概要・あらすじ
終戦の昭和20年、戦争で両親を亡くした金太は、疎開先の関東平野の片隅の千葉県匝瑳郡(そうさぐん)で年老いた祖父と暮らし始める。東京から引っ越してきた同い年の銀子は女の子にしか見えないが実は男の子だった。そんな銀子だったが金太とは親友のように共に遊ぶ。祖父の亡き後、金太の絵の才能を見抜いた挿絵画家・柳川大雲に引き取られ、東京に移り住む。
上京した銀子と再開したりしながら、恋に愛に性に死に、多感な青春時代を経験していく。
登場人物・キャラクター
金太 (きんた)
空襲で両親を亡くし、疎開先の関東平野で、小説家の祖父とふたり暮らし。銀子と共に多感な少年時代を過ごし、祖父亡き後、柳川大雲に引取られて東京で思春期を過ごす。柳川大雲に絵の才能を見い出され、イラストレーターの道を進むことになる。
銀子
空襲で父親をなくして母の義兄・大平福次郎のところに越してきた。金太と同い年で女の子にしか見えないが実は男の子。母親が大平福次郎との情事で死んだあと、ゲイとして力強く生きていく。金太とは親友のような切っても切れない不思議な関係を続ける。
お祖父ちゃん (おじいちゃん)
金太の祖父。小説家として、欲もなく淡々と日々を生きている。金太と二人暮らしで、やさしく面倒をみてくれたが、金太が小学生の時に亡くなってしまう。
柳川 大雲 (やながわ たいうん)
ギョロ目にカイゼル髭に黒マント、その姿も強烈だが、性格もまた破天荒。金太の祖父の友人であり、有名な挿し絵画家。戦後は緊縛画に力を入れる。金太に絵の才能を見いだし、祖父の亡き後、金太を引き取って東京で面倒をみてくれる。
大平 福次郎 (おおひら ふくじろう)
町長で金太の家の隣で漬物をつくっている。野心家で将来は代議士になることを目論んでいる。銀子とその母を預かるが、情事がエスカレートして首を絞めて殺してしまう。銀子にその弱みを握られ、その後も面倒をみることになる。
吉原 (よしわら)
東京の出版社の編集者。腹の出た中年の男性。金太の祖父に原稿依頼にやってくる。祖父亡き後、文芸雑誌からSM雑誌の編集者になり、緊縛画の柳川大雲のところへも顔を出すようになる。
昇り龍の健 (のぼりりゅうのけん)
軍隊から帰還した元ヤクザ。感情の起伏が激しく、村にマーケットを作ったりアメリカ兵を相手に商売したりと精力的な行動をみせるが、妻と黒人兵との情交に出会い、二人を殺害し、山へ逃げ込んだ末に割腹自殺をしてしまう。
綾小路 卑弥呼 (あやのこうじ ひみこ)
もと子爵令嬢だったらしいが、戦争のあと新宿二丁目で売春をしているところを柳川大雲のSMモデルとしてスカウトされた。そのまま居着いて家族のように金太との三人暮らしの生活になる。
山根 淳子 (やまね じゅんこ)
金太の中学校の同級生。学校一の美女で頭もよく生徒たちの高嶺の花。何故か金太に興味を抱いて近づいてきて性的関係も持つが、彼女が本当に好きなのはおなじく学校一の秀才・松橋茂。ふたりは後に妊娠が原因で心中事件を起こすことになる。
ツマリ
金太の中学校の数学の先生のあだ名。鼻を詰まらせていつも「つまり、つまり」と連発することでその名がついた。山根淳子にぞっこんで授業中も見境なく依怙贔屓する。一度肉体関係を持ったことで結婚を申し込むが、相手にされず自殺する。
松橋 茂 (まつばし しげる)
金太の中学校の同級生。高校一の秀才で東大合格数全国一の日比谷高校を目指していたが、山根淳子を妊娠させ、産むことも堕胎することも出来ず心中事件を起こすことになる。
今日子 (きょうこ)
社会人となった金太の恋人。柳川大雲の弟子・山田の幼馴染みで、昔から頭がよく学校ではいつも首席だったという。家は魚屋で、その二階でふたりは結ばれる。執拗に金太を追い、結婚を強く望むのだが、金太は絵の道を選ぶのだった。
深井 (ふかい)
金太の勤める広告会社の同僚だったが、フリーになってラジオのコントを書いたり、やがて作詞家になってレコード大賞をとるまでになる。作詞家阿久悠がモデルと思われる。
場所
関東平野 (かんとうへいや)
金太の疎開先。関東平野の片隅、千葉県匝瑳郡(そうさぐん)で、年老いた祖父と少年時代を暮らすことになる。日本の台所と言われる千葉県を金太は大好きで、一生ここで暮らしたいと思っていた。