藍の時代 一期一会

藍の時代 一期一会

漫画家の車田正美が、自身のデビューから連載で人気を得るまでのことを伝記風に描いたフィクション作品。

正式名称
藍の時代 一期一会
ふりがな
あいのじだい いちごいちえ
作者
ジャンル
自伝・伝記
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概要・あらすじ

東京の下町、築島に育った中学生の東田正巳は、何をしたいかが定まらず、モヤモヤした青春を送っていた。そんな東田だったが、友人やお世話になった人々から背中を押され、漫画家への道を歩み始める。

登場人物・キャラクター

東田 正巳 (ひがしだ まさみ)

東京の下町、築島付近で育った少年。中山歳男、小林純一という友人がおり、彼らとしょっちゅうつるんでいた。秀才には程遠く、不良にもなりきれず、大した夢や志も抱いていない自分にモヤモヤとしたものを抱えながらも、自分がやりたいことを見つけられず、動き出せずにいる。都立高校に進学し、これといって打ち込むものもなく過ごしていたが、友人の小林純一から、週刊少年ジャンプに連載されていた、本宮ひろ志の『男一匹ガキ大将』を読まされ、衝撃を受ける。 この際、純一から漫画家になることを勧められた。この頃、もう一人の友人、中山歳男がケンカで相手を刺して鑑別所に送られ、また親身に世話を焼いてくれていた漫画家刑事が死去する。 中山は別れ際に、漫画家は遺書で、東田に漫画家になることを勧めたが、ペンを取ったのは高校3年の夏休みになってからだった。この夏休みに初めて漫画を一本描き上げ、週刊少年ジャンプへ持ち込みに行くが、編集部は忙しく、待たされたままで漫画を見てもらえなかった。高校卒業後もバイトをしながら持ち込みを続けていたが、ジャンプ編集部で採用されることはなかった。 ある日、秋田書店の週刊チャンピオン編集部に持ち込んだところ、壁村編集長の知己を得て、以後、チャンピオン編集部に持ち込みを続けるようになる。小林純一の病気が悪化し、中山歳男がヤクザの仕事に深く足を踏み入れ、明日をも知れぬ命となっていた彼らから、早く漫画を読ませてくれとハッパを掛けられる。 これに奮起し、読者一千万人を唸らせるための、一千万対一の戦いをする覚悟で漫画に取り組み、壁村編集長から幾度も没を喰らった後、『海鳴り大将』で安代木ゆんの代原としてデビューを果たす。なお、この際、名前が誤植され「車田正美」として掲載されたが、壁村編集長が、車田をペンネームにすればいいと言ったため、以後、車田正美をペンネームとして活動する。 実在の漫画家で作者の車田正美がモデル。

中山 歳男 (なかやま としお)

東田正巳の友人。東田たちからはトシと呼ばれている。東京の下町、築島付近で育った。高倉健の映画のようなヤクザになることに憧れており、中学を卒業したら刺青を入れてヤクザになろうとしていた。だが、歳男たちが憧れていたヤクザの健(通称、唐獅子の健)が、死刑になりたくないと泣き喚き、無様な姿を見せたことで、思い止まったのか、工場に就職することとなる。 だが、絡んできたチンピラを、チンピラが持っていたナイフで刺したことから人生を転落。ネリカン(練馬鑑別所)に送られ、出所後は天馬組に入り、若衆となった。組に入った後も、東田との交誼は変わらず、何かあるごとに漫画家になれとハッパをかけていたが、共通の友人・小林純一の葬儀の後、堅気に戻れという東田と殴り合いのケンカをし、袂を分かつ。 その後、冥王会の総長、沢の命を奪うように命じられ、ヒットマンとなるが失敗。組同志の手打ちのための捨て駒となり、刺されて死亡する。刺したのは、自分を慕っていた高校生・まさるであり、彼は歳男を殺せば組員にしてやると唆されていた。 刺された際、歳男は東田の連載漫画、『リングにほえろ』の応援アンケートはがきを送るところであり、血まみれになった葉書は投函されることはなかったが、風に吹かれた葉書が秋田書店の玄関にたどり着き、東田の手元に届くこととなった。享年21歳。

小林 純一 (こばやし じゅんいち)

東田正巳の友人。東田たちからはジュンと呼ばれている。東京の下町、築島付近で育った。絵の才能があったが、体が弱かったため、大学への進学は諦め、入退院を繰り返しながら独学で絵を描いていた。漫画が好きで、創刊間もない週刊少年ジャンプも購読していた。特に本宮ひろ志に注目し、彼の作品、『男一匹ガキ大将』を東田に読ませている。 東田に漫画の才能があることを見抜き、漫画家の道を勧めた一人。穏やかでいつもニコニコしている美少年。病院で東田のデビュー作、『海鳴り大将』を読み、続きの構想を聞きながら息を引き取った。

(けん)

本名不詳。通称、唐獅子の健。一匹狼のヤクザで、東田正巳や中山歳男の憧れの人物。男を売る家業であることを誇りとしており、それを実行していた。この一環か、洋モク(輸入煙草)しか吸わない。一宿一飯の義理で、敵対組織の親分を射殺。これにより前科と合わせて死刑となる。逮捕され、死刑がほぼ確実となっても堂々としていたが、健に憧れていた歳男たちをヤクザの道に進ませたくない宇津木刑事の頼みに感じ入り、移送の当日は、歳男たちのまえで命を惜しむ無様な姿を見せた。

宇津木 (うつぎ)

月島警察署の刑事。東田正巳たちの将来を心配し、署の道場で稽古をつけ、菓子を食わすなど面倒を見ている。東田や中山歳男が、一匹狼のヤクザ、健に憧れていることを危惧し、彼らの憧れを打ち砕くため、無様な芝居を売ってくれるように土下座で頼み込んだ。定年退職後まもなく死去したが、生前に東田宛に手紙を残し、手紙の中で東田に漫画を描くように勧めている。

中村 (なかむら)

持ち込み歴15年の漫画家志望者。東田正巳が初めて週刊少年ジャンプ編集部に持ち込みに行った際出会った、三十路の男性。東田に、「漫画の命はネーム」だと教えた人物。彼自身は、ネームの力がないためか、画力が非常に高いが、デビューできずにいる。日の出荘というアパートに、妻・娘とともに仲良く3人で暮らしていた。 妻のおなかの中には、もう一人子供がいる。床が抜けそうなほど大量の漫画を所有しており、妻からは処分を求められていた。志半ばで、胃ガンで死去する。

白鳥 ルイ (しらとり るい)

週刊少年チャンピオンで、人気作『ヒップでGO!』を連載するスター作家。お色気、パンチラ、ロボットなど、読者が求める派手な作品をつくることを信条としている。秋田書店の廊下で東田正巳とぶつかり、落ちた東田の原稿を踏んで気にも留めなかったため、東田を激怒させる。流行を追うそのスタイルから、壁村からは、いずれ消えると評されていた。 絶頂期にはランボルギーニ・カウンタックを乗り回し、ファンに囲まれちやほやされていたが、作品の人気が落ち、連載が打ち切られると、食費にも困り、東田から金を借りている。打ち切られて一年半後に、妻子にも逃げられ、孤独死した。漫画家としては、最後まで頑張っていたようで、コタツの上には描きかけの原稿が置かれていた。

安坂 (あんさか)

秋田書店・週刊少年チャンピオン編集部の編集者。丸い眼鏡をかけた人当たりの良い男性で、初対面の東田にも優しく接してくれた。壁村編集長の無頼な言動に苦言を呈しつつも慕っているようで、しょっちゅう彼の傍で働いている。

壁村 (かべむら)

秋田書店・週刊少年チャンピオンの編集長。東田正巳が初めてチャンピオンに持ち込みに来た際、入り口で居合わせ、二日酔いでへばっていたために、東田に編集部まで肩を貸すように言った。その眼力は一流で、東田の持ち込んだ漫画を読み、隠れた何かを感じて、持ち込みを続けるように伝えた。 その一方で、東田に対し、「オレの雑誌につまんねぇ漫画を描く奴は…腕をヘシ折るぞ」と、本気とも冗談ともつかない発言を飛ばしている。破天荒で無頼なところがあるが、漫画に対しては誰よりも真剣で、面倒見の良いところがある。実在した秋田書店の名編集者、壁村耐三がモデル。

本宮 ひろ志 (もとみや ひろし)

東田正巳が、その面白さに衝撃を受けた漫画、『男一匹ガキ大将』の作者。東田は、彼が街でチンピラに絡まれ、ケンカをしていた際、偶然居合わせ、原稿を拾っている。実在の漫画家で、車田正美がアシスタントに入っていた本宮ひろ志がモデル。

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