大正時代の旅館へタイムスリップ
高校最後の夏休みに曾祖母の営む旅館「花瀧屋(はなたきや)」を手伝っていた女子高校生の佐々木梅は、足を滑らせて湯船の中に転落し、大正時代の「花瀧屋」へとタイムスリップしてしまう。梅は大正時代の旅館で仲居として働きながら、自分を助けてくれた芸妓の藤野をはじめとしたさまざまな人たちとの出会いを経て、自分のやりたいことを見つけていく。また、作中で梅が作った食事や、作中で登場する料理のレシピが掲載されており、料理漫画としての側面も持つ。
大正浪漫の魅力あふれる世界
本作は、佐々木梅がタイムスリップした大正12年の大正浪漫溢れる魅力的な時代を舞台にしている。大正浪漫とは日本の伝統文化と、西洋のハイカラな文化が入り交じった独特の思想や文化、芸術が融合した日本独自のもの。また、カツレツをはじめとした新しい食生活、温泉旅館とは強いつながりと深い関係にあった芸妓の存在、当時の正月の風景など、大正時代の生活が取材や参考文献を基に忠実に描かれている。
過去を変えるために再び大正時代へ
佐々木梅は、令和4年(2022年)の夏から大正12年(1923年)の師走へタイムスリップしたが、再び露天風呂に落ちて令和4年の現代へ戻ってきた。しかし、なかよくなった芸妓の藤野が行方不明になったことを知り、再び大正時代に戻る決意をする。本作は梅の恩人であり、大好きな藤野を救うため、大正時代に戻って旅館の仲居として悪戦苦闘しながら、藤野の未来を変えようとするSFの要素もある。また、大正12年の旅館「花瀧屋」には幼い頃の曾祖母や、親友の巴枝に似た小説家の吉野竹子をはじめとした、未来の梅とかかわりのある人物たちが多数登場し、彼らの苦悩や葛藤を解決しながら、梅自身も成長していく。
登場人物・キャラクター
佐々木 梅 (ささき うめ)
東京都に住んでいる高校3年生の少女。年齢は17歳。2月10日生まれのみずがめ座。幼い頃から夏休みの度に曾祖母の立花イネに旅館「花瀧屋(はなたきや)」を手伝わされており、旅館の仕事と料理を厳しく仕込まれて育つ。元気発剌な明るい性格で、周囲を鼓舞するムードメーカー的存在。しかし、最近は将来について思い悩んでいる。令和4年の高校最後の夏休みに、「花瀧屋」の露天風呂に転げ落ちてしまったことで、大正12年の「花瀧屋」へタイムスリップしてしまう。一度は現代に戻ってきたものの、タイムスリップによって出会った芸妓の藤野が、大正13年に行方知れずとなったことを知り、彼女を助けるために再び大正時代へと旅立つ。
藤野 (ふじの)
旅館「花瀧屋」お抱えの芸妓。年齢は18歳(大正12年時)。6月14日生まれ。芸妓としては「半玉」と呼ばれる見習いながら、地元の新聞で人気の芸妓として取り上げられるなど、注目されている。美しい顔立ちと優しい性格で、特に声が透き通るほど綺麗と評判で、春の鶯にたとえられる。令和4年からタイムスリップしてきた佐々木梅と最初に出会った人物。その時に予感めいたものを感じており、時代の違いに悪戦苦闘する梅を何くれとなく世話をするうちに親しくなる。現代に戻ってきていた梅によって、藤野が大正13年に行方不明になった新聞記事が発見され、梅が再び大正時代へと戻ることを決めた。
書誌情報
花唄メモワール 4巻 芳文社〈まんがタイムKRコミックス〉
第1巻
(2023-08-09発行、 978-4832274761)
第2巻
(2023-09-12発行、 978-4832274839)
第3巻
(2024-02-09発行、 978-4832295254)
第4巻
(2024-08-08発行、 978-4832295674)