あらすじ
冒険の終わり
勇者ヒンメル、屈強な戦士のアイゼン、徳の高い僧侶のハイター、そして、非常に高い実力を持つ魔法使いのフリーレンの四人は、10年の冒険の末、魔王を倒して世界に平和をもたらした。王都に凱旋した一行は人々に歓迎され、四人を讃えた王様の号令のもと、広場に彫像が作られることが決まる。夜になり、彼らは50年に一度の流星群「半世紀流星」を見ながら、10年という長い月日の冒険を、感慨深げに語り合う。しかしただ一人、フリーレンだけは三人とは違う感覚だった。1000年以上を生き続けるエルフの彼女にとって、10年はほんの一瞬に過ぎなかったのである。50年後、もっときれいに流星群が見える場所に案内するというフリーレンの言葉に、勇者ヒンメルは笑いながらうなずいた。そして迎えた50年後。魔法収集の旅をしていたフリーレンは、王都に戻って来る。再会した勇者ヒンメルは、すっかり年老いていた。アイゼンとハイターも合流し、四人がそろったところで、一行は王都から歩いて1週間かかるという、「半世紀流星」がよく見えるという場所に行くことにする。一行は昔のように旅を共にし、「半世紀流星」をみんなで鑑賞して王都に戻ったしばらくあと、勇者ヒンメルは亡くなる。世界を救った勇者の死に、多くの人々が悲しみにくれた。盛大に執り行われる葬儀の中、フリーレンは涙を流すが、たった10年いっしょに旅をしただけの勇者ヒンメルの死を、なぜ自分が悲しんでいるのか、彼女には理解できなかった。人間の寿命は短いことを知っていたのに、なぜもっと勇者ヒンメルのことを知ろうとしなかったのだろうという問いを胸に、フリーレンは、人間を「知る」旅に出ることにする。
僧侶の噓
勇者ヒンメルの死から、20年の月日が流れた。聖都シュトラールの郊外に入ったフリーレンは、ハイターのもとを訪ねる。ハイターはフリーレンとの再会を喜ぶと、賢者エーヴィヒの墓所から出土した、不死の魔法が記されていると噂されている魔導書の解読と、そのヒマを縫って、拾い子であるフェルンへ魔法の修行を施すことを依頼する。フリーレンは、急ぐ旅でもないとして、ハイターの頼みを聞き入れる。魔導書には不死の魔法が記されていなかったものの、フェルンはフリーレンすら舌を巻くほどの資質の持ち主で、4年の修行で10年分の成果をあげる。時を同じくして、危篤に陥ったハイターは、魔導書の解読はフェルンを鍛えるための口実に過ぎなかったことを告白し、死に際にフリーレンに対してフェルンを旅の仲間に加えるよう懇願する。こうしてフェルンを加えたフリーレンは、旅を続けながらも彼女により高度な魔法の教育を施す。それから3年後。フリーレンは成人したフェルンを連れてグレーセ森林を訪れ、クソガキから魔王討伐の際に封印されていたクヴァールの退治を依頼される。クヴァールは、人を殺す魔法の使い手だったが、人類の研究によって、今や人を殺す魔法は一般攻撃魔法レベルとして誰でも使えるように調整されていたうえに、それを防ぐ防御魔法までも開発されていた。フリーレンは、フェルンが防御魔法で人を殺す魔法を防いでいるあいだに、スキをつく形で人を殺す魔法を撃ち込んでクヴァールを瞬殺し、人間の寿命が短いゆえの、研鑽のすさまじさを示すのだった。
村の英雄
勇者ヒンメルの死から28年後。フェルンと共にブレット地方を訪れたフリーレンは、かつての仲間であったアイゼンと出会う。それは30年ぶりの再会であったが、長命種である二人にとってはわずかな時間でしかなく、互いに深く感動することはなかった。アイゼンから、大魔法使いフランメの手記を探す依頼を受けたフリーレンは、フェルンの活躍によって無事に依頼をこなす。そして、発見された手記から、死者の魂が集うという、魂の眠る地の情報を獲得し、勇者ヒンメルの魂ともう一度対話をするために、かつて魔王の城があったというエンデの地を目指す。出発の際に、アイゼンから、かつての弟子であったシュタルクを仲間に加えて欲しいと頼まれたフリーレンは、中央諸国のリーゲル峡谷にある村で、紅鏡竜に立ち向かう英雄としてもてはやされていたシュタルク本人と巡り合う。フリーレンは、村を脅かす紅鏡竜を倒すために共闘するよう申し出る。これに対してシュタルクは、実は魔物との交戦経験がなく、紅鏡竜を食い止められていたというのも、単に相手の気まぐれに助けられていただけだったことを明かす。しかし、よくしてくれた村の人々に恩を返したいと奮起し、フリーレンたちとの共闘を受け入れる。自分が足止めをしているあいだに、フリーレンが魔法で仕留めるという作戦を組んだシュタルクは、斧を持って単身で紅鏡竜に挑む。その結果、彼女たちの助けを得ないままに紅鏡竜を仕留めて、自分の力量に自信を持つようになる。そして、自分たちについてくるか、アイゼンのもとに帰るかの選択を与えられると、フリーレンの仲間になることを決意するのだった
葬送のフリーレン
シュタルクを新たな旅の仲間として迎え入れたフリーレンは、彼とフェルンを伴い北側諸国の一つであるグラナト伯爵領を訪れる。街に入ったフリーレンたちは、魔族であるリュグナーと遭遇する。魔族の狡猾で冷血な本性を知るフリーレンは、リュグナーに敵意を露わにするが、和睦を望むグラナト伯爵の手の者に捕らえられ、フェルンたちと離された挙句、牢屋に捕らえられてしまう。やがてフェルンたちが牢屋の前に訪れ、彼女たちの発言から、和睦のための会議の真相が、かつて魔王に仕えていた断頭台のアウラによる策略であることが判明する。フリーレンは、魔族と停戦しようとするグラナト伯爵を否定し、脱獄してその場から立ち去ろうと考え、その矢先にリュグナーの配下であるドラートに襲われるが、難なく返り討ちにすると、彼が牢の扉を開けていたことを好機として、その場から逃げ出す。一方、ドラートの動きを警戒していたグラナト伯爵は、リュグナーに二心があることを見抜いて問い詰め、彼に敗れて捕らわれるものの、シュタルクとフェルンによって助けられる。リュグナーは、彼らの裏に、魔族から「葬送のフリーレン」と恐れられたフリーレンがいることを確信する。そして、リーニエと共にフェルンおよびシュタルクとの直接対決に踏み切るが、彼らの前に敗れる。フリーレンもまた、アウラが駆使する服従させる魔法を破り、彼女を打ち倒す。アウラやリュグナーの野望を阻止したフリーレンたちは、グラナト伯爵から謝罪を受け、褒章として大魔法使いフランメが記したという魔導書を受け取る。そして、勇者ヒンメルたちと共に魔族と戦った日々を思い出しつつ、グラナト伯爵領をあとにするのだった。
平凡な村の僧侶
勇者ヒンメルの死から29年後。アルト森林で薬草を探していたフリーレンたちは、底なし沼にはまりかけていた僧侶のザインを救出する。お礼として村に立ち寄るよう誘われたフリーレンたちは、物資補充を優先することからこれを断るが、道中でシュタルクが毒性生物に嚙まれたことから、村に立ち寄ることを余儀なくされる。そして、村の教会へと足を運んだところ、シュタルクはザインの兄から手遅れと宣言されるが、彼の弟であったザインの治癒魔法よって一命を取り留める。ザインが僧侶としての資質を秘めていることに気づいたフリーレンは、ザインの兄に、ザインを仲間として迎えたいと懇願する。さらに、シュタルクとフェルンからも賛成されたものの、当のフリーレンはちゃらんぽらんな彼に自分と同じものを感じ、同族嫌悪から仲間にすることを一度は渋る。しかし、かつて勇者ヒンメルに誘われた時のことを思い出し、彼に倣う形でザインを誘う。ザインは、親代わりとして育ててくれたザインの兄に恩義を感じていることから、なかなか首を縦に振らなかったが、当のザインの兄から説得を受けたことで、フリーレンたちの旅に同行することを決めるのだった。
オルデン家
アルト森林でザインを仲間に加えたフリーレンたちは、エンデの地を目指す途中で要塞都市フォーリヒを訪れる。そして、いつものように物資を補充するために街に向かおうと街道を歩いていたが、突然馬車から現れたオルデン卿とその従者たちの手により、半ば強引に屋敷へと連れていかれてしまう。オルデン卿は、先月魔族との戦で長男のヴィルトを失ったが、魔族と争っているあいだは領内の兵士たちの士気を保てるよう、執事のガーベルと共にこの事実を隠していた。そして、3か月後に開かれる有力者たちの社交会でヴィルトが健在であるように見せかけるため、ヴィルトによく似た容姿を持つシュタルクを影武者として仕立て上げるよう依頼してきたのである。路銀に困っていたフリーレンたちは、1年は働かずとも旅ができるほどの金貨と、書庫にある魔導書のうち、好きなものを1冊もらえるという破格の報酬に惹かれ、この申し出を受け入れる。シュタルクは3か月のあいだ、ヴィルトの代わりとして不自然に思われないよう、オルデン卿や使用人たちから、貴族としての作法をみっちりと叩き込まれる。そんな中、シュタルクはオルデン卿の息子であり、ヴィルトの弟にあたるムートと出会う。シュタルクは、剣術の鍛錬に励むムートを見て、境遇が近いことから親近感を抱く。3か月後、シュタルクは無事にヴィルトの代わりを果たし、約束どおりの報酬を受け取る。そして出立の夜、シュタルクはオルデン卿から、屋敷で共に暮らさないかと持ち掛けられる。シュタルクはこれを断ると、オルデン卿とムートの将来に期待を馳せつつ、フリーレンらと共に新たな旅へと向かう。
一級魔法使い選抜試験
要塞都市フォーリヒから出立したフリーレンたちは、友人であるゴリラを探そうとするザインと別れ、やがて北側諸国最大の魔法都市オイサーストへとたどり着く。しかし、そこから北へ向かうには、最低一人の一級魔法使いが同行する必要があるという。フリーレンとフェルンは、自らが一級魔法使いになるべく、一級魔法使い選抜試験を受けることになった。1次試験は三人1組のパーティ戦で、メンバー全員が一人も欠けないまま日没までに隕鉄鳥を籠の中に捕らえ、さらにその籠を誰にも奪われないことが突破の条件となる。フリーレンはつねにケンカをしているラヴィーネとカンネがいる第2パーティに所属させられ、フェルンもまた、参加者随一の問題児にして危険人物であるユーベルのいる第4パーティに入れられてしまう。第4パーティは、運よく早いうちに隕鉄鳥を捕らえることに成功し、それを横取りしようと目論む第8パーティのメンバーを返り討ちにする。一方、第2パーティは、フリーレンの提案によって動いたラヴィーネとカンネが試験場のあらゆる水場に魔力を込めて隕鉄鳥を近づかないように仕向けたうえで、わざと一か所だけ魔力を込めずに隕鉄鳥を誘導し、フリーレンの鳥を捕まえる魔法でこれを捕らえる。そこに、隕鉄鳥を横取りしようとデンケン率いる第13パーティが襲撃を仕掛けてくると、フリーレンたちはこれを迎え撃つ。そしてその中で、フリーレンは大魔法使いフランメの師である大魔法使いゼーリエと初めて出会った日のことを思い出す。
評価・受賞歴
本作『葬送のフリーレン』は、「マンガ大賞2021」で大賞、第25回「手塚治虫文化賞」で新人賞、第69回「小学館漫画賞」を受賞している。
テレビアニメ
2023年テレビアニメ化。9月29日21:00から、日本テレビ系列の「金曜ロードショー」で「初回2時間スペシャル ~旅立ちの章~」としてスタート。以降は2023年10月6日23:00から、新設された「FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)」枠にて、連続2クールで放送。第1クールは2023年12月22日まで、第2クール「一級魔法使い試験編」は2024年1月5日から3月22日まで放送。アニメーション制作はMADHOUSE。主人公のフリーレンを種﨑敦美、ヒンメルを岡本信彦が演じる。
登場人物・キャラクター
フリーレン 主人公
勇者ヒンメルと共に魔王を倒した魔法使いの女性。種族はエルフで、白髪をロングツインテールにした少女の姿をしている。実に1000年以上を生き続けている。メルクーアプリンが好物。魔法オタクで、さまざまな魔法... 関連ページ:フリーレン
ヒンメル
フリーレンたちとパーティーを組み、魔王を倒した男性。種族は人間。かつての偉業を讃えて、人々からは「勇者ヒンメル」と呼ばれている。青い髪と左目下のホクロが特徴で、イケメンを自称するナルシスト。「ルフオムレツ」と呼ばれる料理が大好物。自信家ではあるものの、他者を思いやる気持ちが非常に強い。当てもなく放浪していたフリーレンを半ば無理やりパーティに誘い、やがて彼女からも信頼されるようになる。魔王討伐を終え、50年後にフリーレンと再会した際は、頭はすっかりハゲて、口ひげを蓄えた老人になっていた。再会後、2度目の半世紀流星を見たあと、しばらくして亡くなる。
アイゼン
勇者ヒンメルと共に魔王を倒した戦士の男性。種族はドワーフで、身長が低く、長いひげを生やしている。2本角の兜と全身を覆うマントを身につけている。武器は斧。猛毒の矢を受けても動じなかったり、空から落下してもケガを負わなかったりと、極めて頑丈な体を誇る。また、エルフほどではないが寿命が長く、魔王討伐の50年後にフリーレンと再会した際も、見かけはほとんど変わっていなかった。ただし、アイゼン自身は体の衰えを明確に自覚しており、遠くない将来に戦うことができなくなると考えている。勇者ヒンメルの死後はブレット地方に移り住み、やがてみなし子となっていたシュタルクを拾い、戦士としての訓練を課す。そして、彼の中に類まれなる資質があることを確信するが、ある時些細なすれ違いからケンカ別れをしてしまう。それからしばらくのちに、旅を続けていたフリーレンと再会する。彼女に対して大魔法使いフランメの手記を見つけるように依頼し、その中で魂の眠る地についての情報を得る。その際、フリーレンから魂の眠る地のあるエンデの地まで同行するよう頼まれるが、今の自分では足手まといになるだろうと考え、その申し出を断る。そしてその代わりとして、リーゲル峡谷に赴いた時には、シュタルクを旅の仲間として連れていくようにうながす。なお、フェルンの姿を見た時は、どちらかといえば個人主義だったフリーレンが立派に人を教え導く才能を持っていることを確信し、感慨深げな様子を見せた。
ハイター
勇者ヒンメルと共に魔王を倒した僧侶の男性。種族は人間で、身長が高く眼鏡をかけている。酒が大好きで、フリーレンから「生臭坊主」と揶揄されている。ただし、生真面目な慈悲深い性格で、聖職者として申し分ない人格を持っていることは、フリーレンを含めた多くの仲間たちから認められている。ハイター自身が孤児だったこともあり、孤児院を再建するための費用を捻出したり、戦災孤児となったフェルンを引き取ったりと、子供に対しては特に優しい。勇者ヒンメルとは幼なじみで、共に旅に出た間柄。勇者ヒンメルが死を迎えると、フリーレンやアイゼンをと別れて、聖都、シュトラールに滞在する。アルト森林を訪れた際にザインとザインの兄と出会うと、二人の僧侶としての資質を高く買ったことでシュトラールへと誘うが、慣れ親しんだ地から離れられないことを理由に断られ、代わりとして聖印を授ける。やがてシュトラールの郊外に居を構え、戦災孤児のフェルンを引き取って育てる中で、彼女に魔法使いとしての才能が眠っていることに気づく。勇者ヒンメルの死から20年経った時にフリーレンと再会すると、魔導書の解読とフェルンへの魔法の修行を依頼し、約4年のあいだ共に暮らすようになる。そして、フェルンが一人前の魔法使いになったことを見届けると、改めてフリーレンにフェルンを託し、命を落とす。
フェルン
フリーレンの弟子となった魔法使いの少女。種族は人間。戦災孤児で、聖都シュトラールの郊外で自殺しようとしていたところを、ハイターに救われて引き取られる。フリーレンと同様にドライな性格で、ハイターからはしばしば共通点を指摘される。ハイターのもとを訪ねて来たフリーレンと出会い、4年のあいだ魔法の修行に励み、やがてフリーレンすら舌を巻くほどの強力な魔法使いへと成長する。ハイターの死後、彼の遺志によってフリーレンといっしょに旅をするようになる。物静かで面倒見がいい性格だが、意外と短気な一面があり、怒った時は頰を膨らませたり、唐突に他者に向けてローキックを繰り出すこともある。フリーレンとは、修業時代を含めて9年ものあいだ共に過ごしており、出会った時はフリーレンより身長が低かったが、現在は年相応の容貌に成長している。旅に出てからは、フリーレンの気まぐれな行動に振り回されることが多く、彼女の生活力のなさに愚痴をこぼすこともある。しかし、毎年必ず誕生日プレゼントをくれたり、時おり昔話を聞かせてくれたりと、大事なところで気に掛けてくれていることを知っており、彼女に対して家族のような感情を抱いている。旅を続けるうちに防御魔法をはじめとした強力な魔法を身につけ、やがて強力な魔族であるリュグナーを一人で撃破するほどにまで成長する。のちに仲間になったシュタルクとは、些細なことでトラブルになることも多いが、彼のこともフリーレンと同様に、内心で強く信頼している。なお、旅立つ際に魔法使いの試験を受け、三級魔法使いになるが、北側諸国の「北部平原」と呼ばれる場所を通過する際に一級魔法使いの同行が必要となったため、フリーレンと共に魔法都市オイサーストで一級魔法使いになるための試験を受ける。
タークの老婆 (たーくのろうば)
ターク地方にある村で、薬草家として暮らしている老齢な女性。種族は人間。幼い頃、村を魔物に襲撃された際に、勇者ヒンメルから助けられた。現在でも勇者ヒンメルに強い恩義を抱いているが、村の人々は勇者ヒンメルに関心がなく、かつて建てられた銅像も長らく放置されていることに心を痛めている。村を訪れたフリーレンとフェルンに対して、勇者ヒンメルの銅像を綺麗にするように依頼する。そして、銅像の錆を綺麗に取る魔法によって、かつての輝きを取り戻したところを目の当たりにし、二人に感謝の念を抱く。のちに、勇者ヒンメルの銅像に備えるための蒼月草について尋ねられ、現在はすでに絶滅し、ターク地方ではまず見つからないであろうことを明かす。それでもあきらめずに探し続けるフリーレンとフェルンを見て、今でも自分以外に勇者ヒンメルのために必死になる人がいることを内心で喜ぶ。
シードラット
ターク地方に生息している中型のねずみ。植物の種を主食としており、民家に侵入して栽培のための種子を食い荒らすこともあることから害獣とみなされることが多い。一方で、その愛らしい外見を好む人もいて、初めてシードラットを見つけたフェルンは、しばらくその姿に見入っていた。エサとなる種を、外敵のいない安全な場所に埋める習性を持つが、肝心の場所を忘れやすいことから、フェルンからは賢いのかそうでないのかわからないと評される。フリーレンとフェルンが蒼月草を探している最中に姿を現し、もしかすると蒼月草の種をどこかにしまい込んでいるかもしれないと、一縷(いちる)の希望を持たせる。その推測は当たっており、やがて巨大な塔の屋上に蒼月草の種が埋められていたことが判明する。
クソガキ
グレーセ森林にある村に住んでいる老年の男性。種族は人間。80年以上の時を生きており、本名は明らかになっていない。約80年前、クヴァールを封印するために訪れた勇者ヒンメルやフリーレンと出会うが、その時にフリーレンのスカートをめくったことから勇者ヒンメルの怒りを買い、一行から「クソガキ」というあだ名を付けられてしまう。30年前まで、クヴァールの封印の様子を見に来ていた勇者ヒンメルと毎年対話しており、彼に対して特別な信頼を感じている。勇者ヒンメルの死後も、クヴァールの封印を見守ってきたが、やがて封印が不安定になり、それに気づいたフリーレンに対して、改めて退治を依頼する。なお、子供の頃から麦わら帽子を身につけており、フリーレンはそれを見て、一目で80年前にスカートをめくった相手であることを思い出す。
クヴァール
かつて魔王に仕えていた男性。種族は魔族で、魔法が得意なことから「腐敗の賢老」の異名を持つ。魔王の死を知るや否や仇を討とうと考えるなど、忠誠心が高い様子を見せる。人を殺す魔法を編み出した張本人で、80年ほど前にグレーセ森林を中心に人を殺す魔法を使って多くの人間を殺害していた。しかし、勇者ヒンメルとその仲間たちによって封印されてからは、封印されたまま行動できない状態が続いていたが、80年の時を経て封印が不安定になる。そして、先んじてフリーレンによって封印を解除されると、彼女が魔王を殺害したことを聞かされ、仇討ちのために彼女とフェルンを襲撃する。
グランツ海峡の老人 (ぐらんつかいきょうのろうじん)
グランツ海峡にある街に住んでいる老年の男性。種族は人間。海峡に船の残骸などが流れ着く現状を憂いている。ある時、街を訪れたフリーレンとフェルンに対して、海岸の整備を依頼する。そしてその報酬として、フリーレンの師匠である大魔法使いフランメが記したという魔導書を差し出す。フリーレン自身は、差し出された報酬が偽物であることに気づいていたが、依頼人自身は魔導書が偽物であることを知らず、彼女を騙す意図もなかった。のちにフリーレンとフェルンが海岸に流れ着いた瓦礫(がれき)を一掃すると、二人に深い感謝の意を示すと共に、近々開催されるという新年祭への参加をうながす。
大魔法使いフランメ (だいまほうつかいふらんめ)
大魔法使いゼーリエの弟子で、フリーレンの魔法の師匠にあたる女性。種族は人間。魔法史に名前が出てくるほどの高名な魔法使いで、人々からは「大魔法使いフランメ」と讃えられている。フリーレンとは対照的に豪放磊落(らいらく)な性格で、イタズラ好きな一面も相まって、フリーレンから苦言を呈されることも多い。一方で、新たな魔法を編み出す知識や純粋な魔力の量以外に、魔法の応用や相手を欺く手段などにも長けており、大魔法使いフランメ自身より高い実力を持つ魔族をまとめて葬ったこともある。その極意を教え続けたことによって、フリーレンを大魔法使いフランメ以上の天才に育て上げることに成功する。あらゆる人々からその名前を知られていることから、記した手記は魔法使いにとって宝といえる存在となっている。しかし、実際はほとんど手記を残しておらず、現存しているものはその大多数が偽物である。ある時、単身で魂の眠る地にたどり着き、かつて命を落とした仲間たちと対話を果たす。そして、魂に関する研究が進むことを願い、ブレット地方の盆地に書き残した手記を封印し、フリーレンが見つけ出せるよう細工を施す。
幻影鬼 (あいんざーむ)
ヴィレ地方で悪さを働いている性別不明の魔物。狡猾で貪欲な性格で、人間のみを捕食する偏食家。獲物の身内や大切な人の幻を見せておびき寄せ、殺害、捕食する残虐な性質を持つ。フリーレンからは悪趣味な奴と揶揄(やゆ)されたうえに、できるだけ会いたくないといわれるなど、非常に嫌われている。フリーレンは、ヴィレ地方を訪れて幻影鬼の情報を得た時に、当初は遭遇しないようにやり過ごそうと考えていた。しかし、フェルンが困っている人たちのために対処すべきだと主張したことで、彼女たちから討伐の対象とされる。
シュタルク
フリーレンの一行に加わった戦士の青年。種族は人間。フリーレンやフェルンとは対照的に明るい性格をしているが、彼女たちのマイペースな振る舞いに振り回されることの多い苦労人。ただしシュタルク自身も精神的に幼く、時おりフェルンやザインに呆れられることがある。多くの高名な戦士を輩出した「クレ地方」の出身で、地方の有力者である貴族の次男として生まれる。しかし、幼い頃は身体能力が低かったため、父親をはじめ、周りからは兄のシュトルツと比べられてばかりいたことから、コンプレックスを抱いている。ただし、シュトルツからは優しくしてもらっていたため、彼を慕っている。ある時、故郷が魔族に襲撃され、シュトルツからうながされたことで一人逃げ出してしまい、自分を臆病者であると卑下するようになる。それからはみなしごとして当てもなくさまよっていたが、ブレット地方でアイゼンに拾われて、戦士としての修行を課される。その結果、着実に戦士としての技量を上げていくが、自分に自信を持てないことからあまり成果は上がってないと思い込んでいた。さらに、些細なことからケンカになった際に、身の危険を感じたアイゼンの反射的な防御によって強く殴られると、彼に見放されたと勘違いし、その場から逃げるように去ってしまう。それからは再び各地を放浪するが、リーゲル峡谷に立ち寄った際に付近の村が紅鏡竜に困らされていることを知る。明らかに自分だけでは太刀打ちできないと討伐をあきらめたものの、なぜか紅鏡竜が村を襲わなくなったため、村の英雄として迎え入れられることとなった。その後は3年のあいだリーゲル峡谷で暮らしていたが、そこに現れたフリーレンやフェルンと力を合わせて紅鏡竜を倒し、そのまま二人の旅に同行する。アイゼンのことは、ケンカ別れをしながらも、今でも強く尊敬しており、旅が終わったら必ず彼のもとに帰って仲直りをしたいと考えている。
紅鏡竜 (こうきょうりゅう)
リーゲル峡谷を根城にしている性別不明の魔物。種族はドラゴンで、人間を餌食にするほどの狂暴さと、フェルンの魔法すら弾くほどの強靭な肉体をあわせ持つ。さらに、飛行速度も群を抜いており、滅多なことでは動じないフェルンが、一度戦っただけで恐怖を覚えるほどの危険な存在。魔力を持つ道具を貯め込む性質を持ち、その中にはフリーレンが求めている透けて見える魔法が書かれた書物も含まれる。かつてはリーゲル峡谷の付近にある村を襲っていたが、シュタルクを見るなり、その潜在能力に恐れをなし、それ以降村に近寄らなくなった。しかし、魔物との交戦経験がないシュタルクからは、なぜ村に近寄られないのか知られていない。
関所の門番 (せきしょのもんばん)
城塞都市ヴァールの衛兵隊長を務めている青年。種族は人間で、中央諸国と北側諸国を隔てる関所の守備を兼任している。北側諸国で魔物の動きが活発であるという理由から、門番に着任して以降、誰一人通行を許可していない。街で問題を起こさないように釘を刺すなど、よそ者に対しては特に厳しい。しかし、フリーレンからは、その態度は街を守る衛兵としてふさわしいと高く評価されている。のちに城代に対してフリーレンたちのことを報告するが、彼の命令を受けてフリーレンたちの通行を即座に認めたほか、無礼な態度を取ったことを真摯に詫(わ)びる。
酒場の主人 (さかばのしゅじん)
城塞都市ヴァールにある酒場を経営している男性。種族は人間。アイゼンやシュタルクとは知り合いで、彼らが来るたびジャンボベリースペシャルを振る舞っていた。特にシュタルクのことは、彼が子供の頃から顔を見知っている。北側諸国に抜けるために訪れたシュタルクと久しぶりに顔を合わせると、かつてのようにジャンボベリーパフェを用意した。そして、昔食べていた頃より料理が小さく見えると言ったシュタルクに対して、成長したからすべてが小さく見えるようになったのだろうと返したうえで、アイゼンにしっかり親孝行するようアドバイスを送る。
城代 (じょうだい)
城塞都市ヴァールを治めている男性。種族は人間。中央諸国と北側諸国を隔てる関所の門番を管理する立場にあるが、北側諸国で魔物の動きが活発であるという理由から、しばらくのあいだは誰にも通行を許可しておらず、部下である関所の門番にもそれを徹底させていた。しかし、フリーレンのことを関所の門番に聞くや否や、彼女たちが魔王軍の残党を討伐するつもりであると早とちりし、早々に関所を通過する許可を出す。これによって、フリーレンたちはスムーズに関所を通過できたが、のんびり過ごそうとしていたフリーレンにとっては、むしろ不本意な結果となってしまう。
エング街道の依頼人 (えんぐかいどうのいらいにん)
エング街道で商売をしている老齢な男性。種族は人間。街道が土砂崩れによってふさがれてしまい、身動きが取れなくなっていた際、フリーレンたちに瓦礫の向こう側にある村へとたどり着けるようにして欲しいと依頼する。シュタルクは、魔法でエング街道の依頼人を馬車ごと運ぶよう主張するが、フェルンの提案により、街道を利用する人が困らないよう、瓦礫を綺麗に片付けることにした。無事に瓦礫が片付けられると、三人に報酬を支払って村へ案内する。そして、解放祭のことや、それが勇者ヒンメルを忘れないために行われていること、さらに、幼い頃村が魔族に襲われたところを、勇者ヒンメルに助けられた記憶があることを語る。しかし、目の前にいるフリーレンが、かつて勇者ヒンメルと共に魔族を倒した本人であることは、最後まで気づかなかった。
グラナト伯爵 (ぐらなとはくしゃく)
グラナト伯爵領の領主を務めている男性。種族は人間。アウラの率いる魔族と長らく争い続けており、その中で息子を失ったため、魔族に対する憎しみは人一倍強い。やがて魔族たちから停戦を申し出られると、領主として領民たちに危険が及ばないようにと考え、渋々ながらリュグナーたちと和睦の会談を行おうとする。そんな中、リュグナーを見るなり魔法で攻撃しようとしたフリーレンを衛兵に命じて捕らえさせ、地下牢へと監禁する。しかし、ドラートがフリーレンを暗殺しようとしたことが知れると、リュグナーたちが和平を考えていないことを確信する。そして、彼を始末するために挑みかかるものの返り討ちに遭い、重傷を負う。さらに、グラナト伯爵領の周囲を覆う防護結界の解除をせまられるが、フェルンとシュタルクに助けられる。彼らやフリーレンによって、アウラの軍勢が全滅すると、捕らえた非礼を詫びると共に、彼女が望む魔法の書物を贈呈する。
リュグナー
アウラの部下にあたる男性。種族は魔族で、見た目は青年だが、人間よりはるかに長い時を生きている。血を操る魔法などを駆使する強力な魔法使いだが、その実力はアウラには遠く及ばない。天才と呼ばれる者にコンプレックスを抱いており、魔族として研鑽し続けた魔法をあっさりと打ち破る力を持つフリーレンを忌み嫌っている。長らくアウラと共にグラナト伯爵領の勢力と戦い続けていたが、ある時グラナト伯爵に和解を申し入れる。グラナト伯爵も、領民に被害が及ばないようにこれを受け入れようとするが、リュグナー自身はもとから和平を考えておらず、和睦を申し出たのはグラナト伯爵領の周りに張られた大魔法使いフランメの防護結界を解除する方法を探るためである。のちにドラートが独断でフリーレンを暗殺しようと動き出し、これがきっかけとなってグラナト伯爵に企みが知られてしまう。そしてグラナト伯爵から襲撃されるが、彼を返り討ちにして、防護結界を解除する方法を教えるようにせまる。さらに、シュタルクとフェルンが現れると、リーニエと共に二人を迎え撃つ。
アウラ
かつて魔王に仕えていた女性。種族は魔族で、見た目はリュグナーより若い女性だが、すでに500年以上を生きている。七崩賢の残党の一人で、80年ほど前にグラナト伯爵領で勇者ヒンメルの一行と戦っており、フリーレンとはその頃から因縁がある。ただし、魔王を倒したフリーレンと再会した時に、仇討ちをしようとする様子を見せないなど、クヴァールほどの忠誠心は持ち合わせていない。ほかの魔族を圧倒するほどの高い魔力を誇り、中でも服従させる魔法が大の得意で、服従の天秤を利用することであらゆる存在を服従させられるようになる。狡猾かつ残虐な性格で、服従させる魔法をかけた相手が老いを迎えないように首を切断し、その死体を集めて強力な軍勢を作っている。このことから「断頭台のアウラ」と呼ばれ、恐れられている。勇者ヒンメルが死を迎えると、リュグナーたちを率いてグラナト伯爵領への再侵攻を開始する。しかし、グラナト伯爵領の周囲に大魔法使いフランメの防護結界が張られていることから侵攻は遅々として進まず、防護結界を内側から解除するため、リュグナーたちに命じて和解すると見せかけて、防護結界に関する情報を集めさせようとする。そして、彼らが行動しているあいだに不死の軍勢を率いてグラナト伯爵領にせまるが、そこでフリーレンと80年ぶりの再会を果たす。
リーニエ
アウラの部下にあたる女性。種族は魔族で、見た目は少女のように若々しいが、リュグナーと同様に、人間よりはるかに長い時を生きている。ほかの仲間たちと違い、武器を使って戦うことが得意で、模倣する魔法を使って、より強い戦士の動きで攻撃を仕掛ける戦法を用いる。リュグナーとは同格の存在だが、彼のことをあまり快く思っておらず、助けを求められた時はあからさまに不満そうな顔を見せる。グラナト伯爵を助けに来たシュタルクおよびフェルンと相対すると、フェルンをリュグナーに任せて、シュタルクを仕留めようとした。さらにその際に、模倣する魔法を使ってリーニエが想像する「最も強い戦士」であるアイゼンの動きを模倣し、圧倒的な力を見せつける。
ドラート
アウラの部下にあたる少年。種族は魔族だが、リュグナーやリーニエらより若く、血気に逸(はや)ったり、自分の力を過信するといった悪癖を持つ。魔力の糸を用いた戦いを得意とするが、戦闘経験が圧倒的に少ないため、詰めの甘さが露呈しやすい。ドラート自身の力を過信しており、フリーレンが地下牢に捕らえられたことを知ると、チャンスとばかりに彼女を暗殺しようとするが、あっさりと返り討ちにされる。
クラフト
世界を旅して回っているモンクの男性。種族はエルフで、見た目はフリーレンより年老いて見えるが、実際の年齢は不明。かつて、一人の相棒と共に世界を巡った時期があり、アルト森林の近くの村やローア街道には、大昔の英雄としてクラフトを模した石像が建てられている。天地を創造したという女神の存在を信じており、死んだのちに女神に認めてもらうために、世界各地で善行を積んでいる。デッケ地方に滞在している最中、吹雪に見舞われて身動きが取れなくなっていたところでフリーレンやフェルン、シュタルクと出会う。フリーレンを見るなり同族であることに気づくものの、彼女以前にエルフを見たのは300年も前で、すでに自分以外のエルフは絶滅しているものだと思い込んでいた。それから、約半年のあいだ、フリーレンたちと共に過ごし、無事に冬を乗り越える。そして、フリーレンからハイターの話を聞くと、彼女がいい仲間に恵まれたことを羨ましく思いながら、数百年後に再会するという約束を交わして彼女たちと別れる。のちにグラナト伯爵領を訪れた際に、盗賊に絡まれているユーベルを見かけて彼女を助けるものの、その真意は、ユーベルが殺人をいとわない性格であることを見抜き、目の前で無用な殺生を起こさないためだった。
剣の里の長 (つるぎのさとのおさ)
剣の里で49代目の里長を務めている少女。種族は人間。先祖代々、付近の山に眠るという勇者の剣の守護を担っている。先々代の里長は勇者ヒンメルたちと面識があり、のちに剣の里を訪れたフリーレンに対して、祖母がもう一度会いたかったことを伝える。さらに最近、山の主が率いる魔物たちが里の付近で暴れており、彼らを討伐するようフリーレンたちに依頼する。里の周辺は思った以上に魔物が多く、シュタルクから、自分たちが立ち寄る前に依頼を出さなかったのかと尋ねられる。すると、勇者ヒンメルは実際は勇者の剣を入手することができず、そのことをほかの冒険者たちに知られないためにやむを得なかったと主張する。やがて山の主がフリーレンたちに討伐されると、半世紀後にまた会いたいと希望しつつ、三人を見送る。
山の主 (やまのぬし)
剣の里の周辺を荒らし回っている魔物たちの主を務める。種族は不明。ほかの魔物たちよりはるかに巨大な体を誇り、狼のような顔と人間のような手足を持ち、身体のいたるところに宝石のような石が埋め込まれている。かつて勇者ヒンメルたちが剣の里を訪れた時には存在しておらず、フリーレンは80年足らずで周囲の魔物たちを従えて新たな主になったのだと推測している。なお、剣の里の周辺で暴れているのは、付近の山に安置されている勇者の剣の気配を恐れているためである。
シュトルツ
多くの高名な戦士を輩出した「クレ地方」出身の青年。種族は人間で、シュタルクの兄にあたる。戦士として極めて高い才能を持っており、父親からも将来を期待されている。一方で、父親がシュタルクとシュトルツを比べてばかりいるため、シュタルクからはコンプレックスを抱かれている。ただし、シュトルツ自身はシュタルクの方が将来性があると考えており、父親や仲間たちの目を盗んでは、密かに彼が強くなるよう、アドバイスを送っていた。さらには、シュタルクの誕生日にハンバーグを焼いてあげるなど、非常に弟思いの優しい性格をしている。やがてクレ地方に多数の魔族が押し寄せると、自ら先陣を切って立ち向かい、シュタルクに一人で逃げるようにうながす。そして、彼が去ったことを確認すると、父親や仲間たちと共にその場に残って、最後まで魔族と戦い続けた。
毒性生物 (どくせいせいぶつ)
アルト森林に生息している性別不明の魔物。種族は不明だが、蛇のような形状を持つ。愛嬌のある見た目だが、体内に猛毒を持っており、毒性生物に嚙まれた人間は近いうちに苦しみ出し、やがて脳がすべて鼻から流れ出て死に至るという。アルト森林を歩いている最中にシュタルクに嚙みついてしまい、彼を窮地に追いやり、フリーレンたちを大混乱に陥れる。
ザイン
アルト森林の近くの村に住んでいる僧侶の青年。種族は人間で、村で神父を務めているザインの兄と共に暮らしている。やや不真面目な性格で、女性やかけごとが大好きなことから、内面はおよそ僧侶に不向きと思われがち。しかし実際は、ザインの兄をはるかに上回るほどの魔力を持ち、高純度の女神の加護を帯びているうえに、不治の病といえる毒性生物の毒を容易く治療するなど、類まれなる才能を持つ。また、他者の心境の変化に敏感で、ケンカの仲裁も得意。内心では冒険者になりたいと考えているが、親代わりとして育ててくれた兄を置いて旅に出ることができずにいる。収穫祭に使う料理の材料である野草を取りに出かけたところ、底なし沼にはまってしまう。そこに通りがかったフリーレンに助けられ、のちに村で再会した時は、毒性生物に嚙まれたシュタルクを治療する。さらに、フリーレンたちから仲間になるように誘われるが、理由を明かさないままその申し出を断る。そのあとも、村に滞在するフリーレンたちから誘われ続け、兄から自分の望みに素直になるように背中を押されると、自ら望んでフリーレンたちの旅に同行することを決意する。それからは、女神の三槍や目覚めの解呪といった、フリーレンやフェルンには使えない僧侶の魔法を使いこなして道中をサポートし、混沌花の亜種をフリーレンと共に仕留めるなど、目覚ましい活躍を見せる。そんな中、かつて戦士ゴリラという親友が10年前に一人で旅に出たことや、彼から「僧侶アゴヒゲ」と呼ばれていたこと、戦士ゴリラともう一度会いたいという望みを打ち明ける。そして、ローア街道で頑固婆さんから、戦士ゴリラが「テューア」と呼ばれる交易都市に向かったことを聞かされると、彼を追うためにフリーレンたちと別れ、単身でテューアへと向かう。
ザインの兄 (ざいんのあに)
アルト森林の近くの村で神父を務めている青年。種族は人間で、ザインは弟にあたる。ザインと対照的に温和な性格で、親代わりとして育てたザインから慕われている。手先が器用なことからさまざまな日用品を自作するが、作品に対して奇妙なこだわりを持ち、中には拳より小さな桶など、まるで役に立たないものを作ることもある。僧侶としての技術に優れており、その才能を視察のために村を訪れたハイターに見込まれ、聖都シュトラールの司祭になるよう誘いかけられる。しかし、ザインを故郷から離したくないという理由から、この申し出を断る。一方で、ザインが戦士ゴリラのあとを追って旅に出たいことを知っており、フリーレンたちから北に向かって旅をしていることを聞かされると、ザインをその仲間に加えて欲しいと願い出る。
バンデ森林の商人 (ばんでしんりんのしょうにん)
バンデ森林を往来しつつ、装飾品の売買を生業としている男性。種族は人間。困った時は助け合うべきだという考えを持っている人格者。一方、機を見て売り物に関する宣伝を行ったり、装飾品をなくした人に対して失くした装飾品を探す魔法の修得を勧めるなど、商売人らしいあざとい一面も持つ。バンデ森林を歩いていたフリーレンたちと出会い、彼女たちを馬車で拾って故郷の村まで同行しようとする。そこに鳥の魔物が現れて、馬車を空に持ち上げられてしまうが、フリーレンが鳥の魔物を倒し、馬車が落とされたところをフェルンが重力を相殺したことでことなきを得る。馬車が半壊したことでフリーレンに謝られるが、バンデ森林の商人は、馬車どころか、自らの命も危うかったと礼を言う。そして、鳥の魔物を討伐してくれた報酬として、失くした装飾品を探す魔法の呪文が書かれた巻物を贈った。
鳥の魔物 (とりのまもの)
バンデ森林に生息している、鳥の姿をした性別不明の魔物。複数の人間の乗った馬車を馬ごと軽々持ち上げるほどの怪力の持ち主で、獲物を空高く持ち上げ、落下させて死に至らしめるという狩りの仕方を得意とする。バンデ森林を進んでいたフリーレンたちやバンデ森林の商人が乗っていた馬車を持ち上げて、まとめて始末しようとする。しかし、フリーレンの魔法によって一撃で倒され、そのまま馬車を空中から離してしまう。
混沌花の亜種 (こんとんかのあしゅ)
ラオブ丘陵に生息している、花の姿をした性別不明の魔物。「混沌花」と呼ばれる植物の魔物が、ほかの植物と自然交配された末に生まれた存在で、「呪い」と呼ばれる特別な魔法をかけて周囲の生物をまとめて眠らせたり、相手の魔法攻撃を弾き返す葉を複数備えるなど、危険性は通常の混沌花をはるかに上回る。ただし、中心部に弱点となる核が存在し、それを深く傷つけられることで生命を維持できなくなる。ラオブ丘陵の付近の村の人々を眠らせ、地中を介して彼らの生命力を吸い取ろうと目論むが、その狙いに気づいたフリーレンたちに狙われる。彼女たちに対しても強力な呪いをかけて、女神の加護を受けていないザイン以外をことごとく眠りにつかせる。さらに、複数の葉を使ってザインの女神の三槍をも防ぐ。しかし、ザインが目覚めの解呪でフリーレンを目覚めさせると、目を覚ました彼女の魔法による攻撃で、即座に核を撃ち抜かれる。
オルデン卿 (おるでんきょう)
要塞都市フォーリヒを治めている男性。種族は人間。北側諸国の三大騎士に数えられているオルデン家の現当主で、フリーレンやフェルンからもその名前を知られている。長らく魔族と抗争を続けており、その中で右目を失っている。息子のヴィルトと似た容姿を持つシュタルクを見るや否や、拉致同然に馬車に連れ込んで屋敷まで連れていくなど、やや強引な性格の持ち主。一方で、依頼の報酬として、1年は働かずに旅を続けられるほどの金貨を提示するほどの大らかさを持つほか、人を見る目に優れている。屋敷に連れ込んだシュタルクに対して、領民の士気を維持するためヴィルトの死を知られないようにすべく、彼の身代わりをするように依頼し、路銀に困っていたフリーレンたちはこれを引き受けた。それから約3か月のあいだ、シュタルクが貴族としての作法を学ぶ様子を見守り続ける。次男であるムートを紹介した時は、彼と自分自身を重ねたシュタルクの助言を受けて、ヴィルトの死に引きずられないよう、しっかり見守っていく決意を固める。そしてそのうちに、だんだんとシュタルクに対して情が移ってしまい、ヴィルトの身代わりという大役を果たした彼に対して、自分たちと共にフォーリヒで暮らさないかと誘いかける。しかし、師匠であるアイゼンと仲直りをして、冒険の土産話を聞かせたいという理由から断られる。
ヴィルト
オルデン卿の息子で、ムートの兄にあたる青年。種族は人間。武勇に優れていたことから領民たちからは高い人気を誇っていたが、約2か月前に発生した魔族との戦いで命を落とす。今わの際に、要塞都市フォーリヒの兵士の士気に悪影響をおよぼさないため、魔族との戦いが落ち着くまではヴィルト自身の死を知られないようにと、オルデン卿に頼み込む。そのため、ヴィルトの死は、オルデン卿とガーベルを含めたほんの数人にしか知られていない。のちに要塞都市フォーリヒを訪れたシュタルクがヴィルト自身に酷似していることから、3か月後に行われるという社交会で彼を身代わりに立て、ヴィルトが健在であるかのように見せかけられた。
ガーベル
オルデン卿の執事を務めている老齢な男性。種族は人間。オルデン卿からの信頼は厚く、2か月前の魔族との戦いでヴィルトが命を落としたことや、彼の遺言から、しばらくのあいだ訃報が広まらないようにして欲しいということを聞かされており、彼の死を隠す手伝いをしている。オルデン卿と共に要塞都市フォーリヒの付近を馬車で移動する最中に、偶然ヴィルトに似た容姿を持つシュタルクを発見し、オルデン卿と共に彼を強引に屋敷へと連れていく。オルデン卿による依頼から、シュタルクがヴィルトの身代わりを果たすことが決まると、3か月かけて彼に貴族としての作法を徹底的に叩き込む。また、社交会に年頃の男子がただ一人で参加するのは不自然ということから、のちにフェルンに対しても淑女としての嗜(たしな)みを教授した。穏やかな風貌ながら教えは厳しく、シュタルクやフェルンは「地獄のようだった」と漏らす。シュタルクが無事に役割を果たしたあとは、その報酬の一つとなる魔導書を贈呈するためにフリーレンを蔵書庫に案内するが、彼女が一日中悩み続けたことで、さすがにくたびれてしまう。
ムート
オルデン卿の息子で、ヴィルトの弟にあたる少年。種族は人間。ヴィルトが死を迎えたことで急遽跡取りになることが決まり、そのことに戸惑いを感じている。ヴィルトには劣るものの、優れた剣の才能と努力を怠らない姿勢から、オルデン卿からは自分を超える騎士になるだろうと期待されている。一方で、褒められるとすぐに調子に乗るところがあり、そのことが上達を遅らせる原因とも思われている。優れた兄と比べられる弟という共通点から、シュタルクから親近感を抱かれる。
フォル爺 (ふぉるじい)
クラー地方にある村の一つに住んでいる老年の男性。種族はドワーフ。屈強な戦士として知られており、400年の長きにわたって村を守り続けている。また、かつて人間の女性と結婚したが、すでに死別している。勇者ヒンメルたちとは昔なじみで、フリーレンから気に入られている。戦士でありながら力任せの戦法をよしとせず、油断を誘って防御を意識しない箇所を狙うなど、奇抜な戦い方を好む。村を守り続けている理由は、死に別れた妻との約束を果たすためであり、フォル爺自身は滑稽な話と自嘲する。しかし、勇者ヒンメルがフォル爺の妻が約束を守ってくれていることを嬉しく思っているはずだと断言すると、彼が平和な世界を作ってくれると信じ、期待するようになる。勇者ヒンメルの死後にクラー地方を訪れたフリーレンを歓迎し、シュタルクに1週間かけて剣の稽古をつける。
戦士ゴリラ (せんしごりら)
アルト森林の近くの村で暮らしていた青年。種族は人間。つねに自らを「戦士ゴリラ」と呼び、友人たちにもそれを徹底させていたため、親友だったザインを含め、本名は誰にも知られていない。村に建てられているクラフトの石像に思い入れを持ち、将来は彼のような屈強な戦士になりたいと願っている。10年ほど前に、ザインを連れて旅に出ようとしたが、兄を一人にできないという理由から断られ、一人で旅に出る。しかしそれからも、ザインと共に名を挙げることをあきらめておらず、ローア街道に立ち寄った際には、頑固婆さんに対してザインのことを誇らしげに語る。
頑固婆さん (がんこばあさん)
ローア街道の付近の村の高台に住んでいる老齢な女性。種族は人間。自他共に認める頑固者で、村人たちから「頑固婆さん」と呼ばれている。かつて村を訪れた戦士ゴリラと意気投合し、彼が滞在しているあいだ話し相手になっていた。ザインのことも聞いており、彼が村を訪れた際はすぐに戦士ゴリラが言ったとおりの人物だと気づく。フリーレンたちから戦士ゴリラについて教えて欲しいと頼まれるが、ザインを試す理由もあり、話す見返りとしていくつかの依頼をこなすことを条件付ける。最後に、クラフトが象(かたど)られた石像の掃除を依頼し、この石像がきっかけで戦士ゴリラとなかよくなったこと、そして、彼が「テューア」と呼ばれる交易都市に向かったことを明かす。
ユーベル
三級魔法使いの資格を持つ女性。種族は人間。物体を切り裂く魔法など、直接ダメージを与える魔法を得意とする。一級魔法使い選抜試験の参加者の一人で、一次試験ではフェルン、ラントと共に第4パーティに選出される。襲ってきた盗賊を切り刻んで殺害したり、2年前の二級魔法使い選抜試験で試験官の一級魔法使いを殺害して失格になるなど、気分次第では相手を殺すことすらいとわない危険人物。ただし、人当たりが悪いわけではなく、魔法都市オイサーストへ向かう途中に立ち寄ったグラナト伯爵領で、盗賊に襲われたところをクラフトに助けられた際は、彼の目的がユーベル自身による無用な人殺しを止めるためだと知りつつ感謝したり、試験の際も、フェルンやラントと足並みをそろえて攻略しようとする。試験開始早々、隕鉄鳥を捕獲するという幸運に恵まれるが、その奪取を目論む第8パーティに襲撃され、ヴィアベルと激突する。ユーベル同様、戦いでは手段を選ばないヴィアベルに対しても、臆することなく即座に物体を切り裂く魔法を繰り出すが、防御魔法で防がれた挙句、見た者を拘束する魔法で身体の自由を奪われる。そして、見逃すことと引き換えに隕鉄鳥を渡すようせまられるが、見た者を拘束する魔法の弱点を見抜き、自由を取り戻す。すかさず魔法の再発動を防ぐために物体を切り裂く魔法で目を潰そうとするが、わずかに狙いが外れてしまう。そのうえ、再度見た者を拘束する魔法を受けて行動不能になり、絶体絶命の危機に陥る。
ゲナウ
一級魔法使いの資格を持つ男性。種族は人間。一級魔法使い選抜試験の試験官の一人で、一次試験を担当している。大魔法使いゼーリエを信奉しており、彼女のような強い魔法使いが現れることを望んでいる。冷徹な性格の皮肉屋で、一級魔法使い選抜試験を、より強い力を持つ魔法使いを見つけ出すための手段と認識しており、受験者の中から死者が出ても、一級魔法使いに相応しくない存在に過ぎなかったと言い放つ。デンケンやヴィアベル、フェルンの力に注目し、彼らの活躍に期待している。フリーレンのことは、とらえどころがない魔法使いと認識しているが、彼女がゼーリエの孫弟子であることには気づいていない。しかし、試験中にフリーレンがゼーリエの張っていた防護結界を破壊すると、「ありえない」と驚愕すると共に、その存在に関心を抱き出す。
ヴィアベル
二級魔法使いの資格を持つ青年。種族は人間。年齢は30代半ばだが、見た目や性格が、実年齢より若々しい印象を与えがち。一級魔法使い選抜試験の参加者の一人で、一次試験ではシャルフ、エーレと共に第8パーティに選出される。「北部魔法隊」と呼ばれる部隊の隊長を務めており、長年にわたり魔王の軍勢の残党と戦い続けている。見た者を拘束する魔法を使うことが可能で、相手の動きを封じてから、降伏をせまったり、トドメを刺す戦法を得意としている。純粋な魔力は、ほかの二級魔法使いや三級魔法使いより低く、フェルンからはエーレにも及ばないと考えられている。しかし、20年以上にわたって魔物や魔族、時には人間の子供などとも戦い抜いてきたため、戦闘経験が豊富で、相手の癖を読む術に長けている。また、進んで他者を殺害することは好まないものの、ヴィアベル自身にとって必要だと判断したら、どんな存在であっても躊躇なく命を奪う冷徹さと用心深さを持つ。そのため、第8パーティの仲間であり、かつて命を救ったことで恩を寄せているエーレからも、「品性のない戦いをする人」と揶揄されている。一方で、自分の信念や正義を曲げない心の強さを持ち、北部魔法隊を率いて戦いを続けている理由も、人々が魔物や魔族に理不尽に襲われる被害を少しでも減らすためである。一級魔法使い選抜試験の一次試験では、隕鉄鳥をいかに捕まえるかより、ほかのパーティから隕鉄鳥を奪うことに主眼を置いており、第4パーティのメンバーが隕鉄鳥を捕獲したことに気づくと、エーレとシャレフにそれぞれ指示を出し、隕鉄鳥の籠を持ったユーベルと、ほかの二人を引き離すように画策する。そして、ユーベルの物体を切り裂く魔法を防御魔法でしのぎながら近づき、見た者を拘束する魔法で彼女の自由を奪うと、隕鉄鳥を渡すようにせまる。
デンケン
二級魔法使いの資格を持つ老齢な男性。種族は人間。一級魔法使い選抜試験の参加者の一人で、一次試験ではリヒター、ラオフェンと共に第13パーティに選出される。魔法使いの中でも特に高い技量を誇るといわれており、竜巻を起こす魔法や風を業火に変える魔法、裁きの光を放つ魔法など、多種多様な魔法を自由にあやつる。また、見た目は小柄な老人だが、意外にも体術に精通している。そのため、審査官であるゲナウからも、ヴィアベルやフェルンと並んで注目されている。かつては宮廷魔法使いとして活動しており、権力者にたてつく人間の始末など、表沙汰にはできない任務を多く遂行していた。他者からは、欲深く冷酷な性格と思われがちだが、無駄な死を嫌ったり、情が深い一面を見せることもある。魔法が他者を抑えるための抑止力であるべきという考えから、魔法使いに過剰な力は不要と考えている。状況分析が得意で、試験では早いうちからフリーレンの所属する第2パーティの動向に注目し、彼女たちが隕鉄鳥を捕らえると、それを横取りすべくリヒターやラオフェンと共に攻撃を仕掛ける。そして、フリーレンに対して竜巻を起こす魔法と風を業火に変える魔法を同時に発動し、火炎を纏(まと)った竜巻を起こす。さらに裁きの光を放つ魔法を発動させ、強力な光の矢を断続的に畳みかけるが、フリーレンの底知れぬ魔力の前には力及ばずに敗れ去り、自由を奪われる。なお、今になって一級魔法使い選抜試験を受験した理由は、かつて魔族の襲来に遭ったことから一級魔法使い以外立ち入り禁止になった故郷に出向き、墓参りを行うためである。
ラヴィーネ
三級魔法使いの資格を持つ少女。種族は人間。カンネとは幼なじみで、共に魔法学校を卒業した間柄。凍らせる魔法や氷の矢を放つ魔法など、冷気を司る魔法を得意としている。一級魔法使い選抜試験の参加者の一人で、一次試験ではフリーレン、カンネと共に第2パーティに選出される。強気な性格で若干柄が悪く、不良少年のような口調でしゃべる。また、カンネに対しては容赦のない物言いをすることが多く、しばしばケンカになることもある。しかし根は優しく、内心ではつねにカンネを思いやっている。憎まれ口を叩くのも、彼女がいざという時に力を発揮できることを知っていることから、発破をかけるという理由が大きい。さらに、ラヴィーネ自身の使う冷気の魔法と、カンネの使う水の魔法は相性がいいことから、連携することでより大きな効果を生み出すことも可能。知識と洞察力に優れており、フリーレンの素性を知らない時から魔力抑制を使っていることをうっすらと察し、彼女に対して「あんたとは戦いたくない」と断言する。フリーレンが隕鉄鳥を捕縛する作戦を提案した時も、試験会場を荒らすリスクを承知で早々に受け入れ、周辺の水辺を凍らせる魔法で氷へと変えることで隕鉄鳥がフリーレンの近くに来るように細工する。一方で、ラヴィーネ自身やカンネをはるかに超える魔法を放ったリヒターに対しては、力を発揮できる場所や状況に制限があることを早々と見抜き、ブラフを弄して彼を出し抜こうとする。
ラント
二級魔法使いの資格を持つ青年。種族は人間。幻影魔法を利用した搦(から)め手を得意としている。一級魔法使い選抜試験の参加者の一人で、一次試験ではフェルン、ユーベルと共に第4パーティに選出される。用心深い性格で、敵との戦いをできるだけ避けることを信条としている。ただし、戦闘行為が苦手というわけではなく、知らない人と戦う際には、防御に徹して相手の弱点を徹底的に探り、その弱点を突いて反撃に転じる戦法を用いる。基本的に他者を信頼しないスタンスを取っており、フェルンやユーベルにも幻影魔法についての詳しい情報を伏せたままでいたため、ユーベルからも警戒されている。試験開始早々に、それを狙って襲撃してきた第8パーティの高い攻撃力を誇るシャルフと対峙する。当初は防戦一方で、花弁を鋼鉄に変える魔法によって次第に傷ついていくが、シャルフの魔法が我流であることから基礎をおろそかにしているという弱点に気づき、逆転勝利を収める。
カンネ
三級魔法使いの資格を持つ少女。種族は人間。水を操る魔法など、水分に干渉する魔法を得意としている。一級魔法使い選抜試験の参加者の一人で、一次試験ではフリーレン、ラヴィーネと共に第2パーティに選出される。やや弱気な性格で、自らを「褒められるとのびるタイプ」と言いつつも、いざという時に何もできないことがある。魔法学校に在籍しているあいだもそれは変わらなかったが、ラヴィーネから厳しい言葉を受けることで、本気を出せるようになる。カンネ自身は、迷った時に後押しをしてくれるラヴィーネに感謝しているものの、性格上、彼女のきつい態度をつねに受け入れることはできず、ケンカに発展することも少なくない。一級魔法使い選抜試験で組んだ時もそれは変わらず、たびたびケンカをしてはフリーレンを不安にさせてしまう。ただし、カンネ自身の使う水の魔法と、ラヴィーネの使う冷気の魔法の相性がいいことから、連携することでフリーレンすら驚かせるほどの効果を発揮することもできる。この相乗効果に着目したフリーレンの立てた作戦により、三人で力を合わせて隕鉄鳥を捕らえることに成功する。捕らえた隕鉄鳥を目当てに襲撃してきた第13パーティとの戦いでは、圧倒的な実力を持つリヒターを相手に、ラヴィーネと共に食い下がる。
リヒター
二級魔法使いの資格を持つ男性。種族は人間。大地を操る魔法をはじめ、物質による圧倒的な質量攻撃を駆使する強力な魔法使いで、地割れを引き起こしたり、敵の魔法を硬質化した土でガードすることができる。一級魔法使い選抜試験の参加者の一人で、一次試験ではデンケン、ラオフェンと共に第13パーティに選出される。理知的ながらも言いたいことははっきりと言う性格で、同じパーティのデンケンに対して「老いぼれ」と呼びつつ皮肉を言ったり、第2パーティから隕鉄鳥を奪おうとした時は、ラヴィーネとカンネの二人に対して真っ向から挑んだ挙句、「ただの子守」と言い放つ。ただし、ラヴィーネの氷の矢を放つ魔法を難なく防いだり、彼女とカンネの連携攻撃にもひるまないなど、口の悪さに見合う実力を備えている。一方で、リヒターの戦い方を目の当たりにしたラヴィーネからは、時と場合によっては全力を発揮できない可能性を示唆される。それでもなお、会場に張られた防護結界によって水を満足に得られない二人を苦戦させるが、フリーレンが防護結界を破壊すると、降りしきる雨を利用したカンネとラヴィーネの魔法の前に屈し、やがてデンケンやラオフェン同様、自由を奪われる。
ラオフェン
三級魔法使いの資格を持つ女性。種族は人間。一級魔法使い選抜試験の参加者の一人で、一次試験ではデンケン、リヒターと共に第13パーティに選出される。高速で移動する魔法を使用でき、スピードを活かした戦法が得意。デンケンとリヒターが強力な魔法使いであることや、ラオフェン自身が速度に優れることから、第13パーティの中では露払いを任されやすい。フリーレンが隕鉄鳥を捕獲するための作戦を立てているというデンケンの推測から、第2パーティの隕鉄鳥を奪うという方針が定められ、実際にフリーレンが隕鉄鳥を捕獲したことを機に動き出す。そして、目の前に現れるとすかさず高速で移動する魔法を使い、フリーレンから隕鉄鳥を奪い取ることに成功する。それからは、デンケンの指示どおり、魔力抑制を使って潜伏していたが、デンケンが敗れて自由を奪われ、フリーレンが彼を殺害することを示唆すると思わず魔力抑制を解除してしまい、デンケンと共に捕らえられる。
シャルフ
三級魔法使いの資格を持つ青年。種族は人間。一級魔法使い選抜試験の参加者の一人で、一次試験ではヴィアベル、エーレと共に第8パーティに選出される。魔法学校や師からの教えを受けておらず、修行はすべて我流で行っている。また、自信家のように振る舞っているが実際は気が弱く、ヴィアベルに対して弱音を吐くこともある。花弁を鋼鉄に変える魔法を使うことが可能で、真っ向からの直接攻撃を得意とする。第4パーティが隕鉄鳥を捕獲したことを機にエーレと共に動き出し、ラントと一対一の対決に持ち込む。そして、花弁を散らしてそれらすべてを同時に鋼鉄化することで無数の刃を作り上げ、ラントを防戦一方に追い込む。ただし、ラントは手傷を負ったように見せながらも分析を進めており、やがて我流ゆえに防御魔法などの基礎がおろそかになっていることや、魔力探知が苦手であることを見抜かれてしまう。
エーレ
二級魔法使いの資格を持つ女性。種族は人間。一級魔法使い選抜試験の参加者の一人で、一次試験ではヴィアベル、シャルフと共に第8パーティに選出される。石を弾丸に変える魔法が得意で、シャルフと同様に攻撃面に優れている。かつて住んでいた街が魔物に襲撃されたことがあり、窮地をヴィアベル率いる北部魔法隊に救われる。これを機に魔法の修行を行うようになり、やがて魔法学校を首席で卒業し、ヴィアベルすら上回る魔力を誇る魔法使いにまで成長する。命の恩人であるヴィアベルを内心で慕っており、シャルフと同様に彼に甘えることもある。また、エーレ自身がヴィアベルより優れた魔法使いであることを自覚しているものの、実戦経験が圧倒的に不足しているため、戦いのセンスなどは彼に劣る。ヴィアベルの戦いを品性のない戦法と称するが、戦闘を任務とする魔法使いにとってはむしろ理想的と考えている。第4パーティが隕鉄鳥を捕獲したことを機にシャルフと共に動き出し、隕鉄鳥を持つユーベルをヴィアベルに任せて、フェルンの足止めを担う。石を弾丸に変える魔法で複数の石を利用した同時波状攻撃を仕掛けて押し切ろうとするが、フェルンの桁違いの魔力によって逆に圧倒されてしまう。
ゼンゼ
一級魔法使いの資格を持つ女性。種族は人間。一級魔法使い選抜試験の試験官の一人で、一次試験では見物に回っている。冷静な性格で、ゲナウの厳しいやり方には肯定も否定もしていない。また、魔力を探知する能力に優れており、フリーレンがグローブ平原に掛けられた防護結界を解析していることを即座に気づくほど。さらに、フリーレンが結界を破壊すると、その事態に驚愕するゲナウとは対照的に「魔法に『絶対』という言葉は存在しない」と、顔色一つ変えずに言い放つ。
大魔法使いゼーリエ (だいまほうつかいぜーりえ)
1000年以上前に大魔法使いフランメの魔法の師を務めた女性。種族はエルフで、フリーレンにとっては大師匠にあたるが、フランメはおろか、フリーレンより若く見える外見をしている。人類の歴史上のほぼすべての魔法を網羅しており、あらゆる魔法使いの頂点に立つことから、フランメと並んで「大魔法使いゼーリエ」と呼ばれるほか、「生ける魔導書」の異名を持つ。性格はフランメよりフリーレンに似ており、よくも悪くもマイペースな一面を見せる。魔王が討伐されたのとほぼ同じ時代に歴史の表舞台に現れ、大陸魔法協会を創設する。さらに、一級魔法使いになった魔法使いに対して、望む魔法を一つだけ授けるという特権を付与することを宣言する。現在も存命で、一級魔法使い選抜試験の会場であるグローブ盆地に防護結界を展開する。試験中に防護結界が破壊されると、離れた場所から即座にそれを察知し、破壊した張本人がフリーレンであることに気づく。
集団・組織
ヴァルムの冒険者 (ゔぁるむのぼうけんしゃ)
交易都市ヴァルムにある酒場を拠点に活動している冒険者の集団。ガラの悪いごろつきを彷彿とさせる見た目で、フェルンからは心の中で「荒くれなんて目じゃない」とまで言われてしまう。しかし、外見に反して親切な性格で、スイーツを食べられる店はないかと尋ねたフリーレンに対して、対価を要求せず、懇切丁寧に教えてあげていた。なお、交易都市ヴァルムには、メルクーアプリンをはじめとして美味しいスイーツが山のようにあり、ヴァルムの冒険者の活力の源になるとまで豪語する。
大陸魔法協会 (たいりくまほうきょうかい)
勇者ヒンメルが死を迎える約30年前に、大魔法使いゼーリエによって設立された協会。聖都シュトラールに本部を構え、魔法都市オイサーストに支部が存在する。一級から九級までの魔法使いの資格を発行したり、魔法の研究を後押しするなど精力的に活動し、多くの人間のあいだに強力な魔法が流通するきっかけとなる。魔王が討伐されて世界に平和が訪れたことで、魔法使いの数が急速に減っていったが、現在は大陸魔法協会の設立によって質の高い魔法使いが多く誕生しつつある。
七崩賢 (しちほうけん)
魔王直属の魔族のうち、特に強い力を持つ7体の大魔族の総称。その多くは、勇者ヒンメルやフリーレンたちが魔王を倒すための旅の道中で討ち取ってきたが、中には討伐を免れた七崩賢も存在する。その一人であるアウラは、服従させる魔法であやつった人間の死体を束ねて強力な軍団を組織し、部下であるリュグナー、リーニエ、ドラートを率いてグラナト伯爵領を壊滅させようと企んでいる。
第2パーティ (だいにぱーてぃ)
一級魔法使い選抜試験の一次試験で結成された19組のパーティの一つ。フリーレン、ラヴィーネ、カンネの三人で構成され、試験中は全員が「Ⅱ」の刻印が刻まれた腕輪を身につけている。ラヴィーネとカンネは幼なじみだが、性格的に衝突しやすく、試験会場でも取っ組み合いのけんかをしてフリーレンを不安にさせる。しかし、カンネの使う水を操る魔法と、ラヴィーネの凍らせる魔法で強力な相乗効果を発揮させられるうえに、戦闘では抜群のコンビネーションを発揮するなど、性格面以外では非常に相性がいいことが判明する。そして、二人の相性のよさや、隕鉄鳥の習性を把握したフリーレンの提案により、ラヴィーネの魔法を利用して隕鉄鳥をおびき出し、フリーレンの鳥を捕まえる魔法で捕獲するという作戦を実行し、これを成功させる。さらに、これを奪い取るために襲撃して来た第13パーティを追い払うと、隕鉄鳥を守り切り、無事に一次試験を通過する。
第4パーティ (だいよんぱーてぃ)
一級魔法使い選抜試験の一次試験で結成された19組のパーティの一つ。フェルン、ユーベル、ラントの三人で構成され、試験中は全員が「Ⅳ」の刻印が刻まれた腕輪を身につけている。気分次第で殺人すらいとわないユーベルに、猜疑心の強いラント、不愛想なフェルンと、それぞれ個人主義が目立つが、三人とも私情より実利を優先するタイプであるため、パーティの中でいがみ合いが発生することはない。試験開始早々、隕鉄鳥を捕獲することに成功し、それを奪おうとする第8パーティを迎え撃つ。ヴィアベルの見た者を拘束する魔法によってユーベルが危機に陥るも、エーレを撃破したフェルンがこれを阻むことに成功する。その後も隕鉄鳥を守り切り、無事に一次試験を通過する。なお、ユーベルは試験中にわずかながら仲間たちに対して歩み寄ろうとする様子を見せるが、ラントは「二次試験以降は敵同士になる」と語り、必要以上の馴れ合いを拒む姿勢を見せる。
第8パーティ (だいはちぱーてぃ)
一級魔法使い選抜試験の一次試験で結成された19組のパーティの一つ。ヴィアベル、シャルフ、エーレの三人で構成され、試験中は全員が「Ⅷ」の刻印が刻まれた腕輪を身につけている。三人は試験を受ける前からの知り合いで、ヴィアベルのリーダーシップもあって高い結束力を誇る。試験では、ヴィアベルによって隕鉄鳥を追うのではなく、ほかのパーティから奪い取るという方針が立てられる。そして、第4パーティが隕鉄鳥を捕獲したことを機に動き出し、シャルフがラントの、エーレがフェルンの足止めをしているあいだに、ヴィアベルがユーベルから隕鉄鳥を奪い取ろうとする。しかし、フェルンがエーレを撃破し、ユーベルの救援に現れたうえに、フェルンからエーレを殺害したと宣言されたことで、試験突破が不可能になったと考えたヴィアベルは隕鉄鳥の捕獲をあきらめる。しかし実際はエーレは命を落としておらず、さらに三人が合流したところにちょうど野生の隕鉄鳥が飛来し、ヴィアベルの見た者を拘束する魔法で捕獲することに成功する。そして、その隕鉄鳥を守り切り、無事に一次試験を通過する。
第13パーティ (だいじゅうさんぱーてぃ)
一級魔法使い選抜試験の一次試験で結成された19組のパーティの一つ。デンケン、リヒター、ラオフェンの三人で構成され、試験中は全員が「ⅩⅢ」の刻印が刻まれた腕輪を身につけている。しかし、デンケンやリヒターをはるかに上回る実力を持つフリーレンのいる第2パーティに狙いを定めてしまい、デンケンは真っ向勝負でフリーレンに敗北。リヒターも、当初はラヴィーネとカンネの二人を相手に善戦していたが、フリーレンがグローブ盆地に仕掛けられていた防護結界を破壊すると、降りしきる雨を攻撃に利用されたことで敗北する。そして、全員が鳥を捕まえる魔法で拘束されるが、縛り付けられている木を魔法で切り倒すことで、自由を得る。その後は、デンケンの「最後まであがき続ける」という方針から、隕鉄鳥を保有しつつもメンバーが欠けたパーティを狙い、奪い取ることに成功する。そして、その隕鉄鳥を守り切り、無事に一次試験を通過する。
場所
グローブ盆地 (ぐろーぶぼんち)
北側諸国の一地方。一級魔法使い選抜試験の会場として利用される。周囲には大魔法使いゼーリエの発動した防護結界が張られており、一級魔法使い選抜試験が開催されているあいだは、受験者たちは行動を大幅に制限される。さらに、防護結界によって川に流れる水もせき止められるため、水分の調達が困難なうえに、試験に合格するために必要となる隕鉄鳥の捕獲も難しくなっている。
オッフェン群峰 (おっふぇんぐんぽう)
北側諸国の一地方。勇者ヒンメルが死を迎えてから29年後に、フリーレンとフェルン、シュタルクが訪れた場所の一つ。勇者ヒンメルが冒険していた頃は村があったが、現在は人通りが少なく、少数の人間が小屋を構えて暮らす程度になっている。氷柱桜の木が生えており、その根元に生えている茸(きのこ)は病気に効く薬として知られている。通行している途中、フェルンがカゼで倒れてしまう。しかし、ザインが別れ際に残した薬草図鑑に薬の作り方が事細かに記載されており、それを頼りにフリーレンが調合した薬によって、フェルンは回復する。
リーゲル峡谷 (りーげるきょうこく)
中央諸国の一地方。勇者ヒンメルが死を迎えてから28年後に、フリーレンとフェルンが訪れた場所の一つ。紅鏡竜が巣を作っており、付近の村の住人から恐れられていた。そこに、かつて師匠のアイゼンとケンカ別れしたシュタルクが現れ、それ以降紅鏡竜が村に近づくことはなくなる。その理由はシュタルク自身もよくわかっていないが、村人たちがシュタルクを英雄として祭り上げ、村に滞在するよういわれたことで、しばらくのあいだ、彼の拠点となる。のちにフリーレンとフェルンが現れると、二人の助力を得たシュタルクに紅鏡竜が倒され、村に真の平和が訪れる。
ラート地方 (らーとちほう)
北側諸国の一地方。勇者ヒンメルが死を迎えてから29年後に、フリーレンとフェルン、シュタルク、ザインが訪れた場所の一つ。アペティート地方と同様に平和かつ気候も穏やかなことから、四人で久方ぶりの滞在を楽しむ。しかし、滞在中にフェルンが誕生日を迎えたところ、シュタルクとザインがプレゼントを考えていなかったため、フェルンが軽く拗(す)ねてしまう。これによってシュタルクが、フェルンを傷つけたのではないかと落ち込むが、ザインが二人をうまくフォローして仲直りをすることに成功する。さらにフェルンは、シュタルクから鏡蓮華のブレスレットをもらうなど、楽しい誕生日を過ごすことができた。
グレーセ森林 (ぐれーせしんりん)
中央諸国の一地方。勇者ヒンメルが死を迎えてから27年後に、フリーレンとフェルンが訪れた場所の一つ。80年ほど前にクヴァールが人を殺す魔法を用いて付近の住民を多く殺害し、一時は滅亡の危機にさらされる。しかし、そこに現れた勇者ヒンメルやフリーレンたちがクヴァールを封印したことで平穏を取り戻す。それからは、魔族の襲撃に脅かされることもなく平和な日々が続いていたが、クヴァールに掛けられた封印がいつか解けることを予測していた勇者ヒンメルが毎年のように訪れていた。やがて勇者ヒンメルが亡くなり、27年後に封印が不安定になると、村に住むクソガキが、訪れたフリーレンにクヴァールの本格的な討伐を依頼する。その結果、クヴァールが完全に消滅し、住民たちは変わらぬ平和な日々を過ごせるようになる。
ヴィレ地方 (ゔぃれちほう)
中央諸国の一地方。勇者ヒンメルが死を迎えてから28年後に、フリーレンとフェルンが訪れた場所の一つ。二人が訪れる少し前から神隠しが発生し続けており、被害者は幽霊に連れ去られたという噂がささやかれている。話を総括したフリーレンは、この事件を幻影鬼の仕業だと確信し、当初はかかわる前に村を去ろうとする。しかし、村を困らせる元凶を排除したいというフェルンの希望により、二人の手で幻影鬼が討伐され、神隠し事件は解決する。
グランツ海峡 (ぐらんつかいきょう)
中央諸国の一地方。勇者ヒンメルが死を迎えてから28年後に、フリーレンとフェルンが訪れた場所の一つ。付近の街では新年祭という行事が執り行われており、その時期になると大きな賑わいを見せる。古くから航行の難所として知られ、付近の海岸には船の残骸をはじめ、さまざまなものが流れ着いてくる。この影響から付近の街の水質が汚染されるなどの問題が発生し、街の住人が清掃活動にあたっていたが、やがて人手が足りなくなったことで放置されるようになってしまう。やがて新年祭の開催にも影響がでることを危惧され、訪れたフリーレンとフェルンの魔法の腕を見込んだグランツ海峡の老人が、二人に対して海岸の清掃を依頼する。
デッケ地方 (でっけちほう)
北側諸国の一地方。勇者ヒンメルが死を迎えてから28年後に、フリーレンとフェルン、シュタルクが訪れた場所の一つ。寒さが厳しい地方で、特に冬は猛吹雪に見舞われることも少なくないため、冒険者にとっての難所の一つとなっている。フリーレンたちが訪れた際は、折り悪しく強風と豪雪であやうく遭難しかけるが、山のふもとで避難小屋を発見したことで難を逃れる。小屋には、吹雪が止むまで滞在を続けているというクラフトがおり、フリーレンたちは彼と共に半年を過ごし、厳しい冬を乗り越える。
剣の里 (つるぎのさと)
北側諸国のシュヴェア山脈にある里。勇者ヒンメルが死を迎えてから29年後に、フリーレンとフェルン、シュタルクが訪れた場所の一つ。付近の山にある洞窟で勇者の剣と呼ばれる聖剣が安置されていることから「剣の里」と呼ばれている。里の長は世襲制で、フリーレンは47代目および49代目の剣の里の長と面識がある。勇者の剣を狙う魔物があとを絶たず、周囲は魔物が多いが、それに対抗するだけの戦力を持つため、特に被害は出ていない。
ブレット地方 (ぶれっとちほう)
中央諸国の一地方。勇者ヒンメルの死後にアイゼンが移り住んだ場所。勇者ヒンメルの死から28年後に、フリーレンとフェルンが訪れた際には、アイゼンの依頼によって大魔法使いフランメの手記を探すために滞在することになる。探索にはある程度長い期間を必要としたが、フリーレンの魔法によって、盆地の中に封じられていた手記を探り当てることに成功する。さらに、見つけ出した手記に記されていた情報から、魂の眠る地がフリーレンたちの新たな目的地に定められる。
魂の眠る地 (おれおーる)
大魔法使いフランメの手記に記されている前人未到の地。かつて魔王城があった大陸北部エンデよりさらに北に存在し、世界の人々が「天国」と呼んでいる。かつて死を迎えた人々が魂の状態で漂っており、フランメは死に別れた仲間たちと実際に対話を行い、魂の眠る地の存在そのものが、魂に関する研究を飛躍的に発展させる可能性が高いと語る。かつて勇者ヒンメルが死を迎えた時に、ハイターが天国に行ったのだと主張することから、フリーレンやアイゼンは、もしかすると魂の眠る地に勇者ヒンメルの魂が存在しているかもしれないと考える。そして、勇者ヒンメルの魂ともう一度対話するという目的のため、フリーレンとフェルンの新たな旅の目的地に指定される。
魔法都市オイサースト (まほうとしおいさーすと)
北側諸国の一地方。勇者ヒンメルが死を迎えてから29年後に、フリーレンとフェルン、シュタルクが訪れた場所の一つ。北側諸国最大の都市で、大陸魔法協会の支部が存在する。聖都シュトラールと同様に、一級魔法使い選抜試験の会場として利用されており、魔法都市オイサーストより北へ向かうには一級魔法使いの同行が必要なことから、受験に訪れる魔法使いが多い。エンデの地を目的地とするフリーレンとフェルンも例外ではなく、互いに一級魔法使いの資格を得るため、一級魔法使い選抜試験の受験を余儀なくされる。
ターク地方 (たーくちほう)
中央諸国の一地方。勇者ヒンメルが死を迎えてから26年後に、フリーレンとフェルンが訪れた場所の一つ。のどかな雰囲気が特徴の平地で、主に農業が発達している。魔王が健在だった時期に魔物に襲われたことがあるが、勇者ヒンメルによって救われる。その時の功績を称えて勇者ヒンメルの銅像が建てられたが、現在は勇者ヒンメルのこともほぼ忘れ去られており、銅像も長らく手入れがされない状態が続いている。ただし、タークの老婆のように、現在も勇者ヒンメルに感謝している村人もわずかながら残っている。
アルト森林 (あるとしんりん)
北側諸国の一地方。ザインとザインの兄の故郷で、勇者ヒンメルが死を迎えてから29年後に、フリーレンとフェルン、シュタルクが訪れた場所の一つでもある。毒性生物や底なし沼などが存在する危険地帯で、慣れた人であっても事故に遭うことがある。500年ほど前にクラフトが相棒と共に訪れ、活躍したことを称える像が作られる。今ではクラフトの名前すら忘れられているが、戦士ゴリラからはクラフトの像が屈強な体格を持つことからあこがれの目で見られている。かつてハイターが視察のために訪れ、ザインの兄を司祭として聖都シュトラールに招こうとするが、ザインを故郷から離したくないという理由で断られる。それからは、ザインの兄が教会の神父を務め、ザインがそれをサポートしていたが、やがてフリーレンたちによってザインが冒険の仲間に加えられる。
城塞都市ヴァール (じょうさいとしゔぁーる)
中央諸国と北側諸国を隔てる関所がある都市。勇者ヒンメルが死を迎えてから28年後に、フリーレンとフェルン、シュタルクが訪れた場所の一つ。かつてアイゼンが子供の頃のシュタルクと共に滞在したこともある。城壁の上からは北側諸国を一望することが可能で、シュタルクはこの光景を特に気に入っている。現在は、北側諸国では魔物の動きが活発であることから通行が制限されており、現在の関所の門番が任務に就くようになってからは、誰一人通行の許可が下りていない。フリーレンたちも足止めされることを覚悟していたが、城代にフリーレンの名前が知られると、彼女たちが北側諸国の魔物を退治すると勘違いされ、あっさりと通行を許可される。
クラー地方 (くらーちほう)
北側諸国の一地方。勇者ヒンメルが死を迎えてから29年後に、フリーレンとフェルン、シュタルク、ザインが訪れた場所の一つ。森が茂る辺境の地で、フォル爺が約400年にわたって守り続けている村があり、かつて勇者ヒンメルも魔王を討伐する際に立ち寄ったことがある。中でもフリーレンはフォル爺をとても気に入っており、訪れる際に再会を楽しみにしていたほか、10年ほどここに留まりたいと言い出すが、フェルンに止められる。なお、フォル爺が村を守ろうとする理由は、はるか昔に死に別れた妻との思い出を守るためである。
交易都市ヴァルム (こうえきとしゔぁるむ)
中央諸国の都市の一つ。勇者ヒンメルが死を迎えてから27年後に、フリーレンとフェルンが訪れた港町。美味しいスイーツが山のように存在し、街を拠点に活動する冒険者たちに好評を得ている。二人で手分けをして物資を補充することになるが、食料や水、日用品など、生活必需品のほとんどはフェルンが調達することになったため、彼女からはフリーレンがムダな買い物をするのではないかと訝(いぶか)しまれる羽目になる。そして、フェルンがフリーレンの足跡をたどったところ、おしゃれに興味のない彼女がアクセサリーショップに立ち寄ったり、ヴァルムの冒険者が絶賛する美味しいスイーツが食べられる場所を調べるなど、終始不審な行動を取り続ける。
聖都シュトラール (せいとしゅとらーる)
中央諸国にある都市の一つ。大教会や、僧侶や神父などの聖職者を育成するための機関で、大陸魔法協会の本部が存在する。僧侶であるハイターは、勇者ヒンメルやフリーレンたちと共に魔王を倒したあとに聖都シュトラールに移住し、聖職者として活動していた。その一環として、アルト森林で暮らすザインと、その兄である神父を招いて修行を施そうとするが、断られてしまう。のちに聖職者を引退したハイターが郊外に家を構えて、引き取ったフェルンと共に生活し始める。また、勇者ヒンメルが死を迎えてから20年経ったのちにフリーレンが訪れ、約4年のあいだ、ハイターおよびフェルンと共に生活する。
アペティート地方 (あぺてぃーとちほう)
北側諸国の一地方。勇者ヒンメルが死を迎えてから29年後に、フリーレンとフェルン、シュタルクが訪れた場所の一つ。特に事件が起きているわけでもなく、気候も今まで立ち寄ってきた北国諸国の地域よりは穏やかであるため、フリーレンたちは久方ぶりにのんびりとした時間を過ごすことができた。滞在中にシュタルクが18歳の誕生日を迎えて、フリーレンからプレゼントとしてアイゼンやシュトルツが得意としていた、シュタルクの好物であるハンバーグが振る舞われる。
エング街道 (えんぐかいどう)
北側諸国の一地方。勇者ヒンメルが死を迎えてから28年後に、フリーレンとフェルン、シュタルクが訪れた場所の一つ。街道沿いの村がかつて魔物に襲われていたところを勇者ヒンメルと仲間たちに助けられたことがあり、彼らに対する感謝を忘れないようにするため、年に一度解放祭という祭典が行われている。土砂崩れによって街道が封鎖されてしまい、通行者が立ち往生する羽目になっていた。しかし、フリーレンたちが瓦礫をすべて片づけたことで、通行が可能になる。
要塞都市フォーリヒ (ようさいとしふぉーりひ)
北側諸国の都市。勇者ヒンメルが死を迎えてから29年後に、フリーレンとフェルン、シュタルク、ザインが訪れた場所の一つ。グラナト伯爵領と同様に、周囲の魔族の動きが活発で、長年にわたって交戦状態が続いている。戦いの中でオルデン卿の息子であるヴィルトが命を落とすが、魔族との戦いが落ち着くまでは士気を下げるわけにいかないというヴィルト自身の遺言から、領民たちはそのことをいっさい知らされていない。3か月後に北側諸国の有力諸侯が集う社交会でも、ヴィルトの影武者を立てて生きているように見せかける算段だったが、オルデン卿と偶然出会ったシュタルクがヴィルトに瓜二つであることがわかると、オルデン卿の依頼によってシュタルクがヴィルトの影武者を演じることに決まる。
グラナト伯爵領 (ぐらなとはくしゃくりょう)
北側諸国の一地方。勇者ヒンメルが死を迎えてから28年後に、フリーレンとフェルン、シュタルクが訪れた場所の一つ。北側諸国の中でも屈指といえる強国で、周囲には大魔法使いフランメの編み出した防護結界が張られている。魔王が健在だった時代から、七崩賢の一人であるアウラの軍勢と争い続けている。80年ほど前に、勇者ヒンメルたちが現れ、一度はアウラの軍勢を領土から駆逐することに成功する。しかし、アウラ自身は健在で、魔王が滅んでからしばらく経つと、服従させる魔法で作り上げた不死の軍勢や直属の部下であるリュグナーやリーニエたちを率いて、再度グラナト伯爵領へ侵攻を始める。戦いは数十年にわたって続けられるが、防護結界の効果により壊滅的な被害は免れる。業を煮やしたアウラは、リュグナーに命じて和睦を申し出ると見せかけて、防護結界の解除法を探るように命じる。戦いに疲れていたグラナト伯爵領の住民より、和解は悪い条件ではないという意見が持ち上がり、アウラの策略は成功するかに見えたが、訪れたフリーレンたちの手によって阻止される。アウラたちが討伐されたことで平和が訪れたかに見えたが、しばらく経つと盗賊がはびこるようになり、のちにグラナト伯爵領を訪れたユーベルが襲撃を受ける。
ラオブ丘陵 (らおぶきゅうりょう)
北側諸国の一地方。勇者ヒンメルが死を迎えてから29年後に、フリーレンとフェルン、シュタルク、ザインが訪れた場所の一つ。混沌花の亜種が住み着いており、その呪いによって付近の村の住民たちが残らず眠らされている。フリーレンたちは、このままでは村人たちが餌食になることを危惧し、混沌花の亜種の討伐に乗り出す。やがて混沌花の亜種が倒されると村人たちが目覚め、恩人であるフリーレンたちに深い感謝の意を示す。
バンデ森林 (ばんでしんりん)
北側諸国の一地方。勇者ヒンメルが死を迎えてから29年後に、フリーレンとフェルン、シュタルク、ザインが訪れた場所の一つ。鬱蒼とした森林で、鳥の魔物が現れることもあるなど、安全な場所とは言い難い。フリーレンたちはバンデ森林の商人が所有する馬車で運んでもらっていたが、そこに鳥の魔物が襲来する。魔物自体はフリーレンが難なく倒したものの、馬車を半壊させられたうえに、フリーレンがかつて勇者ヒンメルからもらった鏡蓮華の指輪をなくしてしまう。馬車の修理を行うあいだ、野営をして過ごしていたが、指輪は結局見つからず、フリーレンはやむなくあきらめようとする。そこに、バンデ森林の商人から鳥の魔物を討伐した報酬という形で失くした装飾品を探す魔法の書かれた巻物をもらい、鏡蓮華の指輪を探し出すことに成功する。
ローア街道 (ろーあかいどう)
北側諸国の一地方。勇者ヒンメルが死を迎えてから29年後に、フリーレンとフェルン、シュタルク、ザインが訪れた場所の一つ。街道沿いの村には、かつてザインの親友である戦士ゴリラが滞在しており、そのインパクトから村人たちからも親しまれていたことや、偏屈で有名な頑固婆さんとなかよくしていたことが判明する。アルト森林の近くの村と同様に、クラフトとその親友を象った石像が建てられている。現在は錆などで汚れていたが、頑固婆さんの依頼を受けたフリーレンたちの手入れによって、すっかり綺麗になる。さらに、戦士ゴリラが魔法都市オイサーストとは反対方向の、「テューア」と呼ばれる交易都市に向かったことを聞かされ、ザインはフリーレンたちと別れてテューアに向かうか、共にオイサーストに行くかの選択をせまられる。
イベント・出来事
新年祭 (しんねんさい)
グランツ海峡の付近の街で、1年に1度開かれている祭典。海岸から日の出を見て、1年の成功を祝う。グランツ海峡の日の出は、太陽の光が海に反射することで非常に美しい光景が見られることで有名で、それを目的として新年祭を訪れる旅人も多い。勇者ヒンメルも例外ではなく、かつてフリーレンやハイターたちとパーティを組み、魔王の討伐に向かう最中、実際に新年祭に参加したことがある。寝坊癖のあったフリーレンは日の出を見ることに消極的だったが、勇者ヒンメルは一目見れば気に入ることを確信していた。そして、勇者ヒンメルの死から28年後に、フェルンと共にグランツ海峡を訪れたフリーレンは、フェルンにうながされる形で日の出を実際に目撃し、その美しさに満足げな表情を浮かべる。
解放祭 (かいほうさい)
エング街道沿いの街で、1年に1度開かれている祭典。80年ほど前、街が魔物たちに襲われていたところを勇者ヒンメルに助けられたことがあり、彼らに対する感謝を忘れないようにするため、当時の住人たちによって催されることとなる。勇者ヒンメルが死を迎えてから28年後も続いており、勇者ヒンメル、ハイター、アイゼン、フリーレンの銅像を囲み、宴が開かれる。のちにエング街道を訪れたフリーレンたちも解放祭の開催に居合わせたが、村人の中で、目の前のフリーレンがかつての勇者ヒンメルの仲間だと知る者はいなかった。
一級魔法使い選抜試験 (いっきゅうまほうつかいせんばつしけん)
一級魔法使いの資格を獲得するために必要となる試験。大陸魔法協会が主催している。会場は、本部のある聖都シュトラール、および支部の一つが存在する魔法都市オイサーストで、3年に1度開催される。一級魔法使いになることで、北側諸国の全域を出入りすることが可能になるほか、大魔法使いゼーリエから好きな魔法を一つだけ修得させてもらうことができる。これらの点から、一級魔法使いになると世間的にも非常に有利になるといわれており、一級魔法使い選抜試験を受験する魔法使いはあとを絶たない。ただし、大陸魔法協会が、生半可な実力の魔法使いが一級魔法使いを名乗ることをよしとしないことから、試験内容は厳しく、試験の最中に命を落とす受験者も少なくない。なお、一級魔法使い選抜試験を受験するためには、三級魔法使い以上の資格が必要となり、魔法使いの資格を持たないフリーレンは受験できないと考えていた。しかし、彼女が聖杖の証を持つことから三級魔法使い以上の腕前を持つと判断され、受験を認められる。
その他キーワード
聖杖の証 (せいじょうのあかし)
フリーレンがつねに携帯している紋章。80年前は、高い実力を持つ魔法使いの証として知られており、身につけているだけで高名な魔法使いとして尊敬を集めるほどだった。しかし、大魔法使いゼーリエが大陸魔法協会を設立し、一級から九級までの魔法使いの資格制度が実施されたことで、若い人々からはその存在すら知られておらず、フェルンからもただの骨とう品としか見られていない。フリーレンは、あっても困るものではないという考えから聖杖の証を身につけていたが、魔法都市オイサーストで偶然聖杖の証の存在を知る魔法使いと出会い、彼から特例として一級魔法使い選抜試験を受験できるよう取り計らってもらうことに成功する。
氷柱桜 (つららざくら)
オッフェン群峰に生えている桜の木。根元に茸が生えるという特徴を持ち、その茸はカゼ薬の材料となる。フェルンがカゼで倒れたことから必要となり、フリーレンとシュタルクが探索の際に発見する。なお、茸は非常に大きく、実物を初めて見たシュタルクが怖がるほどだった。さらに、フリーレンがその場で薬の調合を始めるが、その姿が人を襲う魔女のような姿だったことから、シュタルクから余計に怖がられてしまう。
蒼月草 (そうげつそう)
勇者ヒンメルの故郷をはじめ、各地で栽培されている植物の一種。青い花びらが特徴で、勇者ヒンメルからは「自分の次に美しい花」と評される。フリーレンがターク地方を訪れ、タークの老婆から勇者ヒンメルの銅像を手入れして欲しいという依頼を受けた際に、銅像の周囲を彩る花として植えようとする。しかしタークの老婆から、現在はその数が大幅に減少しており、ターク地方で見つけることは絶望的であることを聞かされる。フリーレンはあきらめずに、蒼月草のサンプルを入手して、蒼月草の花を咲かせる魔法を編み出すことを志す。
勇者の剣 (ゆうしゃのけん)
剣の里の付近にある山に安置されているという伝説の剣。剣の里の長をはじめ、剣の里の住民たちはこの剣を守ることを義務付けられている。台座に深々と刺さっており、真の勇者にのみ抜くことができるという言い伝えがある。勇者ヒンメルが剣の里を訪れた時も、実際に抜けるかどうか挑戦するが、結局抜くことはできなかった。これによって、勇者ヒンメルが真の勇者かあやうくなってしまうが、この結果に悲嘆せずに魔王を倒せるのなら、偽物でも本物でも構わないと、あくまで強気な態度を崩さなかった。現在も勇者の剣を抜いた者はおらず、変わらず山の中の洞窟に存在しているが、剣から発せられる気配によって、山の主をはじめとした多くの魔物が集う事態となっている。
鏡蓮華の指輪 (かがみれんげのゆびわ)
「鏡蓮華」と呼ばれる花の装飾があしらわれた指輪。かつて魔王を倒すための旅を続けていた最中に、勇者ヒンメルからフリーレンに向けてプレゼントされる。鏡蓮華は「久遠の愛」という花言葉を持つことがのちに判明するが、フリーレン自身はそのことを知らず、勇者ヒンメルもそれを知らなかっただろうと推測する。それでも、フリーレンにとっては思い出の品であることは変わらず、今でも大切に持ち歩いている。バンデ森林で鳥の魔物と戦った際に紛失してしまう。フリーレンは、半壊した馬車を修復している最中に探して回るが、結局見つからずあきらめようとする。しかし、勇者ヒンメルとフリーレンを思うフェルンから、もう少しのあいだいっしょに探そうと誘われ、さらに探していることを知ったバンデ森林の商人から失くした装飾品を探す魔法の書かれた書物をもらい、それを使うことで見つけることができた。
服従の天秤 (ふくじゅうのてんびん)
アウラが所有している道具。アウラの使用する服従させる魔法を補助する効果を持ち、片方の天秤にアウラの、もう片方の天秤に魔法をかける相手の魔力の量に応じた炎を灯し、アウラの方に傾けば魔法を必ず成功させる効果を持つ。ただし、相手の方に傾いた場合、逆にアウラが相手に服従する効果に反転してしまう。アウラは自分の持つ魔力に絶対の自信を持っているため、服従させる魔法を使う時は必ず服従の天秤を併用している。フリーレンに対しても例外ではなかったが、彼女が魔力抑制を使い続けていることを知らなかったため、両者の魔力の炎を天秤に乗せた瞬間にフリーレンが魔力抑制を解除したことで、効果を反転される。
鏡蓮華のブレスレット (かがみれんげのぶれすれっと)
「鏡蓮華」と呼ばれる花の装飾があしらわれたブレスレット。フリーレンたちがラート地方に滞在していた際、誕生日祝いとしてシュタルクからフェルンにプレゼントされた。実は、鏡蓮華は「久遠の愛」という花言葉を持つことがのちに判明し、フェルンはシュタルクから「花言葉を知らなかった」と言われると、わずかに不機嫌そうな顔をする。シュタルクは、知らなかったとはいえ愛情を示す贈り物をしたことに気づき、嫌なら別のものを改めてプレゼントするよう申し出るが、それを聞いたフェルンはさらに不満そうな顔を向けつつ、鏡蓮華のブレスレットを手放したくないと主張する。
ジャンボベリースペシャル
城塞都市ヴァールの酒場で振る舞われているメニューの一つ。巨大なアイスクリームの周りに、いちごやブルーベリーなどがあしらわれている。かつてシュタルクがアイゼンと共に城塞都市ヴァールを訪れた時に注文したが、あまりに大きかったため食べきれず、アイゼンと二人で分けたという過去がある。フリーレンと同行し、再度城塞都市ヴァールを訪れた際も注文するが、思っていたより小さくて拍子抜けする。それを見ていたマスターは、ジャンボベリースペシャルが小さくなったのではなく、シュタルクが大きくなったのだと主張する。
メルクーアプリン
大型のプリンに、ベリーを用いたソースをかけた料理。フリーレンが好んでいるスイーツの一つで、勇者ヒンメルやフェルンなど、彼女と親しい人からも知られている。フリーレンとフェルンが交易都市ヴァルムを訪れ、地元の冒険者から紹介されたカフェを訪れた際、フリーレンが注文する。そして、フェルンからそれを予想していたような発言が寄せられると、かつて勇者ヒンメルからも同じようなことを言われたことを思い出す。
閃天撃 (せんてんげき)
シュタルクが使用する戦技の一つ。両腕で戦斧を持ち上げ、真上から勢いをつけて振り下ろす。その威力と速度から、受けた相手はまるで閃光に切断されたような衝撃を受ける。リーニエとの戦いでは、模倣する魔法を使ってアイゼンの動きを再現したリーニエの弱点を見抜き、それに対するカウンターとして放つ。そして、リーニエの武器ごと身体を両断するほどの威力を発揮した。
幻影魔法 (げんえいまほう)
ラントが使用する魔法の一つ。「幻影魔法」というのは、ラントが使用していたことに気づいたシャルフが名づけた仮称であり、正式名称は不明。術者自身にそっくりな幻影を作り出せる。幻影を自由自在にあやつることができるうえに、物質や生物への干渉を行ったり、傷ついたようにも見せかけられるなど多彩な機能を持ち、ラント自身はこれを「分身」と表現している。一級魔法使い選抜試験では、試験開始前からすでに魔法を発動しており、そのことを第4パーティの仲間であるフェルンやユーベルにも明かしていなかった。そして、第8パーティとの戦いでは、魔力探知が苦手なシャルフを幻影魔法で欺き、スキをついてラントの本体が彼を行動不能に陥れるという活躍を見せた。
蒼月草の花を咲かせる魔法 (そうげつそうのはなをさかせるまほう)
フリーレンが使用する魔法の一つ。フリーレンが自分の力で編み出した魔法で、名前どおりに目の前の土地に複数の蒼月草を咲かせることができる。フリーレンがターク地方を訪れ、タークの老婆から勇者ヒンメルの銅像を手入れして欲しいという依頼を受けた際に、銅像の周囲を彩る花として蒼月草を咲かせることを思い立ち、この魔法を編み出そうとする。そのために、蒼月草の花をサンプルとして入手しようとするが、タークの老婆からは肝心の蒼月草が数を減らし、ターク地方で採取できる可能性がほぼ皆無であることを聞かされてしまう。
透けて見える魔法 (すけてみえるまほう)
フェルンが使用する魔法の一つ。名前どおりに相手の衣服を透視し、その中を覗き見ることができる。報酬として透けて見える魔法の呪文が書かれた書物をもらい、フェルンが修得した。実験としてシュタルクに対して使用した際、反射的に「ちっさ」と言い放つが、シュタルクのどこが小さかったのかは明らかにされずじまいだった。一級魔法使い選抜試験では、フェルンがユーベルからどのような魔法を使えるか尋ねられた時に透けて見える魔法の話題を出し、あからさまに警戒されてしまう。
ローキック
フェルンが怒ったり拗ねたりした時に使用する体術の一つ。相手の目を見ながら唐突に足を突き出し、脛のあたりに蹴りを繰り出す。膨れっ面を見せつつ行うため、肉体面のみならず精神面でも大きなダメージを受けやすい。誕生日プレゼント忘れたうえに、下手な言い訳をするザインに対して使用される。これを受けたザインは「膝に地味にダメージが来るからやめて」と、懇願するように訴えていた。
服従させる魔法 (あぜりゅーぜ)
アウラが使用する魔法の一つ。名前どおりに魔法をかけた相手の意思を奪い、アウラ自身の配下として命令どおりに動かせる。魔法の効果は、かけられた相手の身体が完全に朽ち果てるまで続き、命を落としても肉体が残っていれば、アウラの思いどおりにあやつることができる。さらに、服従の天秤を併用することで、成功率を大幅に高めることも可能。アウラは服従させる魔法をかけた相手の首を切断して殺害し、首のない死体にしたうえで、自らの軍勢として束ねている。
人を殺す魔法 (ぞるとらーく)
人間、魔族を問わず、さまざまな魔法使いが使用する魔法の一つ。クヴァールが編み出した魔法で、空間に魔法陣を描き、そこから貫徹力の高い光線を発射する。名前どおりに大抵の人間を一撃で殺害するほどの威力を持ち、かつてクヴァールがこの魔法を使ってグレーセ森林に住む人間を多数殺害していたことから、クヴァール自身とあわせて恐怖の代名詞として知られていた。しかし、勇者ヒンメルやフリーレンたちの活躍でクヴァールが封印されると、人類によりこぞって研究が進められ、わずか数年で原理を解明されてしまう。さらに応用が進められると、人を殺す魔法を防ぐコンセプトから新たに防御魔法が編み出され、ある程度の魔力を持つ人間からは容易に防がれるようになる。また、その過程から現在では「一般攻撃魔法」と呼ばれている。クヴァールが復活した際には、魔王の仇であるフリーレンに向けて放たれたが、フェルンの防御魔法で難なく防がれたうえに、より精度の増したフリーレンの人を殺す魔法が、クヴァールを完全に消滅させる。のちに、グラナト伯爵領に騙し討ちを仕掛けたリュグナーに対してフェルンが使用するが、これを見たリュグナーは、人を殺す魔法をはるかに上回る威力があると語り、畏怖と皮肉をこめて「魔族を殺す魔法」と呼称する。それを聞いたフェルンも、リュグナーの言い分を至極もっともであると受け取り、のちに彼を倒すために使用する際に「魔族を殺す魔法」と発声する。
防御魔法 (ぼうぎょまほう)
フリーレンやフェルンなど、多くの魔法使いが使用する魔法の一つ。身の回りに魔力で作られた防壁を展開し、魔法による攻撃を防ぐことができる。ほとんどの攻撃を防げることから、戦闘で高い効果が期待できる。その反面、魔力の消費がとても大きく、広範囲に展開し続けた場合、数十秒で体内の魔力が尽きてしまうという弱点がある。かつてグレーセ森林でクヴァールが人を殺す魔法を使って多くの人間を殺した結果、人類のあいだで人を殺す魔法を徹底的に解析された末に誕生した魔法で、勇者ヒンメルが死んでから27年後に封印が解けたクヴァールとの戦いでフェルンが使った際は、クヴァールの放った人を殺す魔法を完全に防ぐほどの威力を発揮する。
物体を切り裂く魔法 (ぶったいをきりさくまほう)
ユーベルが使用する魔法の一つ。「物体を切り裂く魔法」というのは、ユーベルがシャルフに対して使っていたところをヴィアベルが名づけた仮称であり、正式名称は不明。ヴィアベルの言うとおり、ユーベルが狙いを定めた物体を切断する効果を持つ。ユーベルはこの魔法を使い、気に入らない人間や魔物をバラバラに寸断して殺害していた。射程距離は5メートルと短く、決定的な打撃を与えるためには敵に近づく必要がある。ただし威力は非常に高く、一級魔法使い選抜試験では、戦い慣れしているヴィアベルを追い込むほどの効果を発揮する
凍らせる魔法 (こおらせるまほう)
ラヴィーネが使用する魔法の一つ。名前どおりに物質を急速に冷却して凍らせることができる。生物を直接凍らせることもできるが、魔法に抵抗力を持つ相手に対しては効果が落ちてしまう。その特性上、カンネの水を操る魔法と相性がよく、彼女があやつった水を敵にぶつけて、それを凍らせることで動きを封じるなど、さまざまな戦法に応用できる。凍らせた物質には魔力が込められるため、魔力を敏感に探知する隕鉄鳥が近づかなくなる。一級魔法使い選抜試験ではこの特性を利用して、試験会場内の水場を一か所を除いて凍らせて、残りの一か所の水場に隕鉄鳥が近づくように仕向け、これを成功させる。
水を操る魔法 (りーむしゅとろーあ)
カンネが使用する魔法の一つ。名前どおりに液体を自由自在に移動させたり、形を変えたりできる。あやつった水は非常に速く動かすことができ、音速を超える速度で飛行する隕鉄鳥にも命中させられる。その特性上、水のない場所では発動できないという欠点を持つ。ラヴィーネの凍らせる魔法とは相性がよく、カンネがあやつった水を敵にぶつけて、それをラヴィーネが凍らせることで動きを封じるなど、さまざまな戦法に応用できる。一級魔法使い選抜試験では、隕鉄鳥に命中させた水をラヴィーネに凍らせて、一度は動きを拘束することに成功する。また、リヒターとの戦いでは、グローブ盆地に掛けられた防護結界の影響で満足な水が得られず、簡単に見切られてしまう。しかし、フリーレンが防護結界を破壊すると、降り注ぐ雨をまとめて操作し、リヒターの自由を奪うことに成功する。
温かいお茶が出てくる魔法 (あたたかいおちゃがでてくるまほう)
フリーレンが使用する魔法の一つ。「民間魔法」と呼ばれる魔法の一種で、名前どおりに温かいお茶を発生させることができる。中央諸国のターク地方を訪れたフリーレンとフェルンが、依頼の報酬としてもらった魔導書から修得した。フェルンからは変な魔法と言われており、フリーレン本人もそれを否定しなかった。修得してすぐに使われることはなく、フリーレンの提案から、拠点に落ち着いてから実験として使われた。
底なし沼から引っこ抜く魔法 (そこなしぬまからひっこぬくまほう)
フリーレンが使用する魔法の一つ。底なし沼に沈みそうになっている生物を、触れずに引き上げる効果を持つ。アルト森林の底なし沼に沈みつつあるザインに向けて使われたが、フリーレンはしばらくのあいだ、この魔法の使い方を忘れており、そのまま忘れていた場合、ザインが底なし沼に沈んで帰らぬ人となる可能性があった。
石を弾丸に変える魔法 (どらがーて)
エーレが使用する魔法の一つ。石を硬質化させたうえで、エーレ自身がターゲットに指定した相手に向けて高速で撃ち出すことができる。花弁を鋼鉄に変える魔法と同様に、射程距離内にある複数の石を同時に発射することも可能だが、建物の中や海の上など、石が落ちてない場所では使用できない。一級魔法使い選抜試験では、第8パーティが第4パーティの隕鉄鳥を奪おうとした際に発生した、フェルンとの戦いで用いられる。ただし、エーレをはるかに上回る魔力を持つフェルンには分が悪く、防御魔法ですべて弾かれてしまう。
高速で移動する魔法 (じるゔぇーあ)
ラオフェンが使用する魔法の一つ。名前どおりに身体を動かさないまま、目にも止まらないほどの速度で移動することができる。その効果は、魔力の探知に優れたフリーレンが気づかないうちに隕鉄鳥を奪われ、彼女から「面白い魔法だ」と称賛されるほど。反面、魔力の消耗が激しく、乱用することができないという欠点を持つ。一級魔法使い選抜試験では、第2パーティから隕鉄鳥の奪取するために使用された。
裁きの光を放つ魔法 (かたすとらーゔぃあ)
デンケンが使用する魔法の一つ。地面から6本の光の矢を発生させ、それらを同時に対象に向けて飛ばす効果を持つ。一級魔法使い選抜試験で第2パーティと戦った時は、竜巻を起こす魔法と風を業火に変える魔法を組み合わせた攻撃を防御魔法で防いだフリーレンに対して、畳みかけるように使用される。これに対してフリーレンは、防御魔法で防ぐのではなく、6発すべてを魔法で撃ち落とし、その途方もない技術と魔力でデンケンを戦慄させる。
目覚めの解呪 (めざめのかいじゅ)
ザインが使用する魔法の一つ。女神の加護を受けた人間にのみ使用可能で、魔物の使う呪いによって眠らされた相手を目覚めさせる効果を持つ。ただし効果は5秒間と極めて短く、発動してから5秒経過すると再び眠りについてしまう。混沌花の亜種の呪いで眠らされたフリーレンに対して使用され、彼女の目を覚ますことに成功する。さらに、フリーレンが起きてからすぐに核を狙った魔法を放つことで混沌花の亜種の撃破に成功したため、混沌花の亜種との戦いではもっとも高い効果を発揮した魔法といえる。
しつこい油汚れを取る魔法 (しつこいあぶらよごれをとるまほう)
フリーレンが使用する魔法の一つ。「民間魔法」と呼ばれる魔法の一種で、名前どおりに調理器具などに付着した油汚れをきれいさっぱり消し去ることができる。生活に役立つ傾向にある民間魔法の中でも屈指と言えるほど使い勝手がよく、フリーレンたちも、この魔法を修得してから調理器具の洗浄が飛躍的に楽になったことを実感している。このことから、フェルンからはカビを消滅させる魔法と合わせて「伝説の魔法」と呼ばれる。
竜巻を起こす魔法 (ゔぁるどごーぜ)
デンケンが使用する魔法の一つ。名前どおりにデンケン自身の魔力を消費して、射程距離内の任意の場所に巨大な竜巻を発生させる。竜巻を起こす魔法のみでも攻撃用の魔法として機能するが、一級魔法使い選抜試験で第2パーティのフリーレンと戦った時は、この魔法を使って発生させた竜巻に風を業火に変える魔法を追加発動して、火炎を纏った竜巻を繰り出す。
投げキッス (なげきっす)
フリーレンが他者を誘惑する際に使用する技術の一つ。名前どおりに指先を唇に当てて、キスを投げる仕草を行う。フリーレンの容姿も相まって色気は欠片(かけら)も見られないが、小動物的な愛らしさがあり、大魔法使いフランメやフェルン、勇者ヒンメルには高い効果を発揮する。また、女性のことをほとんど知らないシュタルクからも「えっちすぎる」と言われる。ザインを元気づけるために使われるが、なんの効果も見込めなかった。
防護結界 (ぼうごけっかい)
大魔法使いゼーリエが編み出した魔法の一つ。ゼーリエの直弟子である大魔法使いフランメも使用でき、強力な防御魔法を広範囲に発生させることで周囲に結界を張り、出入りを防ぐことができる。侵入を制限する対象を細かく指定することも可能で、グラナト伯爵領に張られている防護結界は、魔法による攻撃が通用しないよう調整されており、グローブ盆地にゼーリエが発生させたものは、あらゆる生物のほか、川の水も入れないようになっている。使用できる術者が制限されている反面、強力な効果を持ち、解除しない限りは使用した術者が死亡しても効果は残る。ただし、防護結界の構成を解析し、それを分離させることで解除が可能で、一級魔法使い選抜試験では、フリーレンが構成を解析した結果、内部から強引に破壊することに成功する。これには、実際に目撃したゲナウやゼンゼのみならず、魔力の流れから察したゼーリエをも驚かせた。
甘い葡萄を酸っぱい葡萄に変える魔法 (あまいぶどうをすっぱいぶどうにかえるまほう)
フリーレンが使用する魔法の一つ。「民間魔法」と呼ばれる魔法の一種で、名前どおりに甘い葡萄の味を酸っぱいものに変えることができる。フリーレンとフェルンがターク地方を訪れる前に、依頼の報酬としてもらった魔導書から修得した。効果は確かなもので、実験に使われた時は、フェルンが「すっぱい」と断言するほど酸味を持つ葡萄ができあがってしまう。
氷の矢を放つ魔法 (ねふてぃーあ)
ラヴィーネが使用する魔法の一つ。前方に氷でできた矢を発生させて、それを目標に向けて撃ち出す。氷を矢に変化させるわけではないので、水や氷のない場所でも使用できる。ただしその分、威力は水を操る魔法と凍らせる魔法を併用した攻撃には及ばない。一級魔法使い選抜試験で、リヒターと戦う際に発動したが、彼の大地を操る魔法で作り出した土の防壁にすべて防がれ、「脆弱すぎる」と酷評されてしまう。
風を業火に変える魔法 (だおすどるぐ)
デンケンが使用する魔法の一つ。名前どおりに風を激しく燃え盛る火炎に変化させる。風のない場所では発動させられないが、デンケンはその欠点を竜巻を起こす魔法で人為的に風を発生させることで補える。また、魔法を使ってからも風がすべて消えることはないことから、事実上は炎を纏った風を発生させる魔法といえる。一級魔法使い選抜試験で第2パーティと戦った時は、竜巻を起こす魔法で発生させた竜巻にこの魔法を追加発動し、極めて強力な相乗効果を発揮させる。しかし、フリーレンの防御魔法で阻まれてしまう。
鳥を捕まえる魔法 (とりをつかまえるまほう)
フリーレンが一級魔法使い選抜試験で使用した魔法の一つ。「民間魔法」と呼ばれる魔法の一種で、縄のような形状の光の輪を具現化させ、飛行する魔物や生物を捕らえることができる。かつて狩猟を生業とする民族によって考案され、一度捕縛に成功すれば、屍誘鳥でも拘束を解くことができなくなるほどの強度を誇る。ただし、射程距離は約50メートルと短めで、優れた魔力探知能力とスピードをあわせ持つ隕鉄鳥とは少々相性が悪い。フリーレンは、この欠点を補うために、あえて一か所だけ魔力を籠めない水場を用意し、そこに誘導された隕鉄鳥をこの魔法で捕縛するという作戦を提案する。そして、第2パーティの仲間であるラヴィーネ、カンネと共に作戦を実行し、おびき出された隕鉄鳥に対してフリーレンが使用し、捕らえることに成功する。
飛行魔法 (ひこうまほう)
フリーレンやフェルンをはじめ、さまざまな魔法使いによって愛用されている魔法の一つ。名前どおりに身体を浮かせて空中を自在に移動できる。防御魔法と同様に、かつて魔族が使用していた魔法を解析した結果誕生したもので、人間が使えるようになったのは半世紀ほど前と比較的新しい。また、魔力の消費が激しい点も同じで、継続して使えるのは約40分が限度といわれている。
大地を操る魔法 (ばるぐらんと)
リヒターが使用する魔法の一つ。名前どおりに身体の一部に触れている地面を自由自在に変化させることが可能で、小規模な地震や地割れを引き起こしたり、地面の形を変えることで身を守る盾として利用できる。リヒター自身の魔力が高いことから、攻防一体の魔法として強力な効果を発揮する。一級魔法使い選抜試験では、第2パーティと隕鉄鳥の奪い合いを行う際に、地割れを起こして相手の分断を誘ったうえで、カンネおよびラヴィーネに対して使用される。そして、大地に魔力を込めてラヴィーネの凍らせる魔法を無効化したり、強固な盾を具現化して氷の矢を放つ魔法を完全に防いだりと、二人を圧倒する効果を見せつけた。
銅像の錆を綺麗に取る魔法 (どうぞうのさびをきれいにとるまほう)
フリーレンが使用する魔法の一つ。「民間魔法」と呼ばれる魔法の一種で、名前どおりに銅像に付着している錆を綺麗に取り除くことができる。フリーレンとフェルンがターク地方を訪れる前に、依頼の報酬としてもらった魔導書から修得した。使い道が非常に限られている反面、高い効果を持ち、実験として使われた際は、新品同然にまで綺麗にすることができた。ただし、効果があるのは銅で作られた像に限られており、石像などには効果がない。のちにタークの老婆の依頼から、勇者ヒンメルの銅像に付着した錆を取るために使用される。
花弁を鋼鉄に変える魔法 (じゅべらーど)
シャルフが使用する魔法の一つ。花弁を鋼鉄に変化させ、シャルフの思いどおりに動かすことができる。変化した鋼鉄は非常に硬く、もとが薄いことから刃として利用可能で、射程距離内なら複数の花弁を同時に変化させることも可能。さらに、鋼鉄に変化させた花弁を一つに束ねて、巨大な剣を作り出すこともできるなど、幅広い用途に用いられる。ただし、建物の中や砂漠といった、花が咲いていない場所では使用できない。一級魔法使い選抜試験では、第8パーティが第4パーティの隕鉄鳥を奪おうとした際に発生した、ラントの戦いで用いられる。そして、グローブ盆地で無数に咲いていた花の花弁を一気に刃に変え、彼を追い込んだ。
見た者を拘束する魔法 (そるがにーる)
ヴィアベルが使用する魔法の一つ。名前どおりにヴィアベルの視界に入った相手の動きを封じる効果を持つ。魔法をかけられた相手は、身動きが取れなくなるだけでなく、魔力の操作もできなくなるため、魔法をいっさい発動させられない。ただし、ヴィアベルが視線を逸(そ)らした時点で効果が解除されるほか、視界に対象の全身を納める必要があるため、複数の相手にかけることはできない。一級魔法使い選抜試験では、隕鉄鳥を奪う目的でユーベルに対して使用される。これを受けたユーベルは、不意打ちを仕掛ける彼を評価するものの、殺害するためではなく、脅しのために用いられたことを「甘い」と断じ、実際にフェルンの介入によって脅しは失敗に終わる。しかし、のちに偶然隕鉄鳥を発見すると、この魔法を用いてあっさりと捕獲に成功する。
魔力の糸 (まりょくのいと)
ドラートが使用する魔法の一つ。指先から魔力によって具現化したワイヤーを発射できる。鋼鉄を易々(やすやす)と切り裂けるほどの硬度を持ち、全身を甲冑で包んだ兵士を一撃で切断するほど。さらに、すべての指から放てるため、複数の魔力の糸を一気に展開することも可能。ドラートの独断でフリーレンを暗殺するために用いられ、彼女の首を絞めあげる。ただし、首筋に防御魔法を展開されたため、瞬時に首を斬ることはできなかった。
魔力抑制 (まりょくよくせい)
フリーレンや大魔法使いフランメが使用する魔法の一つ。自らの体内に眠る魔力を意図的に封じる効果を持つ。魔族は力を抑えることを無意味と考えているため、持っている魔力を隠そうとせず、他者も魔力を隠すはずがないと思い込んでいる。そのため、相手が侮っているうちに抑制していた魔力を一気に開放して撃破するという戦法が非常に有効で、フリーレンはつねに魔力抑制を発動し続け、戦う時だけそれを解除するように心がけている。
血を操る魔法 (ばるてーりえ)
リュグナーが使用する魔法の一つ。リュグナーの血液を、瞬間的に凝固させたり、意思のままに動かすなど、自在に操作することができる。凝固させた血液は、敵を切り裂く剣および相手の魔法を防ぐ盾として使用可能で、まさに攻防一体の魔法といえる。リュグナーは、生涯の大半を魔法の研究に費やしており、血を操る魔法に絶対の自信を持っている。フェルンとの戦いでは、彼女の不意を突きながら、素早い動きで血の剣をあやつる。しかし、発動の速度や連射力に優れる彼女の魔法に対し、逆に追い詰められてしまう。
女神の三槍 (めがみのさんそう)
ザインが使用する魔法の一つ。女神の加護を受けた人間にのみ使用可能で、背後から3本の閃光を同時に生み出し、敵に向けて射出する。ザインが使える数少ない攻撃魔法ではあるが、その威力はフリーレンやフェルンが使う魔法には遠く及ばない。混沌花の亜種との戦いで使用された時は、混沌花の亜種の弱点である核を狙って放たれる。しかし、3発とも核に命中する前に葉に反射され、阻まれてしまう。
カビを消滅させる魔法 (かびをしょうめつさせるまほう)
フリーレンが使用する魔法の一つ。「民間魔法」と呼ばれる魔法の一種で、名前どおりに物質に付着したカビを跡形もなく消滅させることができる。フリーレンたちは旅の途中で野宿をすることも少なくなく、調理器具などが汚れたり、カビが発生する事態に悩まされることも多かったが、そういった悩みがこの魔法一つで完全に解決する。このことから、フェルンからはしつこい油汚れを消滅させる魔法と合わせて「伝説の魔法」と呼ばれる。
失くした装飾品を探す魔法 (なくしたそうしょくひんをさがすまほう)
フリーレンが使用する魔法の一つ。「民間魔法」と呼ばれる魔法の一種で、名前どおりに紛失した装飾品を発見する効果を持つ。バンデ森林の商人は、装飾品を扱うことから客が商品をなくす事態も想定しており、困った時に備えてこの魔法を使うように勧めている。また、修得するための書物も所有しており、フリーレンが勇者ヒンメルからもらった鏡蓮華の指輪を紛失して困っていることを知ると、鳥の魔物を討伐した報酬という名目でその書物を譲り渡す。効果はてきめんで、フリーレンが使用した結果、すぐに鏡蓮華の指輪を見つけることができた。
模倣する魔法 (えあふぁーぜん)
リーニエが使用する魔法の一つ。人が動いている時の魔力の流れを記憶して、その動きを寸分違わず再現できる。リーニエは、かつて戦った敵の中で、アイゼンこそがもっとも強い戦士であると確信し、80年以上ものあいだ、彼の動きを記憶して再現し続けている。しかし、あくまで動きを真似られるだけで、対象の身体能力などはまったく模倣できない。そのため、屈強な戦士であるアイゼンの動きは、華奢な女性であるリーニエと非常に相性が悪く、その弱点をついたシュタルクによって破られてしまう。
魔法使い (まほうつかい)
魔法を自在にあやつって生活の糧を得ることを生業としている人々の総称。中でも人類史上に残る活躍を果たした魔法使いである大魔法使いフランメと大魔法使いゼーリエの両名は、英雄のような扱いを受けている。現在は数えきれないほどの魔法が存在し、中には生活に役立つものの、戦闘の役にはまったく用をなさないものも多数存在する。そのため、魔法使いが必ずしも荒事に長けていなくてはならないわけではない。かつては、魔族とエルフが魔法を得意としていたが、時が経つにつれて多くの人間によって魔法の研究が行われ、やがて強力な人間の魔法使いが大勢現れるようになる。中でも魔王による軍勢の侵攻が激化していた100年前は、街を歩くと魔法使いとすれ違うと言われるほど多くの魔法使いが存在していたが、平和になった現在は、その数を減らしつつある。ただし、半世紀前頃に大魔法使いゼーリエが大陸魔法協会を設立すると、一級魔法使いから九級魔法使いまでの資格が公式に設定され、数こそ減少したものの、強力な魔法使いは今なお多く残っている。一級魔法使いはさまざまな特例が許されるほか、ゼーリエ本人から一つだけ好きな魔法を授けてもらえるという特権を得られることから、多くの魔法使いから目標に定められる。なお、女神の力を司る魔導書による魔法を得意とする存在は「僧侶」と呼称され、魔法使いとは異なる存在という認識が一般的である。
魔法 (まほう)
物理法則を無視した現象を発生させる能力。身体のうちに眠る魔力を消費することで発動する。人を殺す魔法や服従させる魔法など、強力な魔族が生まれつき使用できるものや、人が既に存在する魔法を解析することで新たに生み出された魔法、生活を楽にするために一般人によって作り出された「民間魔法」など、さまざまな魔法が存在する。本来は、魔族やエルフが得意としている能力と言われていたが、やがて研究が進むうちに、魔族やエルフを上回る魔法の技量を持つ人間が多数輩出されるようになる。なお、女神の力を司る魔導書による魔法を得意とする存在は「僧侶」、それ以外の魔法を得意とする存在は「魔法使い」と呼称される。
屍誘鳥 (がいぜる)
グローブ盆地に生息している、鳥の姿をした魔物。隕鉄鳥よりはるかに大きな体軀と、人間の死体に魔力を付与し、それを弔おうとした人々を襲って新たな死体に仕立て上げるという凶悪な習性を持つ。戦闘能力もかなり高く、一級魔法使い選抜試験の受験生を何人も血祭りにあげる。しかし、フリーレンやデンケン、リヒターなど、熟練といえる魔法使いにとっては脅威ではなく、フリーレンからは鳥を捕まえる魔法の実験台として利用されてしまう。
隕鉄鳥 (しゅてぃれ)
グローブ盆地に生息している小型の鳥。見た目は愛らしいが、身体が非常に硬いうえに、音速を超えるスピードで飛行することができる。さらに、魔力に対して敏感で、ほかの場所より魔力が濃い場所にはいっさい近寄らないという習性を持つ。フリーレンとフェルンが参加した一級魔法使い選抜試験では、一次試験を通過するために捕縛する必要があり、魔力に敏感に反応するという習性から、参加した魔法使いたちを大いに苦戦させる。
女神の加護 (めがみのかご)
高い魔力を持つ僧侶に備わる体質。僧侶用の魔法を修得しやすくなるほか、魔物や魔族がかける呪いを効きづらくする効果を持つ。僧侶として天性の才能を誇るザインは、混沌花の亜種が放つ呪いにも長時間耐えるほどの高純度の女神の加護を受けており、女神の三槍や目覚めの解呪など、強力な女神の魔法を使いこなすことができる。
クレジット
- 原作
書誌情報
葬送のフリーレン 13巻 小学館〈少年サンデーコミックス〉
第1巻
(2020-08-18発行、 978-4098501809)
第2巻
(2020-10-16発行、 978-4098501816)
第3巻
(2020-12-18発行、 978-4098502851)
第4巻
(2021-03-17発行、 978-4098504909)
第5巻
(2021-07-16発行、 978-4098506347)
第6巻
(2021-11-18発行、 978-4098507283)
第7巻
(2022-03-17発行、 978-4098508761)
第8巻
(2022-06-17発行、 978-4098511488)
第9巻
(2022-09-15発行、 978-4098512607)
第10巻
(2023-03-16発行、 978-4098517718)
第11巻
(2023-09-15発行、 978-4098527694)
第12巻
(2023-12-18発行、 978-4098530304)
第13巻
(2024-04-17発行、 978-4098532339)