概要・あらすじ
紀元前219年、中華は秦の始皇帝によって統一されていた。沛県出身のゴロツキ・劉季(劉邦)は秦の都・咸陽で労役に服していた。ろくに仕事もせずサボってばかりの劉季であったが、始皇帝の豪華な輿行列を覗き見て、「男に生まれたからには、ああでなくっちゃ!!」と言い放つ。女好きでお調子者の劉季であるが、底の知れない器の大きさを感じさせる若者であった。
だが、そんな劉季を沛県より引率してきた役人・蕭何は、彼を役立たずのクズとしか思っていなかった。蕭何は優れた知能と才覚の持ち主で、「この世で一番頭がいい」と自任する男である。そんな自惚れの強い蕭何であったが、ある日、暴れ出した象の鼻に跳ね飛ばされ、豚厠(とんそく)と呼ばれる豚便所に落ちてしまう。
糞まみれになった蕭何を、人々は「うんこ蕭何~、うん蕭何~」と囃したて嘲笑する。そんな中で、劉季は蕭何の着物を脱がせて抱き上げ、宮殿の井戸まで運んで、水をかけて彼を清める。絶望に打ちひしがれる蕭何に、「人生、何があったって、洗い流せるさ」と語りかける劉季。だが、劉季はこの後、宮殿の井戸を糞尿で汚した罪に問われ、炮烙の刑に処せられてしまう。
炮烙の刑とは、燃えさかる炎の中を、油でつるつるにした丸太の上を裸足で歩かされる処罰。1000年の間、丸太を渡り切った者はいないとされる過酷な刑であった。絶体絶命の状況の劉季。だが、彼は刑の直前のゴタゴタで油を全身に浴びたことが幸いし、スルスル滑って、炮烙の刑を渡り切ってしまう。
こうして無罪放免となった劉季。蕭何はそんな劉季に一目置き始める。後に秦を破り、項羽の楚を倒して皇帝となった劉季(後の劉邦)と彼を後方から支え続け、勲功第一の臣となった蕭何。中華の歴史を変える2人の絆がこうして結ばれていく。
登場人物・キャラクター
劉 季 (りゅう き)
沛県出身の女好きでゴロツキの男性。後の漢の皇帝。農民の子として生まれたが、畑仕事を一切手伝わず、20歳を過ぎても街をほっつき歩き、無銭飲食と喧嘩にあけくれるだけの日々を送っていた。女好きのお調子者であるが、時おり、人間としての器のでかさを感じさせる度量がある。左ももに72のホクロがあることが自慢。陰陽五行説では、72は特別で偉大な存在を示す数字であるとされている。 並外れた巨根の持ち主でもある。沛県から使役に駆り出され、秦の都・咸陽にやってきたが、真面目に働くことはなく、女の尻ばかり追いかけまわしていた。便所に落ちて糞まみれになった蕭何を、宮殿の井戸で清めた。これが罪に問われ、炮烙の刑に処せられるが、奇跡的に渡り切って無罪放免となる。 以降、蕭何に一目置かれるようになった。実在した、中国・漢王朝の初代皇帝・劉邦をモデルとした人物。
蕭 何 (しょう か)
この世で一番頭がいいと自負しているプライドの高い男。沛県の役人。生まれ故郷の沛県を非常に愛している。沛県から劉季たちを引率して、秦の都・咸陽にやってきて、使役につかせていた。だが、ある時、暴れ出した象の鼻にはね飛ばされ、豚厠(とんそく)と呼ばれる豚便所に落ちてしまう。糞まみれになった蕭何を人々は嘲笑し、彼は人生に絶望する。 だが、劉季はそんな彼の着物を脱がせて抱き上げ、井戸の水で糞を流し落として、「人生何があったって、洗い流せる」と慰めた。しかし、劉季は宮殿の井戸を糞尿で汚したとして、この後、炮烙の刑に処せられてしまう。燃えさかる炎の中、油でつるつるにした丸太の上を裸足で歩かされる炮烙の刑。だが、劉季は奇跡的に丸太を渡り切ってしまう。 そんな劉季に蕭何は一目置き始める。実在した、中国・漢王朝創業の第一の功臣・蕭何をモデルとする人物。
盧 綰 (ろ わん)
劉季の友人で一の子分の青年。沛県の村で劉季と同年同月同日に生まれた。「何をするのも一緒、死ぬ日も一緒の一心同体」と劉季を慕っている。劉季を「劉兄い」と呼ぶ。劉季を慕う心は本物で、彼が炮烙の刑で死にかけた時は、短剣で喉を突いて一緒に死のうとした。実在した、中国・漢王朝の功臣・盧綰をモデルとする人物。
曹氏 (そうし)
秦の都・咸陽の飯場で飯炊きをしている若い女性。劉季に言い寄られた際、その太ももにあるとされる72のホクロを数えさせられた。劉季を憎からず思っている様子。実在した、漢の皇帝・劉邦の妻妾で、劉邦の庶長子・劉肥の母・曹氏をモデルとした人物。
始皇帝 (しこうてい)
中華を統一して戦国の世を終わらせた、秦の初代皇帝。その豪勢な行幸を見た劉季は、「男に生まれたからには、ああでなくっちゃ!!」と素直に憧れの言葉を発した。末子の胡亥を溺愛している。実在した、中国・秦の始皇帝・嬴政をモデルとした人物。
胡亥 (こがい)
始皇帝の末子。甘やかされて育った少年で、子供ながら美女の口移しで酒を飲む放蕩児。炮烙の刑で人が焼かれるのを見るのが大好き。炮烙の刑に処せられながら、奇跡的に生き残った劉季を、もう一度刑にかけようとした。しかし、宦官の趙高に諫められ、渋々ながら無罪放免とした。実在した、中国・秦の2代皇帝・胡亥をモデルとする人物。
趙 高 (ちょう こう)
秦の宦官の男性。胡亥の太傅(お守り役)。炮烙の刑を渡り切った劉季をもう一度渡らせろと主張する胡亥に対し、「韓非の書では、法は絶対でございます」と諫め、劉季を無罪放免させた。実在した、中国・秦の宦官・趙高をモデルとする人物。
項 籍 (こう せき)
楚の大将軍・項燕の孫。項櫻の息子。後の楚の覇王・項羽。瞳の中に瞳孔が2つあるため、重瞳子(ちょうどうし)と称され、偉人や聖人の一種として畏敬される存在。楚滅亡の際、祖父・項燕、父・項櫻が目の前で殺されても涙ひとつ流さず、己の武威を示した。この時、わずか9歳。その後、項籍は叔父・項梁と共に秦打倒に立ち上がる。 実在した、中国・西楚の覇王・項羽をモデルとした人物。
その他キーワード
炮烙の刑 (ほうらくのけい)
殷の暴君・紂王が愛妾・妲己と共に、処刑を楽しむために考え出したと伝えられる非道の極刑。罪人は、燃えさかる炎の中、油でつるつるした銅の丸太の上を裸足で歩き、渡り切れば無罪となる。しかし、考案されて1000年間で渡り切った者は1人もいないとされる。劉季は、宮殿の井戸を汚した罪で、この炮烙の刑に処せられた。
豚厠 (とんそく)
いわゆる豚便所。緒厠(ちょそく)とも呼ばれる。秦の時代、豚小屋の上に便所が作られ、豚に人間の糞が餌として与えられていた。暴走する象にはね飛ばされた蕭何は、この豚厠に落ちて糞まみれとなり、人々に嘲笑されて人生の絶望を味わった。
書誌情報
劉邦 15巻 小学館〈ビッグ コミックス〉
第1巻
(2017-12-27発行、 978-4091897688)
第2巻
(2018-02-23発行、 978-4091898043)
第3巻
(2018-07-30発行、 978-4098600557)
第4巻
(2018-11-30発行、 978-4098601394)
第5巻
(2019-05-30発行、 978-4098602896)
第6巻
(2019-11-29発行、 978-4098604951)
第7巻
(2020-05-29発行、 978-4098606245)
第8巻
(2020-09-30発行、 978-4098607365)
第9巻
(2020-11-30発行、 978-4098607709)
第10巻
(2021-03-30発行、 978-4098608751)
第11巻
(2021-08-30発行、 978-4098611386)
第12巻
(2021-11-12発行、 978-4098611812)
第13巻
(2022-05-30発行、 978-4098613472)
第14巻
(2022-08-30発行、 978-4098614004)
第15巻
(2023-02-28発行、 978-4098615940)