虹色のトロツキー

虹色のトロツキー

第二次世界大戦開戦前夜の満州国と蒙古を舞台とした、日本人の父とモンゴル人の母を持つ青年将校ウムボルトの活躍が描かれる。物語は、国家、そして民族とは何かという問いかけとともに展開してゆく。実在した歴史上の人物達が数多く登場する。

正式名称
虹色のトロツキー
作者
ジャンル
第二次世界大戦
 
その他歴史・時代
レーベル
希望コミックス(潮出版)
巻数
全8巻完結
関連商品
Amazon 楽天

概要・あらすじ

第二次世界大戦勃発の前年の昭和13年に物語は始まる。日本人の父と蒙古人の母の間に生まれたウムボルトは、満州国に開学した建国大学に特別研修生として入学する。だが彼は幼き日の記憶を失っていた。それは、かつてロシア革命の指導者のひとり、レフ・トロツキーと思われる謎の男と接触した父の深見圭介が殺害された事件が引き起こしたものであった。

ウムボルトは、国家や民族、そして多くの人々の思惑が交差し大きく動く歴史のうねりに翻弄されながら、自らの運命に立ち向かい成長してゆく。

登場人物・キャラクター

ウムボルト

日本人の父とモンゴル人の母を持つ。幼い日に、ロシア革命の指導者のひとり、レフ・トロツキーと思われる謎の男と接触していた父の深見圭介と母が殺害された事件の現場に居合わせ、そのショックでそれ以前の記憶を失う。奉天の師範学校の学生であったが、共産主義者の孫逸文から受け取ったチラシを学校でバラまいていたため、憲兵隊に捕えられ拷問を受ける。 これを父の陸士時代の同期で「陸軍創設以来の頭脳」と評される石原莞爾の使いであった、関東軍参謀の辻政信少佐によって助けられ、彼の力添えにより満州国に開学した建国大学に特別研修生として入学する。 国家や民族、そして多くの人々の思惑が交差し、大きく動く歴史のうねりに翻弄されながら、自らの運命に立ち向かい成長してゆく。

レフ・トロツキー (れふとろつきー)

ロシアの赤軍を創った男で、レーニンと並んでもひけをとらない人物。「好戦的日本には世界一の大洋(太平洋)と世界一の大陸(中国大陸)という二つの戦場があたえられているが、生産力の貧しい日本はどちらをとっても勝てない」と述べている。 石原莞爾は自ら設立した建国大学に講師として招き入れる「トロツキー計画」を実行しようと試みる。 歴史上の実在の人物、レオン・トロツキーがモデル。

深見 圭介 (ふかみ けいすけ)

ウムボルトの父。ウムボルトが幼い頃、何者かによって妻と共に殺害された。陸軍創設以来の頭脳と評される石原莞爾とは陸士の同期。石原莞爾によると、頭が良く男前で、優れた軍人になるかと思われていた。その後、軍を除隊、南満州鉄道、いわゆる満鉄に入社、蒙疆鉄道を延伸させる計画の調査に赴任する。 だが、実際には外蒙=モンゴルが赤化して中国から独立、つまり事実上、ロシアの衛星国と化してしまったため、通遼を拠点とし、工作員として内蒙古で活動していた。新疆(しんきょう)の都市の伊寧(イーニン)でトロツキーと親しくしていたという形跡があるが真実は不明。

石原 莞爾 (いしはら かんじ)

関東軍参謀副長。少将。満州事変の首謀者。陸軍大学を二番で卒業、陸軍創設以来の頭脳と評される。関東軍参謀長で後に大日本帝国首相となる東条英機のライバル。東条英機を「アタマが悪く高尚な話をしてもわからん奴」だと見下している。ウムボルトの父、深見圭介とは陸士の同期。 その深見圭介がかつて親しくしていたと思われるロシアの赤軍を創った男、レフ・トロツキーを建国大学に呼び、講師に迎え入れる「トロツキー計画」を企てる。だが、東条英機参謀長が陸軍次官就任のため離満した際、 参謀長昇格が濃厚とされていたところ、第十師団長磯谷簾介中将が着任したことで、世間の目には石原をクサらせる人事と捉えられた。 結果、病気療養という名目で休暇願を植田司令官に提出、受理され帰国する。その後、予備役編入願を提出するが、東条英機の妨害で生殺しの状態となる。歴史上の実在の人物、 石原莞爾がモデル。

辻 政信 (つじ まさのぶ)

関東軍参謀。少佐。建国大学創設主任。強引・専断・無情の鬼参謀として知られる。石原莞爾の持論「五族共和」に共鳴し、東奔西走の結果、建国大学を強引に開学させた。建国大学の副総長、作田荘一に掛け合い、1年か半年で国家有為の人材としてモノにするよう頼み込んだ上で、ウムボルトを強引に建国大学の特別研修生として入学させる。 石原莞爾の意志を尊重し、東亜の閉塞状況を打破する意気込みで活動する。 ノモンハン事件、シンガポール戦、ガダルカナル戦等の作戦指揮を執り、戦後は参議院議員となるが、ラオスで行方不明となる。歴史上の実在の人物、辻政信がモデル。

東条 英機 (とうじょう ひでき)

関東軍参謀長。 石原莞爾のライバル。甘粕正彦に石原莞爾の動きを探らせる。甘粕正彦からは、軍人としては立派だが、小さい物事に動じすぎる、陸軍大臣までならいいが、国の命運を任せることはできない、と評される。だが、後に陸軍次官就任の為に離満、陸相、大日本帝国首相を務めることになる。 歴史上の実在の人物、東条英機がモデル。

甘粕 正彦 (あかまかす まさひこ)

共和会総務部長。元憲兵大尉。無政府主義者の大杉栄殺害犯として服役後、渡満。関東軍参謀長で後に大日本帝国首相となる東条英機に対して、「軍人としては立派であるが、モノに動じ過ぎるきらいがあるため大臣までなら良いが国運を委ねる人物ではない」と評している。 また、関東軍参謀で後にノモンハン事件、シンガポール戦、ガダルカナル戦等の作戦指揮を執ることになる辻政信に対しては、騒々しすぎて謀略に向かないと評している。陸士以来のよしみで東条英機から石原莞爾の動向を探る命を受けている。歴史上の実在の人物、甘粕正彦がモデル。

作田 荘一 (さくた そういち)

建国大学初代副総長。京都帝大から呼ばれて満州の地に着任した。関東軍参謀の辻政信の無理押しにより、特例でウムボルトを研修生として預かる。建国大学の学生達に対し、五族協和の至上理念を理解する為には、互いの文化を理解し合い、人文・社会そして自然の諸科学を学ぶことで汎く世界とアジアを視野におさめた指導的識見を身につけることができると、道の学問精神を説く。 穏健な性格。後に抗日学生事件で引責辞任する。歴史上の実在の人物、作田荘一がモデル。

辻 権作 (つじ ごんさく)

建国大学教授。教練担当・学監。陸軍少将。日露戦争、上海事変の勇士。歩兵兵学に関しては日本一の大家。予備役。豪快・豪傑であり、かつ人情豊かな性格で気配りがきくが、不器用でもある。前線の指揮官タイプ。建国大学の建大益荒男(学生のこと)は東亜の先達者であり文武の両道に通じ、皇恩に報いなければならないと考える。 ノモンハンの戦場の最前線でウムボルトと再会する。歴史上の実在の人物、辻権作がモデル。

村岡 小次郎 (むらおか こじろう)

一人一殺主義で知られる右翼の暗殺隊、血盟団の人斬り以蔵と呼ばれる男。甘粕正彦の手下である為、官憲も手出しが出来ないでいる。甘粕 の指示を受け、石原莞爾の動向を探る。石原が植田大将の官舎である関東軍総司令官邸から出たところを襲撃するが、機転を利かしたウムボルトの行動と、石原を護衛していた植芝盛平の合気道により未遂に終わる。 歴史上の実在の人物、村岡小次郎がモデル。

植芝 盛平 (うえしば もりへい)

建国大学合気道部顧問。合気道の開祖であり、伝説的武芸者。ウムボルトの合気道のスジを見る過程で、ウムボルトにその父である深見圭介の景色を見た。合気道については「例え相手が拳銃を使ったとしても弾丸より一瞬早く見える白い光のツブテを見極め、弾丸すらよけることが出来る、平常心が澄みきれば殺気にも気付き、死線をくぐるうちに武道の極意が見えた」と語っている。 十数年前、宗教家の出口王仁三郎の徒党としてウムボルトの育った通遼に来た際(外蒙侵攻計画「バインタラ事件」)に、深見圭介に合気武道の柔術を授ける。元来、武術とは人を殺す術であるが、学生には術や技としてではなく、道として合気武道を学べと説く。 歴史上の実在の人物、植芝盛平がモデル。

ジャムツ

ウムボルト の幼なじみ。ウムボルトが育った養母の実家のある通遼の出身。共産主義者。危険分子として日本の憲兵に付けねらわれている。 通遼で日本の警察に雇われたゴロツキ達に襲撃されたウムボルトを救った。奉天特務機関の楠部金吉に追われている。 ウムボルトに同志として連絡をとるといって別れた。ハルビンではロシアに拉致されたウムボルトを救出している。抗日武装組織の統一体である東北抗日聯軍の政治員。後に満洲国軍人ジョンジュルジャップ のもとで王(ワン)という名前で活動する。上海でウムボルト と再会する。 ジャムツが本名で孫逸文 や王は偽名である。

麗花 (れいか)

キャバレー銀巴里の歌い手。日本人の客の為に満州国の唄を歌いお金は貰うが、日本人に対して心まで売っている訳ではない。日本人を心底嫌っている。共産主義者の孫逸文ことジャムツと裏で繋がっている。ジャムツ が助けたウムボルトを巴胡塔のアジトで匿うが、半分日本人であるウムボルトを信用してはいない。 だが、憲兵との撃ち合いの後に逃亡する中で、ウムボルトのことを仲間であると思い始め、自らの過去を語る。 中国人であるが、母はウイグル人。父はシボ族で、清の時代にウイグルに派遣された兵隊であった。麗花自身も13歳までウイグルの新疆に住んでいた。 ハルビンでウムボルトと再会し行動を共にすることになる。

楠部 金吉 (くすべ かねきち)

奉天の憲兵隊大尉。後に奉天特務機関特務員。共産主義者孫逸文のチラシを配ったウムボルトを捕らえ、拷問にかける。その後もウムボルトを尾行し、その正体と孫逸文の行方を探る。そしてウムボルトと接触した孫逸文が巴胡塔に潜伏していることを突き止め、巴胡塔の街を焼き払ってまで追いつめるが、あと一歩のところで取り逃がしてしまう。 事態を推測する能力に非常に長けており、「トロツキー計画」を画策する石原莞爾の腹の裡を完全に読み切っている。だが石原莞爾の意志を引き継ぐ辻政信からは、仕事は出来るが石頭の憲兵くずれでは大局を見ることは出来ないと惜しまれている。 人を人とも思わない冷酷さがあり、ウムボルトをして東洋鬼(トンヤングイ)と言わしめる男。格闘技の達人。

片倉 衷 (かたくら ただし)

関東軍参謀。中佐。建国大学の設立に尽力したひとり。外蒙を中国から独立させ属国化することに成功したロシアでは、同様に新疆も分断し属国化しようとしてきたため、これに抵抗。新疆をロシアの手に渡すことのないよう、ウムボルトを新疆の都市である伊寧に帰郷させる。 歴史上の実在の人物、片倉衷がモデル。

藤田 (ふじた)

建国大学六塾塾長。六塾の一部のメンバーが馬小屋に立てこもる事件が発生し困り果てる。学生たちが立てこもったのは、日本にいたころは、海の向こうの新天地に民族協和の新国家が出来ることを素晴らしいと思っていたが、ハルビンや東満で見たのは威張りくさった日本人だったという酷い現実であったことが理由。 学校でなく、現在の満州そのものに不満があるという深い問題であるといえた。

柴 純全 (さい じゅんぜん)

建国大学六塾の学生。考え方の違いから六塾の数名が馬小屋に立てこもるという事件を起こすが、非日系が彼らに同調すると日系との対立に繋がると考え、共感はするが中立の立場をとり、蒙系、露系も中立する線でまとめる。故郷から戻り復学したウムボルトも日系でないことから、ウムボルトに対しても同調するよう相談し賛成の確認をとるが、ウムボルトを心から信頼してはいなかった。 その後、辻政信に諭されるウムボルトに更なる不信感を抱き始める。日本語が不得意で、厄介な資料を楽々読めるウムボルトを羨ましく思っている。昭和16年、抗日組織のリーダーとして多数の建大生と共に逮捕され、後、獄死。 歴史上の実在の人物、柴純全がモデル。

ゲンナジ・ヤン・ミリューコフ (げんなじやんみりゅーこふ)

ソ連からの亡命者。元は極東地方委員会書記。ハルビン領事館が身柄を保護する。内務人民委員部(KGBの前身)極東局長の後を追った形での亡命。 辻政信とウムボルトが面会の為にハルビン領事館まで訪ねてくる。ウムボルトの父、深見圭介の過去を知る数少ない者のひとりで、深見圭介の殺害現場に姿を現し、ウムボルトの僅かな記憶の断片に残った。 ウムボルトとの面会の場で、極東地方委員会書記に金をつかませられたハルビン領事館の給仕によって毒殺されたと考えられていたが、ウムボルトは辻政信が口封じの為に殺害したことに気付く。実在の人物、ゲンナジ・ヤン・ミリューコフがモデル。

ワリシー・カバルスキー (わりしーかばるすきー)

ハルビンに拠点を置くユダヤ人民会評議員。ユダヤ人。ハルビンで保護された亡命ロシア人のミリューコフに会うためにハルビン領事館にやって来た辻政信と面会する。在ソの同胞・ユダヤ人の立場を複雑にすることから、石原莞爾と辻政信が画策するトロツキー計画を迷惑に思う。 更にはミリューコフとウムボルトの父の関係を知っており、そのことをウムボルトに知られることを恐れて 、ウムボルト殺害をユダヤ人民会評議員でソ連と繋がりがあるベラロッテに任せる。

ベラロッテ

ユダヤ人民会評議員。ユダヤ人。ハルビンでウムボルト殺害を任され拉致するが、殺害せず身代わりの死体を川に捨てた。そして船でウムボルトをソ連に移送しようとするが、ウムボルトの幼なじみで東北抗日聯軍の政治員ジャムツの襲撃を受ける。その後、抗日聯軍と行動を共にすることになり、ジャムツと男女の関係を持つ。 そして、憲兵を恐れたジャムツの逃亡後はしばらくウムボルトを中心とした抗日義軍と行動を共にするが、意見が対立し去ってゆく。

宋 丁良 (そう ていりょう)

抗日聯軍の司令。抗日聯軍の指導についていけず、奉天特務機関特務員の楠部金吉からのアヘン上納とひきかえに見逃すという話に乗ってしまい、抗日聯軍を裏切り楠部に協力していた。だが、ウムボルトの強さに引かれ、ウムボルトを中心とした抗日義軍に加わり、ウムボルトのもとで行動することになる。

謝 文東 (しゃ ぶんとう)

抗日聯軍の将軍。昭和9年に勃発した農民蜂起、土竜山事件の指導者。土地の収奪に反抗して一万人余といわれる民衆軍を率いて日本人武装移民入植地を攻撃、日本軍連隊長以下多数を殺害した。抗日聯軍第八軍を率いて牡丹江の北辺りに展開。しかし共産党主導の聯軍指導部とはウマが合わない為、征西方針に服さず、抗日聯軍と縁を切り独自の判断で行動している。 宋丁良の提案に賛同し第八軍に合流することを決めたウムボルトと牡丹江で合流する。歴史上の実在の人物、謝文東がモデル。

松岡 洋右 (まつおか ようすけ)

満鉄総裁、後の外相。 昭和14年1月、訪欧使節団副団長の甘粕正彦が欧州より帰国した際、相手とするに足るのはヒトラー一人しかいないと断言すると共に、日本でヒトラーと張り合える人材として挙げた数少ない人物の一人。満鉄が世界に誇る列車「あじあ」の一等を借り切って関東軍首脳の初会議に参加する。 そこで満鉄総裁の辞意と三国同盟の即時締結とソ連をも抱き込みユーラシアをひとつにして対アングロサクソンの先陣を張ることを提案。その為、「トロツキー計画」やユダヤ自治州に関わりソ連を挑発する行動を行う辻政信に対し良い印象を持たず、その上司にあたる関東軍司令官の植田謙吉大将に忠告し、関東軍首脳達の反感を買う。 歴史上の実在の人物、松岡洋右がモデル。

植田 謙吉 (うえだ けんきち)

関東軍司令官で大将。昭和14年、帰国した訪欧使節団副団長の甘粕正彦から「ドイツのヒトラーが力を入れて機械化された部隊をどんどん作っており、戦車とトラックと自走砲からなる機甲師団は、フランスもイギリスもかなわないほど強く、更にはヒトラーが戦争をするつもりになっている」という報告を受ける。 また、関東軍参謀の辻政信より具申され、一筆を書き謝文東を帰順させた。歴史上の実在の人物、植田謙吉がモデル。

川島 芳子 (かわしま よしこ)

清朝の皇族である粛親王の娘。日本の革命家、川島浪速の養女。昭和2年に蒙古独立運動の指導者バブチャップの息子であるカンジュルジャップと結婚している。安国軍総司令の金壁輝と自称。双方の父親から、男だったら新しい清国の皇帝にさせていたと言われていた。 その為、男と女、両方の人生を楽しく生きようと決め、自らを「ボク」と呼ぶ。牡丹江でウムボルトの合気柔術の技を見たことで興味を持ち、ヤマトホテルの自室に招き入れる。ウムボルトの父、深見圭介の過去を知っている。ウムボルトとは上海で再会する。歴史上の実在の人物、川島芳子がモデル。

尾崎 秀実 (おざき ほつみ)

元新聞記者で近衛内閣の嘱託。満鉄嘱託として満州へ渡る際、風見章前書記管長の紹介で舞鶴に左遷されていた石原莞爾と面会、対ソ謀略を中止するよう意見するが受け入れられなかった。その後、ゾルゲ事件に連座、コミンテルンのスパイとして昭和19年に絞首刑となる。 歴史上の実在の人物、尾崎秀実がモデル。

安江 仙弘 (やすえ のりひろ)

大連特務機関長。大佐。ウムボルトの父の深見圭介および石原莞爾とは陸士同期。植芝盛平とは古い友人。特に深見圭介とはかつての同志であり、友人の石原莞爾が立案しウムボルトが関わろうとしている「トロツキー計画」のこともよく知っている。だがウムボルトの力を借り「トロツキー計画」を潰すつもりでいる。 日本を安泰とするには「五族協和」の理念が本物であると世界に見せつけなければならないが、その為には満州国が五族といわず何民族でも平等に暮らせる国であることを示す必要があると考えている。また、その目的を達成する為にユダヤ人を助けてやることが一番ではあるが、一方でトロツキーを満州国に迎え入れる代償として国を崩壊させてしまう恐れがあると危惧している。 ウムボルトを連れ上海に行くが、ウムボルトの肩書きが必要だと考え、興案軍の士官に任官させる。歴史上の実在の人物、安江仙弘がモデル。

烏爾金 (うるじん)

興安北警備軍司令兼軍官学校校長代理。少将。幼いウムボルトに巨(おお)きな父(アヴ)さんと呼ばれていた。だがウムボルトは両親が殺害されて以来、幼い頃の記憶を失っており、軍官学校での再会がウムボルトの記憶を蘇らせた。ウムボルトの父の深見圭介や安江仙弘とはシベリアで出会い、共にボルシェビキと戦った。 深見圭介の過去を知る男。歴史上の実在の人物、烏爾金がモデル。

正珠爾礼布 (じょんじゅるじゃっぷ)

満洲国軍参謀。蒙古族。川島芳子の元夫のカンジュルジャップ将軍の弟。ウムボルトを危険な存在と認識し、上海のホテルで就寝しているところに刺客を送るが失敗。ノモンハンの最前線でウムボルトと再会し、ウムボルトに自分と組み蒙古民族のために働かないかと誘う。 歴史上の実在の人物、ジョンジュルジャップがモデル。

レフ・ダヴィドビッチ・ブロンシュティン (れふだゔぃどびっちぶろんしゅてぃん)

上海に住む亡命ユダヤ人。虹口のブロードウェイ・ロードでトロツキーの偽物の役を演じる芸人。トロツキーの演説を客の前で再現する。外見は、幼い日のウムボルトの記憶に残るトロツキーの姿そのものであった。青幇と組んで阿片の密売をしていた為、川島芳子が率いる安国軍に踏み込まれ、川島芳子 の手により殺される。 手段を問わず金を稼ぎ、その金で惨めな同胞を助けていた。船会社の倉庫を私費で買い取って難民の宿泊所、孤児院、幼稚園、学校、収容所を作り、施設の子供たちも彼にとてもなついていた。

李 香蘭 (りい しゃんらん)

満映が売り出し中の新人女優。麗花に似ており、ウムボルトが見間違える程。日本人であるが、中国人と国籍を偽って活動している。本名は山口淑子。奉天生まれ。歴史上の実在の人物、山口淑子(李香蘭)がモデル。

場所

建国大学 (けんこくだいがく)

昭和13年、大日本帝国の植民地国家である満州国の国務院直属という位置づけで、首都の新京に開学した特異な大学。総長は満州国総理である張景恵が兼務。創設委員長は当時の関東軍参謀長、東条英機。このメンバーから見ると国策大学の図式であるが総長職はお飾りで、東条はあくまで担がれたオミコシであった。 建学の理念は東条のライバルである石原莞爾の持論「五族共和」の実現に立脚しており、それに共鳴した関東軍参謀の辻政信が東奔西走した結果、強引に開学させたというのが実情である。門戸は広く諸族に開かれ、第一期生は五族によって構成されている。 理論学習と実践の融合統一を指導原理とする。

書誌情報

虹色のトロツキー 全8巻 潮出版〈希望コミックス〉 完結

第1巻

(1992年6月発行、 978-4267902352)

第2巻

(1992年11月1日発行、 978-4267902406)

第3巻

(1993年6月1日発行、 978-4267902550)

第4巻

(1994年5月1日発行、 978-4267902659)

第5巻

(1995年6月1日発行、 978-4267902840)

第6巻

(1995年9月1日発行、 978-4267902925)

第7巻

(1996年5月1日発行、 978-4267902956)

第8巻

(1997年1月1日発行、 978-4267902994)

SHARE
EC
Amazon
logo