金魚妻

金魚妻

主婦の平賀さくらは、夫の平賀卓弥に浮気され、ないがしろにされる日々を送っていた。ある日、金魚専門店で出会った豊田圭一と一線を越え、さくらは圭一と過ごす時間の中に本当の幸せを見つける。夫との決別を誓い、新たな人生を歩む女性の姿を描いた表題作「金魚妻」のほか、「妻はなぜ一線を越えたのか」をテーマに、夫以外の男性と一線を越える美人妻たちの美しく乱れる姿を描いたオムニバスストーリー。「グランドジャンプPREMIUM」2016年3月号から、「グランドジャンプ」2016年18号から掲載されたほか、「グランドジャンプめちゃ」「グランドジャンプむちゃ」に不定期に掲載の作品。

正式名称
金魚妻
ふりがな
きんぎょづま
作者
ジャンル
不倫
 
ヒューマンドラマ
レーベル
ヤングジャンプコミックス(集英社)
巻数
既刊12巻
関連商品
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あらすじ

金魚妻

ある日の朝、専業主婦の平賀さくらは、夫の平賀卓弥に金魚を飼いたいとねだってみた。卓弥の返答は冷たいものだったが、明確には反対されなかったため、さくらは最近行きつけの近所の金魚専門店「金魚のとよだ」へと向かう。店長の豊田圭一は、いつもさくらを歓迎してくれ、ただ金魚を眺めているだけのさくらにとても優しかった。さくらは、圭一からアドバイスを受け、金魚を迎えるために水槽を購入する。しかし、帰宅した卓弥は玄関に置かれた、思っていた以上に大きな水槽を見て、今すぐに返して来いとさくらに命じる。何を言っても卓弥から返ってくる言葉は、この家が自分の所有物だという主張と、不満なら家から出て行けとの暴言だった。返す言葉もなく家を出たさくらは、水槽を抱えて圭一のもとへと向かう。圭一は、さくらの様子を見て思うところがあり、本当はお客さんは入れないけれどと前置きをしつつ、さくらを店舗ビルの屋上に案内する。たくさんの金魚を飼育するそのスペースに、さくらの水槽を置いて金魚を飼えばいいと提案。圭一の優しさに触れ、さくらは卓弥との夫婦関係について話し始め、卓弥に浮気されていることを打ち明ける。卓弥とは違い、さくらを一人の女性として接してくれる圭一に心を許し、自分から一線を越えたいとせまり、圭一と体を重ねる。そして圭一は、このままさくらが元気になるまでここにいていいと快く受け入れ、二人の生活が始まるのだった。それ以来、さくらは圭一に愛されることで、次第に女性としての艶めきと元気を取り戻していく。しかし、卓弥が自分を探していることを知り、さらに卓弥が金魚に興味を持ったことを知ったさくらは、夫の変化に期待し、一度帰宅することを決める。だが、そこで待っていたのは、黙っていなくなったさくらへの憎悪をむき出しにした卓弥の姿だった。卓弥はさくらに殴る蹴るの暴力を振るい、さくらを自分の支配下に置こうとする。しかしさくらは、夫の振る舞いを、あらかじめ設置していたスマートフォンで動画に収めていた。さくらはこの動画を証拠に、さくらの両親に助けを求め、離婚への大きな一歩を踏み出す。

出前妻

田舎町に嫁いで3年、岡崎杏奈は岡崎家の嫁として義実家に同居しながら、そば屋「岡崎庵」の手伝いをしていた。同居する夫の岡崎あつしじいさんあつしの父、そして出産のため里帰り中の義妹、里美と、特にトラブルもなく平穏な日常を送っていた。しかし杏奈は、あつしの元彼女で美人シングルマザーの祥子が岡崎庵の常連客として頻繁に来店することや、岡崎家のみんなが祥子を必要以上に慕うことにだけは、モヤモヤする思いを抱えていた。そして、「祥子と姉妹になりたかった」という里美の無神経な発言を、まんざらでもなさそうなあつしの態度に杏奈は傷つき、嫁としての居場所を失ってしまう。だが、そんな杏奈にも、出前の常連客の五味田と不倫関係にあるという秘密があった。以前、出前を届けた際、激しい雷雨に降られて雨宿りをさせてもらった杏奈は、五味田から強引にせまられ、体を許してしまったのだ。それ以来、出前に行っては避妊しない無責任なセックスを強要され続けているが、杏奈もそんな五味田との関係に依存しているところがあった。しかし、近々あつしと共に田舎を出て、二人で暮らすことが決まっていたことから、杏奈は五味田との関係を体だけのものだと、ある程度割り切っていた。そんな中、もともと夫と体の相性が悪く、不妊に悩んでいた杏奈は、ストレスフリーな環境で不妊治療をしようという、あつしの提案を受け入れることにした。一方で、あつしは日に日にあからさまになっていく祥子からのアプローチに困惑していた。そんな気持ちのスキを突き、祥子はあつしを抱きしめ、自分に対して気持ちがあるのではないかと揺さぶりをかけていると、出前から戻った杏奈に、そんな場面を見られてしまう。

弁当妻

金融ブローカーの津多は、上司の保ヶ辺太郎から「うちの妻とヤりたくないか?」と突拍子のない提案を受ける。太郎は、そろそろ子供が欲しいと考え始めていたものの、結婚8年目になる妻の保ヶ辺朔子との夫婦生活はマンネリ化しており、セックスレス状態となっていた。そんな中、家族同伴社員旅行に参加した朔子が津多となかよくする様子を見た太郎は、自分が興奮していることに気づき、その日、妻と半年ぶりのセックスを成功させる。これをきっかけに、太郎は承諾を得た上で、朔子と津多に目の前で関係を持たせ、自分が興奮を得ることで、朔子との夫婦生活を充実させようと思い立ち、津多に提案したのである。津多は困惑しながらも、招かれるまま保ヶ辺家を訪れる。当初はあまりにも無茶な提案に腹を立てる朔子だったが、太郎の前で津多の手を握らされたり、キスをさせられたりと、徐々にステップアップさせていく。そして、朔子は夫を交えて津多と会った日の翌日は、必ず夫と津多の弁当を作って夫に持たせるようになり、津多もその弁当を楽しみにするようになる。そんなある日、津多が会社を休んだことを知った朔子が、お弁当を持参して津多の自宅を訪れる。突然のことに驚きながらも、津多は朔子を招き入れ、二人だけの時間を過ごす。互いの現状について話し始めた二人だったが、津多は朔子の「これ以上いっしょにいたら好きになっちゃう」という一言をきっかけに、堰(せき)を切ったように欲望が止められなくなり、二人は初めて太郎のいない場所で一線を越える。

見舞い妻

23歳のギャルママの河北真冬は、友人宅での飲み会の帰り道に車を運転していた際、小学2年生の息子、河北たかひろの担任、平野をはねてしまう。バイクから投げ出され、田んぼにずっぽりハマる形となった平野は、左腕と左足を骨折し、入院することとなる。真冬は、自分が飲酒運転していたことを重く受け止めつつも、なんとか警察沙汰にだけはしないで欲しいと平野に懇願し、自分の胸を露出してお色気作戦で解決しようとする。しかし平野は、突然見せられた胸にも動じることなく冷静に対応。飲酒運転での事故という思いがけない事態に悩むが、担任する生徒の保護者でもあることから、自分がバイクで転んだ際に真冬から助けてもらったという体にして、事故自体をなかったことにする。真冬は謝罪代わりの現金も受け取ろうとしない平野に、罪悪感でいっぱいになるが、平野からは思いもよらない要求を受ける。それは、もう一度胸を見せて欲しいという意外なものだった。平野からの予想もしていなかった言葉に困惑しながらも、それに応じた真冬は平野の上に乗り、触らせてと次第にエスカレートする彼からの要求にも素直に応じていく。そして二人は、心の中はさまざまな葛藤でぐちゃぐちゃの状態ながら、結局病室のベッドで一線を越えてしまう。その後も真冬は連日病室に通い詰め、来る日も来る日も骨折で身動きの取れない平野と病室で逢瀬(おうせ)を重ねる。

頭痛妻

タワーマンションの最上階に住むセレブ妻の田口慈子は、川辺の小屋で暮らすタクゾーと知り合った。いつも臆病なはずの愛犬が、タクゾーにはすぐになついたこともあり、慈子はタクゾーにふつうのホームレスとは違う何かを感じていた。その後、慈子は頭痛に襲われた際に休ませてもらったことをきっかけに、タクゾーの小屋に出入りするようになる。そんなある日、タクゾーに体を求められた慈子は、自分にむしゃぶりつくタクゾーに愛おしささえ感じるようになり、体を許してしまう。慈子の夫は社長を務めており、忙しさのあまり半年間も顔を見ていなかった。慈子は愛しい息子の春斗がいながら、タクゾーのもとへと通う二重生活に罪悪感を感じながらも、不倫をやめることができないでいた。しかし、これには信じられない事実があった。実はタクゾーは慈子の夫であり、春斗の父親だった。慈子は以前事故に遭ったことがきっかけで高次脳機能障害を起こしており、夫の顔だけを忘れていたのである。半年前、慈子は見知らぬ男が家にいると大騒ぎし、タクゾーを家から追い出したことがあった。それ以来、タワーマンションにほど近い川辺の小屋で、ホームレス同様の暮らしを続けながら、タクゾーは静かに慈子を見守っていた。その後、外で他人として会う妻に魅力を感じるようになり、罪悪感を感じながらも二人は夫婦の時よりもかけがえのない関係を築いていく。一方春斗は、学校や塾へ通う合間に父親のタクゾーのもとへと通いながら、日々の出来事を報告し、慈子の記憶が戻るのを待っていた。しかし、タクゾーは思いのほか今の生活が気に入った様子で、今後の生活に明るい展望を抱いていた。

芳香妻

会社の飲み会の帰り道、軒端薫はひょんなことから同じ会社に勤めるを家まで送ることになった。融の部屋は、光熱費滞納の影響で電気もつかず、真冬で雪も降る中で暖房も使えない状態だった。しかし融から懇願された香は、しばらく部屋に滞在することにした。ノートパソコンを明かり代わりに、薄暗い部屋で暖かい飲み物で暖を取りながら、二人はお互いのことについて話を始める。薫は見た目は若いが、結婚して子供もいる45歳。一方の融は将来有望な若者で、その年齢差は21歳で親子くらいの違いがあった。融は幼い頃に母親が浮気して出て行ったため、母親に優しくされることを知らない。だが、幼なじみである伊紀の母親、空夏が優しかったため、寂しさを感じることもなく、空夏には今も恩を感じていた。その気持ちは年齢と共に変化し、融はいつしか空夏に恋心を抱き、一方的に関係をせまるようになった。それでも空夏は、息子の友達である融を受け入れることはなかった。しかし空夏に乳がんが発覚し、これまでなんとなくごまかし続けてきた関係を清算するため、空夏は融を全力で突き放す。融は空夏から本気で拒絶されたことに落ち込むが、実はひそかに計画していることがあった。それは、空夏の体臭を再現したアロマを作ること。空夏は香水も使っていないのに花のようないい香りがしていた。融は趣味のアロマでその香りを再現し、空夏がいなくてもその香りを感じたいという一心で試行錯誤するが、思うようにはいかないでいた。ある時、薫の体臭が空夏と似ていることに気づいた融は、薫が家に来たこのチャンスを逃すまいと、薫に匂いを嗅がせて欲しいと頼み込む。薫はしぶしぶ承諾するものの、もっと近くで嗅ぎたいと融の要求は次第にエスカレートし、二人はとうとう一線を越えてしまう。

園芸妻

宮園花純は、夫の宮園一久と娘の宮園紀里と、義弟の宮園史久の四人で暮らしていた。もともとホームセンターの園芸コーナーで働いていた花純は、好青年のふりをして近づいてきた一久に騙(だま)され、薬を盛られて妊娠させられ、どうにもならない状態に追い詰められ結婚させられる。それでも宮園家で生活を送っているのは、史久の優しさと、今は亡き義母がよくしてくれたからだった。一久には背中一面に刺青(いれずみ)があり、目的のためなら手段を選ばない非道な男だったのだ。基本的には不在がちだったが、時おり自宅に帰って来ては花純を全裸にして楽しみ、自分の目の前で史久に花純を抱かせてはその反応を楽しんでいた。実は一久の性器は切り落とされており、自分ではできない状態になっていたのだ。史久が一久の機嫌を損ねれば、その矛先は花純に向かい、花純への怒りは紀里へと向かうことになる。そのため二人は日常的に、一久の言いなりにならざるを得ない状態だった。史久は、一久への恨みと共に花純への思いを募らせる。一方の花純は、死ぬ間際に義母から打ち明けられた秘密に思いを巡らせる。義母は以前、当時まだ幼かった一久に暴力を振るい、大ケガを負わせた夫のことが許せずに殺害を計画。自分にできる殺害方法を模索し続けた末に、自宅の庭の白い花、エンジェルトランペットを炒(いた)め物にして夫に食べさせ、死に至らしめることに成功したことを花純に明かしていた。そして、夫の死体はトイレの裏の土の中に埋めてあるが、その後、誰かが夫を探しに来ることは一度もなかったという。それを知った花純は、同じ方法で一久殺害を決行し、史久と共に一久の死体を庭に埋めることに成功する。

風水妻

風水に興味を持つ河和田ふみは、風水アドバイザーの資格取得講座に参加した際、夫が漫画家だという女性、山口と出会う。その伝手(つて)で、漫画家のめぐみがアシスタントを求めていることを知ったふみは、自分でもできるならとアシスタント業務を買って出ることにした。ふみは、めぐみが交際中の彼女の心無い一言に傷つく姿を目の当たりにし、自分自身に起きたことと重ね合わせていた。実はふみには事故に遭って目を覚まさない夫がいたのだ。夫とは、アルバイト先で知り合い、昔はお金がなくても二人でいるだけで幸せを感じていた。その後、夫が外資証券マンになったことで収入が上がり、自分のために都心の高級マンションを買ってくれたものの、学歴も教養もないふみはセレブな住人に馴染(なじ)めず、心はどんどん夫から離れていた。その原因のすべてを夫が変わったことにあると決めつけ、昔の方がよかったと夫に暴言を吐いてしまう。しかしその後、夫が交通事故に遭って意識不明の状態となり、当時、車に同乗していた女性がいたことから、浮気相手の存在が明らかになる。ふみは夫に暴言を吐いた真っ黒な自分と、浮気をして自分を裏切っていた夫とのあいだで板挟みになった。そんなふみにとって、今の状況を変えたいという思いが、風水を本格的に学び始めるきっかけになったのである。ふみは、愛する彼女からの一言にやさぐれ、自暴自棄になりそうになるめぐみを自分と重ねて優しく慰める。そして、優しくされたことでふみに心を許しためぐみは、ふみにせまり、二人は一線を越えてしまう。

登山妻

高尾美峰は、ママ友の三峰友里の夫である三峰幹隆と二人で山に登っていた。美峰は友里からセックスレスについて悩んでいることを聞く。もともと自分と夫の高尾修司もセックスレスだったことから、夫婦交換に興味を持っていた美峰は、まずは自分たち夫婦と友里を交えた3Pセックスを提案する。当初は戸惑っていた友里も、次第に体を許し、修司に抱かれるようになる。その様子を目にした美峰は、動揺する自分を再認識して、まだ自分の心が修司にあることを改めて自覚する。しかしある時、美峰は友里が体だけでなく、心まで修司に向け始めたことに気づく。そこで美峰は、自宅で行為に及ぶ幹隆と友里を置いて、単独行動に出る。美峰は、友里と修司がいなくなったとウソをつき、二人がいるかもしれないからと幹隆を山へと誘い出したのである。ももともと美峰と幹隆は登山が趣味ということもあり、万全な装備のうえで、二人は夫婦間の問題について話しながら登山を開始する。そんな中、幹隆は、夫婦交換というモラルに反した考えを持つ美峰に強い反感を覚えるが、パートナーへの思いを語りつつ互いの胸の内を明かすうちに、次第に二人は距離を縮めていく。実は幹隆は、そもそも美峰がウソをついていることに気づいていたが、それがわかっていて登山に同行していたのだ。当初は美峰から夫婦の問題について口を出されることに嫌悪感を抱き、ケンカ腰に接していたところがあったが、美峰への態度はやがて軟化していく。美峰の告白をきっかけに、二人はやぶの中で一線を越える。そしてそれ以来、美峰と修司、友里と幹隆は四人で一組の夫婦となる。その後、互いの子供も巻き込んでパートナーを入れ替えながら、不自然だが新しい家族の形を維持していく。

又鬼妻

デリヘル嬢の宍戸もみじは、の家を訪れていた。実はもみじは既婚者で、病的に嫉妬深い夫から強い束縛を受けており、実母に相談しても、妻は夫に従うものという古い価値観を持つ母親から賛同を得られず、日々思い悩んでいた。もみじはそんな偏った考えを持つ夫と母親から逃れるため失踪し、デリヘル店で働くようになる。しかし最近、店の場所が夫と母親にばれてしまい、店を辞めざるを得なくなってしまったのだ。一方の仁は、マタギとして山で動物を狩ることを生業にしているが、最近になって医者から余命1年を宣告されていた。余生は自分の好きに生きたいと考えた仁は、同居する息子のになんの承諾もなくデリヘル嬢を呼び、そこで知り合ったもみじを弟子にすることを決める。仁の事情を知った賢は、マタギとして仁と共にもみじの指導にあたる。そんな中、「医者の世話にはならない」が口癖の頑固者の仁が、もみじに諭されて薬をきちんと飲んでいることを知った賢は、素直にもみじに頭を下げ、感謝の気持ちを伝える。それがきっかけとなり、もみじから賢にせまって一線を越えるが、行為の最中、賢の脳裏には以前自らが銃で撃ち殺した、「山の神」と呼ばれるツキノワグマのことを思い出していた。

伴走妻

社会人マラソンサークルの代表、真田颯太は、もともと走ることが嫌いだった。2年前、当時フルマラソンを3時間以内で走破する実力派の市民ランナーだった妻の真田早矢が、会社を代表して東京マラソンに出場することが決まる。そこで同じ会社に勤めていた颯太は、周囲に出場を勧められるが、それを全力で拒絶するものの、早矢に半ば強引にエントリーされ、出場が決まってしまう。早矢が練習は面倒を見ると言ったにもかかわらず、自分本位なトレーニングばかりの彼女に、自分と同じ苦痛を味わわせてやりたいと思うようになり、颯太は早矢に高圧的な態度を取るようになる。さらに、もし自分が走り切れなかった場合は、責任を取って早矢にマラソンをやめてもらうと発言。それから半年間、颯太は早矢に負けたくない一心でトレーニングを続けるうちに、いつしかマラソンに魅了され、走ることを楽しむようになっていた。しかし対照的に、早矢は颯太から抑圧され続け、次第にマラソンへの意欲を失っていく。本番当日、予想を覆して颯太が早矢を上回る成績でゴールする。この結果にショックを受けた早矢は会社を退職し、マラソンもやめてしまう。そんな早矢に颯太は苛立(いらだ)ちをぶつけ続け、早矢は颯太に反感を抱きつつも言い返すこともできず、いつしかそのはけ口を酒に求めるようになってしまう。一方、東京マラソンで結果を出した颯太の周りには、未経験から短期間で結果を出したことに興味を持った初心者ランナーが集まるようになる。そして颯太は、社会人マラソンサークルを立ち上げ、市民ランナーの指導にあたることになった。颯太は市民ランナーに指導する中で、坂木和香和香の夫が自分たちと同様に、酒とマラソンがからんだ夫婦間の問題と向き合っていることを知る。そして颯太は、すべてを乗り越えようとしている和香の姿を目にしたことで、改めてこれまで自分が早矢にした酷(ひど)い仕打ちを省みていた。そして、はやる気持ちを抑えきれず、自宅の早矢にメッセージを送る。

改装妻

自宅のリフォーム中、箱崎ゆり葉は作業する大工たちのために、飲み物やおやつを用意することが楽しくなっていた。実はこのリフォームは、義母の両子との同居に向けたものだった。義父の死をきっかけに、両子との同居が決まったが、その話し合いの席にゆり葉は呼ばれていなかった。ゆり葉の夫は、父親の葬儀の席で一人身となった両子の今後について妹二人と話し合いを持ったが、両子に恨みを抱いている妹二人は、両子との同居を拒絶し、長男にすべてを丸投げにしてしまう。ゆり葉は勝手に決められた同居話に不満を募らせていたが、両子はそんなゆり葉に、昔はおとなしく自分に従うかわいい妻だったのにと暴言を吐き、その後は基本的に両子主導でのリフォーム計画が進められていた。一方のゆり葉には、目立つ場所に異所性蒙古斑による消えない痣(あざ)があった。特に顔の額の左側にある痣にはコンプレックスを抱いているが、技術が進歩して化粧で自然に隠すことができていた。ある日、ゆり葉は出入りする大工たちの中に、自分と同じ場所に痣がある男性を見つけ、嬉々として声をかける。百樹は、角材にぶつけてできただけの痣に、メイクを落としてまで自分の痣を見せてきたゆり葉に驚きつつ、これをきっかけに百樹はゆり葉に興味を持つようになる。実は百樹の背中には大きなフクロウの刺青があった。百樹は一生消えないことを覚悟で、職人の神様とされるフクロウを背中に彫っていたが、今は邪魔だとさえ思うようになっていた。それは、百樹の妻から、刺青を入れているせいで、まだ小さい息子といっしょにプールにも温泉施設にも行くことができず、息子がかわいそうだと責められ続けていたことが理由だった。刺青のために夫婦仲が冷え切り、妻との生活を苦痛に感じていた百樹は、ある日外出先でゆり葉と出会い、彼女の痣がメイクできれいに隠されていたことを思い出し、百樹はゆり葉に背中の刺青を隠して欲しいと依頼。ホテルに部屋を取って処置を施し、百樹の背中の刺青は一時的ではあるが、キレイに隠される。そして百樹はゆり葉に、自分の刺青への思いと家族関係に苦しむ心の内を明かす。その後、自分たちの顔に残された痣で仲間意識を持った二人は、ホテルのベッドで一線を越えることとなる。

駝鳥妻

ある日、大須日和子の豪邸に14歳のねおん、10歳のじゅのん、7歳のれもん、5歳のころん、1歳のまのんの五人の子供たちがやって来た。なにがなんだかわからない中、子供たちは日和子からの話に耳を傾ける。事の起こりは昨日の夜、日和子が夫の大須とレストランで食事をしていると、突然見知らぬ女性、鷺ノ宮凛音が姿を現す。すると凛音は、自分が大須との子供を妊娠したと告げ、その場に倒れ込んでしまう。大須は身に覚えがなかったが、ひとまず日和子にあとを任せ、凛音を病院へと搬送した。一方の日和子は、残された荷物から彼女の自宅が茨城県にあることを確認し、車を走らせる。その住所にはボロボロの一軒家が建っており、五人の子供たちが取り残されていた。お母さんが入院したら子供たちのご飯の用意も大変だろうという、ただそれだけの理由で、とりあえず五人は日和子の自宅に連れて来られたのだ。子供たちは、口々に今の家の悲惨な状況について語るが、身なりがボロボロのねおんをはじめ、特に女の子がかわいがられていないことは明らかで、日和子はこの子供たちを自分が引き取ると突拍子もないことを言い出す。実は、日和子には子宮と女性器がなく、大須がデザインした女性器が取り付けられているが、子供を産むことはできない体だった。そんな日和子にとって五人の子供たちは魅力的な宝物のような存在だった。籠井の調査の結果、凛音の妊娠に大須はまったく関係がないことが証明されたことで、日和子は凛音の目的が金であると判断。入院中の凛音のもとを訪れ、自分の所持する高級ブランド品5000万円分を凛音に渡し、金に換えて自由に使っていいと伝える。その代わりに日和子が凛音に要求したのは、五人の子供たちだった。突然すぎる提案に驚き、とっさに拒絶する凛音だったが、5000万円という大金に心が揺らぎ、日和子に子供たちを託すことを決意する。

美容妻

佐伯容子は、実年齢37歳にして肌年齢は18歳の未亡人。夫の佐伯雅之を亡くしてからというものの、容子の姿は格段に美しくなっていた。そんなある日、容子は久しぶりに高校時代の友人の響子から連絡を受け、彼女の自宅を訪れる。容子の美しさに驚いた響子は、見合い結婚で得た玉の輿(こし)生活を満喫していると思い込み、容子に15万円の高級美顔器を半ば強引に売りつける。そして、美しい容子がこの美顔器を売ればきっと売れるはずだと、容子をしつこく販売の仕事に勧誘する。響子の息子の飛矢は、そんな容子の様子を心配げに見つめながら、購入させられた美顔器一式を自宅まで持って行くことを口実に、容子を家まで送ることとなる。飛矢が容子の住まいに行くと、そこは築30年の団地だった。その部屋の中で、ひっそりと置かれていた雅之の遺影を見た飛矢は、そこで初めて容子の夫が亡くなったことを知る。そんな状況の中、欲しくもない美顔器を売りつけるわけにはいかないと、飛矢はその美顔器を自宅に持ち帰ることにして、返金処理をすることを容子に伝えて家を出ようとした。すると、そこに突然やって来た雅之の同僚、野岸由季央と鉢合わせすることになる。由季央と容子の関係を訝(いぶか)しんだ飛矢は、由季央に嫌味を言ってその場を去る。その後、容子は由季央とのセックスを楽しみながら、由季央が自分に向ける視線や言葉に酔いしれる。実は容子は、雅之が亡くなったあとに歯列矯正や全身脱毛、シミ取りレーザーや豊胸、各種美容注射など、ありとあらゆる美容法で夫の遺産を使って、若さと美しさを手に入れていたのだ。それが偽りのものであることを悟られないように注意に注意を重ね、生活を送っていた。そうとは知らない飛矢は、後日再び容子のもとを訪れると、由季央との関係を尋ねる。恋人ではないと言い張る容子に、それならばとストレートにアプローチを開始する。拒絶する容子だったが、結局飛矢にほだされ、なし崩し的に関係を持ってしまう。そして、ふと鏡に映った自分の美しい姿に、ほくそ笑むのだった。

蜜蜂妻

小林美津は嫁ぎ先の農家で、五人の子供たちを育てながら養蜂の手伝いをして暮らしている。夫の八郎前妻は、都会から嫁いできたことで田舎暮らしが肌に合わず、鬱になって自殺してしまう。そのため、田舎では都会から移住して来た嫁は、それ以来上京することを許されるようになっていた。その特権を利用して美津は毎月1回、一人で東京に遊びに行き、自由な時間を過ごすことでリフレッシュしていた。美容室にエステサロン、ショッピングを楽しみ、上京する前に家族の欲しいおみやげを聞くことも恒例となっていた。実は五人の子供たちのうち、長女の向日葵だけは八郎の子ではなかった。向日葵の父親の赤石譲也は、美津が大学時代に知り合い、一度だけ関係を持った男性だった。しかし、赤石が大学をやめたことで、美津が妊娠したことすら知らないまま、二人は疎遠になってしまう。当時美津は、アルバイトをしていた今の嫁ぎ先である農家のおばあちゃんたちから、すべてを理解した上で、妻を亡くした八郎のもとに嫁に来ることを勧められ、悩んだ末に身重で田舎に嫁ぐことを決めた。それから10数年、上京するたびにひそかに赤石の行方を探し続け、とうとうSNSで赤石を発見して連絡を取ることに成功し、二人は18年越しの再会を果たす。当時、貧乏生活でバイオリンを続けられなくなり、泣く泣く大学を去った赤石は、現在投資家として成功を収め、まさかの億り人となっていた。美津からの話で、初めて自分に血を分けた娘がいることを知った赤石は、向日葵がバイオリニストを目指していることを知り、父親としてできることはしてやりたいと、資金援助を申し出る。しかしそれを知った八郎は、激昂してまったく認めようとしない。さらに、美津が自分に内緒で赤石と連絡を取っていたことに激怒し、二人の関係を疑い始める。そして、大事に育てた娘を荒波に放り込むようなことはできないと、音楽の道に進もうとする向日葵を突き放してしまう。

団地妻

東京から離れた郊外にある団地「スターハウス星見台」は、家賃4万円のペット可住宅だった。敷地内には商店街もあり、ノスタルジーな雰囲気を醸し出している。伊藤こずえは、夫の伊藤誡の体調の関係で、この団地に引っ越して来ていた。心身の不調を訴える夫を心配し、引っ越しに一定の理解を示しつつも、こずえは内心東京への未練を捨てきれずにいた。そんな中、誡は団地の商店街に足を運び、見つけたラーメン屋に入ると、同じく団地の住人だというメキシコ人女性の井上ミカエラと知り合う。ラーメン店から出て団地内で開催されていたイースターのお祭りに参加した誡は、ミカエラの母国語であるスペイン語を使って会話するようになる。それをきっかけに距離が縮まっていき、開放的な雰囲気の中、二人はあたりまえのように躊躇(ちゅうちょ)なく一線を越える。一方、こずえはガスの開栓のため、自宅に訪れた井上と知り合う。すると井上は快適に過ごすため、こずえに自力での室内リフォームを勧め、団地特有の生活ルールについて語り出す。そして、こずえを同じ団地内の自室に呼び、井上は自分に戸籍上の妻、ミカエラとは別に内縁の妻、夕見子がおり、それぞれに子供がいることを明かす。それが当たり前のことでもあるかのように、なんの違和感もなく話す井上は、この団地内は外と違うルールがあることを暗に示し、こずえの興味を惹(ひ)くこととなる。そして、こずえと誡、井上とミカエラは、互いに夫婦という形を保ちながら、新たな関係を築いていく。

着物妻

有名作曲家の妻、森川紗綾は、夫に愛人がいることを知りながら、離婚を考えることはまったくなかった。それは、いつか訪れる夫の葬儀の場で、妻として黒紋付を着るという目的があったから。紗綾は、若い頃から着物に強い執着があり、着物を着るためにはお金を稼げる人と結婚しなければならないと考え、夫との結婚に至った。そのため夫への愛情はなく、あるのは妻として着用することが許された特別な日の着物への羨望だけ。今日は娘たちの七五三に着るため、新しく誂(あつら)えた黒留袖を試着する日だった。紗綾の希望どおり、呉服屋の拾雄は兄の捨雄が描いた絵をもとに作った黒留袖を複雑な面持ちで紗綾に差し出す。実は捨雄と拾雄、紗綾は若い頃からの付き合いがあった。紗綾は捨雄と一線を越えた関係で、特に捨雄の描く不思議な絵に強い魅力を感じていた。しかし、呉服屋の職人となった捨雄が兄弟子を殺害する凶行に及んだため、捨雄は服役することとなる。それをきっかけに、紗綾は先祖代々の土地を離れざるを得なくなった捨雄たちの屋敷を買い取り、移り住む。そして、拾雄の呉服屋で高級な着物を誂えることで、拾雄の一助となる。そんな紗綾に深い感謝の念を抱くと共に、拾雄は捨雄の絵をもとに作った黒留袖について思うところがあった。娘たちの晴れの日に、こんな縁起の悪いものを着ることが、拾雄にはどうしても許せなかったのだ。礼装の真の意味について、拾雄から強く訴えかけられた紗綾は、涙ながらに語る拾雄の熱意に負け、黒留袖を晴れの日に着ることをあきらめる。残念に思いながらも勢い任せに帯をほどき、黒留袖を脱いだところで、紗綾は自分があられもない姿になってしまったことに気づく。一方、そんな紗綾の姿に欲情した拾雄は、紗綾にせまり、拒絶する紗綾を強引に押し倒して、二人は一線を越えてしまう。

VR妻

ルーリーはインドの神様のような青い肌、ラプンツェルのような長い髪、叶姉妹のような豊満なボディ、ティンカーベルのような長い耳と服を身につけている美女。彼女が現在生きているのは、VRゲーム「クラフトワールドファンタジー」の中だった。ルーリーはゲーム内で知り合ったパートナーのかもゐと共に、シエロ島で自由を謳歌(おうか)していた。実はルーリーは現実世界では、「青木瑠璃子」という名前のおばあちゃん。次第に運動機能が失われていく病気に冒され、35年のあいだ病と戦い続けている。体が思うように動かなくなった頃、当時高校生だった娘の敬子に介護を押し付けたことで、一時は親子関係も破たんしかけるが、敬子はメキシコで孫を産んだあとに瑠璃子が入院している病院に久しぶりに顔を出す。今でも瑠璃子は寝たきりの状態で、二人の息子、偉生哲生の介護で生きながらえていた。偉生からプレゼントされたVRゴーグルによって、寝たきりでもVRゲームの中では自由を謳歌しており、家族との意思疎通も最低限図れる状態が維持されていた。この日、偉生や敬子、哲生が集ったことには理由があり、いよいよ瑠璃子の状態に限界が近づいていたのだ。すでに瑠璃子は、眼球を動かすことすら困難で、今後延命治療を続けるかどうか家族の判断が必要となっていた。瑠璃子自身が延命治療を希望していないことはわかっていたが、それが子供の負担を思ってのウソなのか本心なのか、偉生たちは判断しかねていたのだ。それぞれがさまざまな思いにとらわれ、決断できずにいる中、VRゲーム内で自分の体の状態を察した瑠璃子は、粛々と身辺整理を始めていた。実はかもゐは、全身やけどで瑠璃子と同じ病棟に入院中の「加茂井新一」で、ルーリーが自分の二つとなりの部屋に入院中のおばあちゃんであることを、その時初めて知ることになる。そして、彼女に死が近づいていることを打ち明けられ、動揺して涙を流す。二人は、ゲーム内で恋人同士のような関係を築いており、ルーリーは彼を信頼しているからこそ、現実世界での家族への伝言をかもゐに託すことを決める。

投資妻

ある日、霊能者の集光英正道と正道の妻の美琴は、夫婦の心中があったという事故物件のお清めに訪れる。出迎えたのは控えめな美人妻の武井かずみだった。かずみは部屋に入るなりかずみの夫の職業と、この部屋で壮絶な事件が起きたことを言い当てた正道に驚きながらも、その能力を目の当たりにして興奮していた。美琴は、おもむろに不動明王像をかずみに渡すと、祭壇に向かい対話を始める。霊魂を鎮めるため、美琴が語り始めたのは、まず自分たちの自己紹介。正道と美琴の出会いから始まり、共に惹かれ合って、出会ったその日のうちに一線を越えたこと。そして、神社の娘として生まれた美琴と仏教僧である正道がいっしょになることへの弊害、そして駆け落ちしたことなどを、事細かに語る。そんな美琴の話にかずみはテンションをあげていく。正道が美琴と共に互いを理解し合いながら生きていることを知ると、かずみはそんな二人の関係を羨み、自分と夫との関係を振り返り始める。かずみの夫は、不動産会社で営業を務めていたが、ある日突然会社を辞め、投資で食っていくと宣言。その後、夫が詐欺まがいのマンション売買に加担していたこと、そして詐欺被害に遭った女性の看護師から恨みを買い、実名をさらした動画を配信されていることを知る。その動画内で看護師は自殺したが、動画は拡散され続けており、かずみはその現状に震えが止まらない。夫は投資に増々のめり込むもうまくいかず、その原因をすべてかずみにあるかのように強く当たっていた。かずみは、終始高圧的に振る舞う夫の言いなりになっていたが、何ごともうまくやれないかずみに苛立った夫は、妻に存在価値を見出すことができなくなり、かずみが加入していた生命保険に目を付ける。しかし、それを知ったかずみの心は限界を達し、ついにナイフで夫を手にかける。

双六妻

夫と夫婦げんかをしたことを理由に六反田寧々は、家出と称して兄の六反田和人のもとを訪れた。和人は離婚してから、アパートの庭付きの部屋で一人暮らしをしていた。寧々の心配をよそに窓から見えたのは、きちんと手入れされた家庭菜園で、庭にはロードバイクや睡蓮(すいれん)鉢が置かれ、部屋には本がたくさん並び、独身生活を満喫している様子だった。突然現れた寧々を和人は面倒くさそうに扱い、追い返そうとするも、結局寧々は居座ることになる。その夜、和人が大学時代の友達の荒田馬場とリモートでゲームをして遊んでいると、邪魔はしないと約束していた寧々が乱入し、結局四人で会話しながら遊ぶこととなる。それぞれがさまざまな問題を抱えていたため、互いの家庭の事情を話しながら、夫婦関係にも話が及び、会話は次第にヒートアップしていく。感情はゲームのプレイにも大きく影響し、ゲームは大いに盛り上がる。その後、和人のもとに元妻から電話がかかってきたことをきっかけに、寧々の甘えん坊気質が発動し、二人は幼い頃の思い出話を始める。実は寧々と和人は、幼い頃母親に捨てられ、寂しい思いをした経験があったのだ。また、よく退屈しのぎに行っていたすごろくで、二人は罰ゲームとしての触り合いっこが次第にエスカレートしていく。それを偶然目にした父親からは、兄妹で乳繰り合うと地獄に落ちると咎(とが)められる。その後、新しい母親との暮らしが始まるも、弟が生まれたことで、結局寂しさを埋めることはできなかった。和人は年を重ねるごとに寂しさへの対処法を学んでいるが、寧々は現在に至ってもなお寂しさに耐える術を知らなかった。寧々にとって、ある意味仲間同士の和人への甘えは性的興奮へと変わり、寧々はそれでもなお拒絶する和人を懐柔。二人は兄妹でありながら、一線を越えてしまう。

メディアミックス

ネット配信ドラマ

2022年、本作『金魚妻』のネット配信ドラマ『金魚妻』が、Netflixで配信。キャストは、平賀さくらを篠原涼子が演じるほか、岩田剛典、安藤政信、長谷川京子が出演する。

登場人物・キャラクター

平賀 さくら (ひらが さくら)

エピソード「金魚妻」に登場する、平賀卓弥の妻。卓弥とは知り合ってすぐに結婚した。年齢は24歳。新婚当初から共働きであるにもかかわらず、家事は丸投げされている。スーパーでレジのパートとして働いていたが、家事と仕事を両立させようと必死になって働いていたら過労で生理が来なくなったため、夫の意向もあり、泣く泣く専業主婦になった。そのうち浮気に走り始めた卓弥からは、威圧的に冷たくあしらわれるようになり、まともに相手にされなくなっていく。家の近所にある金魚の専門店「金魚のとよだ」に通いつめる中で、店長の豊田圭一と顔見知りになり、金魚に興味を持つようになった。卓弥に許可を得たのち、自宅玄関に水槽を置いて金魚を飼おうとするも、実際の水槽を目にした卓弥から強く反対され、結局購入した金魚店に水槽を返すこととなる。それがきっかけで圭一と体の関係を持つようになり、圭一の優しさに甘え、アルバイトとして金魚店の手伝いをしながら圭一と生活を共にするようになる。その後、卓弥が自分を探していることを知り、一度は卓弥のもとに戻ろうとするが、殴る蹴るの暴行を受けたため、離婚を決意。暴力行為をスマートフォンで撮影して映像証拠として残し、さくらの両親を介して正式に卓弥との離婚が成立する。その後、圭一との関係を深め、ほどなくして圭一の子を妊娠。これをきっかけに再婚し、名前も「豊田さくら」となり、名実共に夫婦となった。のちに男児を出産し、夫婦二人の名前をもとに「桜圭」と名づけた。一見弱々しく見えるが、意外と逞(たくま)しいところがあり、卓弥との離婚に向けて夫名義の口座から自分名義の口座にお金を移すなど、実は1年前から粛々と進めていた。幼い頃から病弱だった兄の琉に対し、病気一つしない健康体で、まったくかまわれずに育ったため、いまだに優しくされると、すぐに舞い上がってしまうところがある。

岡崎 杏奈 (おかざき あんな)

エピソード「出前妻」に登場する、岡崎あつしの妻。年齢は29歳。神奈川から田舎町に嫁ぎ、岡崎家の家族と共にそば屋「岡崎庵」を切り盛りしており、主に出前を担当している。岡崎庵が地元密着型で、家族経営の悪いところが目立ち始めていることに気づいているが、嫁としての立場上、自分が経営方針に口を出すわけにもいかず、黙って従っている。あつしとは体の相性が悪く、自分の体が夫の精子を異物として認識しているため、子供はいない。現在、あつしの実家で同居中だが、あつしの父や妹の里美までもが、岡崎庵に頻繁に訪れるあつしの元彼女、祥子と仲がよく、嫁として何となく居心地の悪い状態が続いている。それを察したあつしの提案で、近々実家を出て二人で新生活を始め、ストレスのない状態で不妊治療に勤しむ予定となっている。実は、そば屋の常連客の五味田とは、出前に行ったことがきっかけで一線を越え、不倫関係にある。それは岡崎家のみんなが自分よりも祥子を求めている状態に心を痛め、心の拠(よ)り所を求めてのことだった。しかし里美の話から、祥子への対応が過剰気味なのは、常連客としての接客サービスだけであることを知り、自分が嫁として大切にされていたことを改めて実感することになる。だがその直後、そば屋に訪れた祥太から、あつしの前で「五味田コーチの彼女」と指をさされたことが原因で、五味田との不倫関係があつしに知られることになった。その後、里美の出産に乗じ、あつしに衣服のすべてを取り上げられ、裸でホテルに監禁されることになる。あつしとは、若い頃に日本での人間関係に疲れ、逃げるように行った海外で知り合った。その際、交際中だった外国人男性ともトラブルになり、偶然通りかかったあつしに助けを求めたのが交際のきっかけだった。その外国人男性からも、過剰な束縛を受け、裸にされて山中の車の中に監禁されたことがあった。もう旅行はこりごりという気持ちを持ちながらも、そこから逃げ出した時には安堵(あんど)と共に名残惜しさも感じており、どこかで冒険を欲している自分の複雑な胸中に気づき、困惑している。

津多 (つた)

エピソード「弁当妻」に登場する、金融ブローカーの男性。同じ会社に勤めている保ヶ辺太郎は上司にあたる。5年間付き合っていた彼女を友達に取られた過去があり、心の傷は今でも癒えていない。それ以来彼女はいなく、現在も独身。ある日、太郎から突然妻の保ヶ辺朔子とやりたくないか、と突拍子もない提案を受け、家に招かれることになった。太郎にうながされて朔子の手を握らされたり、キスさせられたりと、関係を深めていくが、真の目的は太郎の性的興奮を引き出すことにあるため、太郎が高揚すると強引に帰らされてしまう。しかし、朔子と会った翌日には必ず弁当を作ってくれるため、もともと昼ご飯はコンビニで済ませていたこともあり、朔子の弁当が楽しみの一つとなっている。ある時、SNSで元彼女が友達と結婚したことを知り、気持ちが落ち込んだため、会社を休んだ。体調を心配した朔子が弁当持参で家まで来てくれたことで、初めて太郎のいない状態で朔子とセックスに臨んだ。のちに夫と離れ、家を出た朔子と生活を共にすることになる。そんな中、太郎に現状を打ち明けて朔子との離婚を要求。顔を殴られはしたものの、離婚の承諾を得ることとなる。ただし、離婚の条件として自分と朔子のセックスを撮影したいわゆるハメ撮りを要求され、それを承諾した。

主人公

エピソード「見舞妻」に登場する、河北マサトの妻で、河北たかひろの母親。年齢は23歳。ちょっと派手目ないわゆるギャルママで、ネイリストとしてパートで働いている。子供の頃、両親の不仲が原因で不登校になった... 関連ページ:河北 真冬

田口 慈子 (たぐち ひさこ)

エピソード「頭痛妻」に登場する、タワーマンションの最上階に住むセレブ女性。年齢は40歳。夫が会社の社長を務めているため、つねに多忙で半年くらい顔を見ていない。2か月前にタクゾーと偶然知り合い、それ以来体の関係を持つようになった。川辺にあるタクゾーの仮住まいに足しげく通っているが、そのたびに起こる頭痛に悩まされている。現在、息子の春斗だけが唯一の生きがいであり、春斗を失ったら生きていけないと感じながらも、タクゾーのもとに通う不倫生活がやめられないことに罪悪感を感じている。半年前、深夜に知らない男性が家にいたため、警察を呼ぼうとしたことがあった。その男性は夫だったが、あまりに会っていなかったため、夫の顔が認識できなくなっていた。実はタクゾーが夫であり、田口慈子は事故に遭ったことで夫の顔がわからなくなっていた。最近気になっている頭痛も事故で頭を打ったことが原因で、病院で検査も受けたが、特に異常は見つからなかった。おそらく高次脳機能障害で、慈子自身にその自覚はないが、タクゾーに懐かしさを感じ、いっしょにいると落ち着くような感覚を抱き、タクゾーを求めるようになった。

軒端 薫 (のきばた かおる)

エピソード「芳香妻」に登場する、地方の会社に勤める女性。夫と娘がいる既婚者で、年齢は45歳。美しくあるための努力を怠らないため、周囲から若く見られることが多い。会社の飲み会の帰りに融を家まで送ることになり、融の身の上話を聞くことになった。その後、融の思い人である空夏と自分の体臭が似ていると言われ、融に匂いを嗅がせて欲しいと懇願される。徐々に距離が近くなり、そこから一線を越えるのはすぐだった。幸せな結婚生活を送っていたのに、簡単に不倫に走ってしまったことに後ろめたさもあるが、のめり込まない覚悟でその後も何度か融からの連絡を受け、逢瀬を重ねている。しかし、その後に融の東京赴任が決まり、二人の関係もあっさり終わることとなった。

宮園 花純 (みやぞの かすみ)

エピソード「園芸妻」に登場する、宮園一久の妻で、宮園紀里の母親。年齢は28歳。もともとホームセンターの園芸コーナーで働いていた時、一久と出会った。好青年を装っていた一久に騙され、絶対的な関係を構築してからすべてがウソだったことや、背中の刺青を見せられた。別れを切り出すも薬を盛られ、妊娠させられ、逃げられない状態で強引に結婚に持ち込まれた。結婚後は、一久の傲慢さがさらに目立つようになり、時おり自宅に帰って来ては、宮園花純を全裸にして楽しみ、さらに一久の目の前で宮園史久に抱かれることを強要されている。花純には有機化学の知識があったため、一久から命じられて麻薬を作らされたこともあった。その麻薬を飲んだ影響で、一久は強い幻覚作用に襲われ、自ら性器を切り落とした。しかし、その時の記憶はいっさいないため、レイプして捨てた女性の家族に拉致され、性器を切り落とされたとウソを吹き込んで信じ込ませている。そんな環境下でもこれまでやってこれたのは、史久の人柄と義母の優しさがあったから。しかし義母が亡くなる直前、義父の殺害と、その方法について打ち明けられたことで、今の結婚生活に一筋の光を見出した。のちに義母と同じ方法で、庭の白い花、エンジェルトランペットを使って一久に毒を盛り、史久がとどめを刺す形で一久を殺害。一久の死体を庭に埋め、その死体の土には金魚草を植えた。その後、史久と紀里と共に平穏な日々を送っている。

河和田 ふみ (かわた ふみ)

エピソード「風水妻」に登場する、漫画家アシスタントを務める女性。年齢は30歳。風水に興味があり、現在勉強中。風水アドバイザーの資格取得講座に参加した際、漫画家の妻、山口と知り合った。その後、山口の自宅に遊びに行き、漫画家の伝手でめぐみを紹介され、アシスタントとして手伝うことになった。そこで、風水のてほどきをしつつ、めぐみの仕事をサポートしている。そんな中、交際している彼女からの言葉に傷ついためぐみを慰めるうち、一線を越えてしまった。実は河和田ふみは既婚者で、自分が高校生で夫が大学生の時にアルバイト先で知り合い、交際を始めた。当時はお金がなかったが、その後に外資証券マンになった夫の収入がアップし、都心の高級マンションを購入した。しかし学歴も教養もないため、そこの住人に馴染めずに心はどんどん荒(すさ)んでいった。その原因を夫が変わったことに責任転嫁し、昔の夫の方がよかったと暴言を吐いたこともあった。だがその直後、夫が交通事故に遭い意識不明の状態となる。この事故によって、車に同乗していた女性がいたことが発覚。浮気相手の存在が明らかになり、さらに絶望することとなった。しかし、めぐみとの仕事をきっかけに自分を見つめ直し、ふみ自身にも問題があったことに気づくことができた。

高尾 美峰 (たかお みほ)

エピソード「登山妻」に登場する、高尾修司の妻。年齢は31歳。修司に対する愛はあるが、現在セックスレス状態が続いている。娘の美樹を出産後に職場復帰して以来、忙しい毎日に疲れ、なかなかその気になれずにいる。また、修司の性器が大きすぎるため、セックスに痛みを伴うことも要因の一つとなっている。1年ほど前、修司と相談の上、夫婦交換サークルに入会した。サークルに入会したものの、実際に夫婦交換には至っていない。そんな中、ママ友である三峰友里がセックスレスに悩んでいることを知り、高尾美峰自身と修司、友里の三人でセックスすることを提案。仲のいい夫婦ならうまくやっていけるのではないかと、互いのパートナーを入れ替える夫婦交換を改めて提案した。実は、娘の運動会に参加した際、友里の夫の三峰幹隆に一目惚れした。もともと趣味だった登山は、修司が乗り気ではないこともあり、結婚して以来行けず、妊娠を機にますます登山から遠ざかっている。しかし、友里の話から幹隆の趣味が登山であることを知り、さらに幹隆に興味を抱くようになる。だが、友里を介しても幹隆が夫婦交換に応じることはなかったため、友里と修司がいなくなったとウソをついて幹隆を山におびき寄せ、二人の時間を作った。初めは幹隆と意見の相違が激しく、溝は深まる一方だったが、いっしょに山に登るうちにわだかまりもなくなる。美峰自身からの告白をきっかけに一線を越えることになった。娘の美樹と三峰家の一人息子の岳斗とは同じ年のクラスメイトで、仲がいい。

宍戸 もみじ (ししど もみじ)

エピソード「又鬼妻」に登場する、デリヘル嬢として働く女性。年齢は25歳。仕事で仁の家を訪れて身の上話をする中、仁に弟子入りしてマタギになることを決めた。実は既婚者。いつも笑顔であっけらかんとしているが、夫は病的に嫉妬深く、化粧して外へ出ることも禁止、女友達と遊びに行くことも禁止、SNSも禁止という非常に強い束縛を受けていた。母親に相談するものの、妻は夫に従うものという偏った考えを持った母親から賛同を得られることはなかった。夫から逃れるため、失踪しデリヘルの店で働くようになったが、店の場所が夫と母親にばれてしまい、店を辞めざるを得なくなった。そのため、経済的に自立して一人で生きて行けるようになりたいという切なる願いから、仁のもとでマタギとして訓練を受けることになった。頑固者の仁に薬を飲ませたことを賢から感謝され、宍戸もみじ自身からせまって一線を越える。仕事以外で夫以外の人と体の関係を持つのは初めてだった。

真田 颯太 (さなだ そうた)

エピソード「伴走妻」に登場する、真田早矢の夫。2年前、当時実力派の市民ランナーと知られる早矢が会社を代表して東京マラソンのチャリティー枠で出場することが決まる。そして同じ会社に勤めていた真田颯太は、早矢から強引に一般枠でエントリーされてしまう。マラソンの厳しいトレーニングに付き合わされた颯太は嫌気がさし、自分と同じ苦痛を味わせてやりたい思いで、もし自分が走り切れなかったら早矢にマラソンをやめてもらうと発言する。しかしいざトレーニングを重ねるうちに、その気持ちよさにハマって走ることに楽しみを感じ、自分から早矢をトレーニングに誘うようになる。また、早矢に負けたくないという思いが強くなり、以来、早矢に対して高圧的な態度で接するようになる。その結果、本番では4時間を切って走破し、颯太が早矢よりも早くゴールする。それ以来、早矢は会社を退職し、走ることもやめて酒に溺れるようになったこともあり、颯太は早矢に苛立ちを覚えて高圧的に当たるようになった。颯太は、東京マラソン出場をきっかけに、未経験から半年のトレーニングだけで結果を出した自分に興味を持った初心者ランナーが多く集まり、社会人マラソンサークルを立ち上げる。そのため、現在は坂木和香など多くの市民ランナーの指導にあたっている。

箱崎 ゆり葉 (はこさき ゆりは)

エピソード「改装妻」に登場する、ゆり葉の夫の妻。年齢は43歳。夫が箱崎家の長男のため、何かと長男の嫁としての器が求められている。背中の肩からお尻、顔の額の左側に異所性蒙古斑があり、実の両親からは幼い頃から、来客があると自室にこもるように指示されるなど、醜いもののように扱われていた。学生時代は、いじめられないように人一倍空気を読む努力をしていた。恋人にはとことん尽くすことで愛情を示し、その結果、夫と結婚することとなる。これまでは顔の痣のせいで、そればかり気にして行動していたが、息子が生まれたことをきっかけに、外に出る時は痣を隠すことに決め、厚化粧を始めた。その後、ホステスにメイクを施す仕事に就き、夫の反対を押し切りって痣の治療を始めた。箱崎ゆり葉にはいっさい知らされず、夫が勝手に義母の両子との同居や、自宅のリフォームを決めたことに不満を持っている。また何かと口うるさく、愚痴の多い両子への苛立ちも募らせているが、我慢している。自宅のリフォームが始まると、若い職人たちのためにおやつやお茶を用意することに喜びを感じるようになり、職人の一人、百樹に、自分と同じ場所に痣があったことがきっかけで興味を持った。その後、ひょんなことから百樹に背中の刺青を隠すメイクを施すことになり、そこで一線を越えてしまう。のちに、百樹と駆け落ちした際、貯金のほとんどを持って行ったため、自宅のリフォームは中断し、両子はショックのあまり入院することとなった。

大須 日和子 (おおす ひよこ)

エピソード「駝鳥妻」に登場する、大須の妻。年齢は31歳。外見は女性に見えるが「神様は女の私に子宮と女性器を授けてくれなかった」と発言しており、正確な性別は不明。お金に不自由しない恵まれた人生を送っているが、子供は授かることはできない。秘書的な存在の籠井がいなければ、今の自分はないと考えている。もともと籠井に好意を寄せていたが、籠井が実の父親の愛人の子であり、自分と籠井が血のつながった兄妹であることを知らされる。それにもかかわらず、籠井とは一線を越えてしまい、その関係は結婚した現在でも続いている。20歳の頃、自分にも女性器が欲しいと籠井に依頼し、医師の大須を紹介された。今の自分に付いている女性器は大須がデザインしたもので、その後は大須の妻となり、愛され続けている。ある時、レストランで大須と食事中、大須のクリニックの元受付だった鷺ノ宮凛音が姿を現し、大須の子供を妊娠していることを明かした。直後に凛音はその場で倒れてしまい、大須によって病院に運ばれた。この時、大須日和子は凛音の持ち物から茨城県坂東市に住んでいることを確認。自宅に向かうとボロボロの家の中にねおん、じゅのん、れもん、ころん、まのんの五人の子供たちが置き去りにされていることを知り、全員を自宅に連れ帰った。その後、それぞれの子供の対応を籠井に頼み、日和子自身は凛音の妊娠に対応した。籠井の調査で大須の潔白が証明されたため、金が目的であると判断し、凛音に自分の高級ブランド品を5000万円分渡した。その代償として、凛音の五人の子供たちを譲って欲しいと頼み込み、大須家は大家族になった。

佐伯 容子 (さえき ようこ)

エピソード「美容妻」に登場する、1年前に夫の佐伯雅之を亡くした未亡人。年齢は37歳。肌年齢は18歳ほどで、かなり若く見える。雅之とは、互いに行き遅れたことで見合いをし、世間体と親の安心のために結婚した。それもあって、雅之には性欲を感じることがなく、一度もセックスをしたことがない。お互いに子供を望んでいなかったため、家族や周囲に対し不妊治療中であるとウソをついていた。1年前、雅之が出張先の海外で災害に巻き込まれ、半年前に遺体が見つかった。勤務中の事故死ということで、労災保険や生命保険、各種遺族年金などが支払われた。さらに、購入したマンションは団体信用生命保険でローンが完済扱いとなったため、マンションは賃貸し、佐伯容子自身は築30年のフルリノベーション済み団地に引っ越し、悠々自適な暮らしを送っている。地味でブスだった高校時代は、自らにとっていわゆる黒歴史。雅之の遺産で、歯列矯正に全身脱毛、シミ取りレーザーや豊胸、各種美容注射などありとあらゆる美容法で、若さと美しさを手に入れた。その後、社長から頼まれたと、雅之の同期の野岸由季央が容子自身のサポートを申し出たため、連絡先を交換。賃貸マンションの手続きや、新居の手配などをしてもらう。それ以来、由季央からあからさまなアプローチを受けるようになり、ホテルに誘われて一線を越えてしまう。それからは、何かと理由をつけてはセックスをするために由季央が自宅に訪れるようになる。そんな中、高校時代の友人、響子が自宅を訪れ、高級美顔器を買わされることになる。その際、響子の息子の飛矢が家まで荷物を届けてくれたことで、響子に雅之の死を知られてしまう。飛矢が自宅を訪れた由季央と鉢合わせしたことで、年の離れた飛矢からも熱烈なアプローチを受けることになる。その後、飛矢とはセックスフレンドとなり、彼の若さに困惑しながらも、関係を持ち続ける。

小林 美津 (こばやし みつ)

エピソード「蜜蜂妻」に登場する、地方の農家に嫁いだ女性。年齢は38歳。明るく前向きな性格で、細かいことは気にしないタイプ。五人の子供の母親。しかし、年齢が19歳の長男、喜八は、夫の八郎と前妻の子供。17歳の長女、向日葵は、小林美津自身と赤石譲也の子供。10歳、5歳、3歳の子供は八郎とのあいだの子供という複雑な家族構成で、大きな家に全世代が同居している。家族公認で月に一度、一人で東京に出かけていいフリーな日が与えられており、気兼ねなく好きなことをして息抜きすることで、田舎での生活を円滑に送り続けることができている。もともと美大で油絵を学んでいたため、今でも油絵を描いている。当時両親がいなかったため、性風俗店でアルバイトをしながら奨学金で美大に通っていた。同じ美大の音楽科に在籍していた赤石と親しくなり、一線を越えた。赤石とは一夜限りの関係だったが、その後に妊娠が発覚。赤石に知らせずに21歳で未婚の母となった。その時、何度となくアルバイトに行っていた地方の農家で、すべてを知った上で嫁に来ないかと誘われる。一度は断ったが、一人で出産して子育てをすることの大変さを考え、訳ありの八郎のもとに嫁ぐことを決めた。赤石に子供が生まれたことを伝えようと、月に一度の上京時に行方を探し続けており、十数年かかってSNSに辿り着くことができた。SNSで連絡して再会することになり、赤石の現状を知った。のちに、赤石と会ったことを知った八郎から、不倫を疑われることになる。しかし浮気心をはっきり否定し、いじけた八郎にセクシーな下着姿でせまり、夫婦関係を修復させた。

伊藤 こずえ (いとう こずえ)

エピソード「団地妻」に登場する、伊藤誡の妻。年齢は30歳。体と心を壊して職を失った誡の希望で、東京郊外の団地「スターハウス星見台」に引っ越して来た。夫の体調を心配して都心を離れたが、内心は東京への未練が残っている。趣味はDIYで、人混みを苦手としている。引っ越した直後、ガスの開栓に訪れた井上から団地内の奇妙なルールを聞く。誡が井上ミカエラと親しくしているが、特にとがめることなく、夫婦関係を維持しながら井上とも親しくしている。

森川 紗綾 (もりかわ さや)

エピソード「着物妻」に登場する、作曲家の夫を持つ女性。年齢は37歳。着物に強い執着があり、夫に愛人がいることを知りながら、夫の葬儀で妻として黒紋付を着るためだけに離婚しないでいる。もともと夫と結婚した理由も、着物を着たいためにお金を稼げる人がいいと考えたから。夫とのあいだに女の子二人を授かり、七五三の祝いの席で着る黒留袖を拾雄の呉服屋に頼んだ。拾雄の家族とは、若い頃から付き合いがあった。拾雄の兄、捨雄の描く絵には不思議な魅力を感じており、捨雄にヌードを描いてもらううちに、一線を越えてしまう。その後、捨雄が実家で着物の職人となったものの、兄弟子を殺害したために、先祖代々暮らしてきた土地に住めなくなった。現在はその場所を自宅として活用し、拾雄の呉服屋には、いつも高級な着物を誂えてもらっている。七五三で着るつもりだったのは、捨雄が描いた絵をもとに作ってもらった黒留袖で、その出来栄えは素晴らしいものだった。しかし捨雄が兄弟子を殺害したことで、晴れの日に捨雄が描いた黒留袖を着るのは非常識だと拾雄から訴えかけられ、仕方なく別の着物に変更した。その際、勢いで着物を脱いだことがきっかけで、欲情した拾雄から関係をせまられることになり、結局拾雄とも一線を越えてしまう。

ルーリー

エピソード「VR妻」に登場する、人気のVRゲーム「クラフトワールドファンタジー」内で、自身の分身となるキャラクター。インドの神様のような青い肌とラプンツェルのような長い髪、叶姉妹のような豊満なボディ、ティンカーベルのような長い耳と服を身につけている。現実世界では「青木瑠璃子」という名前で、年齢は60歳。敬子、哲生、偉生の母親。寝たきりの状態となって現在は病院に入院中。25歳の時に徐々に運動機能が失われていく病気が発症し、35年が経過した。現代の医療では、進行を遅らせることしかできずに病と戦ってきたが、今は目を動かすこともやっとの状態。しかし、偉生が勤める会社で開発したVRゲームのヘルメットを装着しているため、視線を読み取って文字入力が可能で、意識のない状況下でも最低限家族との意思疎通を図ることができる。ゲーム内のキャラクターの名前や、見た目の設定は偉生が行った。同じ病棟に入院中のかもゐとは、ゲーム内で偶然知り合って親しくなった。ゲーム初心者の自分に遊び方を教えてくれたかもゐとは、恋人のような関係性を築いている。体が自由にならなくなった頃、当時高校生だった敬子に介護をさせ、健康には見放されたが子供には恵まれていると周囲に思わせようとした。その結果、敬子が家を出て行ってしまったため、感情のままに振る舞った自分の行いを悔いている。最近いよいよ生きていることに限界を感じ始め、自分の死を意識するようになった。自分の延命治療に関して、兄弟が困ることがないように、VRゲーム内でかもゐに伝えて自分の気持ちを家族に託した。これを知って三人の子供たちは治療の中止を決断し、瑠璃子はこの世を去った。

武井 かずみ (たけい かずみ)

エピソード「投資妻」に登場する、夫婦心中があった事故物件に住んでいる女性。年齢は34歳。お清めのためにやって来た霊能者の集光英正道と、妻の美琴を部屋に招き入れた。実は心中した夫婦とは、武井かずみ自身とかずみの夫。かずみが夫を刺し、自らも首を吊(つ)ってこの世を去ったため、現在はいわゆる霊的な存在となっている。生前、夫が詐欺まがいのマンション売買を行う会社の営業職を務めており、被害に遭った看護師から恨みを買ったことで、突然会社を辞めてしまう。シミュレーション投資で自信をつけた夫から、今後は投資で暮らしていくと自信満々に打ち明けられた。しかし、結局投資はうまくいかず、追い詰められた夫がその原因をかずみに向けるようになった。夫の態度はつねに高圧的で、アルバイトや投資の勉強を強要されていた。だがそれでもうまくいかず、最終的にはかずみの存在価値すらわからなくなり、かずみが生命保険に加入していたことを思い出したと口走る。そんな夫に絶望してナイフで刺し、自らも首を吊って自殺した。罪を犯したことを悔い、夫には自分を許して欲しいと正直に正道に話し、最後には成仏に至った。

六反田 寧々 (ろくたんだ ねね)

エピソード「双六妻」に登場する、六反田和人の妹。元読者モデルだった美女で、年齢は27歳。石川県出身で、独特の方言をしゃべる。既婚者ながら夫が完全リモートワークになって以来、ケンカが絶えない。今回も夫とケンカしたため、冷却期間と称して和人のもとに家出して来た。幼い頃に母親に捨てられた寂しさを紛らわすため、和人との触り合いっこがエスカレートしたことがあった。それを見た父親からは、兄妹で乳繰り合うと地獄に落ちると言われ、強く責められた。その言葉が今でも自分の心の中に暗い影を落としている。父親が再婚し新しい母親との生活が始まったが、のちに生まれた弟が一番かわいいと言った義母の言葉に傷つき、増々寂しさを募らせることになる。そんなこともあり、現在に至るまで和人への依存心は消えていない。兄妹で関係を持ってはいけないと理解しながらも、夫以外の男性と寝たら不貞になるからと、無理な言い訳をして和人と一線を越えた。夫からはその日に電話がかかってきたが、和人との行為中だったためにゲームで運動中とウソをついた。

平賀 卓弥 (ひらが たくや)

エピソード「金魚妻」に登場する、平賀さくらの夫。さくらとは出会ってすぐに結婚した。モラハラ気質で、新婚の頃からパートのさくらを、正社員ではないことを理由に働いているとみなさず、家事のいっさいを丸投げしている。日常的にさくらを怒鳴りつけたり、住んでいるマンションは自分が働いてローンを払っていると、自分だけの家であるかのように主張し、気に入らないことがあれば、すぐにさくらに出て行けと暴言を吐いている。もともと子供がたくさん欲しかったが、さくらが過労で生理が来なくなったため、あからさまに嫌味な態度を取るようになった。またほかの女性と浮気を始め、さくらに対しての態度はどんどん冷たくなっていく。ある日の朝、金魚を飼いたいというさくらからの申し出を承諾したが、帰宅すると玄関に思っていた以上に大きな水槽がセッティングされていたことから、態度を一変させて水槽を店に返すように命じた。それ以来、さくらが家に帰って来なくなり、さくらを探し始める。金魚専門店「金魚のとよだ」にも顔を出した際、この店で購入した金魚がうまく飼育できないと、店長の豊田圭一に弱った金魚を売りつけたのではないかと言いがかりをつけ、インターネット上に店の評判を落とすような悪意の評価を書き込んだ。後日、さくらが突然戻って来たが、弱った金魚をあれこれ世話し始めたさくらを見て腹を立て、殴る蹴るなどの暴力を振るった。この時の様子を映像に収めていたさくらから、離婚を言い渡されることになり、さくらの両親を介して正式に離婚することとなった。浮気相手の女性とは、平賀卓弥自身が思う以上に上辺だけの関係性でしかなく、さくらに浮気がばれていることがわかった時点で、女性側から早々と手を切られる形となった。離婚後しばらくしてセフレマッチングサービスを利用し、堀口と知り合う。彼女とは、境遇を打ち明け合ううちに、互いが似ていることに気づいて惹かれ合っていく。その後は、堀口の息子のカズと共に三人で、新たな関係を深めていく。

豊田 圭一 (とよだ けいいち)

エピソード「金魚妻」に登場する、祖父から引き継いだ金魚専門店「金魚のとよだ」を営んでいる中年男性。年齢は45歳。金魚に造詣が深く金魚のエキスパート。客として来店した平賀さくらが、金魚に興味を持っていることを知り、飼育方法などをレクチャーした。しかし、購入したはずの水槽を返品しに来たことがきっかけで、さくらが夫の平賀卓弥の浮気にショックを受けていることを知り、元気になるまでここにいていいと優しく接した。その後に体の関係を持ち、金魚店でアルバイトをしてもらいながら、さくらと生活を共にするようになる。そんな中、さくらを探し回っている卓弥が来店するが、しらを突き通した。桜が一度卓弥のもとへと帰ったのち、暴力を受けボロボロになって戻って来たため、優しく保護した。のちに、さくらの妊娠を機に正式に結婚することになった。結婚後もさくらへの優しさは変わらず、良好な夫婦関係を築いている。離婚歴があり、前妻の真紗子とのあいだには高校生になる娘、伊藤蘭がいる。蘭が真紗子に内緒で時おり自分のもとを訪れていたり、蘭に頼まれて蘭のアルバイト先のペットショップに新設される観賞魚コーナーのアドバイザーを引き受けるなど、娘がかわいくて仕方ない様子。実は前職は金融ブローカーで、その経験を活かして現在も資産運用を行っている。蘭が7歳になる頃まで、仕事の関係でニューヨークに住んでいた。その際、テロに巻き込まれそうになった経験があり、豊田圭一自身は無事だったが多くの仕事仲間を失った。そのため、人生の終わりは時として止めようのない力で突然やってくるもので、みんながもっと自分の好きなように生きればいいという人生観を持っている。基本的に去る者は追わないタイプで、目的が同じならいっしょにいればいいというスタンス。母親がハーフのため、クウォーター。保ヶ辺太郎は、同じ会社に勤めていた元後輩。

さくらの両親 (さくらのりょうしん)

エピソード「金魚妻」に登場する、平賀さくらと志村琉の両親。小柄で温和な父親と、背が高く個性的な母親。年の差婚だが、いまだに夫婦仲は良好。さくらが平賀卓弥から暴力を振るわれていることを知り、さくらの両親が卓弥のもとを訪れ、さくらの代わりに離婚にかかわる手続きを進めた。幼い頃から琉が病弱で手がかかったため、琉を溺愛している。逆に病気一つしないさくらはいつもほったらかしで、自由奔放に育てた。

志村 琉 (しむら りゅう)

エピソード「金魚妻」に登場する、平賀さくらの兄。ペット総合メーカーで営業を務めている。幼い頃は体が弱く、さくらの両親からは甘やかされて育った。現在は健康で、体育会系のノリがいい性格の熱血漢。さくらを溺愛しており、さくらが平賀卓弥から暴力を受けたことを知り、卓弥のもとを訪れ、二度とさくらに暴力を振るわないように恫喝(どうかつ)した。ペットショップに自社の製品を扱ってもらおうと営業に行った際、豊田圭一と顔を合わせた。商品知識には自信を持っていたが、ペットに対してまっすぐな圭一に太刀打ちできず、営業としては失敗に終わる。結果的にさくらからの紹介を受ける前に、圭一がどんな人物なのかを知ることになる。圭一の人柄を知り、安心してさくらを任せられると、圭一をさくらの新しいパートナーとして認めた。

伊藤 蘭 (いとう らん)

エピソード「金魚妻」に登場する、豊田圭一の娘の高校生。両親が離婚した際、母親側に引き取られたため、現在は母親と暮らしている。ペットショップでアルバイトをしており、将来はトリマーになりたいと思っている。圭一の金魚専門店「金魚のとよだ」のビルを譲ってもらい、自分の店を開くのが夢。時おり父親に会いにやって来ているが、それを知られると母親が嫌うため、秘密にしている。アルバイト先で観賞魚コーナーを新設することになり、アクア関連の造詣の深い圭一にアドバイザーになって欲しいと店を訪れた。いっしょにいた平賀さくらに、両親がよりを戻すため協力して欲しいと、さくらに圭一と別れるようお願いして店から追い出した。その直後、さくらがすでに妊娠していることを知り、慌てて迎えに行った。母親が父親の収入に不満を持ち、金持ちの男性と浮気したために離婚。伊藤蘭が母親についていったのは、母親の邪魔をするためだった。その後、母親は浮気相手の男性と再婚できず、父親と離婚したことを後悔していることを知っており、両親の復縁を望んでいると語った。しかしそれは、さくらと圭一の仲を勘繰り、さくらと圭一を引き離すための理由にすぎなかった。父親の再婚以降は、さくらを実の姉のように慕い、赤ちゃんが生まれることを心待ちにしている。赤ちゃんが生まれてからは、実の子のようにかわいがり、用もないのに圭一の家に遊びに行くようになった。正義感が強く竹を割ったような性格で、なんでもはっきり物言うタイプ。名前は父親が好きな金魚の「蘭鋳」から付けられた。

井村 (いむら)

エピソード「金魚妻」に登場する、アクリル加工会社の社長を務める中年男性。金魚専門店「金魚のとよだ」の常連客で、豊田圭一とは仲がよく、友達価格で水槽を提供している。最近、娘が飼えなくなったと押し付けられた犬を引き取り、飼い始めた。だが、しつけがまったくされていないため、犬の扱いに困って持て余し気味。圭一に助けを求めたところ、ちょうど店に来ていた伊藤蘭から、犬との付き合い方について細かく教えられることとなる。

堀口 (ほりぐち)

エピソード「金魚妻」に登場する、カズの母親。現在はシングルマザーとして実母を頼って生活している。セフレマッチングサービスで平賀卓弥と知り合い、卓弥のもとを訪れた。家政婦のように掃除や片づけを行ったが、卓弥から心づけとして5万円を渡されたため、残り時間で一線を越えてしまう。その際に互いの身の上話をする中で、卓弥と堀口自身が似た境遇であることに気づき、自然と惹かれ合うようになる。もともと離婚は夫の浮気が原因だったが、厳密には堀口自身が自己中心的な考え方だったため、夫に愛想を尽かされた結果逃げられてしまう。離婚直後は、言い訳や自分の都合しか考えないメールを送り、別れた夫に何度も復縁をせまった。しかし時間が経つにつれ、大事な人を傷つけ失ったことを実感するようになる。カズが金魚に執着することに関しては、あまりいい顔をしておらず、金魚を死なせてはめそめそしていることに苛立ちすら覚えている。

カズ

エピソード「金魚妻」に登場する、堀口の息子。金魚が大好きだが何度挑戦しても金魚が死んでしまい、うまく飼育できないことに思い悩んでいる。本当は大きな水槽が欲しかったが、小さな金魚鉢で1年間金魚を飼育することができたら購入するという約束を父親と交わしているため、なかなか買えずにいる。飼育本を読んでもうまくいかず、せめて金魚を死なせた原因を知りたいと水質検査薬の購入を考えるが、たかが金魚ためにと母親に渋られている。その後、母親の理解を得て、金魚専門店「金魚のとよだ」の豊田圭一のもとを訪れ、金魚の飼育に意欲的に取り組むようになる。

卓弥の両親 (たくやのりょうしん)

エピソード「金魚妻」に登場する、平賀卓弥の両親。卓弥が平賀さくらに暴力行為を振るったことで、離婚することになった際、さくらの両親や志村琉、卓弥と共に話し合いの席に着いた。息子がしたことに対して平謝りする母親に対し、父親は卓弥の育て方の失敗をすべて妻のせいにし、自分には責任がないかのような無責任な態度を取った。しかし、母親が夫と別れてけじめをつけると発言したことで、父親を動揺させた。

真紗子 (まさこ)

エピソード「金魚妻」に登場する、豊田圭一の元妻で、伊藤蘭の母親。現在は圭一と離婚し、蘭と暮らしている。蘭が自分に内緒で圭一に会いに行くことを知っているが、快く思っている。年を重ねるにつれ、若さや美しさに固執するようになる。もともと富裕層の友人が多かったことから、圭一の収入に満足できずにいた。さらに圭一が勤めていた会社を辞め、金魚専門店を継ぐことを決めたことで収入が激減し、がまんできなくなった。だが、実は夫と別れる前に高収入の男性と浮気しており、これが離婚に至る大きな原因となった。しかし離婚後は、結局意中の人と再婚に至ることなく破局。その後も婚活を続けるものの、男性からは断られ続け、最近になってようやく自分が高望みしていたことに気づくことになった。圭一が再婚後、やたらと圭一のもとに入り浸るようになった蘭を迎えに金魚店を訪れ、そこで初めて圭一の再婚相手の平賀さくらと出会う。勝気な性格なことから、さくらに圧をかけようとするも、うまくかわされてしまう。

豊田 福一 (とよだ ふくいち)

エピソード「金魚妻」に登場する、豊田圭一の父親。金魚専門店「金魚屋とっちゃん」を営んでいる。縁日には、圭一に協力を仰ぎ、金魚すくいの屋台を出店した。その際、客としてやって来た野本あやと知り合い、後日庭の池についての相談に乗った。野本家で、池についてのアドバイスを行ったあと、雑談に応じる中であやからせまられ、老齢でありながら一線を越えてしまう。虫など生き物全般が大好き。

野本 幸喜 (のもと こうき)

エピソード「金魚妻」に登場する、野本あやの夫。資産家の息子で、亡き両親から生まれ育った屋敷を相続し、妻と二人で住んでいる。妻思いの優しい性格ながら、あやを大事にするあまりに彼女の外出を快く思っていない。潔癖症で、縁日屋台の料理は不潔だからといっさい口にせず、まだ幼かった平賀さくらにも食べることを許さなかった。

野本 あや (のもと あや)

エピソード「金魚妻」に登場する、野本幸喜の妻。平賀さくらの母方のおばにあたる。幸喜の両親から相続した大きな屋敷に住んでおり、広い庭の草むしりや虫退治、老朽した屋敷の掃除と修理に追われる忙しい日々を送っている。まださくらが幼かった頃、時おりさくらを預かり面倒を見ることがあり、自分の子供のようにかわいがっていた。以前、流産したことがきっかけで、幸喜との夫婦関係が少しずつギクシャクするようになる。幸喜からは大事にされすぎるあまり、外出も許されない退屈な人生を憂い、縁日で知り合った豊田福一に庭の池についての相談を持ちかけたことがきっかけで、誰の子供でもいいからと野本あや自らせまり、福一と一線を越えた。その後に妊娠が判明し、女の子を出産した。

志村 優香 (しむら ゆうか)

エピソード「金魚妻」に登場する、志村みのるの妻。夫婦共働きしている。年齢は25歳。平賀さくらと高校時代からの友人だが、志村優香自身が結婚式を挙げて以来、疎遠になっていた。最近さくらの再婚を知って久々に会うことになり、さくらが再婚した経緯を聞くことになる。みのるとは交際1年で結婚し、趣味も価値観も似ていることから、穏やかな関係を築いている。ただしセックスレスで、それが最大の不満となっている。妊娠出産する友達が増える中、自分もそろそろ子供が欲しいと思い始め、みのるに相談するもことごとく断られてしまう。セックスに関しては、夫とすることを早々にあきらめ、元彼氏である潤に連絡を取り、欲求不満を解消していた。しかし、潤に妻子があることが発覚したため、関係を終わらせる。その後、潤が独り身になったことで、体の関係だけと割り切るつもりでいたが、次第に心から互いを求め合うようになってしまう。若い頃から生理のストレスによる窃盗癖があり、過去に何度も盗みを働いているが、盗んでいる時の記憶はまったくない。生理の不安により、一人で生きていくことにすら自信を持てずにいた。それを解決するため、現在は女性用避妊具、IUSを装着している。それによって生理が止まったため、仕事にも集中できるようになった。みのるに対して不満は多いものの、夫婦関係は継続したいと考えている。しかし、みのるが突然会社を辞めたために家賃が払えなくなり、転居することとなった。自分に相談なく仕事を辞めたことや、家賃は自分持ちということに腹を立て、夫への当たりが日々強くなっている。

志村 みのる (しむら みのる)

エピソード「金魚妻」に登場する、志村優香の夫。何かと言い訳ばかりのネガティブな性格をしている。子供が欲しいという優香に対し、出産は女の幸せという一般的な価値観を全面的に否定。親や友達の「子供を作れ」という言葉は、お前も不幸になれという呪いであると、自らの持論を展開した。優香とは結婚して2年になるが、セックスレスの状態。関係は悪くはないが、夫婦としては良好とはいえない。もともと有能な社員として会社でも一目置かれていたが、ある時女性を軽視する考え方を根本に持っていることが周囲に伝わり、職場での立場が微妙になる。もともと女性が多く活躍していた会社だったため、自分の周りから自然と女性がいなくなり、何かと敬遠されがちになった。上司から重要なポジションから外されたのをきっかけに、優香に相談なく退職を決めた。それが原因で家賃が払えなくなったため、妻の提案で引っ越しが決まった。引っ越し先を決めるにあたっては、何かと不平不満が多かったため、なかなか決まらなかった。引っ越し先では、元彼女である鈴里から彼女の飼い犬「スズカ」を一時的に預かることになった。スズカはまったく言うことを聞かず、吠(ほ)えてばかりいる。新居の家賃は自分に代わって優香が払うことになり、家でも自分の居場所がない状態。鈴里との破局原因は、これまで自分にあったと聞かされていたが、それが当時知り会ったばかりの優香のウソだと判明し、志村みのる自身の気持ちは再び鈴里に向き始める。

(じゅん)

エピソード「金魚妻」に登場する、志村優香の元彼氏。ナンパされて困っていた優香を助けたのがきっかけで知り合い、当時は妻も子供もいることを隠していた。交際を始めたものの、自分が既婚者で子供もいることが知られ、二人の関係はあっさりと終了。その後は離婚して独り身となったが、最近優香から夫とのセックスレスによる欲求不満を解消したいとの申し出を受ける。それ以来、優香と体の関係を繰り返すようになるが、体の関係だけでいいという優香の申し出に反し、次第にお互いを求め合うようになっていく。

鈴里 (すずり)

エピソード「金魚妻」に登場する、志村みのるの元彼女。現在はファミリーレストランでアルバイトをしている。優柔不断な性格で、なにかと落ち着きがない。現在の夫とは、マッチングアプリで知り会って結婚した。夫の会社の社宅に引っ越すことになったが、引っ越し先がペット不可のため、溺愛している犬「スズカ」を手放さなければならなくなった。時間に余裕がなかったため、スズカをみのるの家に預かってもらっていた。そのあいだに里親を探すことを約束したが、里親には写真付きの近況報告をするよう求めていることがネックとなり、なかなか里親が決まらない。また、自分が不妊治療中ということもあり、お金には余裕がなく、ペットに多くのお金をかけられない状態。みのると交際1か月の時に行ったスキー旅行で、みのるが志村優香と浮気したことを知って別れた。一方的に連絡を絶ったが、その後に妊娠が発覚し、中絶したことを今でも根に持っている。

岡崎 あつし (おかざき あつし)

エピソード「出前妻」に登場する、岡崎杏奈の夫。田舎町の地主一族の長男で、じいさんやあつしの父と共に田舎町でそば屋「岡崎庵」を切り盛りしている。家族経営ということもあり、従業員同士の私語が多かったり、調理が雑だったりと、何かとおざなりで悪評が目立ち始めている。現在は実家で杏奈と共に同居中だが、近々杏奈と二人で実家を出て新生活を始める予定。主な目的は不妊治療で、杏奈にとってストレスのない環境下で集中して不妊治療を行いたいと考えている。元彼女の祥子とは、高校時代に交際していたが、レベルの高い祥子に言い寄って来る男性の存在が気掛かりで、つねに心配ばかりの日常に疲れ、自分から別れを切り出した。杏奈とは、外国の旅先で知り合って惚れ込み、何度も交際を申し込んでやっとの思いで結婚したため、一生添い遂げたい思いを持っている。しかしシングルマザーとなった祥子が、今でも客として岡崎庵に頻繁に来店し、何かとアプローチしてくるために内心動揺しているが、はっきりと断っている。だが、祥太の発言から杏奈と五味田の不倫関係が発覚。杏奈から衣服のいっさいを取り上げ、裸の状態でホテルに監禁した。海外で会った時の杏奈は、交際中の男性からの病的な執着に困っており、裸で山中の車の中に監禁されているところを助けた。その時の男性と自分を重ね、杏奈へのねじれた愛情表現をする自分に複雑な感情を抱いている。

祥子 (しょうこ)

エピソード「出前妻」に登場する、岡崎あつしの元彼女。何度か離婚を繰り返し、現在は息子の祥太と小さな娘を抱えるシングルマザー。子供を保育園に預け、生命保険会社の営業として働く忙しい日々を送っている。仕事の合間や休憩時間になると、営業時間に関係なくあつしの営むそば屋「岡崎庵」に顔を出し、食事をしている。明るい性格で、あつしの父や里美と仲がいいことに、あわよくばあつしとよりを戻したいと考えている。あつしと妻の岡崎杏奈があまり仲がよさそうに見えないため、自分がアプローチすればあつしが簡単になびく自信があった。しかし、意外にもあつしは杏奈と添い遂げる覚悟を持っており、あっけなくフラれることになった。実は、地元では男癖が悪いことで有名。離婚を繰り返し、怪しいパーティ券や高級な健康食品を顔見知りに売りつけたりと、一部からは嫌悪されている。以前、じいさんに高級健康食品を買わせようとしたこともあった。あつしや里美、あつしの父が優しいのをいいことに、岡崎庵に通いつめているが、実は岡崎家側は接客業としての対応以上の意図はなく、あくまで表面上の付き合いにすぎないことに気づいていない。のちに、祥太が所属するサッカーチーム内で、あつしにフラれたことが噂されるようになり、もともと距離を感じていた保護者間の関係がさらに悪化し、居心地が悪くなっていく。

里美 (さとみ)

エピソード「出前妻」に登場する、岡崎あつしの妹。現在妊娠中で、出産を控えて田舎町の実家に里帰りしている。岡崎杏奈が嫌いなわけではないが、祥子を慕っているようで、あつしの嫁が祥子だったらよかったのにと発言。兄には杏奈よりも祥子の方がお似合いと思っている節があっての発言だった。これがきっかけで、杏奈がつらい思いをすることになるが、実は祥子を男癖が悪い女性として認知しており、自分の夫には絶対に紹介したくないと思っていた。しかし、祥子を慕っているように見せているのは、実家のそば屋「岡崎庵」の常連客だという理由だけ。杏奈があつしと実家を出て行くことを知り、岡崎家にとって大事なのは祥子ではなく杏奈だと思っていることを改めて伝えた。そんな中、そば屋で働いていた際に産気づき、無事出産に至る。退院後は夫が実家に泊まってくれているため、いっしょに生活している。

五味田 (ごみた)

エピソード「出前妻」に登場する、岡崎杏奈の不倫相手の男性。そば屋「岡崎庵」の出前常連客の男性で、年齢は26歳。大柄な体型で、大雑把で自己中心的な性格をしている。岡崎庵への出前に難癖をつけ、岡崎あつしやあつしの父からはクレーマーと認識されている。だが、基本的に常識的なもので理不尽なクレームではない。最近インターネット上で岡崎庵の評判が悪くなっていることを指摘し、家族経営の店にありがちな悪い点を挙げ、杏奈に注意喚起した。もともと東京に住んでいたが、喘息(ぜんそく)と鼻炎の持病があり、空気のいい田舎に引っ越してテレワークを行なっている。おかげで、喘息の症状はよくなったものの、田舎には娯楽がなく、ヒマを持て余している。岡崎庵から出前を取ったことで杏奈と知り合い、彼女と話をするうちに杏奈の美しさに触れ、勢いで一線を越えてしまう。それ以来、性的欲求が溜まると出前を頼んでいる。杏奈が不妊に悩んでいることを知っているため、基本的に避妊はしない。ボランティアでスポーツ少年団のサッカーチームのコーチとして指導に当たっており、地元チームを地区大会優勝に導いた。のちに杏奈との不倫関係が表ざたになり、サッカーチームに所属する子供たちの保護者のあいだでも、その噂話がささやかれるようになる。自分との不倫関係が明らかになって以来、音信不通となっていた杏奈からの連絡を受け、あつしからホテルに監禁されていることを知ることになる。五味田自身は、あつしと杏奈が離婚したら、杏奈を連れて田舎町を出るつもりでいる。血液型はあつしと同じ。

祥太 (しょうた)

エピソード「出前妻」に登場する、祥子の息子。田舎町でスポーツ少年団のサッカーチームに所属している。そのため、コーチを務める五味田とは仲がよく、五味田の家によく遊びに行っている。ある時、いつものように五味田の家を訪れ、ノックせずに部屋に入ると、五味田と岡崎杏奈が下半身丸出し状態の姿を目撃。祥太はその意味を理解することはできなかったが、杏奈が五味田の彼女であるとインプットされた。後日、祥子と共にそば屋「岡崎庵」を訪れた際、杏奈の顔を見て、岡崎あつしの前で杏奈を指さし、「五味田コーチの彼女」と発言した。それが原因で、あつしと杏奈のあいだに波乱を巻き起こした。

じいさん

エピソード「出前妻」に登場する、岡崎あつしの祖父。田舎町の地主一族で、あつしやあつしの父、岡崎杏奈と共に田舎町でそば屋「岡崎庵」を営んでいる。そば打ちを担当しているが、現在ぎっくり腰を発症して休んでいる。過去に祥子から高級な健康食品を売りつけられそうになり、その思い出がトラウマとなっているため、祥子に対してはいい印象は持っていない。のちに、あつしと杏奈が実家を出て行くことを知り、杏奈を心から大事に思っていたこともあり、大きなショックを受けることとなる。岡崎庵の人手が足りないことから、新たなパート従業員を募集するために貼り紙を書いた。

あつしの父 (あつしのちち)

エピソード「出前妻」に登場する、岡崎あつしの父親。田舎町の地主一族で、妻は他界しており、あつしやじいさん、岡崎杏奈と共に田舎町でそば屋「岡崎庵」を営んでいる。寄る年波に勝てず、客から受けた注文を忘れるなど、何かとやらかしがち。常連客の祥子を歓迎し、優しく接しているが、内心いい感情は抱いていない。

保ヶ辺 太郎 (ほかべ たろう)

エピソード「金魚妻」「出前妻」に登場する、金融ブローカーの男性。豊田圭一は会社の元先輩にあたる。妻の保ヶ辺朔子とは結婚8年目。学生時代、個別指導塾でアルバイトをしており、当時中学生だった朔子と知り合った。そんな中、付き合ってくれなければ橋から飛び降りて死ぬと、大人げなく脅迫する形で朔子と交際を開始し、結婚に至る。理屈っぽい性格で、人畜無害そうな雰囲気の割りに、時々とんでもないことを言い出すタイプ。最近では夫婦生活がマンネリ化している。さらに昨年父親が亡くなり、相続問題でのいざこざからくるストレスも相まって、セックスレス状態となっている。そろそろ子供が欲しいとは思っているが、なかなか乗り気になれないことに悩んでいる。3か月前、家族同伴の社員旅行に朔子と参加した際、いっしょに入ったうなぎ屋で、注文の品が一人だけなかなか来ない津多に、妻が自分のうな重を差し出した。そんな朔子の姿を見て興奮したことがきっかけで、妻が他人に抱かれている姿を見れば興奮するのではないかと考え、津多に妻とやりたくないかと打診した。自宅で二人を引き合わせ、妻の許可を得たうえで、自分が見ている前で津多に朔子の手を握らせたり、キスさせたりと、少しずつ二人の関係を深めさせていった。基本的に、自分と朔子のセックスに持ち込むことが真の目的のため、自分が興奮したことを自覚すれば津多を帰らせ、自分たちで行為に及ぶことも少なくない。その際、朔子にどっちがセックスがうまいかを聞いて確認することもあり、自分の方がうまいと言わせることで自尊心を満たしているところがある。その後も津多を利用したあとのセックスで、充実した夫婦生活を取り戻そうとしている。朔子には、みんなで気持ちよくなってセックスレスを解消するのと、セックスレスのままでいいかと意思確認をしていたつもりだったが、思いがけずに朔子が家を出てしまい、連絡がとれなくなってしまう。その後、音信不通になった妻が津多のもとにいることを知り、激怒する。そして朔子との離婚を求められ、離婚に応じることにしたが、離婚する条件として、津多と朔子のセックスを撮影したいわゆるハメ撮り動画を要求した。朔子と離婚したことがきっかけで、金魚専門店「金魚のとよだ」に出入りするようになり、金魚の飼育に入れ込むようになる。

保ヶ辺 朔子 (ほかべ のりこ)

エピソード「弁当妻」に登場する、保ヶ辺太郎の妻。年齢は27歳。サラサラのショートヘアで、大きな瞳に長いまつ毛の持ち主。もの静かなおとなしい性格で、夫以外の男性を知らない。中学生の時に通い始めた個別指導塾で、講師のアルバイトをしていた太郎と知り合った。その後、付き合ってくれなければ橋から飛び降りて死ぬと、大人げなく脅迫されて太郎と交際を開始し、結婚に至った。結婚8年目になるが、最近では夫婦生活がマンネリ化し、セックスレス状態が続いている。ある時、太郎の部下である津多と関係を持つことで、太郎の性的興奮を高めて、セックスレスを解消することを提案される。一度は断ったが、何度か津多を家に招くうちに、太郎の目の前で手を握らされたり、キスさせられたりと、津多との関係を深めていくことになる。初めのうちは夫の無茶な提案に腹を立てていたが、次第に津多に心を開くようになり、自分が津多に惹かれ始めていることに気づく。夫を交えて津多に会った翌日には、必ず津多に弁当を作ってあげることにしていたが、ある時津多が会社を休んだことを知り、弁当を持参して津多の自宅を訪ねた。それがきっかけで、夫のいない場所で津多と初めてセックスに及んだ。その後、太郎に実家に帰ると告げて家を出て、津多のもとに身を寄せるようになる。のちに、太郎と離婚することを決心し、津多を介して太郎と離婚に向けての話し合いを進めることになった。太郎は離婚に応じるが、その条件として津多と保ヶ辺朔子のセックスを撮影したいわゆるハメ撮りを要求される。

平野 (ひらの)

エピソード「見舞妻」に登場する、小学校で教師を務める男性。河北たかひろのクラスを担任している。既婚者で、現在妻は出産準備のため北海道の実家に帰省中。ある日の夜、バイクを走らせていた際に河北真冬が運転する車にはねられ、左腕と左足を骨折するケガを負い、入院することになった。真冬は飲酒運転だったため、警察沙汰にしたくないという彼女の意向を汲(く)み、自分で転倒して真冬に助けてもらったことにして、その見返りとして真冬から現金を渡されたが、受け取らなかった。真冬がノリでおっぱいを見せたことがきっかけで、体の関係へと発展した。連日身動きが取れないベッドの上で、真冬を抱くようになる。生徒の保護者と関係を持ったことや、離れて暮らす妻への罪悪感もあり、いつか真冬の夫の河北マサトが病院にやって来るのではないかと恐怖にかられながらも、真冬との逢瀬をやめられないでいる。その後、マサトの失踪をきっかけに、マサトが勤める会社の対応がおかしいことを指摘し、知り合いの弁護士を真冬に紹介した。その後、真冬が自分の子を妊娠。その頃には真冬に対する愛情も強くなっていくが、真冬が夫と離婚し、平野に対しても何も求めることなくシングルマザーとしてやっていく決意を伝えられ、静かに見送った。

河北 マサト (かわきた まさと)

エピソード「見舞妻」に登場する、河北真冬の夫で、河北たかひろの父親。18歳の時に当時15歳だった真冬を妊娠させ、真冬の親に頭を下げて結婚に至った。基本的には子煩悩で家族思いながら、最近転職したばかりでイライラを募らせ、家では真冬に強く当たっている。真冬が車でさやかの家で飲み会をしている中、事前に聞いていたにもかかわらず、翌日の朝から車を使うから今すぐ帰って来いと連絡した。車を返さなければ離婚だと騒ぎ立て、真冬に飲酒運転をさせ、事故を起こさせる結果となる。その後も真冬に対して上から目線で、つねに不機嫌な態度で接している。そんな中、突然出張先で行方をくらませた。会社の説明では、河北マサト自身が担当した仕事で大きな赤字を出してしまう。さらに赤字を埋めるよう会社側から責められた結果、ほかの客の500万円を横領したと会社の上司から報告を受ける。警察には言わない代わりに500万円を支払うように真冬に伝えた。しかし、その話を聞いて会社の姿勢に疑問を持った平野が、知り合いの弁護士にの協力を要請し、お金を支払わずに解決できる可能性があることが判明。真冬からそのことを知り、後日無事に自宅に戻った。そして真冬の妊娠と、不倫の事実についても知ることになるが、追及はしなかった。

河北 たかひろ (かわきた たかひろ)

エピソード「見舞妻」に登場する、河北真冬と河北マサトの息子。小学校2年生で、平野がクラス担任を務めている。真冬のことが大好きだが、最近マサトが真冬に厳しく当たっている姿をよく見ているため、子供心に傷ついている。「お母さんは平野と結婚したら?」と発言するなど、あまり深く考えずに思ったことを口にすることがある。しかし、つねに真冬に嫌な思いをして欲しくないという優しい気持ちを持っている。両親にはなかよくして欲しいと願っており、真冬とマサトが同じ布団で眠っている姿に安堵し、真冬の妊娠を知った時には心から喜んだ。クラスメイトのゆうすけから「たかひろのお父さんとお母さん離婚間近なんだって?」と質問を繰り返される度に違うと返事をしていたが、徐々に質問を無視するようになり、最終的には我慢できなくなってゆうすけを殴ってしまう。それを知った平野からは、一方的に叱られることはなく、殴ったことに対してのみ謝罪するように求められた。そのおかげもあり、お互いに納得したうえでゆうすけと仲直りすることができた。のちに、両親が離婚することになった際、家庭環境が変わるという漠然とした不安を持っていたが、山内の言葉によって勇気づけられる。

さやか

エピソード「見舞妻」に登場する、河北真冬と理沙の友達。お気に入りの番組「テレフォン人生相談」を毎週欠かさず視聴している。真冬には日常的にネイルを担当してもらっている。真冬や理沙と自宅で酒を飲んでいた時、突然河北マサトから真冬に連絡が入り、飲酒していたにもかかわらず、車を返さないと離婚だと騒ぎ立てた。そのため、真冬が飲酒運転で事故を起こすことになったことも知っている。真冬が河北たかひろのためにマサトとの関係を維持しようとしていることについて、目先だけうまくいけばいいと思っているのではないかと指摘。それは子供のためではなく、真冬の保身にすぎないとバッサリ切り捨てた。あくまでもマサトを気遣う真冬に、仕事のストレスを家族にぶつけるマサトの行いは立派なDVだと断言。妻に飲酒運転をさせたのは、殺人未遂といっても過言ではないと言い放った。また、平野が入院している病院に看護師の知り合いがおり、連日平野に会いに来る真冬を目撃しているため、真冬と平野が不倫関係にあると察した。自分が妊娠中、夫が女子高校生と浮気して傷ついた過去を持つ。しかし妊娠をきっかけに、夫の性欲が汚いもののように思え、ないがしろにしていたこともあり、夫の行動に一定の理解を示している。そんな自分の経験を踏まえ、真冬と平野の関係については応援もしないが、責めもしないというスタンスを保っている。

理沙 (りさ)

エピソード「見舞妻」に登場する、河北真冬とさやかの友達。離婚歴があり、現在はシングルマザー。両親の協力を得て子育てしながら風俗で働いている。真冬とさやかの家で酒を飲んでいた時、突然河北マサトから真冬に連絡が入り、飲酒していたにもかかわらず、車を返さないと離婚だと騒ぎ立てた。そのため、真冬が無理矢理飲酒運転で帰宅するはめになったことも、真冬が飲酒運転で事故を起こすことになったことも知っている。真冬が河北たかひろのためにマサトとの関係を維持しようとしていることについて、離婚を勧めるさやかと共に、離婚にはエネルギーが必要となるとしながらも、両親が健在で協力が得られるならシングルマザーの生活も可能だと、DV気味のマサトと離婚することを勧めた。真冬に対しては、義理堅く古風な考え方で、曲ったことは許せないというまっすぐな印象を抱いており、お金のために体を売っている自分が汚く感じ、自己嫌悪に陥ることが多かった。しかし真冬が、平野と不倫をしていることを知り、気持ちが少し楽になった。

山内 (やまうち)

エピソード「見舞妻」に登場する、平野と同じ学校で教師を務める男性。平野が入院中、仕事のフォローをしたり、病室にプリントを届けたりしている。連日平野の病室に河北真冬が訪れていることを知り、二人が不倫関係にあるのではないかと勘ぐっており、平野から何度否定されても疑っている。子供たちの母親を女性として見ているところがあり、裏では若さや胸の大きさなどをチェックしている。実は最近入籍したばかりで、結婚に対して懐疑的な考えの持ち主だったこともあり、どんな心境の変化があったのかと平野から聞かれ、ただ血迷っただけと説明していた。他人のことを根掘り葉掘り聞き出し、一方的に情報収集するのが好き。実は山内自身も両親が離婚して家族がバラバラになり、祖父に育てられた過去を持つ。しかし暗さはまったくなく、まるで『ドラゴンボール』の孫悟空みたいだと、むしろかっこよささえ感じていたことを明かしている。そんなポジティブな考え方が、両親の離婚を直前にした河北たかひろの不安を払しょくする一助となった。

ゆうすけ

エピソード「見舞妻」に登場する、小学2年生の男子。河北たかひろのクラスメイト。たかひろの両親が不仲だという噂を知り、連日たかひろに「たかひろのお父さんとお母さん離婚間近なんだって?」と質問を繰り返した。最初のうちは、たかひろから違うと返されていたが、たかひろが次第に無視するようになり、最終的には我慢できなくなったたかひろに殴られてしまう。当初、自分は何もしていないのにいきなり殴られたと主張していたが、担任の平野からの問いかけに、たかひろが困る質問を繰り返したことを白状。たかひろを怒らせた理由を理解し、殴ったたかひろから謝罪を受けたことで関係は修復された。

タクゾー

エピソード「頭痛妻」に登場する、半年ほど前から川辺に仮住まいしている男性。年齢は50歳。2か月前に田口慈子と偶然知り合い、それ以来体の関係を持つようになった。実は慈子の夫であり、春斗の父親。慈子とは大学のワンダーフォーゲル部で知り合い、結婚した。現在は会社の社長を務めているが、慈子が事故に遭って頭を打ったことで自分の顔を忘れてしまい、半年前に慈子から家を追い出されてしまう。当初は5年前にした浮気に思うところがあってのことなのかと思っていたが、慈子がタクゾーの顔を認識できないことに気づき、仮住まいで他人として接触するようになった。他人として接するうちに、慈子に美しさと色気を感じるようになり、夫婦として生活している時よりも、濃密に互いの体を求めるようになった。タワーマンションに住んでいた時よりも、むしろ仮住まいの今の生活が気に入っており、この生活でもいいと感じ始めている。また、時おり春斗も訪ねて来てくれるため、慈子のことや今後のことを相談している。

春斗 (はると)

エピソード「頭痛妻」に登場する、田口慈子の息子。慈子が事故に遭って以来、様子がおかしいことに気づいており、病院で検査を受けても異常が見られなかったが、高次脳機能障害である可能性が高いと考えている。慈子が、父親のタクゾーの顔だけをすっかり忘れてしまっているため、慈子が夫以外の人と不倫関係にあることに罪悪感を持ってタクゾーに会いに行っていると疑い、あえて母親の秘密を知っているとかまをかけてみたりした。学校や塾通いをしながら、川辺にあるタクゾーの仮住まいに顔を出し、慈子のことや今後のことを相談している。

(とおる)

エピソード「芳香妻」に登場する、地方の会社に勤める男性。会社では数少ない若者で、年齢は24歳。子供のようにわがままを言ったり駄々をこねたりすることもあるが、持ち前のお調子者キャラクターで、周囲から愛されている。年上の女性が好きで、同世代や自分より年下の女性には苦手意識を持っている。幼い頃に母親が浮気して出て行っており、現在もどうしているかは知らない。だが、そんな自分を本当の子供のようにかわいがってくれた人がいたため、寂しさを感じることはなかった。それは幼なじみである伊紀の母親の空夏だった。いつしか空夏に恋心を抱くようになり、一方的にアプローチを続けてきたが、ずっと拒否されており、それでもあきらめずに関係をせまっていた。最近空夏に乳がんが発覚し、保険適用外の治療にはお金がかかるからと、東京で入院生活を送る空夏に現金を送るなどしていたが、もう会わないと本気で突き放されてしまう。アロマが趣味で、自宅にはエッセンシャルオイルがたくさんストックされている。高級なオイルの購入と空夏への送金で、光熱費の支払いが滞りがちになっている。空夏の体臭はいつも花のようないい香りで、幼い頃からとても好きだった。その香りを再現して、いつでも空夏のそばにいるような感覚でいたいと考え、日夜調合に勤(いそし)しんでいるが、いまだ完成していない。そんなある日、会社の先輩の軒端薫の体臭が、空夏の香りと似ていることに気づき、会社の飲み会の帰りに強引に薫を家に招き入れた。そして、空夏と香りが似ている薫に体臭を嗅がせて欲しいとお願いし、しぶしぶ承諾した薫と一線を越えてしまう。その後、東京赴任が決まるまで、何度か薫と逢瀬を重ねることになる。しかし東京で空夏と再会し、改めて思いを伝えたことで、空夏から受け入れられて生活を共にすることとなる。

空夏 (あきな)

エピソード「芳香妻」に登場する、伊紀の母親。現在は東京で暮らしている。シングルマザーとして女手一つで伊紀を育てながら、伊紀の幼なじみの融もかわいがり、自分の子供のように接していた。母親のいない融にとってのよき理解者で、空夏の存在が融の支えとなっていた。いつもいい香りを漂わせているが、特に香水は使っていない。いつしか融が自分に恋心を抱くようになり、関係をせまられるが、息子の友達を受け入れるわけにはいかないと拒否し続けてきた。それでもあきらめずにアプローチを続ける融を突き放せずにいたが、最近になって空夏の乳がんが発覚。治療を続ける中、保険適用外の治療にはお金がかかるからと現金を送ってくれ、何かと自分のために尽くそうとする融を全力で突き放した。実際は未来ある若者は、健康で若い女性を選ぶべきと考えてのことだった。しかし、それでも融の猛アプローチは続き、のちに融と二人で暮らすことを決める。融からは「アキちゃん」と呼ばれている。

伊紀 (よしのり)

エピソード「芳香妻」に登場する、空夏の息子。融の幼なじみで、小学生の頃、よく融を家に呼んでいっしょに遊んでいた。空夏が融に息子のように接し、さらには融が空夏を慕っていることに気づき、融にいっしょに住まないかと声をかけたこともあった。伊紀自身が入院中、顔に布をかけて死んだフリをするなど、悪ふざけが大好きなお茶目な性格をしている。空夏と融の関係については知らない。

宮園 一久 (みやぞの かずひさ)

エピソード「園芸妻」に登場する、宮園花純の夫で、宮園史久の兄。舌先は二股に別れ、背中には花と鬼の面にヘビが絡んだ刺青を入れている。子供の頃は優しい性格だったが、活動家として崇(あが)め奉られていた父親に逆らったことで、一升瓶で頭を殴られ大ケガを負ってしまう。その影響から人格が悪魔のように変貌した。仕事は女性のレイプ動画を撮影し、販売すること。そのため数多くの女性を調査しており、一度宮園一久に目を付けられた女性は、絶対に逃げられないといわれている。そんな中、好青年のふりをして花純が働くホームセンターに通い詰め、口説き落とした。絶対的な関係を構築してから背中の刺青を見せ、花純を騙す形で妊娠させて強引に結婚した。結婚後も自分勝手に振る舞い、基本的に不在がち。時おり帰宅しては、花純を全裸にしていたぶり、花純に思いを寄せていた史久に自分の目の前で花純を抱かせて楽しんでいる。一久自身には性器がなく、レイプして捨てた女性の家族に拉致され、性器を切り落とされたと思い込んでいるが、実際は有機化学の知識を持つ花純に作らせた麻薬を飲み、強い幻覚作用に襲われ、自らの性器を切り落とした。しかしその時の記憶はいっさいなく、花純から聞かされたことを真実と思い込んでいる。のちに恨みをため込んだ花純によって、庭の白い花、エンジェルトランペットを食事に盛られ、殺害された。死体は花純と史久によって庭の一角に埋められ、死体の土には金魚草を植えられた。10年ほど前、いとこの八起の母が夫から経済的DVを受けていることを知り、夫に暴行を加えて八起とその母親を助けたことがある。そのため、八起の父親からも個人的な恨みを買っているほか、その性格や職業柄から多方面から恨みを買っている可能性が高い。

宮園 史久 (みやぞの ふみひさ)

エピソード「園芸妻」に登場する、宮園一久の弟。一久とは正反対で気が小さく、優しい性格をしている。もともとホームセンターの園芸コーナーで宮園花純を見かけ、ひそかに思いを寄せていたが、隠し撮りした写真を一久に見られたあと、嫁として花純を紹介された。複雑な思いを抱きながらも、一久と花純の子、宮園紀里を自分の子供のようにかわいがり、面倒を見ていた。不在がちな一久は時おり帰宅しては、花純を裸にして楽しんだのち、宮園史久に花純を抱くことを強要している。性格に問題のある兄には逆らえず、自分が一久の機嫌を損ねるとその矛先は花純に向かい、花純への怒りは紀里へと向かってしまうため、日常的に兄の言いなりにならざるを得なかった。一久への恨みと花純への思いが募り、一久の殺害を花純に提案する。花純が庭の白い花、エンジェルトランペットを使って一久に毒を盛り、史久自身がロープで首を絞めてとどめを刺した。殺害に至るまでは、死体を埋めるための穴を掘りやすくするために庭を耕したり、死体に虫が湧いた時のためにあひるを飼い始めたりと、一久殺害後のことを考えさまざまな準備を続けていた。一久の死後、花純と紀里と共に平穏な日々を送っている。

宮園 紀里 (みやぞの きり)

エピソード「園芸妻」に登場する、宮園花純と宮園一久の娘。幼稚園に通っている。宮園史久の姪にあたる。元気いっぱいで生意気盛りのしっかり者。一久によく家を追い出されては、自宅のとなりに住む八起や八起の母を頼って助けてもらっている。一久を嫌っており、史久に父親になってもらい、弟妹を作って欲しいと思っている。

八起 (やつき)

エピソード「園芸妻」に登場する、八起の母の息子。宮園一久とはいとこ同士で、宮園家のとなりの家に住んでいる。一久から家を追い出された宮園紀里をよく保護し、かわいがっていた。10年ほど前、母親と八起が父親から経済的DVを受けていたため、そのストレスから母親の髪はすべて抜け落ちてしまったことがあった。そんな自分たちを助けてくれたのが一久で、一久に恩を感じていた。一久の人格に問題があることを知っていながらも、その敵を寄せ付けない強さにあこがれを抱いている。実は1か月ほど前に偶然、宮園花純と宮園史久が一久の死体を埋めている姿を目撃。とっさにスマートフォンで動画を撮影し、決定的な殺人の証拠を手に入れた。この動画を利用するまでもなく、そのうちすべてが明らかになるだろうと考えていたが、以前一久に無理矢理渡された麻薬の存在を知った蘭リナが、薬欲しさに自分を訪ねて来て、薬の効果を試そうと体の関係をせまられた。脱童貞を夢見ていたため喜んで応じたものの、いっしょに飲もうと言われた薬は飲めずにいたところ、リナが白目をむいて泡を吹いて死んでしまう。動揺してその場を逃げ出し、助けを求めたのが花純と史久だった。八起は二人が一久を殺害し、死体を遺棄したことを知っているが、誰にも言わないと誓いを立てたうえで、二人に自分を助けて欲しいと懇願。花純と史久の協力でリナの死体を庭に埋め、事なきを得た。

蘭 リナ (あららぎ りな)

エピソード「園芸妻」に登場する、クラブのホステスを務める女性。「蘭リナ」は源氏名で、宮園一久から付けてもらった。一久とは1か月ほど前から連絡が取れない状態で、実家にいると聞いていたため、宮園家を訪れた。対応した宮園花純が妻だと名乗ったことで、その時初めて一久が既婚者であることを知った。一久の居場所はわからないと言われ、花純から一久と手を切るように伝えられたが、もともと不倫のつもりはなかったため、食い下がった。結局、目的は一久の所在よりも、一久からもらった麻薬が目的だった。それを花純に見抜かれ薬のある場所として、八起の家を紹介される。八起が薬を持っていることを確認すると、いっしょに飲んで効果を試そうと体の関係をせまり、喜んで応じた八起の上に乗った途端、リナ自身で飲んだ薬が決まりすぎて白目をむき、泡を吹いて死んでしまう。

義母 (ぎぼ)

エピソード「園芸妻」に登場する、宮園花純の義母で、宮園一久と宮園史久の母親。おとなしい性格をしている。活動家の夫が当時まだ幼かった一久に手をあげたせいで、優しかった一久の人格が変わってしまったことを許せず、夫に恨みを抱いて殺害を目論んでいた。自分にできる殺し方を模索し続けた末に、自宅の庭の奥に植えた白い花、エンジェルトランペットを炒め物にして夫に食べさせ、死に至らしめた。夫の死体は自宅のトイレの裏の土の中に埋めているが、その後誰も夫を探しに来ることは一度もなかった。このすべてを、自分が死を間近にした病床で、花純にだけ打ち明け、この世を去った。花純に対しては、一久から紹介されて以来ずっと優しく接してかわいがっていた。

八起の母 (やつきのはは)

エピソード「園芸妻」に登場する、八起の母親。宮園一久とはいとこ同士で、宮園家のとなりの家に住んでいる。一久とは年齢は離れているが姉弟のように仲がよく、かつて一久に助けられたことがあり、彼には恩を感じている。その一方で、一久の人格に問題があることも承知しており、1か月も自宅に帰って来ない一久のことを少し心配している。それは一久が、自分の夫をはじめとする多方面に恨みを買っていたことを知っているからで、どこかで殺されていても仕方がないかもしれないと思っている。

めぐみ

エピソード「風水妻」に登場する、まだ売れていない漫画家の男性。交際中の彼女とは、地元である長野の高校の同級生で、高校3年生の頃から付き合い始め、今年で交際4年目になる。1年前から遠距離恋愛中。漫画の手法を手書きからデジタルに変え、アシスタント業も卒業して本気で連載を始めた。まだまだ軌道には乗っていないものの、つねに忙しさに追われている状態。そんな中、彼女から絵が変わったこと、デジタルでは漫画を描いているとはいえないという言葉に傷つき、自分を見失いそうになる。しかし、急遽(きゅうきょ)頼んだアシスタントとしてやって来た河和田ふみに励まされ、優しい言葉をかけられたことをきっかけに気が緩み、一線を越えてしまう。直後に自分を取り戻し、彼女が一番大切なことを思い出し、翌日彼女の方から心無い言葉を謝罪する連絡がきたため、仲直りすることができた。

キョウ

エピソード「風水妻」に登場する、高級マンションに住むアジア系の外国人女性。夫は社長を務めている。風水に詳しく、同じマンションに住む河和田ふみに、災いを跳ね返すために八卦(はっけ)鏡を買った方がいいと勧めたため、警戒されている。自分がしつこく言いすぎ、お節介しすぎたことに気づき、マンションを引っ越す際にふみに謝罪。そして、風水の大切さを改めて語った。

高尾 修司 (たかお しゅうじ)

エピソード「登山妻」に登場する、高尾美峰の夫で、美樹の父親。かなり立派な性器の持ち主。美峰が産後に職場復帰して以来、セックスに応じてくれなくなったことを寂しく思っている。美峰と相談の上、夫婦交換サークルに入会した。サークルに入会したものの、実際に夫婦交換には至っていない。そんな中、美峰からママ友の三峰友里との3Pセックスの提案を受け、承諾した。戸惑う友里を優しく導き、セックスに至った。つねに趣味の登山のことを考えている美峰に対し、山のことばかり考えないで、家族のことに集中して欲しいと否定的な発言をした。

三峰 幹隆 (みつみね みきたか)

エピソード「登山妻」に登場する、三峰友里の夫。約1年前から友里とはセックスレス状態が続いている。登山が趣味で、よく友里を誘っているものの、あまりいい顔はされていない。自分との時間を作ろうとしないにもかかわらず、セックスだけは求めてくる友里に不満を抱いている。友里がセックスを欲していることはわかっているが、男にとってもセックスが気持ちいいと思われることが嫌で、半ば意固地になって拒絶しているところもある。ある時友里から、高尾美峰、高尾修司夫妻との夫婦交換を誘われたが、承諾しなかった。その後、美峰から友里と修司がいなくなったと言われ、二人が向かった可能性があるという山へと向かう。しかし、それがウソだと知りながら、夫婦の問題を美峰と話しながら美峰と二人で登山を始める。当初は、夫婦交換というモラルに反した考えを持つ美峰に強く反発し、美峰から夫婦間の問題に関して口を出されることに嫌悪感をあらわにするが、次第に感情は変化していく。美峰からの告白をきっかけに一線を越えることになった。

三峰 友里 (みつみね ゆり)

エピソード「登山妻」に登場する、三峰幹隆の妻。約1年前から幹隆とはセックスレス状態が続いている。三峰友里自身は性欲旺盛で、夫とのセックスを望んでいるが、疲れていることを理由に拒絶されている。ある時、ママ友である高尾美峰とセックスレスの悩みについて話した際、互いに同じ悩みを抱えていることを知り、美峰とその夫の高尾修司と友里の三人でセックスをしないかと提案を受ける。最初は戸惑っていたものの、美峰がいることの安心感から、段階を踏んで修司とのセックスに臨み、いつしか心まで修司に夢中になる。一人息子の岳斗と、高尾家の娘の美樹とは同じ年のクラスメイトで仲がいい。幹隆の趣味である登山に付き合うことを嫌っている。

(じん)

エピソード「又鬼妻」に登場する、賢の父親。山でマタギとして動物を狩り、生活している。妻はマタギの仕事に理解がなく、周囲からの目を気にして出て行った。医者から余命1年を宣告されたことをきっかけに、残りの人生を自分の好きに生きることを決意。賢と同居している自宅にデリヘル嬢の宍戸もみじを呼び、意気投合してもみじを自分の弟子にすることを決めた。もみじを村一番の狩りガールにすることを目的に、日々指導を行なっている。もともと、医者の世話にはならないというのが口癖の頑固者だが、もみじに諭されてきちんと薬を飲むようになった。

(けん)

エピソード「又鬼妻」に登場する、仁の息子。仁と共に暮らしている。年齢は21歳。山でマタギとして猪(いのしし)や鹿、鳥などの獣を狩って生活している。母親はマタギの仕事に理解がなく、賢と仁を置いて出て行ってしまう。ある日、自宅に仁がデリヘル嬢の宍戸もみじと二人で風呂に入っているところを目撃。そこで初めて仁が余命宣告されたことを知る。残された人生を好きに生きたいという仁の気持ちを汲み、仁が弟子にすることを決めたもみじとの共同訓練が始まった。初めはもみじを受け入れられなかったが、もみじのおかげで頑固者の仁がきちんと薬を飲んだことを知り、素直に感謝の言葉を伝えた。その際、もみじにせまられて一線を越える。実は狩猟免許を取得したばかりの頃、山の神の化身と崇められるツキノワグマを殺したことがあった。人間を襲ったため、猟友会に駆除要請がきたことによるものだったが、クマが子連れだったこともあり、罪悪感が今でも心に暗い影を落としている。仁から、そのクマを殺すと山の神の祟(たた)りがあると教えられてきたため、いつか祟りがあるのではないかと恐れており、もみじとの行為中、もみじが山の神の化身に見える一幕もあった。

真田 早矢 (さなだ さや)

エピソード「伴走妻」に登場する、真田颯太の妻。年齢は28歳。フルマラソンを3時間以内で走破するほどの実力を持つ市民ランナーだった。2年前、東京マラソンのチャリティー枠で、会社を代表して走ることになった。そこで当時同じ会社に勤めていた颯太を強引に一般枠でエントリーさせ、本番当日までトレーニングに付き合わせた。しかし、この時は颯太がマラソンを苦痛に感じていることに気づかず、自分中心のトレーニングを続けた。そのあまりの苦しさから、颯太に、もし走り切れなかったらマラソンをやめてもらうと言われてしまう。しかしその後は、マラソンにのめり込むようになった颯太に、トレーニングに行こうと急(せ)かされるようになる。一方で、真田早矢自身は周囲の期待からマラソンが苦痛になり、本番では散々な成績に終わってしまう。これをきっかけに、早矢は会社を退職し、マラソンもやめて酒に溺れるようになった。颯太からはつねに高圧的な態度で接され、走ることへの興味は失っている。

坂木 和香 (さかき わか)

エピソード「伴走妻」に登場する、真田颯太が代表を務める社会人マラソンサークルに所属している女性。まめにトレーニングに参加しており、泊りがけの大会にも出場している。しかし、和香の夫が坂木和香一人での宿泊を心配し、いっしょに参加することを希望したため、颯太に無理を言って和香の夫の分の部屋を取ってもらった。和香自身がマラソンにハマったのは、夫の飲酒が主な原因。和香の夫が酒に酔って思い出のグラスを割ってしまったことを根に持っている。また、日々ストイックにトレーニングを続ける自分に対し、夫が不倫を疑っていることを知り、静かに怒りを覚える。夫には疑いをかけた罰として17キロを走り抜くことを課し、和香の夫が酒をやめたら自分もマラソンをやめると宣言した。

和香の夫 (わかのおっと)

エピソード「伴走妻」に登場する、坂木和香の夫。社会人マラソンサークルに所属する和歌が、あまりにもストイックにマラソンに打ち込んでいたため、真田颯太と不倫をしているのではないかと疑った。一人宿泊してマラソン大会に参加する和香を心配して、和香の夫自身も同行すると無理を言って飛び入り参加した。そんな中、和香に浮気を疑っていることを知られ、それに腹を立てた和香から、17キロを走り抜くことを課された。酒に溺れることが多く、限りなくアルコール依存症に近い。しかし自分にその自覚はまったくなく、妻からは酒をやめたら自分も好きなマラソンをやめると言われている。

ゆり葉の夫 (ゆりはのおっと)

エピソード「改装妻」に登場する、箱崎ゆり葉の夫。実父の葬儀の際、母親の両子との同居について妹たちと話し合うも、妹たちに母親との同居を拒絶される。妹たちは、女性であるという理由だけで、教育にはいっさいお金をかけてもらえなかったことを恨んでおり、ゆり葉の夫が大学進学費用だけでなく、家の頭金まで両子に出してもらったのだから、ゆり葉の夫が同居するべきだと半ば押し切られた形となった。妹たちとの話し合いの場にゆり葉は出席せず、すべて決まってからゆり葉に報告があった。ゆり葉からは自分のいないところで大事なことを決めないで欲しいと詰め寄られるも、どうせ結果は変わらないのだから、話し合いなど時間の無駄だとゆり葉の言葉を切り捨てた。その上、昔は自分に従順なかわいい妻だったのにと暴言を吐く。妻には、自分に従って尽くす素直な女性像を求めており、そもそも対等な関係は求めていない。ゆり葉が痣を隠すために厚化粧を始めた時も否定的な意見ばかりで、痣の治療を希望した時も反対した。基本的に、痣を持つ不憫(ふびん)な女の救世主である自分に酔いしれている。

百樹 (ももき)

エピソード「改装妻」に登場する、大工を生業とする男性。リフォーム現場で箱崎ゆり葉と知り合った。顔の額の左側に角材にぶつけた際にできた痣があるが、ゆり葉から化粧で隠している同じ場所の痣を見せられ、なんとなくゆり葉に興味を抱き始める。実は、背中には大きなフクロウの刺青がある。これは、祖父も父親も大工という家系に育ったため、職人の神様とされるフクロウの刺青を背中に入れている。一生消えないことは覚悟の上だったが、最近は邪魔だと思うようになっている。それは自分の刺青のせいで、まだ小さな息子といっしょにプールにも温泉施設にも行くことができないため。また、百樹の妻からも息子がかわいそうだと責め続けられている。妻は何かと実家を頼りがちで、特に息子が生まれからは妻の実家を優先し、日常的にないがしろにされて居場所がない状態。偶然外出中にゆり葉と遭遇し、背中の刺青を消すことができるかと相談した。ホテルに部屋で刺青への思いや、妻子との関係性などをゆり葉に語りながら、ゆり葉から背中の刺青を一時的に隠す処置を施してもらった。その際、ゆり葉と同じ額の痣は仲間意識から処置しなかったが、結局妻との日常生活のつらさをゆり葉にぶつけ、一線を越えることになった。のちに、ゆり葉と駆け落ちすることになる。

百樹の妻 (ももきのつま)

エピソード「改装妻」に登場する、百樹の妻。まだ幼い息子がいる。若い頃は百樹にあこがれ、背中の刺青を見ても臆せずに結婚することを決めた。一時は百樹と同じ刺青を入れたいとさえ思ったことがあったが、両親から強く反対され、断念した過去がある。しかし結婚後は、百樹の背中に刺青があるため、いい会社に就職できず、生命保険にも入ることができないと嘆いている。そして出産すると、息子が百樹といっしょにプールにも温泉施設にも行くことができないと憂えている。また、賃貸暮らしであることに不満を抱き、一軒家を持つためには自分が風俗で働くしかないと本気で考えている。何かと実家の両親に頼りがちで、両親といっしょに食事に行ったり、百樹とは行けないプールや温泉施設を楽しんでいる。しかし両親は、働き者で家族をしっかりと養っている百樹を認めているが、百樹の妻だけは納得していない。今は結婚したことすら後悔しており、両親には、どうして結婚に反対してくれなかったのかと、一方的に責任を押し付けている。

両子 (りょうこ)

エピソード「改装妻」に登場する、長男のゆり葉の夫と二人の妹の母親。箱崎ゆり葉の姑(しゅうとめ)にあたる。娘たち曰(いわ)く、両子は人をいらつかせる天才。ゆり葉には一見理解があるようなそぶりを見せているが、何かと口うるさい。もともと女性は学歴が必要ないという古い考えを持っており、娘二人には教育にお金をかけず、大学進学も許さなかった。しかし、ゆり葉の夫には大学に進学させた上、家を購入する際も頭金を出しているため、娘二人からは恨まれている。夫を亡くして一人身になったことで、ゆり葉の夫とゆり葉との同居が決まり、それにあたって家をリフォームすることが決まる。このリフォームは両子自身のためのものだからと、自分の都合のいいようにオーダーしようとするが、百樹からは家族と相談した方がいいと勧められて逆ギレ。長男は好きにしていいと主張し、他人は関係ないとゆり葉を他人扱いする暴言を吐いた。さらに、その言葉に不快感をあらわにする百樹に、気味が悪いから顔の痣を隠せと言い放った。その後、ゆり葉が百樹と駆け落ちした時にお金を引き出していったため、リフォームは中断。それにショックを受け、両子は入院することとなった。

籠井 (かごい)

エピソード「駝鳥妻」に登場する、大須日和子の秘書的な存在の男性。日和子に命じられると、どんな無理難題でも成し遂げる行動力を持っている。もともと日和子から好意を寄せられているが、実は籠井自身は日和子の父親の愛人の子であり、日和子に、自分が血のつながった兄妹であることを明かした。20歳の時に女性器のない日和子から、女性器が欲しいと頼まれ、医師の大須を紹介した。その後、日和子は大須のデザインした女性器を手に入れ、さらに大須と結婚することとなる。日和子とは兄妹でありながら、彼女が結婚してからもその関係は続いている。

大須 (おおす)

エピソード「駝鳥妻」に登場する、大須日和子の夫。医師を務めている。ある日、レストランで日和子と食事中、大須のクリニックの元受付だった鷺ノ宮凛音が現れ、大須の子供を妊娠したと訴えられる。大須には身に覚えはなかったものの、当時相当酒に酔っていたという凛音の言葉を聞いて自信が持てなくなる。直後にその場に倒れ込んでしまった凛音を病院に搬送し、その世話を日和子に任せた。その後、籠井の調査により、自分の潔白は証明され、凛音がお金欲しさに認知を企んでいたことを知ることになる。基本的に温和な性格で、どんなことも受け入れる度量の持ち主。自分のデザインした日和子の女性器に惚れこんでいる。日和子を溺愛しているが、日和子と籠井の関係を心の底では疑っている。日和子が凛音の子供たち、ねおん、じゅのん、れもん、ころん、まのんを引き取ってからは、楽しそうに子育てに参加している。

鷺ノ宮 凛音 (さぎのみや りおん)

エピソード「駝鳥妻」に登場する、ねおん、じゅのん、れもん、ころん、まのんの母親。大須が営むクリニックで受付を担当していた女性。レストランで妻の大須日和子と食事中の大須のもとに姿を現し、大須の子供を妊娠していることを明かした。しかし、その直後に体調が急変。その場で倒れてしまい、大須によって病院に運ばれた。茨城県坂東市に住んでおり、ボロボロの戸建てに五人の子供たちと生活を共にしている。その後、日和子から大須とは無関係であることを突き止められ、お腹の子供の父親は別にいることが判明する。お金がないあまり、大須に認知してもらえれば、大金を手に入れられると目論んでいた。しかし日和子から、5000万円分の高級ブランドの服やバッグ、装飾品などをもらったことで、大須への認知要求を取り下げた。日和子からの見返りの要求は、鷺ノ宮凛音の子供たち五人を日和子に渡すこと。突拍子もない要求に凛音は驚き、当初はその要求を拒むが金に心がゆらぎ、結局全員日和子に渡すことを決めた。長女のねおんの美しさに嫉妬し、来客の際には外に出ているように指示するなど、理不尽な扱いをしていた。女の子は生意気でうるさいと、男子のじゅのんだけをかわいがっていた。

ねおん

エピソード「駝鳥妻」に登場する、鷺ノ宮凛音の長女。年齢は14歳。ある日突然、大須日和子の家に連れて来られ、凛音の妊娠と入院の事実を聞かされることになった。髪はボサボサで、暗い表情を浮かべているが、姉妹で一番の美人。貧乏を理由に、ねおんの身なりにお金をかけることもできなかったが、日和子からの指示で身なりを整えた結果、美少女へと変身を遂げた。もともと美人だったことから凛音に嫉妬され、かわいい恰好(かっこう)をすることができなかった。来客時には、ねおんだけが外に出るようにいいつけられるなど、理不尽な扱いを受け続けてきた。

じゅのん

エピソード「駝鳥妻」に登場する、鷺ノ宮凛音の長男。年齢は10歳。ある日突然、大須日和子の家に連れて来られ、凛音の妊娠と入院の事実を聞かされることになった。見た目どおりのやんちゃな性格で、坊主頭にしている。あまりにもじっとしていられないため、危険防止のための応急処置として、籠井から米俵を背負わされている。自分たちに新しい兄妹が生まれると聞き、喜ぶ様子を見せた。そして、めでたいことなのに喜ばない奴はグーでパンチだと言い放ち、祝福しようとしない妹のれもんをけん制した。凛音からは、一番かわいがられている。

れもん

エピソード「駝鳥妻」に登場する、鷺ノ宮凛音の次女。年齢は7歳。ぱっつん前髪にツインテールの髪型をしている。ある日突然、大須日和子の家に連れて来られ、凛音の妊娠と入院の事実を聞かされることになった。ころんが生まれてから、極端なおしゃべりとなり、つねに誰かに話を聞いて欲しいと思っている。自分の話を聞いて欲しいあまり、聞いてくれそうな知らない大人につきまとうようになったため、問題児扱いされている。あまりにもおしゃべりなため、籠井からシルバー人材センターで話し相手を探されることになった。新しく兄弟が増えると、その都度れもん自身や妹の性格が変貌するため、また兄妹が生まれれば1歳の次男、まのんも性格が変わってしまうかもしれないと、素直に喜べない複雑な心境となる。

ころん

エピソード「駝鳥妻」に登場する、鷺ノ宮凛音の三女。年齢は5歳。おかっぱ頭をショートヘアにしている。ある日突然、大須日和子の家に連れて来られ、凛音の妊娠と入院の事実を聞かされることになった。怒りっぽい性格で、口が悪い。日和子に暴言を吐くだけでなく、跳び蹴りをしたりと暴力行為を働いていた。籠井からはレッドカード扱いされ、離れた島に隔離されることとなる。つねにヤクザのよう口調でしゃべる。1歳の次男、まのんが生まれてから特に凶暴になった。

響子 (きょうこ)

エピソード「美容妻」に登場する、飛矢の母親。佐伯容子とは高校時代のクラスメイト。高校時代は甘えん坊な性格で、人気者だった。勉強が苦手なことから、テスト期間中だけ容子となかよくしており、勉強のフォローをしてもらっていた。特に男子から人気が高く、響子が振った相手が窓から飛び降りて大ケガを負ったこともあった。そんな中、担任の小保貝とプライベートで行動するようになり、響子から誘惑して一線を越えた。その後、妊娠が発覚して19歳で小保貝と結婚し、飛矢を出産することとなった。現在は高級な美顔器などをネズミ講的に売りつける仕事をしているが、それをネットワークビジネスと言い張っている。容子とは、飛矢が5歳の時に会って以来疎遠になっていたが、美顔器を売りつける目的で連絡を取り、結局美顔器を15万円で売りつけることに成功した。しかし、その後に飛矢を通じて容子が夫の佐伯雅之を亡くしていたことを知り、申し訳ないことをしたと返金処理し、かご盛りのフルーツを送った。

飛矢 (とびや)

エピソード「美容妻」に登場する、響子と小保貝の息子。大学生の青年で、年齢は18歳。母親の友人の佐伯容子が、響子に呼ばれ自宅に来たことで知り合う。容子が響子から高級美顔器を買わされたため、それを運ぶために響子の家を訪れた。しかし、そこで容子が夫の佐伯雅之を亡くしたことに気づき、響子に伝えていないことを知る。そんな状況にある女性に、欲しくもない美顔器を購入させるわけにはいかないと、持参した美顔器一式を自宅に持ち帰り、響子に返金をせまった。その後、容子の部屋に雅之の同僚の野岸由季央が出入りしている姿を目撃。容子と由季央の仲を疑い、容子への思いに火が付いてしまう。直球のアプローチで容子の心をつかみ、母親の友達だからと拒絶する容子を丸め込んで一線を越えた。未成年でありながらヤケ酒をして泥酔し、容子の家に押しかけては体を求め、その後もセックスフレンドの関係が続いた。中高生時代から交際していた彼女がいたが、偏差値の低い大学に進学したとたん、金持ちのオヤジに鞍替(くらが)えされ捨てられてしまう。

小保貝 (おぼがい)

エピソード「美容妻」に登場する、響子の夫で、飛矢の父親。佐伯容子や響子の高校時代の担任を務めていた男性。生徒からのどんな質問も機械的に淡々と答えるため、ビジュアルと苗字が相まって「ロボ貝」と呼ばれ、生徒たちのあいだで親しまれていた。響子がナンパを気にせずに外出を楽しみたいと聞き、プールや映画、美術館などに同行するようになった。宗教上の理由で、婚前交渉も子作り以外のセックスも禁じられていたが、響子の美しい体に欲情し、響子からの誘惑に負けて簡単に一線を越えてしまう。その後、響子の妊娠で結婚し、飛矢が生まれて現在に至る。

野岸 由季央 (のぎし ゆきお)

エピソード「美容妻」に登場する、佐伯雅之とは同じ会社の同期の男性。雅之が佐伯容子と結婚したあと、野岸由季央自身も結婚。結婚式に参列した際、これみよがしにあくびをしたり、雅之と容子にも子作りを勧めたりと、デリカシーのない物言いをすることから、容子からはあまりいい印象を持たれていない。子供ができてから何かと口うるさくなった妻とは、ケンカばかりでうまくいっていない。雅之の死後、社長から容子のサポートを頼まれたことを口実に、個人的に容子と連絡先を交換。実家が不動産屋ということもあり、マンションを賃貸するための手続きや、容子の新居の手配もすべて行なった。それがきっかけで、容子にアプローチを始めて一線を越えた。それからは、何かと理由をつけては容子の家に訪れては、関係を持つようになる。実は一卵性双生児の弟がいるが、ヘビースモーカーの大酒のみで昼夜逆転の生活を送っているためか、老け込んでおり、似ても似つかない顔立ちをしている。そんな弟を見て、人生が顔に出ることを実感し、気を抜けば自分もそうなってしまうと恐れている。

佐伯 雅之 (さえき まさゆき)

エピソード「美容妻」に登場する、佐伯容子の夫。1年前に出張先の海外で災害に巻き込まれ、半年前に遺体が見つかった。勤務中の事故死ということで、労災が認められた。容子とは互いに行き遅れたことから、親に頼み込まれて見合いをし、世間体と親の安心のために結婚した。お互いに子供を望んでいなかったため、容子とは一度もセックスをしたことがない。佐伯雅之は子供の話をはぐらかしていたが、容子は家族や周囲に対し不妊治療中であるとウソをついていた。そのため、雅之は容子には少なからず申し訳ない気持ちを抱いていた。

八郎 (はちろう)

エピソード「蜜蜂妻」に登場する、小林美津の夫。前妻と結婚して長男の喜八を授かったが、前妻は東京から地方の田舎に嫁いできたこともあり、生活に馴染めずに、喜八が1歳の頃に自殺してしまう。妻を亡くした心の傷がなかなか癒えない中、アルバイトとして東京からやって来た美津を嫁にもらうことになった。その時すでに美津は、自分以外の男性との子供を妊娠していたが、それを承知の上で結婚した。美津とのあいだには10歳、5歳、3歳の子供がおり、当時美津のお腹にいた向日葵のことも、自分の子供と同様に分け隔てなくかわいがっている。もともと独占欲が強く、子供っぽい性格をしている。既婚者であるにもかかわらず、地元の狭いコミュニティにいる女友達と好き勝手に遊び歩いているが、美津が月に一度、東京に出かける日は、嫉妬心から言動がおかしくなる傾向にある。美津の不在時に姉の美妃が、自分とのあいだにできた三人の子供たちのことを、美津とほかの男の子供かもしれないと発言したことに腹を立て、里帰り中の美妃を家から追い出した。向日葵がバイオリニストを目指したいことを知っているが、かわいい娘をいばらの道に進ませることには難色を示していた。向日葵からは、バイオリン教室の先生として子供たちに教えることが夢だと聞かされていたが、実は一流の音楽大学で学び、世界を目指したい思いを抱いていたことを知り、そのための費用が2000万を超えることを知って愕然(がくぜん)とする。さらに向日葵が、その資金を赤石譲也に出してもらおうとしていることを知って逆上。美津と赤石の不倫関係を疑い、赤石に対して強く反発する。しかし最終的には向日葵の思いを汲み入れ、東京の音楽学校への進学を許した。口では美津のことに無関心であるように振る舞っているが、美津を愛している。

美妃 (みき)

エピソード「蜜蜂妻」に登場する、八郎の実姉。何か問題があると実家に戻って来る癖があり、今回も夫婦げんかが理由で里帰りしている。物静かながら勝気な性格をしている。表向きは、弟の嫁の小林美津といい関係を構築しているように見えるが、地元の友達には、八郎と美津がポンポン子供を作るから実家を追い出されたと恨み節を繰り返している。また美津の不在時には、八郎と美津のあいだにできた三人の子供たちのことを、ほかの男の子供かもしれないからDNA検査した方がいいと暴言を吐いた。八郎を怒らせたため、実家から追い出された。

赤石 譲也 (あかいし じょうや)

エピソード「蜜蜂妻」に登場する、向日葵の父親。小林美津と同じ大学の音楽科でバイオリンを学んでいたが、母親の再婚に伴い、父親からの資金援助が得られなくなり、大学をやめることを決めた。大学を去る日、ずっと気になっていた美津に思い切って話しかけ、その日のうちに親しくなって一線を越えた。美津とは、その日限りの関係で、彼女が自分の子供を身ごもったことは知らなかった。その後、売ったバイオリンを買い戻すためにホストをしたこともあったが、体を壊してやめてしまう。これでダメなら死ぬしかないと、最後の賭けですべてのお金を投資して以来、投資で生計を立てている。現在は億単位の資産を築いたいわゆる億り人となり、金に不自由しない生活を送っている。既婚者で、子供はいないが妻とは別居中。美津から十数年ぶりにSNSを通じて連絡をもらうことになり、再会を果たす。そこで初めて美津があの日に妊娠したこと、自分に娘の向日葵がいることを知る。向日葵がバイオリニストを目指していることを知り、迷いなく資金援助を申し出た。八郎から美津との不倫を疑われることになるが、すべてを乗り越え、純粋に向日葵の学費や生活費の援助をすることになる。

向日葵 (ひまわり)

エピソード「蜜蜂妻」に登場する、小林美津と赤石譲也の娘。八郎のことを本当の父親のように慕っている。バイオリンが大好きで、一度聞いただけでその曲を再現することができる絶対音感の持ち主。八郎には、バイオリン教室の先生となって子供たちに教えることが夢だと話していたが、本当は一流の音楽大学で学び、世界的なバイオリニストになることを目指していた。しかし、それには2000万円を超える資金が必要となるため、田舎の農家に生まれた自分には不可能だと思い込んでいた。そんな中、美津が赤石を探し出し、連絡を取ったことがきっかけで、赤石が資金援助を申し出てくれたが、今度は八郎からの猛反対を受けて断念してしまう。だが赤石からの真摯な言葉と、祖母たちからの応援の言葉に励まされ、東京の音楽学校への進学を決める。

前妻 (ぜんさい)

エピソード「蜜蜂妻」に登場する、八郎の前妻。もともと東京に住んでいたが、八郎との結婚をきっかけに、地方に移り住んだ。八郎とのあいだには長男の喜八を授かったが、田舎の農家での生活に馴染むことができず、次第に心を病んでしまう。そして喜八が1歳の頃、農薬を飲んで帰らぬ人となった。

伊藤 誡 (いとう かい)

エピソード「団地妻」に登場する、伊藤こずえの夫。体と心を壊して職を失ったため、東京郊外の団地「スターハウス星見台」に引っ越して来た。温和な性格をしている。仕事の関係で、中国語やスペイン語、英語やフランス語、ポルトガル語が堪能。団地で井上ミカエラと知り合い、彼女から団地内の奇妙なルールを聞くうちに、一線を越えてしまう。その後は団地内のルールに従い、こずえとは夫婦関係を維持しながら、ミカエラとも親しくしている。

井上 ミカエラ (いのうえ みかえら)

エピソード「団地妻」に登場する、東京郊外の団地「スターハウス星見台」に住むメキシコ人の女性。井上の妻。団地内の商店街で、義父と共にラーメン屋を営んでいる。井上とのあいだに娘のソフィアがいる。母国語はスペイン語だが、井上がスペイン語を理解できないため、いつもは日本語を話している。団地に引っ越して来た伊藤誡と知り合い、彼がスペイン語を話せることを知って興味を持ち、一気に距離感が縮まって一線を越えた。

井上 (いのうえ)

エピソード「団地妻」に登場する、東京郊外の団地「スターハウス星見台」に住む日本人の男性。井上ミカエラの夫。戸籍上の妻はミカエラで、彼女とのあいだに娘が一人いる。そのほかに内縁の妻、夕見子がおり、彼女とのあいだにも娘が二人いる。引っ越して来たばかりの伊藤こずえの部屋を訪れ、ガスの開栓を行ったあと、こずえに部屋のリフォームを勧めた。こずえには、自分の二人の妻と三人の子供を紹介し、団地の奇妙なルールをレクチャーした。

井上 悦郎 (いのうえ えつろう)

エピソード「団地妻」に登場する、東京郊外の団地「スターハウス星見台」に住む日本人の男性。団地内の商店街で、井上ミカエラと共にラーメン屋を営んでいる。団地のボス的な存在で、団地内の住民のことはすべて把握している。もともと公営団地だった建物を買い上げ、民間賃貸住宅として運営している。以前は自殺の名所と呼ばれていたが、現在は自警団を結成して自らも参加しており、不審者は警察に通報している。

夕見子 (ゆみこ)

エピソード「団地妻」に登場する、東京郊外の団地「スターハウス星見台」に住む日本人の女性。もともと井上の内縁の妻で、井上とのあいだには子供もいる。井上に知り合いだった井上ミカエラを紹介した張本人。

劉 梓睿 (りゅう じるい)

エピソード「団地妻」に登場する、東京郊外の団地「スターハウス星見台」に住む中国人の男性。団地内のモテ男として知られ、団地に住む子供のうち少なくとも五人は劉梓睿が父親であると考えられている。

捨雄 (すてお)

エピソード「着物妻」に登場する、呉服屋の息子で、拾雄の兄。子供の頃から森川紗綾のことを知っており、交流があった。捨雄、拾雄の名前は、両親から無事に育って欲しいという願いを込められて付けられた。しかし、この名前のせいでいじめに遭って、登校しなくなった。絵を描くことが趣味で、特殊な絵を描いている。捨雄自身は、見えたものをそのまま描いているつもりだが、人物画を描けばおばけ画のようになり、花もゆがんだ形になってしまう。紗綾からの要望に応えて彼女のヌード絵を描くようになり、やがて一線を越えてしまう。のちに職人の道に進み、着物のデザイン画を学んだが、仲間と馴染むことができずに兄弟子を殺害してしまう。現在は拘留中で、死刑判決を受ける予定。

拾雄 (ひろお)

エピソード「着物妻」に登場する、呉服屋の息子で、捨雄の弟。捨雄、拾雄の名前は、両親から無事に育って欲しいという願いを込められて付けられた。学校にも行かず、森川紗綾といつもいっしょにいる捨雄に、幼な心ながらずるいという感情を抱いていた。自室で捨雄が紗綾のヌード絵を描いていることを知った際には、さらにその思いを募らせた。その後は捨雄の凶行により、両親ともども先祖代々暮らしてきた土地に住めなくなった。捨雄に対しては強い恨みを抱いているが、一方でその人殺しを生み出してしまった家を買い取って移り住み、拾雄自身の呉服屋で高級な着物を誂えてくれる紗綾には、感謝している。しかし、紗綾が殺人犯である捨雄の描いた黒留袖を、娘の七五三に着たいと言っていることに大きな違和感を覚え、疑問を抱いていた。そんな自分の気持ちを紗綾に訴えた結果、その黒留袖を七五三に着ることはやめて別の着物に変更した。しかし、着物を脱いだ紗綾の姿に欲情。紗綾から拒絶されたことで、なぜ捨雄だけがいい思いをするのかと兄への負の感情にとらわれ、紗綾を押し倒して強引に行為に及んだ。

愛人 (あいじん)

エピソード「着物妻」に登場する、森川紗綾の夫と不倫関係にある女性。ホテルの一室で紗綾の夫と密会後、彼を軟禁状態にした。今、自分を一人にしたら自殺してやると紗綾の夫を脅し、妻と離婚することを約束させようとした。しかし、知らぬ間に紗綾の夫が紗綾に連絡し、紗綾がホテルに乗り込んできたため、彼女に紗綾の夫と不倫関係にあることを改めて告白。彼といっしょにいたいという素直な気持ちを紗綾にぶつけた。

かもゐ

エピソード「VR妻」に登場する、人気のVRゲーム「クラフトワールドファンタジー」内で、自身の分身となるキャラクター。見た目は、少年の姿をしている。現実世界では「加茂井新一」という名前の男性で、年齢が18歳。母親の起こした無理心中で母親は死亡し、自らは全身にやけどを負って入院中。もともと両親の離婚調停中に起きた事件だったため、父親は一度も見舞いに訪れたことはない。現在は重度のやけど治療により、つねに猛烈な痛みにさらされおり、鎮痛剤も効かない状態。そのため、偉生からもらったVRヘルメットを着用し、ゲームに参加することでなんとか激痛から解放されている。そのVRゲーム内で偶然、同じ病棟に入院中のルーリーと知り合い、遊び方を教えたことで親しくなった。友人はほかにもいるが、入院してからは健康な友達の愚痴に共感することができなくなり、距離を置き始めた。ある時、ルーリーから死期が近いことを打ち明けられ、家族への伝言を頼まれることとなる。病院内で、敬子、哲生、偉生のもとに姿を現し、ルーリーが延命治療の中止を希望していることを伝えた。その後、ルーリーのアカウントが家族に引き継がれたため、新たなルーリーに再び遊び方を教えながら、ルーリーとの付き合いは続いた。

敬子 (けいこ)

エピソード「VR妻」に登場する、ルーリーこと「青木瑠璃子」の娘。偉生の妹で、哲生の姉。瑠璃子が徐々に運動機能が失われていく病に侵され、高校生の時に瑠璃子だけでなく偉生と哲生からも、女性であることを理由に介護のすべてを押し付けられた。過酷な状況に心が折れ、瑠璃子を父親と兄弟に託して家を出た。現在メキシコで娘のイルマと共に暮らしている。父親が亡くなり、一周忌に参列して以来5年ぶりに帰国し、入院中の瑠璃子のもとを訪れた。瑠璃子が生命を維持することも難しい状況に至っていることを知り、偉生や哲生と今後について相談することになった。瑠璃子が延命治療を望んでいないことはわかっていたが、それが本心なのか子供たちの負担を考えてのウソなのかわからず、頭を悩ませている。親の介護で子供が苦労する状況を作るのは嫌だと思ってはいるが、実際に決断できずにいた時、同じ病棟に入院中のかもゐこと「加茂井新一」が、VRゲーム「クラフトワールドファンタジー」内で瑠璃子から伝言を託され、本人の希望を聞かされることとなった。新一のおかげで、延命治療の中止を決断し、瑠璃子はこの世を去った。母親亡きあとは、VRゲームのアカウントを兄弟と共に引き継いだ。

偉生 (ひでお)

エピソード「VR妻」に登場する、ルーリーこと「青木瑠璃子」の息子で、敬子と哲生の兄。瑠璃子が徐々に運動機能が失われていく病に侵され、介護が必要となった。当時高校生だった敬子が、母親の介護を一手に引き受けていたが、その状況に手を貸すどころか、偉生自身は勉強に集中したいからと介護を敬子に押し付けた。だが、敬子が家を出て行ってしまったため、残された自分と父親、哲生の三人で瑠璃子の介護を行うことになった。その後、父親の一周忌に参列した敬子と再会を果たした。5年が経過し、瑠璃子は寝たきりの状態となって現在は病院に入院中。瑠璃子には、自社で開発したVRゴーグルを装着させることで、視線を読み取って文字入力が可能となり、意識のない状態でも自分たち家族と最低限の意思疎通を図ることができている。さらに、VRゲーム「クラフトワールドファンタジー」をプレイさせ、ゲーム内で利用するキャラクターの設定を、瑠璃子が希望するであろう形に作成した。また、瑠璃子と同じ病棟に入院中のかもゐこと「加茂井新一」が、重度のやけどで耐え難い痛みに苦しんでいることを知り、VRゴーグルをプレゼントした。仮想現実内ではある程度の痛みから解放されることから、VRゲームをプレイすることを勧めた。その後、瑠璃子の状態が悪化し、生命を維持することが難しい状況に至っていることを知り、敬子や哲生と今後について相談することとなった。瑠璃子が延命治療を望んでいないことはわかっていたが、それが本心なのか子供たちの負担を考えてのウソなのかわからず、頭を悩ませている。実際に決断できずにいた時、新一がVRゲーム内で瑠璃子から伝言を託され、本人の希望を聞かされることとなった。新一のおかげで、延命治療の中止を決断し、瑠璃子はこの世を去った。母親亡きあとは、VRゲームのアカウントを兄弟と共に引き継いだ。

哲生 (あきお)

エピソード「VR妻」に登場する、ルーリーこと「青木瑠璃子」の息子で、偉生と敬子の弟。瑠璃子が徐々に運動機能が失われていく病に侵され、介護が必要となった。当時高校生だった敬子が母親の介護を一手に引き受けていたが、その状況に手を貸すどころか、介護のすべてを敬子に押し付けた。だが、敬子が家を出て行ってしまったため、自分と父親、偉生の三人で瑠璃子の介護を行うことになった。その後、父親の一周忌に参列した敬子と再会を果たした。5年が経過し、瑠璃子は寝たきりの状態となって現在は病院に入院中。勤め先に相談して休暇をもらえたため、瑠璃子の介護をして1か月が経過しているが、今後も瑠璃子の介護を引き受けるつもりでいる。瑠璃子の状態が悪化し、生命を維持することが難しい状況に至っていることを知り、敬子や偉生と今後について相談することとなった。瑠璃子が延命治療を望んでいないことはわかっていたが、それが本心なのか子供たちの負担を考えてのウソなのかわからず、頭を悩ませている。哲生自身は、この状態で長く生きて欲しいと言うのはあまりにも酷だと考えており、複雑な思いを抱いている。実際に決断できずにいた時、かもゐこと「加茂井新一」がVRゲーム内で瑠璃子から伝言を託され、本人の希望を聞かされることとなった。新一のおかげで、延命治療の中止を決断し、瑠璃子はこの世を去った。母親亡きあとは、VRゲームのアカウントを兄弟と共に引き継いだ。

かずみの夫 (かずみのおっと)

エピソード「投資妻」に登場する、武井かずみの夫。不動産会社「Tマネジメント」で営業を務めていた。ある日突然、かずみになんの相談もなく会社を辞めた。今後は投資で食っていくと豪語し、狂信的に投資にのめり込んでいく。もともと勤めていた会社はブラック企業で、詐欺に近い方法で投資用マンションを売買していた。悪評が立ったら会社を倒産させ、別の名前で会社を立ち上げる方法で、経営を続けていた。インセンティブ欲しさに客を恫喝することもあり、かずみの夫はストレスによる酒の飲み過ぎが原因で、いつ病気になってもおかしくない状態だった。ある時、後輩が婚活パーティで知り合った看護師をターゲットに定め、1500万円の物件を2000万円で購入させ、上乗せした分を自分と後輩で山分けした。その後も、後輩と共に何件ものマンションを購入させ、利用限度額がいっぱいになったところで看護師の前から姿を消した。しかし、看護師から恨みを買うことになり、看護師はかずみの夫と後輩を名指しして呪いをかけ、自殺を中継する動画を配信した。数日後に後輩が交通事故でこの世を去り、その動画は拡散され続けることとなった。そんな状況に絶望しつつも、自分の預金と退職金の1000万円を運転資金として、新しい人生を送ることを決意。それ以来、かずみに投資を成功させるための祈りや声掛けを強要した。投資がうまくいかなくなると、アルバイトをしろと命じたり、投資の勉強をするように圧力をかけた。その態度は終始威圧的で、投資がうまくいかない原因をすべてかずみに押し付けた。最終的には妻の存在価値すらわからなくなり、かずみが生命保険に加入していたことを思い出したと口走る。その言葉に絶望したかずみが夫をナイフで刺し、殺されてしまう。

集光英 正道 (しゅうこうえい せいどう)

エピソード「投資妻」に登場する、霊能者の男性。事故物件のお清めのため、妻の美琴と共に武井かずみの部屋を訪れた。祝詞、経、真言、御文などを交えて対話し、霊魂を鎮めている。もともとは路上に座り込み、ギターを使ってお坊さんの弾き語りを行っていた。阿弥陀(あみだ)経や三帰戒(さんきかい)、蓮如上人の言葉などを曲に乗せて歌っていたが、その歌に聞き入って立ち止まった看護師の美琴と知り合った。美琴とは、出会ったその日に一線を越えた。しかし美琴が神社の娘で、互いに違う宗教観を持つことから高い壁に阻まれることになった。美琴の両親からは、看護師を狙った詐欺なのではないかと疑われ、縁切り祈祷を捧げられるが、最終的には美琴を連れて駆け落ちした。集光英正道自身は仏教僧のため、幽霊の存在はまったく信じていなかったが、美琴と人生を共にしたことや訓練したことで、幽霊を見ることができるようになった。現在は殺人や自殺が起きた競売物件を安く購入し、自分たちでその物件を除霊して貸し出すことで生計を立てている。

美琴 (みこと)

エピソード「投資妻」に登場する、霊能者、集光英正道の妻。事故物件のお清めのため、正道と共に武井かずみの部屋を訪れた。実家は縁切りで有名な亞亞琉神社。もともとは看護師を務めていたが、人の生死を目の当たりにし、心が弱っていた際に正道と出会った。お坊さんの姿で弾き語りをしていた正道に会ったその日に心奪われ、一線を越えた。正道は仏教僧、自分は神社の娘という、互いに違う宗教観を持つことから、非常に高い壁に阻まれることになった。両親からは、看護師を狙った詐欺なのではないかと疑われ、縁切り祈祷を捧げられるほどの反対を受けるが、最終的には正道と駆け落ちした。その後、訓練により幽霊を見ることができるようになった正道と共に、殺人や自殺が起きた競売物件を安く購入し、自分たちでその物件を除霊して貸し出すことで生計を立てている。

看護師 (かんごし)

エピソード「投資妻」に登場する、看護師を務める女性。不動産会社「Tマネジメント」に勤める男性と婚活パーティで知り合い、彼と彼の先輩であるかずみの夫に、投資用マンションの購入を勧められる。将来は家賃収入による不労所得で暮らしていけると甘い言葉をささやかれ、勧められるまま2000万円のマンションを購入した。その後も複数のマンションを購入させられる。看護職はローンが通りやすいことからターゲットにされ、利用限度額がいっぱいになったところで二人が自分の前から姿を消した。その後、ネット掲示板で聞いた方法を自己流にアレンジし、思念の強さで呪い殺すと言い切り、会社名とかずみの夫の名前、婚活パーティで知り合った男性の実名を挙げ、自分の命と引き換えに二人を残酷な死に至らしめて欲しいと動画を配信した。動画の最後には、自らが自殺する姿を中継し、その姿をさらした。その動画は現在も消えることなく拡散され続けている。

六反田 和人 (ろくたんだ かずと)

エピソード「双六妻」に登場する、六反田寧々の兄。石川県出身で方言が独特ということもあり、友達の前では標準語で話すよう努力している。一度結婚したが、現在は離婚してアパートで一人暮らしをしている。庭にはロードバイクや家庭菜園、睡蓮鉢があり、部屋にはたくさんの本が置いてある。大学時代の友達とリモートでゲームを楽しみ、さまざまな趣味を満喫しながら、独身生活を謳歌している。前妻はすでに再婚しているが、投資家で金持ちの夫の愚痴の電話がよくかかってきており、相談相手になっている。寧々が夫とケンカしたからと、家出と称して六反田和人のもとを訪れるが、表向きはあまり歓迎していない。幼い頃、母親に捨てられたことがあり、その寂しさをまぎらわすために寧々とのの触り合いっこが、幼いながらもエスカレートしていく。それを見た父親からは、兄妹で乳繰り合うと地獄に落ちると言われ、強く責められた。その後、父親が再婚し新しい母親との生活が始まったが、新たに弟が生まれたことで再び寂しさを募らせることになった。妹を大切に思う気持ちがあり、いけないと理解しながらも寧々を強く拒絶しきれず、結局一線を越えてしまう。

荒田 (あらた)

エピソード「双六妻」に登場する、六反田和人、馬場の大学時代の友人の男性。既婚者だが、妻が不倫して別居中のため、一人暮らししている。現在は離婚に向けて裁判中。妻の不倫相手が自分よりもメタボ体型で、金もなく禿(は)げた冴(さ)えない男だったことに腹を立てている。和人や馬場とは、今もリモートでゲームを楽しむなど交流が続いている。

馬場 (ばば)

エピソード「双六妻」に登場する、六反田和人、荒田の大学時代の友人の男性。妻子がいるが、妻には絶対に逆らうことができない。和人や馬場とは、今もリモートでゲームを楽しむなど交流が続いている。ゲーム中、メンバーに女性がいる場合は妻から誤解を受けやすいため、妻から許可を得ないといけない。大声を出すことやビデオ通話禁止など、多くの制約がある中でもゲームを楽しんでいるが、妻以外の女性と遊びたいと真剣に考えている。

書誌情報

金魚妻 12巻 集英社〈ヤングジャンプコミックス〉

第11巻

(2023-01-19発行、 978-4088925189)

第12巻

(2023-11-17発行、 978-4088928357)

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