遠くにありて

遠くにありて

中山朝生は、東京への憧れを捨てきれないまま地方の教師となった。そんな彼女が、田舎の生活の中で、自分の人生に対しての意識を変化させていく様を描く。

正式名称
遠くにありて
ふりがな
とおくにありて
作者
ジャンル
教師
レーベル
コミック文庫(青年)(小学館)
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概要・あらすじ

中山朝生は東京の大学を卒業し、地元で教師になった。実家のあるN市に戻らず、一軒家に住む大家さんの家で下宿生活を送ることになる。東京での生活に戻りたいという夢を捨てきれないまま、田舎のおばさんになるのを嫌い、朝生は憂鬱な日々を過ごしていた。そんなある日、朝生は同窓会で再会した西崎拓と、友人の延長のような交際をスタートさせる。

しかし、恋をしている高揚感と、夢がしぼんでいくような敗北感を、交互に感じてしまうのだった。

登場人物・キャラクター

中山 朝生 (なかやま あさみ)

東京の大学を卒業し、地元の美園高校の教師になった22歳の女性。勤務先はN市にある実家から通勤できる距離だが、大家さん宅で下宿生活をスタートさせた。東京でマスコミ関係の職に就く夢を捨てきれず、もう一度東京に戻ることを自分に誓っている。自分の優柔不断さに悩む一方で、真面目な性格から、教師として田舎で暮らす生活にも馴染んでいく。

大家さん (おおやさん)

中山朝生が下宿する家の大家。72歳の老婆で、先妻の子である長兄とヤエ、ミサ、修治の母親。東京に住む長兄以外の子供たちはN市に住んでいるので、今まで一人暮らしをしていた。そのため、朝生との生活を嬉しく思っている。最初は交流をあまり持ちたくないと思っていた朝生も、優しい心遣いを示してくれる大家さんに心を開いていく。 村の者は先祖の名前で呼び合う風習があり、近所の人たちには「タロべのババ」と呼ばれている。

西崎 拓 (にしざき たく)

中山朝生の高校の同級生。酒屋を営んでいる若い男性。高校の同窓会で朝生と再会してから、何となく付き合い始め、何かにつけ朝生を気に掛けている。朝生が東京に執着しているのを快く思っていないが、強引に引き留めようとは考えていない。

中山朝生の母 (なかやまあさみのはは)

中山朝生と中山康治の母親。夫は教師。パート勤務の楽観的な母親で、朝生が近くに戻って来てくれたので、少し安心している。朝生は、母親のことを「平凡でそこそこ幸福な田舎のおばさん」と思っており、自分が彼女のようになることを恐れている。

中山朝生の父 (なかやまあさみのちち)

中山朝生と中山康治の父親。教師生活30年のベテラン教師。自分の仕事に誇りを持ち、「教育は自分の天職だ」と語っている。朝生にとっては、息が詰まる苦手な存在ではあるが、中山朝生の父は、朝生が教師になったことを誰よりも喜んでいる。

中山 康治

中山朝生の弟で高校生。ニキビ面で明るく調子のいい男の子。朝生に先生は似合わないと思っており、つい口に出しては、真面目な中山朝生の父から怒られている。のちに地元の国立大学に合格する。

紀子 (のりこ)

中山朝生の大学時代の友人。学生時代から、一流会社に勤めて早くいい男と結婚し、優雅な専業主婦生活を送ることを夢見ていた。丸の内でOLをしていたが、九州出身の社長の息子と結婚が決まる。しかし、実は不安に押し潰されそうなことを、朝生や香織に打ち明ける。

香織 (かおり)

中山朝生の大学時代の友人。学生時代からマスコミ志望であり、現在は小さい出版社でバリバリ働いている。気が強いしっかり者だが、仕事に疲れた時には、突然王子様が現れて、強引にさらっていってくれないか、と思っている。

村瀬 由貴 (むらせ ゆき)

中山朝生が教師を務める美園高校の生徒。東京の大学に進学したいが、親には地元の短大を進められており、朝生に両親を説得してほしいと懇願する。朝生が、自分もまだ東京に行く夢を捨てられないと打ち明けたので、元気づけられる。のちに朝生と出会えたことが、教師を目指すきっかけになったと、朝生に打ち明ける。

校長 (こうちょう)

中山朝生が教師を務める美園高校の校長先生。中山朝生の父の後輩だが、朝生の父親より年上で大学院卒のエリート。上品で温厚な初老の男性。教師になって3年目の朝生に、担任のクラスを任せることを決める。

北園 里美 (きたその さとみ)

中山朝生が担任を務める美園高校の女子生徒。成績は普通で、目立たない生徒だったが、若い男性と駆け落ちしてしまう。朝生が訪ねて行くが、17歳の真面目で真剣な想いに圧倒され、逆に説得された感じになってしまう。

修ちゃん (しゅうちゃん)

北園里美の駆け落ちの相手。運送屋で働く若い男性。里美の中学の先輩で初恋の相手。高校を中退しているが、真面目に働いており、一人前の社会人としての自信を持っている。中山朝生にも物怖じせず、2人で広い世界に出る道を選んだ、と言い切る男らしい性格。

ヤエ

大家さんの長女。やつれた苦労性の中年女性で、夫がギャンブルで作った借金を、母親である大家さんに建て替えてもらっている。次女のミサとは仲が悪く、夫の悪口を言われて愁嘆場を演じることもある。

ミサ

大家さんの次女。あからさまに大家さんの財産を狙っており、お金の話ばかりする太った中年女性。ヤエと仲が悪く、ヤエに諫められると、ヤエの夫の不甲斐なさをあげつらうなど、意地の悪いところがある。

修治 (しゅうじ)

大家さんの次男。母親に同居を持ちかけるが、本心から心配しているというよりは、年老いた親を1人にしているという、外聞の悪さを気にしている向きがある。母親が血の繋がっていない長兄を気にかけていることを、面白くなく思っている。

長兄 (ちょうけい)

大家さんの夫の前妻の子供。中学を卒業するとすぐ東京へ出て、父親の13回忌に久々に大家さん宅を訪れた初老の男性。実の父親が自分にばかり鬼のように厳しかったため、父親を許せずに家を捨てたことを、法事の席で打ち明ける。

おじいさん

大家さんが一緒にヨモギ摘みをしていた寡黙な老人。小作農の次男坊で、昔大家さんと恋仲であった男性。台湾に渡り、終戦後に帰って来た時には、大家さんは後妻に入っていたため、結ばれることはなかった。

分家のお嫁さん (ぶんけのおよめさん)

東京生まれの元気な若い女性。大家さんが田んぼを貸している分家に嫁に来た。学生時代はブランド物が大好きなキャピキャピギャルだった。今でも田舎に来たことを後悔することはあるが、結婚していなかったらもっと後悔していたと語り、中山朝生を元気づけた。

西崎拓の母 (にしざきたくのはは)

西崎拓の母親。酒屋を夫と息子とで営んでいる。息子が結婚したら店は嫁に任せて、家事全般を自分が引き受け、孫の子守をするという青写真を描いている。メガネをかけたショートカットの温厚な中年女性。

バク

フリーアルバイターの中年男性。中山朝生が住む下宿先の近くに引っ越して来た。ユートピアを求めて放浪しているという、風変りな細身の男性。東京生まれで、江戸時代から続く老舗の一人息子。近所のおばさんに、下着泥棒ではないかと疑われている。

場所

N市 (えぬし)

朝生が生まれ育った街で、県庁所在地。中山朝生が下宿する大家さん宅から電車で30分ほどのところにある。朝生の両親もここに住んでいる。朝生は、中途半端な中央志向で田舎にも都会にもなりきれない、というこの街のスタンスを嫌っている。

書誌情報

遠くにありて 小学館〈コミック文庫(青年)〉

(1999-06-16発行、 978-4091923646)

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