (じゃおじゅーじゅー)

角省を統治する一角獣(モノセロス)の一種。潤をはじめとした一帯に勢力を伸ばし、呪術を使う多くの術者や竜などを支配下に置いている。無限の大地を手中に収めるために子瑛を含めた7人の精霊を捕らえており、そのうちの6人は角角角によって石像化された状態にある。3つの月が均衡する桂晶天の夜にのみ、自らの呪力が失われるという弱点がある。

朱仲 (ずぃーぞん)

庚珊(ジェンシャン)省の国王を務める男性。幅広く勢力を伸ばす角省に密偵を送るが駆逐され、自身の密偵を倒した露宮の顔を拝むため、またなじみの仲である 潤の綆王の様子を見るため、自ら角省の慶角(キンジュー)に出向く。竜の姿に変化して飛行することができる。

子瑛 (ざいえん)

角角角に捕らえられている精霊の1人で、男性の姿をしている。捕らわれの身となって百数年にわたっており、その間は精霊しての力をすべて封じられていた。精霊を救いに来た滸蝶によって封印を解かれたものの、その長い呪縛から先のことを悲観し、葛藤する。しかし滸蝶の前向きな姿勢に触発され、ともに他の精霊たちを救うことを決意する。

綆王 (じぇんおう)

潤の国王を務める男性で、紗叡の父親。潤が角角角の軍隊に侵略された際、露宮によって鳥の姿に変えられ、捕らえられてしまった。その状況下にあってもなお国王としての誇りを失わず、呪術を使って民衆を屈服させる露宮に対し、気丈に反意を示す。

麗摩 (りーま)

角角角によって戦闘要員として造り出された女性。しかし戦闘を好まず、結果的に角角角の意向に背いて生かされているため、裏切り者の烙印を押されている。争いを起こす露宮の身を案じたり、戦闘部隊の精霊たちへの攻撃に心を痛めたりと、心優しい性格。

不濁 (ぶしゅー)

角角角が大地を治めることこそが正義であり、平和であると信じて協力している男性。その信念に逆らうものは躊躇なく攻撃し、角省に逆らう弱者たちを次々に痛めつけ、苦しめる。朱仲とは100年以上前からの因縁の仲であり、慶角(キンジュー)で朱仲と対峙し戦いを繰り広げる。

集団・組織

河川組合 (かせんくみあい)

它省の首都・它蕃(ターファン)の地下に張り巡らされる地下水道を自治する組織。地下水道が它蕃の行政を支えていた一面があったが、它省の大改革の際に反体制的集団とみなされ、地下組織的要素を強くした。咬素をリーダーとし、呪術を駆使する術者を集めて大帝の復活を阻止するために活動している。

特捜局 (とくそうきょく)

它省の首都・它蕃(ターファン)の大内裏に置かれた組織。近衛府と並ぶ大帝直属の機関である。仇生を特捜局局長とし、玄明を副長とするが、玄明は滸蝶との戦いを優先し、反旗を翻してしまう。近衛府と組んで大帝の復活を目論み、滸蝶の始末と河川組合など反体制派の粛清に向けて動く。

近衛府 (このえふ)

它省の首都・它蕃(ターファン)の大内裏に置かれた組織。特捜局と並ぶ大帝直属の機関であり、特捜局と組んで大帝の復活を目論んでいる。近衛府に属する神官たちは強力な呪術を駆使して滸蝶を始末するために行動しており、玄明や河川組合の前に立ちはだかる。

場所

它省 (たーしょう)

人間族が治める国の1つで、首都は它蕃(ターファン)。もともと農耕や牧畜を主産業としており、呪術などの技術は外部の国からもたらされたものである。過去には大地上を調査するために国外文化調査が行われており、調査に要する技術や人員は外部から調達した。この調査結果については公表されておらず、計画そのものも隠匿されたために、謎が多く残されている。 その後に它省の大改革が行われ、政府の再編成が実行されて現在の形態になった。

(らん)

綆王を国王とする国で、その娘である紗叡は王女である。ある日突然、露宮率いる角角角の軍隊の攻撃を受け、瞬く間に廃墟となってしまった。綆王や紗叡を始め民衆は鳥の姿にされてしまい、難を逃れた紗叡以外は露宮に捕えられてしまう。彼らが鳥に変化したのは、数代前の祖先が鳥や獣であったためとされる。

角省 (じゃおしょう)

角角角が統治する国。周囲の国を着々と侵略し、その勢力を広げている。潤もこの一環として壊滅させられた。首都は慶角(キンジュー)であり、都市全体を要塞とし、異なる次元に沈めることで防衛している。角省の森林の中に点在する都市の一部は慶角に通じており、そのゲートは角角角の呪力が弱まる桂晶天の夜にだけ開かれる。 外部の者が出入りできるのはこの時のみである。

その他キーワード

精霊 (せいれい)

肉体を持たず、人間の姿を借りて実体化するもの。它省の首都・它蕃(ターファン)では古くから精霊を信仰する習慣があり、街の至るところに精霊の社が設けられている。精霊は他の生物に関与することができないとされているため、香魂は大帝との戦いに介入しなかったが、半分人間である滸蝶にはそれが可能である。

精霊の社 (せいれいのやしろ)

它省の首都・它蕃(ターファン)に古くからある精霊信仰により、精霊を祀るために設けられた社で、実際に精霊が現れるターミナル的な役割を果たしている。滸蝶が仇生と対峙して倒れた際には、香魂によって精霊の社に呼び寄せられ、咬素たちに助けられることとなった。

呪術 (じゅじゅつ)

呪術言語による方程式を唱えたり、印を結んだり、呪文を書いたりすることで、「厭勝(ヤンシェン)」と呼ばれる力をエネルギーとして放つ術。呪術に長けているかどうかは、どれだけ多くの呪術言語を習得しているかによって判断される。生物が自身で放つことができるほか、銃や砲弾などに厭勝エネルギーを直結させて弾を放つことも可能である。

大内裏 (だいだいり)

它省の首都・它蕃(ターファン)に位置する施設。もともとは邪霊を封じ込めるための寺院であったが、現在は特捜局や近衛府などを置く行政府として機能している。そのため、大内裏は政府機関そのものを指す場合もある。この施設の中にある内裏の大極殿には、大帝が眠る異次元へとつながる奥の扉が存在している。

奥の扉 (おくのとびら)

大内裏にある内裏の大極殿にある扉で、その先は大帝が眠る異次元につながる通路となっている。遥か昔に特別な呪術言語によって封じられていたが、它省が実施した国外文化調査によってその呪術言語を持ち帰って来た隊がいるとされている。これを礎に、近衛府と特捜局が共謀して大帝を目覚めさせる計画が進められている。

絶遁 (じゅえだん)

「大地上の邪悪が凝り固まった者」ともいわれる、三方向に顔を持つ姿をしたもの。大帝はこの絶遁の一種である。生命の気や血、欲望などを食い、大帝が目覚めた時には它蕃(ターファン)の街や人々を飲み込んでいった。古くから精霊の唯一の天敵であり、精霊では倒すことができないとされている。

桂晶天の夜 (けいしょうてんのよる)

角省の首都・慶角(キンジュー)において36日に一度訪れる夜。3つの月が均衡するこの日には角角角の呪力が失われ、角省の各都市から慶角につながるゲートが開かれる。この日には、外部からさまざまな目的を持った人々が訪れるため、ゲートには順番待ちの列ができる。

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