あらすじ
高校生活最後の新学期を迎えた春、山岸知恵のとなりの席には初めて同じクラスになった綿谷硝子が座っていた。軽いジョークで自己紹介をして、綿谷と打ち解けようとする山岸だったが、冗談を真に受ける綿谷に調子を狂わされてしまう。綿谷は真っすぐすぎる性格のため、空気が全然読めないとクラスで浮いた存在となっていた。しかし山岸は、そんな綿谷のことをちょっとウザいと思うけど嫌いじゃないと伝えると、綿谷も山岸と友だちになりたいと顔を赤らめる。そんな二人に山岸の親友である内田清香も加わり、三人は少しずつ打ち解けていく。自分の気持ちを真っすぐ相手にぶつけてしまう綿谷に対し、クラスメートは最初はとまどい、時には怒ったりもするが、彼女の真っすぐな言葉に一人また一人と綿谷の友だちは増えていく。
登場人物・キャラクター
綿谷 硝子 (わたや しょうこ)
とある高校の3年A組に在籍する女子。クラスでは目立つタイプではなく、休み時間には教室で純文学や推理小説の文庫本を読んでいることが多い。相手の言ったことを言葉どおりに受け止めてしまうため、冗談や皮肉がまったく通じず、初対面の相手からは変人と思われてしまうほど、真っすぐな性格をしている。教師に宿題を忘れた理由を問われた時は、脳の短期記憶領域から消えたからと口にして怒らせてしまうなど、常識的なコミュニケーションや日常会話をスムーズに行うことができない。だが生まじめなだけで、クラスメートのことを理解して、友だちになりたいと思っている。しかし、2年時のクラスメートの女子からは、人がショックを受けるようなこともオブラートに包まずに発言する、冗談が通じずに絡みづらくて空気の読めない奴、と評されている。不器用ながらも純粋な言動でクラスメートたちと心を通わせ、少しずつ友だちを増やしていく。瀧井彩香からは「わたやん」と呼ばれている。
山岸 知恵 (やまぎし ともえ)
とある高校の3年A組に在籍する女子。要領のいい明るい性格で、交友関係も広い。綿谷硝子のとなりの席になり、綿谷にとってクラスで最初の友だちとなる。内田清香とは大のなかよし。綿谷には、しっかり者の内田に山岸知恵が支えられている関係のように見えているが、実際は山岸自身も芯は強い。綿谷の言動に最初は面食らい、ペースを大いに乱されるが、綿谷の真っすぐな性格を理解してからはうまく付き合っており、綿谷の友だちづくりをサポートしている。
吉村 葵 (よしむら あおい)
とある高校の3年A組に在籍する女子。母子家庭のために母親はいつも仕事で帰りが遅く、寂しい思いをしている。しかし、そんな不満を友だちに漏らすことはなく、自分の気持ちを押し殺していつも周囲に笑顔で接している。週当番で綿谷硝子と二人で1週間、クラスの雑事をこなすことになる。最初は綿谷に苦手意識を抱いていたが、真っすぐな自分で居続ける綿谷の強さに感化され、初めて自分の悩みを打ち明ける。
辻本 美咲 (つじもと みさき)
とある高校の3年A組に在籍する女子で、学級委員長を務めている。その責務から、予鈴が鳴ったら早く教室に入ること、黒板に落書き厳禁、漫画は教室に持ち込み禁止などと、クラスメートに注意ばかりをしているため、みんなに煙たがられている。しかし、辻本美咲自身は好き好んで委員長をしているわけではなく、責任感や使命感でクラスの嫌われ役を買って出ている。クラスに仲のいい友だちもおらず、下の名前さえ覚えられていない。綿谷硝子からは自分の意見を臆さずに言える姿にあこがれていると話し掛けられるが、塩対応をしてしまう。
瀧井 彩香 (たきい あやか)
とある高校の3年A組に在籍する女子。やたらとノリが軽く、裏表のない明るい性格の持ち主。勉強が苦手。山岸知恵、内田清香と仲がいい。綿谷硝子にも最初から親しげに接してきて、ノートを借りたりしている。綿谷を「わたやん」と呼んでいる。
加納 仁美 (かのう ひとみ)
とある高校の3年A組に在籍する女子。金髪で目つきの悪いヤンキー風な見た目で、口数が少ない。高価な財布を持ち、タクシーで学校に登校してくることもあり、援助交際をしている、高1の時に大学生の彼氏がいた、クラスの大抵の男子と寝ている、などのあらぬ噂を立てられている。実際には深夜にコンビニでアルバイトをしているだけで、陰口を叩く同級生のことを「学校だけがすべての奴ら」と見下している。そのため、その噂を釈明する気はまったくなく、誰にも心を開こうとはしない。体育をサボってよく見学しており、保健室で眠っていることも多い。クラスメートたちは、そんな加納仁美を恐れて近寄ろうともしないが、綿谷硝子には加納自身の口から本当のことを聞きたいと言い寄られて大いにとまどう。
園田 真央 (そのだ まお)
とある高校の3年A組に在籍する女子。漫画やアニメが大好きなオタク少女。二人のクラスメートの女子といっしょに、いつも漫画やアニメの話題で盛り上がっており、放課後もお互いの家に集まって語り明かしている。そんな状況に満足しつつも、たまにはカフェに行ったり、恋バナをしたりと、ふつうの女子高生のようなことをしたいと思っているが、二人には言い出せないでいる。話題となっている漫画に興味を示して話し掛けてきた綿谷硝子となかよくなり、彼女に背中を押されて、友だちに自分の思いを伝えた。
林 雄大 (はやし ゆうだい)
とある高校の3年A組に在籍する男子。美術の選択授業で、綿谷硝子と二人一組となり、お互いの姿をデッサンすることとなる。絵を描くのが好きで、美大を目指して努力している。しかし、そのことを仲間からイジられるのを嫌い、絵や美大の話題になると笑ってゴマかしているが、偽っている自分に嫌気が差している。綿谷から絵のうまさを素直に褒められるが、真っすぐに接してくる綿谷に対し、つい反発してしまう。
高崎 南 (たかさき みなみ)
とある高校の3年A組に在籍する女子。華やかな雰囲気の明るい美人ながら、彼氏がいることやSNSのフォロワー数の多さをさりげなくアピールしているため、女子からはウザがられている。ほかの女子が自分と仲のいいふりをしながら、内心では苦手としていることは察しているが、自分を偽って好かれるよりも、他人にちやほやされたり、嫉妬されたりすることを重視している。そしてその心の丈を臆面もなく言い切ったことで、綿谷硝子からは好意を持たれる。高崎南自身も、つねにゆるぎのない綿谷に興味を持ち、その人柄に惹かれていく。
内田 清香 (うちだ さやか)
とある高校の3年A組に在籍する女子。仲のいい友だちからは「ウッチー」の愛称で呼ばれ、親しまれている。しっかり者で、特に仲のいい山岸知恵のサポート役に回ることが多いため、綿谷硝子からは親と子供みたいだと評されている。しかし内田清香は、理性的すぎて肝心なところで一歩を踏み出せない自分の背中をいつも押してくれる山岸のことを信頼している。
盛岡 芽依 (もりおか めい)
とある高校の3年A組に在籍する女子。文芸部に所属し、学校新聞に掲載する連載小説を執筆している。その小説を熱心に読んでいた綿谷硝子に声を掛け、自分が執筆していることを明かさないままなかよくなる。人と目を合わせようとせずに傲慢な態度で、男っぽい口調でしゃべる。部費の無駄遣いが問題となって、連載を中断させられそうになるが、綿谷に諭されたことで反省して部員に謝罪する。
島田 桜子 (しまだ さくらこ)
とある高校の3年A組に在籍する女子。お人よしな性格のため、プリント集めや掃除、週当番などクラスの雑事を押し付けられているが、断われずにいる。親友の安部友里からは、控えめすぎることを心配されている。綿谷硝子とはいっしょに掃除当番をしたことで親しくなった。自分のやりたいことを見つけられずにいたが、書道部の顧問の先生に字を褒められたのをきっかけに、書道コンクールに応募したことを綿谷に打ち明ける。
安部 友里 (あべ ゆり)
とある高校の3年生の女子。島田桜子とは小中高とずっといっしょで、部活も同じ書道部へ入部した。3年になって別のクラスになったが、お人よしすぎる桜子のことを心配して、ちょくちょく3年A組に島田の様子を見に来ている。書道コンクールに応募して入選を果たし、そのことを桜子にも話して祝福してもらうが、のちに桜子も同じコンクールに応募していたことを知って気まずい関係となってしまう。
澤 美月 (さわ みつき)
とある高校の3年A組に在籍する女子。窓際の席でいつも外を眺め、クラスメートや教師に呼ばれてもいっさい反応しない。体育の授業で二人一組になる際に独りぼっちだったことで、綿谷硝子から声を掛けられるが、激しく拒絶して綿谷を泣かせてしまう。実は第一志望だった高校に合格できなかったことを理由に心を閉ざし、一人でいることを選んだ。綿谷から文化祭の準備に強引に付き合わされ、徐々に心を開いていく。