地獄と化した豪華客船
大学生のカケル、アカリとユズルのきょうだいは、それぞれの友人や家族と共に豪華客船のクルージングツアーに参加する。しかしこの豪華客船は、「カイザー」と呼ばれる吸血鬼の首領が率いる吸血鬼の過激派集団の巣窟だった。このクルージングツアーも、参加している人間を餌として捕食したり、新たな吸血鬼を生み出すためのカモフラージュだった。その凶暴な本性を現した吸血鬼たちは、人間をはるかに超える力と、眼力で動きを封じる能力を駆使して逃げ場のない乗客たちの殺戮(さつりく)を開始する。カケルやアカリたちは逃げ場のない海上で、絶体絶命の危機に陥る。
人類に牙を剝(む)く、謎の吸血鬼たち
人間を襲う吸血鬼たちは、人間が「儀式」と呼ばれる行為を受けることで変異する。かつて人間だった時の記憶が残ってはいるものの、その多くが冷酷な性格に変貌し、人間を餌と認識するようになる。ただし、自分たちの立場を巡って対立することもあるなど、必ずしも一枚岩ではなかった。また、吸血鬼でありながらも人間を襲うことをよしとせず、彼らを秘密裏に保護したり、人工血液を食糧とする個体もおり、彼らは自らを「人間愛護派」と名乗っている。吸血鬼の首領、カイザーが率いる吸血鬼たちは、人間のみならず、ほかの吸血鬼も敵視する過激派集団だが、彼らにとって絶対的な存在である少女のノアがカケルに懐くようになると、彼に催眠術が効かないことに着目したカイザーが、カケルに対して自分たちと手を組むよう誘いかける。
100年前の悲劇を追体験したカケル
カイザーの誘いに応じ、その手下によって吸血鬼にされてしまったカケルは、再会したノアによって100年前に彼女と交流していた青年、ミチルの記憶を追体験する。ミチルは、カケルによく似た容姿の日本人で、海外に滞在していた時に現地に住んでいたノアやタニアと交流を持つようになる。しかしタニアがカイザーの一味に殺害され、敵討ちに向かったミチル自身も命を落としてしまう。この体験によってカケルが吸血鬼を、とりわけカイザーを憎む原動力となり、やがてカケルはカイザーを打破するために動き出す。
登場人物・キャラクター
カケル
吸血鬼たちが仕組んだ客船ツアーに参加した大学生の青年。乗船するや否やナンパに興じるなど、地味な顔立ちに反して軽薄な性格をしている。しかし、客に対する人体切断のマジックショーが、トリックを使って本当に殺害していることを見抜くなど、優れた洞察力を持つ。吸血鬼の最上位種であるノアに何故か気に入られ、彼女が吸血鬼と知らないまま懐かれる。さらに、ほかの吸血鬼による催眠術がまったく効かないことから、ノアの父親を自称する吸血鬼の首魁(しゅかい)と思(おぼ)しき存在のカイザーからも興味を抱かれている。
アカリ
吸血鬼たちが仕組んだ客船ツアーに参加した高校生の少女。母親はすでにおらず、父親と弟のユズルと三人で乗船した。家族思いの快活な性格ながら、カケルからナンパされた時はわかりやすく照れるなど、年相応な一面を見せる。そんな中、はぐれたユズルを探している際、豹変した彼に高所から突き落とされて吸血鬼に捕らえられる。さらに、マジックショーに出演させられ、トリックがあるように見せかけたうえで、実際に身体を串刺しにされる。しかし、理由は不明ながら命を落とすことなく、その身体は吸血鬼によるなんらかの選別の対象として保管されている。