概要・あらすじ
専門学校生のゆゆこは、童話作家になることが将来の夢。しかし思うように評価されず、苦しい日々を送っていた。そんなある日、通学中にたまたま目に留まった骨董雑貨店「ARIES」を訪れたゆゆこは、そこで出会った少年の獏から「記憶のノート」と呼ばれる1冊のノートを受け取る。しかし、「記憶のノート」を手に入れてからゆゆこの身の回りには奇妙なことが起こり始める。
登場人物・キャラクター
獏 (ばく)
骨董雑貨店「ARIES」のオーナーを務める少年。前髪を目が隠れそうなほど伸ばした赤毛ショートカットヘアに赤い瞳をしている。魔法使いのようなとんがり帽子と、右目尻のほくろが特徴。人間の少年の容姿をしているが正体は人間の「悪夢」を主食とする獏。そのため「ARIES」にある商品と引き換えに客の「悪夢」を受け取ることで生活している。 普段は可愛らしい雰囲気だが、空腹になると非常に機嫌が悪くなる。もともとは少年ではなく大人の男性の姿で生活していたが、ある事情から力を失ってしまい、今は少年の姿になってしまっている。
露草 (つゆくさ)
かつて獏と組んで働いていた、夢喰蛍の少年。前髪を真ん中で分けて額を見せ、ヘアバンドで髪を上げ、後ろ髪だけを胸のあたりまで伸ばしている。明るくやや軽い雰囲気の性格で、獏のことは「ばっくん」と呼ぶ。獏とは幼い頃からの知り合いで、獏と自分の父親が組んでいた頃から親しい。そのため、容姿こそ獏よりも年上に見えるが、実年齢は獏よりもかなり年下。 あることをきっかけに骨董雑貨店「ARIES」を訪れ、再び獏と組むようになる。
ゆゆこ
童話作家を志す女子専門学校生。前髪を目の上で切り、胸のあたりまで伸ばしたストレートロングヘアをしている。小学生の頃から童話作家になることが夢で、高校卒業後は、幼なじみの哲太とともに小説の専門学校に入学した。しかしなかなか作品が評価されず悩んでおり、周囲へのコンプレックスと教師からの厳しい評価に意気消沈気味だった。 そんなある日、引き寄せられるように骨董雑貨店「ARIES」を訪れ、獏から「記憶のノート」を受け取ることになる。
哲太 (てつた)
ゆゆこの幼なじみで、同じ専門学校に通う男子学生。前髪を目の上で切った、耳の下あたりまで伸ばしたショートカットヘアをしている。ゆゆことは小学校から専門学校までずっと一緒の腐れ縁で、ゆゆこの作品のファンでもある。そのためゆゆこを応援し続けていたが、最近彼女に元気がないことを案じている。
冴子 (さえこ)
ゆゆこの高校時代の同級生。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、肩につかない長さのボブヘアをしている。ゆゆこの「童話作家になりたい」という夢を快く思っておらず、「お気楽な生き方」と評しいつも見下すような態度をとっていた。そのためゆゆこは、冴子を見返すためにもプロの作家になりたいと思うようになった。
井上 律 (いのうえ りつ)
会社員の20歳の男性。前髪を目の上で切り、襟足まで伸ばした髪を外にはねさせている。10歳の頃に父親を亡くして以来心を閉ざしがちになり、無理に実年齢よりも大人っぽく振る舞おうとしているところがある。それゆえに息苦しい生活を送っていた折、街で偶然トラとぶつかった際に気を失ってしまい、介抱される形で骨董雑貨店「ARIES」に来店。 そこで店にあった「声の玉手箱」を手に取ったのをきっかけに、自分の闇と向き合うことになる。
カナコ
デザイン会社で働く若い女性。前髪を目の上で、顔のサイドの髪を耳の下で切りそろえ、ふんわりとしたパーマヘアをツインテールにしている。白いものを見るとパニック状態に陥るという悩みを抱えており、ある日降ってきた雪から逃げるために「ARIES」に来店する。絵を描いたりデザインをするのが好きで今の会社に入ったが、優秀な後輩の浅田にコンプレックスを感じ、思うように働けなくなっていた。 骨董雑貨店「ARIES」で「証明のインク」を手にし、自分の悩みと向き合うことになる。
浅田 (あさだ)
カナコの後輩で、同じ会社に勤める若い女性。前髪を左寄りの位置で分けたショートカットヘアをしている。非常に優秀で、社内でも期待される存在。そのため、カナコを自分よりも格下と捉えており、何を言われても怒らないカナコの性格を見越して意地悪を言うことが多い。
純 (じゅん)
高校1年生の男子生徒。前髪を目の上で切り、耳の下まで伸ばしたショートカットヘアをしている。首にマフラーを巻いているのが特徴。幼い頃、母親がいないことを周囲にからかわれたのをきっかけに心を閉ざし、他人と距離を置き見下しがちなところがある。それが原因で恋人の沙代とも別れてしまい孤独な日々を送っていたが、ある日校内で「構築の積み木」を拾い、獏たちと出会う。 また、それがきっかけで自分の問題と向き合うことになる。
沙代 (さよ)
純の恋人で、同じ高校に通う女子生徒。前髪を目の上で切り、肩につかない長さのボブヘアをハーフアップにしてまとめている。純のことを非常に大切に想っており「ずっと一緒にいたい」と考えていたが、それを困難と捉える純との間にすれ違いが起き、深く傷ついている。
真咲 (まさき)
哲太の母親で、獏がかつて親しくしていた若い女性。前髪を目の上で切り揃え、顎の高さで切り揃えたボブヘアをしている。骨董雑貨店「ARIES」の初来店者でもあり、接客態度の悪い獏を叱ったことをきっかけに仲良くなった。明るく元気な性格で観察眼にも優れ、獏の正体もすぐに見抜いた。心に闇を抱えており、獏が食べるべき「悪夢」を抱えている。
トラ
骨董雑貨店「ARIES」で働く少女。前髪を目の上で切り、肩のあたりまで伸ばしたストレートセミロングヘアを2本の三つ編みにしてまとめている。頭に付けた花の髪飾りと、語尾に「~っス」と付けて話すのが特徴。本来は獏の一部だったが、獏が力を失い少年の姿になったのを機に分離し、今は別の存在として暮らしている。本当の姿は小さな虎だが、普段は人間の姿で暮らしている。
サイ
骨董雑貨店「ARIES」で働く若い男性。前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、胸のあたりまで伸ばしたストレートロングヘアをリボンで1つに結んでまとめ、眼鏡をかけている。本来は獏の一部だったが、獏が力を失い少年の姿になったのを機に分離し、今は別の存在として暮らしている。本当の姿は小さなサイだが、普段は人間の姿で暮らしている。 穏やかで落ち着いた雰囲気だが、実際は大切な相手をわざといじめて楽しむサディスト。
ゾウ
骨董雑貨店「ARIES」で働く若い女性。前髪を右寄りの位置で斜めに分け、胸のあたりまで伸ばした巻き髪ロングヘアで、眼鏡をかけている。本来は獏の一部だったが、獏が力を失い少年の姿になったのを機に分離し、今は別の存在として暮らしている。本当の姿は小さなゾウだが、普段は人間の姿で暮らしている。あることを機にサイとともに自分の正体を思い出してしまい、悩むことになる。
ウシ
骨董雑貨店「ARIES」で働く少年。前髪を真ん中で分けて額を見せ、耳の下まで伸ばしたショートカットヘアをしている。トラからは「ウシシ」と呼ばれている。本来は獏の一部だったが、獏が力を失い少年の姿になったのを機に分離し、今は別の存在として暮らしている。本当の姿は小さなウシだが、普段は人間の姿で暮らしている。真面目な性格で、自由奔放なトラには振り回されることが多い。
その他キーワード
夢喰蛍 (ゆめくいほたる)
人間の夢のうち、「希(ねが)い」「欲望」「憧憬」といった「光」の側面を食料としている寄生虫のこと。獏のような「悪夢」を食べる存在とは対極にあたり、夢喰蛍につかれて「光」を失った人間は夢も悪夢も持たない空虚な存在と化してしまう。