概要・あらすじ
1932年の上海。黒社会の巣窟と化したこの魔都で、青幇(チンパン)と紅華会という二つの秘密結社が激しい勢力争いを繰り広げていた。一方、三国志の時代に生まれた究極の暗殺拳・北斗神拳の伝承者である霞拳志郎は、日本で大学講師を務めながら、争いとは無縁の平穏な日々を送る。そんな彼の元にある日届いたのは、上海が紅華会の手に落ち、かつて共に戦った青幇の仲間たちが皆殺しにされたという報せ。
そして、その中にはかつて彼が愛した女性・潘玉玲までもが含まれていた。義に厚く人との絆を重んじる拳志郎は、これを受け、上海に舞い戻ることを決意する。すでに極悪非道な紅華会の支配する暗黒街になり果てていた上海の街。
殺された朋友たちの復讐を果たすため、魔都に降り立った拳志郎は、仇である紅華会の幹部達を次々と暗殺していく。
登場人物・キャラクター
霞 拳志郎 (かすみ けんしろう)
究極の暗殺拳・北斗神拳の六十二代目伝承者。閻王の異名を持つ。奔放でつかみ所のない性格をしている一方、朋友(親友の意)と認めたもののためには、命をかけて戦う義に厚い男である。北斗神拳の使い手として比類無き戦闘力を誇るだけでなく、犬以上の嗅覚、一度見たものは忘れない直観像記憶能力、読心術、言語にも堪能で、頭脳も優秀とさまざまな特技の持ち主。 北斗神拳の伝承者としての宿命に翻弄されながらも、真の伝承者への道を歩み続ける。
霞 羅門 (かすみ らもん)
霞拳志郎の腹違いの弟。まだ子供っぽさが抜けきらず、笑顔にもあどけなさの残る少年ながら、北斗神拳の使い手で、常人離れした戦闘力を持っている。兄・拳志郎のことを慕い、尊敬している。前作にあたる『北斗の拳』では、リュウケンとして登場する。
劉 宗武 (りゅう そうぶ)
北斗劉家拳伝承者。ドイツ軍少尉。北斗劉家拳を学び才覚を現し始めると、あまりにも強い己の力に溺れるようになった。自分の拳は他人のためではなく、乱世をもたらすために使うべきであると考えている。狂気にも近い考えの持ち主だったが、霞拳志郎との戦いを通して、北斗劉家拳伝承者としての自覚を持つようになり、ひとりの拳法家として覚醒していく。
夏 文麗 (か ぶんれい)
芯の強いしっかりとした女性。強い者にもひるまぬ心の強さがある。劉宗武と共に北斗劉家拳を学び、やがて彼と恋人同士になった。劉宗武が狂気の道へと走るのをいさめようとしたが、彼はそれを聞かず夏文麗の乳房を抉り取ってしまう。この事件を境に彼女は尼僧となった。劉宗武には愛憎入り交じった複雑な感情を持っており、霞拳志郎に劉宗武を抹殺するように依頼する。
張 太炎 (ちょう たいえん)
北斗曹家拳の使い手。紅華会の二番頭。四六時中女を抱いている、人並み外れて女好きな男。特に人のものが欲しくなり、花嫁を盗むことから花嫁泥棒の異名を持つ。これらの傍若無人な振る舞いは、父親との確執に起因していた。霞拳志郎との対決を経て改心すると、父親とのわだかまりを解決し、北斗曹家拳伝承者としての道を歩むことになる。
芒 狂雲 (ぼう きょううん)
北斗孫家拳の使い手。霊王の異名を持つ。非常に好戦的なうえ、強さに対してどん欲な男で北斗神拳を超えるために死の危険のある修行を繰り返していた。紅華会の呉東来の護衛任務のさい霞拳志郎と対決。秘孔の位置そのものを自在に変える秘孔変位によって北斗神拳を無力化させると、闘気を自在に操る操気術を使って、拳志郎を苦しめた。
シャルル・ド・ギーズ
フランス陸軍情報武官。階級は大佐。北斗孫家拳の使い手で、常人以上の戦闘力を持っているが、表立って肉弾戦闘をするよりも、情報戦をしかけたり知略を巡らせたりすることが得意な知将タイプの男。ナチスによって記憶を失った妹・ソフィアのことを深く愛しており、彼女のために誰もが幸せに暮らせる安息の地を作ろうとしている。
流 飛燕 (りゅう ひえん)
極十字聖拳の使い手。死鳥鬼の異名を持つ。殺伐とした世界に生きていたため慈悲のない冷淡な男だった。ナチスに命を狙われた少女・エリカと出会い、はかなげな彼女を守り続けていくうちに、人間らしい慈愛の感情に目覚めるように。人と接するのが下手で不器用なところがあるものの、愛のために生きる一途な面を持ち合わせている。
ヤサカ
西斗月拳の使い手。テンガロンハットをかぶり普段は飄々とした態度。かつて西斗月拳の者たちが、北斗神拳の始祖・シュケンに皆殺しにされたことから、北斗神拳に対して強い憎悪を抱く。西斗の恨みは決して忘れず、北斗抹殺のために霞拳志郎たちの前に立ちふさがった。「ヤサカ」は、古代ヘブライ語で「神を見る」の意味。
潘 光琳 (はん こうりん)
青幇の頭首。霞拳志郎の朋友。義に厚く仲間想いな人物で、上海の裏社会においてはカリスマ的な存在。人望があり、皆から尊敬されている。敵対する紅華会によって三年もの間、幽閉されていた。霞拳志郎に救われ、青幇の頭首に復帰。幽閉中に足を失ったが、カリスマ性は健在で、バラバラで崩壊寸前だった青幇を瞬く間にまとめ上げた。
潘 玉玲 (はん ぎょくれい)
潘光琳の妹。霞拳志郎の恋人であり、後に妻になる。非常に肝が据わっており、いかなる強者に対しても物怖じしない強さと美しさを兼ね備えている。紅華会の手によって殺されたかと思われていたが、芒狂雲の慈悲により記憶を失った状態で生き延びていた。女ながら才気を認められた潘玉玲は馬賊の頭目となる。 日本軍の攻撃により危機的状況に陥っていた馬賊の生き残りをかけ、上海を来訪。そこで拳志郎との運命的な再会を果たした。
葉 (よう)
青幇の幹部。かつては上海に名前をとどろかせる存在だったが、紅華会との抗争に敗れ、とらわれの身となる。紅華会の主催する残酷ショー・処刑遊戯に参加させられ、重度の火傷を負ったため全身を包帯で覆っている。葉は紅華会に青幇を壊滅させられたことで一時は卑屈な態度を見せていたが、霞拳志郎や潘光琳が帰ってくると、本来の男気のある男に立ち返っていく。
章 烈山 (しょう れつざん)
紅華会の一番頭。成人男性を手で掴めるほど巨大な男で、身の回りにあるものは特大サイズのものばかり。自分が大きいと感じることを極端に嫌っており、部下たちには大きさを感じさせないように厳命している。横柄な態度の割には臆病なところがあり、拳法家よりも政治家に向いていると父親に言われていた。 霞拳志郎とは敵対関係にあり、邪魔な存在だと認識。
黄 西飛 (こう せいひ)
紅華会の三番頭。顔の左半分を霞拳志郎の北斗神拳によって吹き飛ばされたため、機械化している。拳志郎のことを深く怨んでおり、性格は悪辣で下衆。自分が経営する大新世界にて、生き残りの青幇に対して残酷ショー・処刑遊戯をしかけて殺していた。神の前で懺悔し、多額の金を寄付しさえすれば、いかなる悪事も正当化されると思っている卑怯者。
呉 東来 (ご とうらい)
紅華会の四番頭。首と背中の一部を霞拳志郎の北斗神拳によって吹き飛ばされたため、機械化している。パドルを回さなければ自分で上半身を起こすこともできない体にした拳志郎のことを深く憎悪。気が短く、かっとなりやすい性格で、我を忘れて銃を乱射しては部下を何人も殺している。
田 学芳 (でん がくほう)
黄西飛の後釜として紅華会の新三番頭になった。カッパハゲの田という蔑称で呼ばれる。ハゲていることを非常に気にしており、鋼鉄のカツラを被って隠そうと努力。この鋼鉄のカツラは非常に重く、転んだり事故に遭うことが多い。誰が見てもカツラであることは丸わかりなのだが、本人は隠せているつもり。 秘密に気づいた相手をすぐに処刑するというとんでもない人物。
その他キーワード
北斗神拳 (ほくとしんけん)
『蒼天の拳』に登場する拳法。北斗神拳の始祖シュケンの生み出した最強の暗殺拳。経絡秘孔と呼ばれるツボを突くことで、人間を体内から破壊できる。人体の潜在能力を限界以上に引き出すことができるため、常人を遙かに超える戦闘力を発揮。経絡秘孔にはさまざまな使い方があり、特定の行動をさせたり、病を癒したりも可能。
北斗三家拳 (ほくとさんかけん)
『蒼天の拳』に登場する拳法。北斗神拳から分派した北斗孫家拳、北斗曹家拳、北斗劉家拳の三つの総称。日本で発展した北斗神拳と違い、北斗三家拳は中国において発展した。北斗神拳と同じように経絡秘孔を操る拳法だが、それぞれが独自進化を遂げている。北斗神拳に継承者が現れないときは、北斗劉家拳から北斗神拳に養子に出すことが慣例化。
西斗月拳 (せいとげっけん)
『蒼天の拳』に登場する拳法。二千年近く前、月氏の民にのみ伝えられていたという経絡秘孔を操る拳法。これをシュケンが学び極めることで、最強の暗殺拳・北斗神拳が誕生した。一撃必殺の北斗神拳と違い、西斗月拳は複数の経絡秘孔を突くことが特徴。ただし女を殺すことは、月氏の神が許さないとして禁じている。
クレジット
- 監修
関連
北斗の拳 (ほくとのけん)
核戦争の後、暴力が全てを支配する無秩序状態になった世界。北斗神拳の伝承者であるケンシロウは、そんな世紀末世界を恐怖と力で支配しようとする義兄・ラオウに立ち向かう。原作は武論尊。 関連ページ:北斗の拳