概要・あらすじ
それまで住んでいたアパートが取り壊されたことをきっかけに、絵描きの田村・福太郎は足洗邸に入居する。妖怪や悪魔が住む足洗邸で、入居者中唯一の人間となった福太郎だったが、次第に住人として認められていく。一方、中央政府に所属する役人のなかには、管理地区外である外区に力を持った勢力が集まり、暴動の原因になることを危惧するものもいた。
そのため足洗邸にも中央政府の査察が入ることになり、住人たちと中央政府役人や中央に雇われた鎮伏屋(ハンター)たちの間でたびたび衝突が起こるなか、次第に足洗邸に隠された秘密が明らかになっていくのだった。
登場人物・キャラクター
田村 福太郎 (たむらふくたろう)
足洗邸八号室住人。27~28歳の人間の男性。職業は画家。関西出身のため、関西弁を話す。住んでいたアパートが取り壊され、足洗邸に入居する。好奇心が強く、人当たりのいい性格。相手が人間でなくとも、意思の疎通ができれば物怖じすることなく接しているが、自分のことはあまり話したがらない。7歳のころに起こった大召喚で、右肩から召喚された人間の記憶を食べる妖怪莫奇と一体化してしまったことで、二重存在(ア・バオ・ア・クー、ダブルマン)と呼ばれる存在になっている。 大召喚時に家族を失った記憶を莫奇に食われ、その後もたびたび記憶障害を起こすようになっていたが、18歳の頃に記憶を戻され、親しい人間が死ぬことに耐えられなくなり関西から失踪。 中央・外区に引っ越してからの8年間は不良物件ばかりに住み、自殺未遂を繰り返していた。そういったいきさつから他人と深く関わることを避けようとしていたが、成り行きで足洗邸に居着いてしまったことへの葛藤を持ち始める。妖怪や悪魔などに詳しいオカルトマニアで、鎮伏屋にも詳しい。メフィスト・ヘレスに誘われて万魔殿学園の美術教師になる。
笠森 仙 (かさもりせん)
足洗邸七号室住人。万魔殿学園に通う女子高生だったが、田村・福太郎が入居する10年前、ストーカーに殺害され、天井裏に遺体を隠されたことで妖怪天井下になる。享年17才で、見た目はその時の年齢だが福太郎とは同い年。自分を見ても怖がらなかった福太郎に好意を抱き、突拍子がなく過激なアプローチをするようになる。妖怪化して以降、天井から離れることができなかったが、次第に邸内を行き来できるようになり、ピジョル・大石との戦いを経て足洗邸の「家神」として覚醒。 屋鳴、逆柱、影女などの家につく妖怪を使役できるようになる。
竜造寺 こま (りゅうぞうじこま)
足洗邸管理人。おかっぱ頭の少女の姿をしている猫又。猫のような手足と耳、7本の尾を持つ。もとは飼猫で、主人の仇を討つため猫又になったが、相手方を滅ぼして恨みが消えたので子猫の体に宿っている。一階の管理人室に住み、多数の化け猫を飼っている。入居者たちには隠しているが、中央政府守護部「六十四卦」に所属しており、足洗邸に封印されている大太解体魔人の一柱登美能那賀須泥毘古命を監視する任務を持つ。 H.N「猫ノ目(キング)」。
須美津 義鷹 (すみつよしたか)
足洗邸五号室住人。自称探偵。白髪で白っぽい服装を、若い男性のような見た目。正体は何体もの妖怪が合体したような姿の鵼と呼ばれる妖怪。市民登録をせず、中央政府からは怪異認定をされている。好戦的でプライドの高い性格。「妖怪より人間の方が優れている」という内容のことを言われると逆上する。ほかの生物を捕食・融合して自分の体に具現化できる能力を持つ。 古来から日本に住む妖怪で、望月・玉兎たち仲間の妖怪とともに眠りについていたが大召喚の起こった後に目覚める。しかし、同時に復活した大太解体魔人の一柱と戦闘になり、仲間を失う。玉兎と二人で逃げ出し、足洗邸の結界に墜落してそのまま住人になる。変幻自在で、妖力を吸収・ストックできる如意機「問答無用・風雷棒」を持つ。 鎮伏業登録はしていないが、目についた怪異を倒して回っているので、鎮伏屋の間では「白光」などと呼ばれ、都市伝説化している。人間や他の妖怪のことを嫌っていながらも、なぜか人間を観察して人間のように暮らそうとしている。妖怪を見ても怖気つかない田村・福太郎のことを気に入る。物語中盤で一時期足洗邸を留守にするが、その間のエピソードは『大復活祭』で描かれている。
望月 玉兎 (もちづきぎょくと)
足洗邸六号室住人。職業はエロ小説家と須美津・義鷹の探偵助手。見た目はメガネをかけた成人女性。正体は兎精と呼ばれる兎の変化した妖怪。体の3分の2ほどは義鷹から分け与えられたもので、どことなく義鷹と似た顔立ちをしている。自分から進んで怪異と戦うことは少ないが、鎮伏業登録をしており、H.Nは「月ノ雫(デ・リント)」。 杵の形をした如意機「以心伝心・請乃棒」を持つ。回復力に優れ、血肉には治癒効果もある。数百年に渡る付き合いの義鷹とは、家族のような間柄。義鷹とともに「大召喚」後の世界を人間のように暮らしていこうとしている。
メフィスト・ヘレス (めふぃすとへれす)
足洗邸一号室住人。万魔殿学園の英語教師。出勤時はシルクハットにタキシード、ステッキを持った西洋紳士風の身なりをしている悪魔。ふだんはお調子ものを装っており、生徒にいじめられている。怪しい古美術品を収集するのが趣味で、大量の古美術品を収納するために自室の一号室を異空間につなげ、迷宮化している。元々は中央政府に所属していた悪魔で、高い戦闘能力を持つが、中央政府と大太解体魔人たちとの争いをきっかけに中央を離れ、一般市民として足洗邸に住むようになる。 大太解体魔人の封印と現状維持を目指す中央政府の意向とは異なり、密かに大太解体魔人を殺そうと目論んでいる。H.N「悪ノ華(ボードレール)」。
味野 娯楽 (あじのごらく)
足洗邸二号室住人。関西でヤクザの組長をしていた老人。田村・福太郎が入居する3年前、二号室の天井から降りてきた巨大な足登美能那賀須泥毘古命(千束)に踏み潰されて死亡する。遺体を須美津・義鷹に井戸の中に捨てられるが、成仏できずに妖怪狂骨となった。体はなかば白骨化しており、たまに井戸からはい上がってあらわれる。 乱暴な性格でほかの入居者から借りた物や金を返さなかったり、ややボケが始まっていたことなどから義鷹や望月・玉兎とは仲が良くない。一方、子供に恵まれなかった過去から竜造寺・こまには優しい。もともと人間なので特殊な能力はないが、ヤクザだったことから実戦経験豊富で、番付高位の鎮伏屋からも一目置かれている。 武器は妖刀「片葉ノ葦」(カタハノアシ)と拳銃。H.Nは「地上ヨリ賭場ニ(チャーチル)」。
マサライ
仮面のような紋様が描かれた木製の楯に宿る「楯霊(シールド・レイ)」と呼ばれる精霊で、双頭の蛇の姿をしている。人間態のときは筋肉質の少年に見えるが、とくにほかの誰からも指摘されることなく女湯に入ることがあるなど性別不詳。もとはパプアニューギニアで、とある氏族の守護神として祀られていたが、「大召喚」によって氏族が滅び、古美術品としてメフィスト・ヘレスに購入され、足洗邸に置かれることになる。 連れてこられた当初は須美津・義鷹と諍いになるが、田村・福太郎に説得され、そのまま足洗邸の守護霊となる。
ピジョル・大石 (ぴじょるおおいし)
中央政府役人で、所属は七支柱・参謀本部。髷を結った小男で、陰険な性格。足洗邸の解体を目論み、国勢調査の名目で訪れる。しかし、各部屋にしかけられた罠や危険な生物にやられて部下をすべて失ってしまい、自分も笠森・仙に叩き出される。その後、そのことを恨み続け、何かと足洗邸を来訪しては難癖をつけてくるようになる。 正体は狢。
バロネス・オルツィ (ばろねすおるつぃ)
鎮伏屋の男。須美津・義鷹と登美能那賀須泥毘古命(千束)の退治をピジョル・大石から依頼され、足洗邸を訪れた。H.Nの「大イナル眠リ(チャンドラー)」のほかに「時の精霊使い(タイム・ショッカー)」という異名も持つ。高齢の人間だが、世界各地の精霊や妖精を召喚して戦わせることを得意とし、鎮伏業番付3位の実力者。 コートに帽子・手袋と酸素マスクを着用し、時刻を1時間ずつずらした24個の時計を身につけている。傲慢な性格で、依頼された仕事を遂行することにこだわりを持つ。民俗学を教える大学教授だったが、「大召喚」で「第二視力(セコンド・サイト)」と呼ばれる霊視能力を身につけ、混乱期を生き抜くために鎮伏屋になる。「大召喚」を起こしたとされる十王の一人、月ノ子(ガール・マスター)を倒すことを目標としており、中央からは要注意人物に認定されている。 義鷹を追い詰めるが敗北し、生きたまま井戸に落とされ、地獄に送られる。その後、登美能那賀須泥毘古命復活の際に、なぜか若返って現世に戻ってくる。右手の社会保障番号が消滅したので、市民登録をごまかしてクリストファー・マーロウ、H.N「消サレタ時間(サリンジャー)」と名乗り、ふたたび義鷹をねらう。
佐用都比賣命 (さよつひめのみこと)
大召喚の際に復活した大太解体魔人の一柱。国外からやってきた西洋の悪魔たちが秀真の国を管理していることを快く思わず、中央政府に敵対している。その後、中央によって封印されていたが再び復活。ほかの大太解体魔人たちの封印を解き、中央を倒そうと目論んでいる。万魔殿学園の女子生徒を装い、田村・福太郎にとりいって足洗邸の結界を破り、敷地の中に侵入。 登美能那賀須泥毘古命を復活させる。
登美能那賀須泥毘古命 (とみのながすねひこのみこと)
大召喚の際に復活した大太解体魔人の一柱。中央政府によって足洗邸に封印されていたが、佐用都比賣命に封印を解かれる。仮面をつけ、四肢すべてが足の形をした巨人として復活するが、「大太坊」の各部位と習合していた王としての人格が、体と別に復活し、田村・福太郎の体に乗り移る。ほかの大太解体魔人とは異なり、人間を管理する気がない放任主義的な性質を持ち、人間の進化する様子を見て楽しんでいる。 封印されている間も、ストーカーに殺された笠森・仙を妖怪化させたり、千束として現れて味野・娯楽を踏み殺し、その後妖怪化させるなど、独自に行動している。
集団・組織
中央政府 (ちゅうおうせいふ)
大召喚によって出現した、人間種とそれ以外の異形の者が混在する世界を統治するため、西洋の悪魔と日本古来の神である天津神によって組織された機構。一般市民として登録を済ませると、種族に関わらず手のひらに「666」の数字が刻印され、中央政府のコンピューターによって管理されることになる。
場所
足洗邸 (あしあらいやしき)
秀真国首都の郊外の外区、卍巴市不思議町にあるアパート。大召喚で崩壊した建物の瓦礫から建造された。井戸は地獄につながっている。敷地内に大太解体魔人の一柱登美能那賀須泥毘古命を封印している。二号室の天井からはランダムで巨大な足登美能那賀須泥毘古命(千束)が降ってくる。
イベント・出来事
大召喚 (だいしょうかん)
とある狂った召喚士によって引き起こされた事件。本作の冒頭から20年前に起こったとされる。世界中のあらゆる場所に「魔界」や「異界」が出現し、人類の3分の1が死滅。それ以上の数の妖怪や悪魔など異形のものたちが現れ、世界中の秩序が崩壊した。
その他キーワード
大太解体魔人 (だいだらかいたいまじん)
「大太羅法師(ダイダラボッチ)」や「大太坊(だいだぼう)」などと呼ばれる日本の伝説に登場する巨人。はるか古代、体の各部位が分断されて、秀真國の各地に封印されていたが、それぞれの部位が日本の国津神や妖怪と習合して個別の人格を持つようになっている。大召喚の後に復活し、中央政府の悪魔たちと衝突して「大暴動」と呼ばれる事件を引き起こしたが、その後中央によって再び封印されている。
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