あらすじ
ニャル子が来る
ある日、平凡な男子高校生の八坂真尋は、夜道で謎の怪物に襲われる。そこに現れたのは銀髪碧眼の美少女ニャル子で、ニャル子は怪物を打ち倒し、真尋を救う。ニャル子は自らをクトゥルー神話でも語られる宇宙人のニャルラトホテプの一人で、宇宙人に狙われた真尋を護衛するためにやって来たと語る。すると破天荒で、自分勝手なニャル子は真尋を気に入り、彼にあの手この手で付きまとう。真尋は自分の身を守るのと同時に、一刻も早くニャル子の任務が終わることを願って、事件解決に全面協力する。そんな中、真尋を狙う犯人のアジトがルルイエであることをつき止めた二人は、ルルイエに乗り込む。そして、事件の犯人であるノーデンスを追い詰めるが、そこにノーデンスに雇われたクー子が立ちふさがる。ニャル子の天敵ともいえるクー子であったが、本気を出したニャル子に一蹴され、ノーデンスも敗北するのだった。こうして事件は解決するが、ニャル子は真尋の家に居候すると宣言。さらにクー子まで押し掛けてきて、真尋の平穏な日々は遠ざかっていく。
来訪者、続々来る
八坂真尋はニャル子に付きまとわれたことで、騒々しい日々を送っていた。なんとかニャル子とクー子を追い払おうとするものの、そんな努力むなしく、留守にしていた母親の八坂頼子が帰宅する。真尋も知らなかったが、実は頼子は邪神ハンターで二人の正体をあっさりと看破し、事態を受け入れてしまう。そして頼子の帰宅を皮切りに、新たな来訪者が続々と現れる。ルーヒー・ジストーンとハス太は、それぞれの用事で頼子のもとを来訪するが、ルーヒーのまぎらわしい行動で、真尋は頼子が連れ去られてしまったとカンちがいしてしまう。ハス太も事情をよくわかっておらず、手探りで頼子の居場所をつき止めるものの、ルーヒーの目的はただの新作ゲームの試遊を頼子にしてもらうだけだった。結局、ルーヒーは目的を果たせずに会社をクビとなり、騒動は終わりを迎える。
原作
小説
本作『這いよれ! ニャル子さん』は、逢空万太の小説『這いよれ! ニャル子さん』を原作としている。原作はクトゥルー神話を元ネタにしたラブコメディで、クトゥルー神話の生みの親であるハワード・フィリップス・ラヴクラフトの名に懸けて、「ラブクラフトコメディ」とも呼ばれている。また、クトゥルー神話以外のアニメや漫画のパロディネタが多く、作中にはさまざまな小ネタが散りばめられている。GA文庫より刊行され、キャラクターデザインは狐印が担当している。
登場人物・キャラクター
八坂 真尋 (やさか まひろ)
地球人の男子高校生で、華奢な体型をしている。若干女顔で、八坂真尋自身も男っぽくない自らの容姿を気にしている。ある日、夜道でナイトゴーントに襲われた時にニャル子に助けられたのをきっかけにして、宇宙人の引き起こす騒動になし崩し的にかかわっていくこととなる。真尋自身は平凡な暮らしを望んでおり、護衛という名目で家に居座るニャル子を一刻も早く追い出したいと考えている。ニャル子曰く「宇宙人受けする顔」らしく、初対面の宇宙人からやたら好意をもたれがち。特にニャル子からはたびたびせまられており、その度に彼女を撃退している。それまで女性に手をあげたことはなかったが、ニャル子と過ごすうちにツッコミの才能を開花させ、彼女のボケにフォークで刺してツッコミを入れている。ツッコミの腕はニャル子と過ごすうちにどんどん磨かれており、フォークの威力もそれに比例して高くなっている。
ニャル子 (にゃるこ)
惑星保護機構に所属するニャルラトホテプ星人の少女。ニャルラトホテプ星人は「無貌の神」の別名を持つ種族で、姿かたちは自由自在に変えることができる。ニャル子も銀髪碧眼の美少女の姿をしているが、その気になれば化け物のような姿にもなれる。ハイテンションで自己中心的な性格で、基本的に強引に物事を進める。惑星保護機構の仕事で八坂真尋を保護しに来たが、個人的に真尋を気に入り、終始彼にまとわりついては真尋に折檻されている。真尋の学校にも強引に転校し、学校では勝手に「八坂ニャルラトホテプ」の名を名乗っている。本名は地球人には発音しづらいうえに、気軽に名乗るものではないと思っているため、基本的に本名で呼ばれることはない。そのため、真尋は名前を略し「ニャル子」と呼ぶようになる。宇宙CQCという格闘術を習得しており、戦闘能力は高いが、戦い方は凄惨極まるものとなっている。本気を出すと「フルフォースフォーム」という形態となり、爆発的にその戦闘能力を上げることができる。フルフォースフォームの姿は特撮系のヒーローのような姿で、この状態ならば瞬間移動じみた高速移動も可能となる。あまりにご都合主義的なパワーアップ形態であるため、真尋からは「後出しジャンケン」と皮肉を言われている。
クー子 (くーこ)
クトゥグア星人の少女。赤い髪をツインテールにした、炎を体中に身にまとった姿をしている。無表情でクールな雰囲気を漂わせているが、同性愛者でニャル子に愛情を抱いている変態。ニャル子とは幼稚園の頃からの幼なじみで、ニャル子からは蛇蝎のごとく嫌われ、冷たくあしらわれている。しかしそれでも喜ぶマゾヒストで、あの手この手でニャル子にせまる。ニャル子を手に入れるため、ノーデンスに手を貸し、ニャル子に襲い掛かる。宇宙CQCは機動砲台を使った遠距離攻撃で、もはや近接格闘術ではないが、それをツッコまれても涼しい顔で宇宙CQCと言い張っている。騒動のあとは、ニャル子が八坂真尋の家に転がり込んだため、ニャル子を追って自分も八坂家に居候している。ニャル子と同じく真尋の学校にも強引に転校し、学校では勝手に「八坂クトゥグア」の名を名乗っている。意外と律儀で強かなところがあり、真尋にはきちんと家賃を払い、ニャル子と結ばれたら二人で家を出ていくと宣言することで、真尋を味方に取り込んでいる。ニートだが、なぜか人脈に恵まれており、地球滞在後はコネを使って惑星保護機構に就職している。また重度のゲーマーで、八坂家に多数の珍しいハードがあると知った際には、その持ち主である八坂頼子に忠誠を誓っているほどゲームが大好き。
ハス太 (はすた)
セラエノ図書館で司書として働くハスター星人の少年。金髪碧眼で、長く伸ばした髪を三つ編みにしている。美少女のような姿をしているが、れっきとした男子。ニャル子、クー子たちとは幼なじみの間柄で、父親の頼みで八坂頼子に会いに地球を訪れる。宇宙人の中では珍しく真っ当な常識人で、見た目が保護欲を誘う幼い外見なのもあり、八坂真尋からも弟分のようにかわいがられている。ハス太も真尋に懐いており、のちにニャル子と同じく真尋の学校にも強引に転校し、学校では勝手に「八坂ハスター」の名を名乗っている。
シャンタッ君 (しゃんたっくん)
ニャル子の飼っているシャンタク鳥。馬の顔に鱗の皮膚、コウモリの羽を持つクリーチャーで、非常に気持ち悪い姿をしている。しかし、宇宙基準ではかわいい見た目らしく、愛玩動物扱いされている。ふだんは子犬くらいの小さなサイズで過ごしているが、ニャル子の命令で見上げるほどの大きさになり、ニャル子たちを背に乗せて飛ぶこともできる。八坂真尋に懐いており、彼によくじゃれついている。
八坂 頼子 (やさか よりこ)
八坂真尋の母親。年齢は不明で、高校生である真尋の母親とは思えないほど若々しい見た目をしている。真尋を溺愛しており、夫婦仲もよく、最近も17回目の新婚旅行と称して、二人っきりで旅行をしている。実は専業主婦と兼業して邪神ハンターを生業としている。夫も同じく邪神ハンターで、新婚旅行も実は二人っきりで邪神と称されるクリーチャー退治に行っていたのが真相だった。旅行から帰宅後、家に宇宙人のニャル子とクー子が居候しているという異常事態を目の当たりにするが、あっさり息子の友達として受け入れている。趣味はゲームハードの収集で、マニアックなレトロハードも持っており、ゲーマーのクー子からは忠誠を誓われるほど懐かれている。ただし、八坂頼子自身はあくまでハードの収集が趣味で、ゲームはあまりしない。
暮井 珠緒 (くれい たまお)
八坂真尋と同じ高校に通う女子生徒で、真尋のクラスメート。茶色の髪をポニーテールにした溌剌とした性格の少女で、いつも怪しげな噂話を話しているため、「歩くスピーカー」の異名を持つ。
ルーヒー・ジストーン
株式会社クトゥルーに所属する宇宙人の女性。ロングヘアで眼鏡を掛けている。ゲーム本部事業部のジェネラルマネージャーと第一開発部の部長を兼任している。新型ハード「エックスオス」の開発を主導しており、高スペックを追求したエックスオスで、他社にシェアを奪われ、窮地に立たされた開発部を救おうとしている。ハス太の父親が経営するCCE(カルコサ・コンピューター・エンターテインメント)はライバル社であるため、ハス太を敵視している。エックスオスに対する意見を聞くため、クー子と八坂頼子をアドバイザーとして招集する。しかし、その際の言動があまりに怪しかったため、八坂真尋に誘拐騒動と誤解され、無駄に大騒動へと発展した。最終的に誤解は解けたものの、頼子たちにエックスオスは売れないと断言されたうえに、会社がゲーム部門から撤退したあおりを受けてリストラされるという散々な目に遭っている。その後は人生をやり直すために、教育実習生として真尋たちの学校に通い始める。担当科目は情報処理。また、タコ焼き作りが得意で、実習生と兼任してタコ焼き屋の屋台も引いている。
ノーデンス
ノーデンス星人の男性。白い髪とヒゲを長く伸ばし、杖を携えた老人の姿をしている。八坂真尋を付け狙っていた犯人で、BL系少女コミックの実写ドラマ化にあたって、主役の配役に真尋の名が上がったため、真尋を捕えてスカウトマン相手に売り渡そうとしている。「ノーデンス時空」と呼ばれる異空間に相手を閉じ込める力を持つが、それ以外はほとんど何もできない。用心棒としてクー子を雇っていたが、クー子を簡単に倒し、ノーデンス時空から脱出してきたニャル子にあっさり倒される。なお、ノーデンス星人は基本的に同じ姿をしており、幻夢境にもまったく同じ見た目の個体が登場している。こちらのノーデンス星人はふつうに善人で、まじめに働いている。
場所
ルルイエ
クトゥルー神話に語られる、海底に沈む都市。星辰が正しい位置についた際は、南緯47度9分、西経126度43分、通称「太平洋到達不能極」と呼ばれる地点付近に浮上する。その実態は株式会社クトゥルーが経営するテーマパーク「ルルイエランド」。全宇宙に無数に存在するテーマパークで、地球にあるものはその中でも最も人気があり、宇宙人の客でにぎわっている。水上送迎タクシー「タゴン君」で、ルルイエに行くことができる。マスコットキャラクターの「インスマウス」は大人気で、無断使用されることが後を絶たないらしく、クトゥルーは版権にとてもうるさくなっている。宇宙人には人気のテーマパークだが、地球人は見ているだけで正気を失うほど、狂気に満ちた施設となっている。
その他キーワード
宇宙CQC (うちゅうしーきゅーしー)
近接格闘術の一種。ニャル子やクー子が学校で習った際には、教科書に「あなたが宇宙CQCだと思うものが宇宙CQCです」と書かれており、基本的になんでもあり。近接格闘技と定義されているが、本人の一存でライフルを使おうが機動砲台を使おうが、宇宙CQCと言い張ることができる。ただし、教科書には「他人の同意が得られるとは限らない」とも書かれている。
クレジット
- 原作
-
逢空 万太
- キャラクター原案
-
狐印