概要・あらすじ
和洋、新旧、男女が入り交じるロマンあふれる大正中期。圧倒的なパワーを持つ自動人形の少女、鋼鉄天使を帝国陸軍で開発した綾小路博士は、彼女たちの軍事利用に反発し、地下の研究所に完成した鋼鉄天使を匿って潜伏していた。一方、陰陽道宗家に生まれながら、いじめられていた気弱な少年、神維仲人は、迷いこんだ地下の研究所で眠る鋼鉄天使の1人、くるみを偶然キスで覚醒させ、綾小路を驚嘆させる。
そこへ綾小路奪還を狙う陸軍将校の天城礼子が現れ、仲人を拘束するが、彼を“ご主人さま”と認識したくるみの活躍によって難を逃れる。その後、天城は研究所で発見した第2の鋼鉄天使、サキを使いくるみに対抗するも、潜伏していた綾小路のライバル、ワルスキー博士に隙を突かれ、綾小路を拉致されてしまう。
対して、仲人は礼子と一時的に共闘し、くるみとサキによる綾小路救出作戦を展開。仲人を慕う謎の男、ミハエルが率いる第3の鋼鉄天使、カリンカとの戦いを乗りこえ、ワルスキーの元へと向かった一行だったが、そこに未来から来訪した組織“アカデミー”の率いる鋼鉄天使が乱入し、綾小路の消息がわからぬまま事態は一旦の収束を迎える。
仲人は天城と陸軍の庇護のもと、くるみ、サキ、カリンカと日々を過ごしていたが、その裏では世界各国に鋼鉄天使の開発を促したアカデミーによる、最強の鋼鉄天使を決めるバトルロイヤル、「鋼鉄ファイト」の幕が上がろうとしていた。
登場人物・キャラクター
神維 仲人 (かぐら なかひと)
トップクラスの陰陽道宗家である神維家の次男。気弱でおとなしく、慈愛にあふれた心をもつ少年で、純朴なあどけなさから時折少女のような反応を示す。ある日迷いこんだ地下研究所でくるみとキスをしたことをきっかけに彼女の術者となり、鋼鉄天使たちの戦いに身を投じることとなる。そして、くるみと仲間たちを支えるために、少しずつ術者としての能力を覚醒させていく。 なお、神維神人を兄にもち、彼の修行によって、肩乗りの小さな少女護神鬼・映姫(ごしんき・えいき)を顕現させることもできるようになった。なお、くるみのほか、ミハエルや神宮寺忍など、多数の人物から好意を寄せられているが、本人は気付いていない。
くるみ
綾小路博士によって開発された鋼鉄天使の1人で、術者は神維仲人。サキとカリンカの姉にあたる少女で“力の鋼鉄天使”と呼ばれている。ピンク髪のポニーテールが特徴で、性格は天真爛漫で子供っぽい。自身をキスによる魔力注入で目覚めさせた仲人を溺愛しており、彼のためなら強力無比のパワーを発揮することができる。 また、普段から行動がパワフルで、気付かないうちに敵を倒していることも多い。一方、愛情がエスカレートし過ぎて周りが見えなくなり、トラブルへ発展するケースも少なくない。なお、カリンカと戦った際には、サキと融合することで“超鋼天使くるみ”へと進化。さらなる力を手に入れて勝利している。
サキ
綾小路博士によって開発された鋼鉄天使の1人。くるみの妹にあたり、“技の鋼鉄天使”と呼ばれる少女。黒髪のおかっぱ髪でおしとやかな性格だが妄想癖がある。陸軍に回収されたあと、くるみに敵として襲いかかるが、無抵抗の彼女に自責の念を感じ、体内から服従回路を取り除いて支配から逃れた。 また、魔力不足で機能停止に陥ったことがあり、くるみからキスで魔力をもらい再起動している。これを機にくるみへ好意を寄せるようになり、神維仲人と行動を共にしている。
カリンカ
ワルスキー博士が綾小路博士から強奪したエンゼルハートで開発した鋼鉄天使で、術者はミハエル。くるみやサキの妹だが、原動力であるエンゼルハートを2基搭載したことで能力はより高く、“力と技の鋼鉄天使”と呼ばれている。金髪のショートカットで体型はかなり小柄。綾小路奪還戦で神維仲人一行と激戦を繰り広げたが、敗北後にミハエルが行方不明となり、仲人たちのもとへ身を寄せることになる。 しかし、無邪気な性格からくるみと喧嘩することも多い。
天城 礼子 (あまぎ れいこ)
綾小路博士のもとで鋼鉄天使の開発に携わっていた陸軍の将校兼研究者。ツーブロックのロングヘアに、丸メガネが特徴の落ち着いた雰囲気の女性。綾小路の脱走に伴い、陸軍を率いて彼を追跡する神維仲人の敵として登場するが、ワルスキー博士との戦いで共闘関係を結ぶ。その後も仲人と彼に従う鋼鉄天使たちを自宅の研究所に匿う庇護者として活躍するようになる。 なお、綾小路に対しては個人的な愛情も抱いている。
神維 神人 (かぐら かみひと)
神維仲人の兄で、日本を代表するトップクラスの陰陽術師。その実力は、雷の龍を式神として呼び出し、山を砕いてしまうほどで、くるみやサキの術者となるよう軍から要請されていた。しかし、軍には別件で協力していることもあり、これを断っている。なお、普段は温厚で凛とした人格者だが、仲人に対しては偏執的な愛情を見せており、ブラコンの気がある。
ミハエル
ワルスキー博士が生みだした人造人間で、カリンカの術者を務める白髪の少年。天才陰陽師である神維神人の遺伝子がベースとなっており、「術者の力を周囲から疎まれて育った」という記憶を植え付けられた。そのため、神維仲人に対しては愛情に似た態度で執着している。一方、鋼鉄天使のことは軽蔑しており、相棒のカリンカにも冷たい態度をとっていた。 綾小路博士の奪還戦で一時は行方不明となっていたが、口に包帯を巻いた姿で再登場し、影から仲人たちを見守るようになる。
加賀 (かが)
謎の未来組織“アカデミー”に所属する鋼鉄天使の1人で、実働部隊のリーダーを務める人物。黒髪のショートカットで、頭のバンダナと顔のタトゥーが特徴のボーイッシュな女性。神維仲人の前には主にアカデミーからの連絡役として現れるが戦闘能力も極めて高く、葵の本気による一刀を指で受け止め、そのまま刀を折っている。 また、鋼鉄ファイトにくるみたちを参加させるため、部下と一緒にくるみたちの変装をして参加資格の獲得に貢献したこともある。
神宮寺 忍 (じんぐうじ しのぶ)
“神維家”に次ぐ能力をもつといわれる陰陽師の家系、“神宮寺家”の嫡男。修行の一環で探偵業をしており、金髪の髪を鹿撃ち帽で隠している。鋼鉄ファイトに神維仲人とくるみたちを擁立した陸軍に対して、海軍の要請で葵の術者となり、日本代表をかけて仲人に決闘を申し込んだ。また、神維神人が軍の術者要請を断った際、代わりに神宮寺家を推したことでプライドを傷つけられ、彼に恨みをもっている。 実は性別を偽っており、幼馴染の仲人には密かに好意を抱いている。
葵 (あおい)
海軍によって開発された鋼鉄天使で、銀髪のショートカットに軍服を纏う男装の麗人。“神宮寺家”の協力のもと、開発段階から術者である神宮寺忍のために最適化されており、愛刀“磁雷矢”を用いた高速抜刀術で他の鋼鉄天使を圧倒する。なお、普段は紳士的な性格だが、サディストの嗜好があり、鋼鉄ファイトで対戦相手の服を切り刻むことに快感を覚えている。
エクセリア
神維仲人とくるみたちが向かった100年後の未来で通学することになる“鋼鉄学園”に在籍する鋼鉄天使で、学園内の成績優秀者“エンゼル・オブ・エンゼル”の1人。術者は学園の教師兼理事長代理を務める、仲人に瓜二つの冷徹な男、神威天人(かむい あまと)。緑髪のツインテールに眼鏡をかけた華奢な少女で、無口で表情に乏しい。 鋼鉄天使の心臓である“エンゼルハート”を2基搭載しており、影を自在に操ることができる。
綾小路博士 (あやのこうじはかせ)
鋼鉄天使やその心臓にあたる“エンゼルハート”を開発した科学者の男性。大正時代にタイムスリップしてきた未来の組織“アカデミー”の総帥で、未来を滅ぼした“魔族”に対抗するための鋼鉄天使を探すべく、「鋼鉄ファイト」を開催した。もといた時代を見捨てて逃げのびたことで良心の呵責に苛まれたことをきっかけに人格が7つに分裂しており、のちに神維仲人が最初に出会った綾小路や、彼のライバルであるワルスキー博士として自立するようになる。
集団・組織
鋼鉄天使 (こうてつてんし)
『鋼鉄天使くるみ』に登場するアンドロイドの総称。綾小路博士によって開発された、天使の結晶エンゼルハートを動力にする「絶対永久自動人形」。綾小路率いる未来の組織“アカデミー”により大正時代に大量のエンゼルハートがもたらされ、世界各国で多様な鋼鉄天使が製造されるが、必ず女性の身体を有している。山をなぎ払い、大地を引き裂くといわれる圧倒的なパワーは“術者”と呼ばれる魔力の素養に長けた人間と契約することにより制御される。 また、エンゼルハートに“服従回路”を接続することで強制的に使役することも可能。なお、術者のもつ魔力と相性により、鋼鉄天使能力は大きく左右される。
その他キーワード
鋼鉄ファイト (こうてつふぁいと)
『鋼鉄天使くるみ』に登場する用語。綾小路博士率いる未来の組織“アカデミー”によって発令された国を代表する鋼鉄天使同士のバトルロイヤルで、勝ち残ったチームにはアカデミーの叡智が与えられる。その真の目的は、未来を滅ぼした“魔族”に対抗しうる鋼鉄天使を見つけるための作戦である。なお、鋼鉄天使が着ている服に縫い付けた国旗のエンブレムを奪い合うというルールが制定されたが、目立たない場所という理由から下着に装着するチームが後を絶たず、最終的には対戦相手を全裸にするという慣習が定着した。