虹ヶ原ホログラフ

虹ヶ原ホログラフ

11年前に虹ヶ原町という田舎町で起きた、少女暴行事件。世間的は風化してしまった今でも、そこに何らかの形で関係した人々は、社会にうまく適応できず、不器用ながらも日々を生きていた。社会的孤立やストレス社会で病む現代人の姿を、等身大の若者をモチーフに描いたヒューマンサスペンス。

正式名称
虹ヶ原ホログラフ
ふりがな
にじがはらほろぐらふ
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
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概要・あらすじ

鈴木アマヒコは、小学5年の春に東京から虹ヶ原町に母親と共に引っ越してきた。転校先の学校ではいじめが横行しており、休憩時間に小松崎康太を中心としたいじめっ子たちが、いじめの被害を受けている高浜に教室の窓から飛び降りろと冗談交じりに煽っていた。高浜は窓枠に足を掛け、手を放したら今にも窓から落ちてしまいそうな状態のまま、沢山の汗を掻きながら1ミリも微動だにできずにいた。

その一部始終を見かねたアマヒコは、いじめっ子たちを制し、高浜の代わりに自分が飛び降りると告げるのだった。

登場人物・キャラクター

鈴木 アマヒコ (すずき あまひこ)

血の繋がらない夫婦に育てられた眼鏡をかけた青年。東京の学校に通っていたが、クラスでいじめの被害に遭い、教室の窓から身を投げて転落する事件を起こした経験がある。小学5年の春から虹ヶ原町に引っ越し、虹ヶ原町の小学校に1年間通った後に転校。18歳の時に母親が他界し、その半年後に父親も他界している。他人とコミュニケーションを取るのが不得手で、自分の人生を達観した言動や行動が多いが、小学5年の時に担任をしていた榊恭子には心を開いていた。 青年になり、ある目的のために11年ぶりに虹ヶ原町へ戻って来た。

小松崎 康太 (こまつざき こうた)

虹ヶ原町のスーパーでアルバイトをしながらアパートで一人暮らしをしているボサボサの髪に無精髭の青年。鈴木アマヒコと同級生で同じ虹ヶ原町の小学校に通っていた。小学生の時は喧嘩が強く、乱暴物でクラスの男子の中心的存在であった。小学5年の時、いじめの対象にしていた高浜への暴力がエスカレートし、ナイフを出したところをブロックで頭を殴打された。 怪我自体はただの打撲で済んだのだが、その事件をきっかけに精神欠陥を患い、現在も薬を常用している。小学生の頃から木村有江に想いを寄せている。彼女が11年前に土手の近くのトンネルで転落事故を起こした後も、病室を訪れて見舞いに行ったり、木村父の働いているスーパーでアルバイトを始めるなど、何かと木村家のことを気にかけている。

荒川 マキ (あらかわ まき)

虹ヶ原町のカフェ「prism cafe」でアルバイトをしている茶髪の女性。鈴木アマヒコと同級生で同じ虹ヶ原町の小学校に通っていた。茶髪で長い髪を後頭部でお団子に結っている。小学生の頃から明るく活発な性格で、現在もその性格は変わっていない。小学生の頃、初恋の相手である小松崎康太が木村有江に惹かれていたことを理由に、有江が転落事故を起こすまでいじめを続けていた。 その後、小学生5年の時に小松崎に告白をしたが、断られている。虹ヶ原町で偶然に小松崎と再会し、現在働いているアルバイト先の「prism cafe」の名刺を渡す。後日、どしゃ降りの雨の日に「prism cafe」に来店した小松崎に、明日の朝、虹ヶ原町の川の土手に来て欲しいと告げられる。

榊 恭子 (さかき きょうこ)

かつて虹ヶ原町の小学校で教師をしていた女性。虹ヶ原町の川の土手で、受け持ちの生徒である木村有江が日暮兄に襲われている場面を目撃して有江を助けようとしたが、その時に日暮兄にコンクリートブロックで顔面を殴打されて大怪我を負った。鈴木アマヒコが小学5年の時に担任をしていたが、同じ職場の同僚である羽鳥と結婚することになったため、その年いっぱいで退職をしている。 その後羽鳥との間に双子を授かるが、彼女の子供に対するネグレクトの影響で離婚をすることになってしまう。

若松 隼人 (わかまつ はやと)

鈴木アマヒコと同級生で同じ虹ヶ原町の小学校に通っていた。小学生の頃に高浜に対して過剰ないじめをしていた小松崎康太と喧嘩をし、その時に右目の下をナイフで切られ、今も傷跡が残っている。現在は警察官になり、上司と共に殺人と傷害の容疑で小松崎を捜索中で、小松崎が足を運んだと思われるカフェ「prism cafe」に赴き、その際に小学生の頃に告白をして振られたことのある荒川マキと再会する。

木村父 (きむらちち)

木村有江の父親。太い眉毛と窄まった口元が特徴。木村母とは17年前に離婚し、その後は娘の木村有江と2人で暮らしていたが、11年前に有江が事故の影響で意識不明の寝たきり状態になってしまった後は入院している有江の看病をしながら生活をしている。スーパーの店長からの誘いで11年前からスーパーでアルバイトをしているが、以前からスーパーの店長の父親に多額の借金があり、その借金の返済のために故意に事故を起こせとスーパーの店長から強迫されている。

木村母 (きむらはは)

木村有江の母親。17年前に木村父と離婚し、その後まもなく別の男性と再婚。しかしその年に失踪して行方不明になり、捜索願が出されていた。それから5年後、虹ヶ原町の土手の近くのトンネルで遺体として見つかる。警察の調べでは、トンネルの中に人が生活していた形跡が見られる事から、木村母が死の直前まで生活していたのではないかとみている。 近隣の小学生の間で噂になっていた、「トンネルの中の化け物が世界を終わらせる」という噂のもとにもなっている。

日暮 (ひぐれ)

鈴木アマヒコと同級生で同じ虹ヶ原町の小学校に通っていた女の子。一重で前髪を目の上で切りそろえたおさげが特徴。クラスの学級委員ではあるが、クラスメイトからは疎外されており、皆から陰で「魔法瓶」というあだ名を付けられている。クラスの担任の榊恭子から放課後にアマヒコと一緒に帰るように言われ、帰り道にアマヒコを家に招き入れ、一緒にテレビゲームをして遊んだ。 それをきっかけに、アマヒコのことを好きになる。アマヒコがクラスの全員から口を聞いてもらえず無視されるようになり、教室で机や椅子を投げて暴れた時には、日暮だけがアマヒコの味方となり、止めに入った。

日暮兄 (ひぐれあに)

虹ヶ原町でカフェ「prism cafe」の店長をしている男性。顎鬚を生やしており、髪質は癖のない直毛で、耳が隠れる位まで伸ばしている。日暮の兄であり、荒川マキを「prism cafe」でアルバイトとして雇っている。小松崎康太が「prism cafe」に出入りするようになってからマキに興味を抱き始める。 11年前に木村有江と出会い、その後虹ヶ原町の川の土手で有江を暴行しようとしたが、榊恭子に阻まれ、その際に手元に落ちていたコンクリートブロックで恭子の顔面に怪我を負わせている。

高浜 (たかはま)

鈴木アマヒコと同級生で同じ虹ヶ原町の小学校に通っていた男性。小学生の頃は痩せていたが、今はふくよかな体型をしている。小学性の頃にクラスメイトに友達になってもらうためにお金を渡していたことがきっかけで、小松崎康太、若松隼人を中心とするクラスのいじめグループからいじめの被害を受けていた。現在はバットを持って小学校に不法侵入をして窓ガラスを割ったり、児童に暴行を加えるといった犯行を繰り返している。

羽鳥 (はとり)

かつて虹ヶ原町の小学校で教師をしていた男性。短髪で、眉毛が細くて短く、痩せて頬骨が出ている。11年前に同僚だった教師の榊恭子に惹かれ、学校内で彼女に何度も積極的にアプローチを繰り返した末に恋人関係になり、その後結婚して双子の子供を設ける。しかし、恭子の子供へのネグレクトが原因で離婚することを決意した。現在は再び虹ヶ原町で教師を務めている。

スーパーの店長 (すーぱーのてんちょう)

かつて虹ヶ原町の小学校で教師をしていた男性。眼鏡をかけ、頬にそばかすがある。父親が経営しているスーパーの店舗のひとつを任されることになり、退職してスーパーの店長になった。小松崎康太と木村父もこのスーパーにアルバイトとして勤務している。木村父に対し、正社員に登用して保険を掛けるから、肉売り場の加工機でわざと指を切断しろと強要している場面を小松崎に目撃されて、その後殺害されてしまう。

木村 有江 (きむら ありえ)

かつて虹ヶ原町の小学校に通っていた女性。小学生の頃は同級生の荒川マキからいじめを受けていた。11年前に虹ヶ原町の川の土手で日暮兄と出会い、互いに空想の物語を語り合う仲となり、日暮兄から日記帳をもらう。それからは「ある少女と7人の村人とトンネルに住む怪物の物語」という話を日記帳に書き綴るようになり、物語を書いては日暮兄に見せる日々が続いたが、ある日、日暮兄に暴行を受け関係は途絶えた。 その後まもなく虹ヶ原町の土手の近くにあるトンネルに転落して意識不明となり、現在に至るまで病院で寝たきりの状態が続いている。

集団・組織

prism cafe (ぷりずむかふぇ)

日暮兄が経営している喫茶店。荒川マキをアルバイトとして雇っている。2階建ての戸建て風のテナントで、1階部分を喫茶店として使用している。裏口に2階へと続く外階段が備え付けられており、2階は日暮兄が私用スペースとして使用している。部屋の中には木村有江を模した等身大の人形が椅子に腰かけて座っていて、壁面は本棚で殆ど占拠されている。 本棚には、過去に有江が書き綴っていた「ある少女と7人の村人とトンネルに住む怪物の物語」の続きを日暮兄が書き綴ったノートで埋め尽くされている。

場所

虹ヶ原町 (にじがはらちょう)

かつては「二児ヶ原」と呼ばれていた町。この土地には昔から「件(くだん)」という牛の体に人間の頭が付いている化け物が住んでいて、疫病や凶作を予言して死んでいくと言い伝えられていた。その「件」が死ぬと川に流す風習があり、件を流すと流した場所で必ず双子の「件」が見つかったことがその名の由来だという。のちに「二児」の字を「虹」に充てて「虹ヶ原」になったと言い伝えられている。

その他キーワード

ある少女と7人の村人とトンネルに住む怪物の物語 (あるしょうじょとななにんのむらびとととんねるにすむかいぶつのものがたり)

木村有江が小学生の頃に日暮兄からもらった日記帳に書き綴っていた物語。ある日、村に未来を予言する美しい少女がやってきて、トンネルの中の怪物が厄災をもたらすと予言する。だが村人たちは少女の存在を恐れ、首を切って怪物に捧げてしまうという内容の物語。

ブリキ缶 (ぶりきかん)

鈴木アマヒコが虹ヶ原町に引っ越してくる前に、東京で教室から転落する事件を起こして入院した際、病院の屋上で車椅子に乗った高齢の男性から手渡された缶。缶の中には、どんな願いでも一度だけ叶う魔法がひとつだけ込められているという。アマヒコは転校して虹ヶ原町に来た後も肌身離さず、大切に保管している。

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