概要・あらすじ
紀元前二世紀、中華統一の覇業を成し遂げた秦の始皇帝は、強力な法と厳罰による圧政を敷き、多くの民を苦しめていた。その始皇帝が不慮の死を遂げると、かろうじて治まっていた天下は乱れ始め、その中で各地で秦帝国の打倒を目指す英傑たちが頭角を現していく。片田舎の農村に生まれた劉邦は、はみ出し者たちを纏め上げ徒党の頭となり、亡国・楚の将軍の血を引く項羽は叔父・項梁に付き従い呉中の地を手中に収めていた。
各地で秦への反乱の火の手が上がる中、両者は楚の軍を率いて都へと攻め上り、ついには秦を滅ぼす。しかし劉邦はその功績にも拘らず辺境へと追いやられ、楚の実権は項羽によって握られてしまう。劉邦は表向きは楚に従う振りをしながら力をたくわえ、現地の民の支持を得て漢の建国を宣言。
各地の英傑たちと手を組み、項羽と雌雄を決すべく動き出すのだった。
登場人物・キャラクター
劉 邦 (りゅう ほう)
後に漢王朝を確立することになる英傑。片田舎の農民の子として生まれ、一時は山賊まがいの徒党の頭となるが、始皇帝死後の乱世の中、故郷である沛県を掌握。軍勢を率いて秦打倒を狙う楚軍に参加する。情に厚く、懐も深いが、将・武人としての能力は項羽に及ばず、本人もそれを深く理解していた。項羽を恐れ、近しい者にはその影に怯える姿を見せることもあったが、その弱さゆえに多くの者から慕われていた。
項 羽 (こう う)
本作に登場する武将たちの中でも桁違いの実力を誇る猛将。秦に滅ぼされた楚の大将軍に連なる生まれであり、叔父の項梁と共に呉中の地より秦打倒の軍を起こす。苛烈極まる性格であり、自らの行く手を遮る者には一切の容赦をしない。秦滅亡後に「西楚の覇王」を名乗り、玉座に付くが、その性ゆえに多くの敵を作り、最終的には劉邦の漢に敗れ去った。
虞 (ぐ)
どこまでも清らかであると同時に、匂い立つ様な色香を放つ美女。史書、小説などでは「虞美人」として知られる女性である。始皇帝の後宮に入るはずであったが、それを嫌って逃亡、立志前の劉邦と出会い妻となる。しかし、その後秦の軍人たちに連れ戻され、後宮で生きることになった。秦滅亡後は、項羽に気に入られ、その妻となっている。
項 梁 (こう りょう)
秦に滅ぼされた楚の復興を目指して、甥の項羽と共に呉中に流れ着いた男性。人心掌握と政治術に長け、楚の再興と秦打倒を旗印とした軍勢を作り上げ、その実質的な総大将となる。しかし、項羽率いる主力軍が秦の将軍・章邯の篭る城を攻めている間に、秦の正規軍により居城を攻められ、あえなく討ち死にした。
張 良 (ちょう りょう)
秦により滅ぼされた韓の宰相の息子で、軍学・政治学に通じた俊才。殺された一族の復讐のため、始皇帝暗殺を目論んでいた。始皇帝が死亡したことで目的を見失うが、劉邦に出会い、その相に感じ入ったことで軍師として仕えることになった。
蕭 何 (しょう か)
沛県の役人だったが、かねてから劉邦の人柄と器に引かれており、何くれとなく世話を焼いていた。劉邦が秦の人足集めから逃れた百姓たちを纏め上げ一党の頭となると、沛の町を守る軍として一党を受け入れるように進言。劉邦が沛の町に入ると、その配下となり以後忠臣として仕え続けた。
范 増 (はん ぞう)
項羽の軍師を務める老人。項梁を失った後の項羽を、その本質は豎子(青二才)であると見定めた上で、支え続ける。劉邦を危険視し、何度となくその排除を項羽に進言していた。秦滅亡後にこれをようやく受け入れた項羽は、表向きは褒賞として辺境である漢の地を劉邦に与え、その地に封じ込めることを選んだ。
始皇帝 (しこうてい)
秦の国王となってわずか10年で6つの国を滅ぼし、中華統一を成し遂げた男。封建制を廃し、厳格な法の下、中央集権体制を敷いた。これにより中原から国家間の戦乱は消えたが、苛烈な法支配に民は苦しんだ。70万の兵を率いた5度目の巡行中に急死を遂げ、末子の胡亥がその跡を継いだ。
趙 高 (ちょう こう)
始皇帝に側近として仕えた宦官。始皇帝の死後、皇帝の末子・胡亥を擁立、外界の情報から二世皇帝を遮断することで、秦帝国の実権を握った。自分に都合の悪い重臣たちを次々と謀殺し、ついには自分を問い詰めようとした二世皇帝をも殺すが、その代わりに擁立しようとした子嬰により、逆に殺されてしまった。
道師 (どうし)
秦帝国の政策により弾圧を受け、嵩山に集った学者・思想家たちのひとり。諸子百家の論客たちの中でも、その言葉は非常に重視されているらしい。秦滅亡後の乱世を治める人物が、泥の中(身分の低い者)から現れると予言。その後も各地に現れ、流浪の張良に兵法書を渡すなど、劉邦を新たな中華の王とすべく助力を与えた。