あらすじ
100億円の価値を持つみうみと、極道組織の若頭である御己神の出会い
世界でも有名なラグジュアリーホテルを経営する両親のあいだに生まれた一人娘の宝生みうみは、人付き合いが苦手で、学校でも浮いた存在になっていた。そんなある日、みうみは下校中に誘拐されてしまい、関東エリア最大の極道組織「御己神会」の御己神正義たちに救出される。実は何者かがみうみの殺害を複数の極道組織に依頼しており、「御己神会」がみうみの命を守ることで、彼女の両親から100億円の報酬を受け取ることになっていた。こうしてみうみは100億円の価値を持つ娘として、御己神会の屋敷で御己神といっしょに暮らすことになる。不安ばかりのみうみだったが、御己神といっしょの時間を過ごすうちに、彼には心を許せる相手もほとんどいないことを知り、泣くことも忘れてしまった御己神に同情心を抱くようになる。そんな御己神に対してみうみは、「私が絶対に泣かせる」と宣言する。
みうみが執拗に命を狙われる謎
宝生みうみの命を狙う者は増えていき、ほぼ毎日のようにみうみは襲われるが、そのたびに関東エリア最大の極道組織「御己神会」の御己神正義たちに助けられていた。しかしなぜみうみが、これほどまでに強い恨みを抱かれているのかを疑問視したみうみと御己神たちは、そのヒントを求めてみうみの父親の宝生司に会いに行く。司は、なぜみうみが狙われるのかわからないと話すが、カンのいい御己神は司が何か隠していることに気づく。そんな中、日頃から護衛をしているお礼だと、みうみと御己神たちは宝生家が運営するラグジュアリーホテルの貸切プールに招待される。みうみは暁一色、暁二色と親しくなるが、一色から自分たちはふつうの友達関係ではないと、はっきり言われてショックを受ける。そして、みうみたちがリラックスしている一瞬を狙い、ほかの極道組織の構成員がみうみと御己神たちの命を狙う。そこで一色は狙撃され、傷を負ったままプールに落ちてしまう。
惹かれ合っていくみうみと御己神の初デート
狙撃されてプールに落ちた暁一色に対して、宝生みうみはみんなの前で人工呼吸を行う。そのおかげで一色は一命を取り留めたものの、目の前でみうみと一色がキスした光景が脳裏に焼きついてしまった御己神正義は、モヤモヤとした気持ちを抱えるようになる。そんな御己神の気持ちを知らないみうみは、深夜にカンちがいから彼の部屋に忍び込んでしまう。そこで御己神はみうみにキスをし、二人はお互いをこれまで以上に意識し合うようになっていく。そんな中、帰宅途中のみうみと御己神は車の中で襲撃され、一時的に新宿の歌舞伎町に身をひそめることになる。歌舞伎町で目立たないように、それぞれホステスとホスト風のファッションに着替えた二人は、そのまま敵の目を欺くため、デートを開始する。
誘拐された御己神
両親が経営するラグジュアリーホテルに遊びに行った宝生みうみは、迎えに来た御己神正義と帰宅しようとしたところ、関西エリア最大の極道組織「広島連合 伊勢谷組」一派の襲撃を受ける。いつもどおり、みうみの殺害が目的かと思われたが、伊勢谷組は御己神だけを連れ去る。伊勢谷組の組長である伊勢谷音魏は御己神をライバル視しており、彼を陥れるために誘拐したのだった。伊勢谷は御己神を解放する条件として、指定した場所にみうみ一人で5000万円を持ってくるように告げる。みうみは伊勢谷組に乗り込んで得意の護身術で伊勢谷相手に奮闘するが、戦いの最中に服を破られ、辱めを受けてしまう。
みうみの父と広島連合 伊勢谷組とのつながり
関西エリア最大の極道組織「広島連合 伊勢谷組」について調べていた御己神正義たちは、つながりがある者のリストの中に、宝生みうみの父親である宝生司の名前があるのを発見する。もしかすると司が伊勢谷組とかかわりがあり、それがみうみの命が狙われている理由なのではないかと考えた御己神たちは、あえて伊勢谷組が運営し、伊勢谷音魏をはじめとする組員たちも乗船する豪華客船に乗り込む。そして、伊勢谷がみうみに惚れることで、彼女の命は狙われなくなるのではないかと考えた御己神は、みうみに伊勢谷に接近するように命ずる。そんな中、客船内では極道ではなく、一人の優れた経営者として優雅に振る舞う伊勢谷に対して、みうみは次第にあこがれを抱くようになる。
登場人物・キャラクター
宝生 みうみ (ほうしょう みうみ)
裕福な子息が通う名門高校に所属する女子高校生で、年齢は16歳。両親は世界でも有名なラグジュアリーホテルを経営している。一人娘のために両親から溺愛されているものの、家族いっしょに過ごす時間がほとんどないことから、寂しさを抱えている。ある日、何者かが宝生みうみの殺害を複数の極道組織に依頼したため、命を狙われるようになる。同時にみうみの両親が、関東エリア最大の極道組織「御己神会」に娘の護衛を依頼したことで、執行若頭の御己神正義と知り合い、御己神会の本部の屋敷で共に暮らすようになる。そんな生活の中、7代目会長の筆頭候補の呼び名が高く周囲から期待されているだけではなく、仲間からも命を狙われている御己神を見て同情心を抱くようになる。また、泣いたことがないと話す御己神に対して、「絶対に泣かせる」と宣言する。最初は御己神に少なからず恐怖を抱いていたものの、いっしょに過ごす時間が増えていく中で、次第に愛情が芽生えていく。年齢のわりに幼い外見で、世間知らずで天然気味なところがある。そのため、周囲のお金持ちの令嬢たちとも話が合わず浮いており、学校では嫌がらせを受けている。幼い頃から何度も誘拐されているために護身術を学び、身体能力は非常に高い。好物はキャンディーで、精神安定剤のような役割も担っている。御己神からは「みう」と呼ばれている。
御己神 正義 (みこがみ まさよし)
関東エリア最大の極道組織「御己神会」執行若頭を務める青年で、年齢は21歳。7代目会長の筆頭候補の呼び声が高い。宝生みうみの両親から高額な報酬を提示され、みうみの護衛を任されることとなる。最初はあくまでみうみを「莫大な金を生む存在」としか見ていなかったが、泣いた記憶がない自分に対して「絶対に泣かせる」と宣言する彼女に興味を抱き、次第に距離が縮まっていく。ふだんはみうみと共に、御己神会の本部の屋敷に住んでいる。非常に整った顔立ちながら、笑顔を見せることはほとんどない。御己神正義自身の目標を達成させるためには手段を選ばない、非情な性格の持ち主。何者かがみうみの殺害を、複数の極道組織に依頼していることも把握しているため、みうみを餌にして敵対する組織を壊滅させようとするなど、頭の回転も非常に速い。幼い頃から極道の世界で生きているため、仲間だと思っていた者から命を狙われることも多く、基本的に人を信じていない。しかし、自らが信じたいと思えた者にだけ、御己神会の家紋が入った「ドッグタグ」を渡し、みうみなど限られた人間のみが所持している。
百合園 怜士 (ゆりぞの れいじ)
関東エリア最大の極道組織「御己神会」に所属する青年で、若頭補佐を務めている。宝生みうみが御己神会の本部の屋敷に住み始めたことで、彼女と知り合いになる。容姿端麗な美青年で、左目を黒いレース素材のアイパッチで隠している。執行若頭の御己神正義の右腕としても知られており、冷酷さは御己神と同等だと周囲から恐れられている。元御己神の上司にあたり、彼に堂々と意見できる唯一の存在でもある。ふだんは無口だが上下関係に厳しく、一度スイッチが入ると若い組員に対してガミガミと説教する悪癖を持つ。御己神がみうみに御己神会の家紋が入った「ドッグタグ」を渡すなど、ただの依頼者の娘以上の気持ちを抱いていることが、いつか致命的な弱点になるのではないかと不安に思っている。また、百合園怜士自身も御己神から「ドッグタグ」を渡されている。
蓮見 要 (はすみ かなめ)
関東エリア最大の極道組織「御己神会」に所属する青年で、総本部長を務めている。宝生みうみが御己神会の本部の屋敷に住み始めたことで、彼女と知り合いになる。料理が得意なことから、みうみのために腕を振るうことも多い。仕事にはまじめに取り組んでいるものの、極度の面倒くさがり屋で、よけいなことは絶対にしない合理主義者。笑顔を絶やさず物腰も柔らかいが、毒舌家の一面を持つ。世間一般的にはまだまだ若いものの、「御己神会」の中では年長者。そのため、暁一色から牧雄大と共に「ジジイコンビ」と陰口を叩かれている。御己神正義から信頼されており、御己神会の家紋が入った「ドッグタグ」を渡されている。
牧 雄大 (まき ゆうだい)
関東エリア最大の極道組織「御己神会」に所属する青年で、本部長補佐を務めている。宝生みうみが御己神会の本部の屋敷に住み始めたことで、彼女と知り合いになる。みうみの身の回りの世話をしたり、面倒くさがり屋で毒舌家の蓮見要をフォローしたりと、忙しい日々を送っている。過激な言動が多い「御己神会」の中では、常識的な思考の持ち主でもある。世間一般的にはまだまだ若いものの、「御己神会」の中では年長者。そのため、暁一色から蓮見と共に「ジジイコンビ」と陰口を叩かれている。御己神正義から信頼されており、御己神会の家紋が入った「ドッグタグ」を渡されている。
暁 一色 (あかつき いっしき)
関東エリア最大の極道組織「御己神会」に所属する青年で、暁二色の兄。宝生みうみが御己神会の本部の屋敷に住み始めたことをきっかけに、彼女と知り合いになる。非常に社交的な性格の持ち主で、みうみにも積極的に話しかけ、彼女にとって屋敷内で最も気軽に話せる存在になっている。ただし、みうみの実家の関係者からは「お嬢様に近づくヒモ体質のチャラチャラした男」と、大いに警戒されている。二色と共に「始末組」と呼ばれ、依頼された仕事の後始末を任されることが多い。御己神正義から信頼されており、御己神会の家紋が入った「ドッグタグ」を渡されている。
暁 二色 (あかつき にしき)
関東エリア最大の極道組織「御己神会」に所属する青年で、暁一色の弟。宝生みうみが御己神会の本部の屋敷に住み始めたことで、彼女と知り合いになる。非常に無口な性格で、感情を表に出すことは少ない。さらに、つねにマスクをつけて顔を隠していることから、何を考えているのかわからないところがある。しかし、みうみに対しては不器用ながらも友好的に接している。一色と共に「始末組」と呼ばれ、依頼された仕事の後始末を任されることが多い。御己神正義から信頼されており、御己神会の家紋が入った「ドッグタグ」を渡されている。
伊勢谷 音魏 (いせや おとぎ)
関西エリア最大の極道組織「広島連合 伊勢谷組」の組長を務めている。女性ながら男性として振る舞っている。御己神正義をライバル視しており、複数の極道組織に殺害依頼をされている宝生みうみも含めて手中におさめるべく、御己神を誘拐した。言動も服装も男性そのもので、広島弁で話す。極悪非道な性格で、みうみに対しても容赦しない。極道組織の組長はあくまで裏の顔で、表の顔は豪華客船の運営やアパレルなど、幅広い分野で手腕を振るっている優れた経営者としても知られている。
久我 龍臣 (くが たつおみ)
関西エリア最大の極道組織「広島連合 伊勢谷組」の組長補佐を務める青年。御己神正義を誘拐した際、単身助けに乗り込んできた宝生みうみと顔見知りになる。組長の伊勢谷音魏に絶対的な忠誠を誓っている。言葉づかいも態度も荒っぽく、部下に対しても厳しく接する。また、伊勢谷のことを男性だと認めており、少しでも女性として扱った者に対しては容赦しない。
柊 美門 (ひいらぎ みかど)
関西エリア最大の極道組織「広島連合 伊勢谷組」の組長補佐を務める青年。御己神正義を誘拐した際、単身助けに乗り込んできた宝生みうみと顔見知りになる。組長の伊勢谷音魏に絶対的な忠誠を誓っており、身の回りの世話もしている。一方で、伊勢谷に対して自分の考えを提言することもあり、たびたび注意を受けている。つねにテンションが低く、久我龍臣からは「葬式みたいな男」と軽口を叩かれている。
宝生 司 (ほうしょう つかさ)
宝生みうみの父親。妻と共に世界でも有名なラグジュアリーホテルを経営している。一人娘のみうみを溺愛しており、何者かがみうみの殺害を複数の極道組織に依頼したと聞き、「毒を以て毒を制す」という考えから、関東エリア最大の極道組織「御己神会」に娘の護衛を依頼する。御己神正義たちには、なぜみうみの命が狙われているのかわからないと伝えているが、実際は少なからず思い当たる節があり、周囲に隠している。
その他キーワード
ドッグタグ
基本的に人間を信用していない御己神正義が、信じたいと思えた相手にだけ渡す特別なタグ。御己神会の家紋が彫られたペンダントで、贈られた者はつねに身につけていなければならない。御己神にとって大切な存在だと周囲にアピールする道具にもなっており、トラブルに巻き込まれにくくなる利点を持つ。宝生みうみなど、ごく限られた者しか所持していない。
書誌情報
蝶か犯か ~極道様 溢れて溢れて泣かせたい~ 10巻 講談社〈KCデラックス〉
第1巻
(2019-12-13発行、 978-4065180341)
第2巻
(2020-05-13発行、 978-4065192221)
第3巻
(2020-10-13発行、 978-4065211434)
第4巻
(2021-04-13発行、 978-4065225202)
第5巻
(2021-10-13発行、 978-4065250549)
第6巻
(2022-04-13発行、 978-4065274064)
第7巻
(2022-11-11発行、 978-4065295236)
第8巻
(2023-04-13発行、 978-4065313428)
第9巻
(2023-11-13発行、 978-4065337301)
第10巻
(2024-07-11発行、 978-4065350850)