概要・あらすじ
師匠とライバルの後を追って単身渡米していた陣内流柔術の達人、真島零が突然日本に帰ってきた。不思議なことに、彼は6年間のアメリカ生活での記憶をすべて失い、帰国の経緯すらも分かっていない。そればかりか、クリエイターを名乗る男が脳内に現れ、謎のささやきをして彼を戸惑わせる。そんな中、親友の三浦初や道場仲間と共に、陣内流柔術の再建を目指して日本での新しいスタートを切る真島。
彼を支える周囲の仲間の協力もあり、失われた記憶を少しずつ取り戻すことに成功するが、なかなか全貌をつかむまでには至らない。さらなる真相を突き止めるため、真島はついに総合格闘イベント「BraVe」のマットに立ち、一流武闘家たちと壮絶なバトルを繰り広げる。
真島は陣内流柔術の継承者として着実に進化を遂げていくが、過去の記憶はなかなか戻らず、謎は深まるばかりだった。
登場人物・キャラクター
真島 零 (まじま れい)
陣内流柔術と呼ばれる古武術の使い手。師匠の望月土武郎先生やライバル野々宮拓馬の後を追って単身渡米。6年間アメリカに在住していたが、その間の記憶はなく、気が付いたら渋谷のスクランブル交差点に立っていたという不思議な体験をし、本人も戸惑いを隠せない。日本人離れした身体能力、倍以上ある体格の選手を投げ飛ばすパワー、そして多彩かつスリリングな柔術殺法でフィニッシュに持ち込む超攻撃的スタイルが持ち味。 打撃系が得意で、寝技はやや苦手。その鬼のような強さとは対照的に、リングの外では女性の弱さに騙されるなど脇の甘さも目立つ。卑怯な相手や弱い者いじめをする者、悪事を働く者には容赦ないが、女性や子供を相手にするのは苦手で、情に訴えられると驚くほど脆くなる。
三浦 初 (みうら はじめ)
真島零の数少ない親友。昼間はサラリーマンとして働きながら、真島が帰国するまで主のいない道場を1人で支えた頑張り屋。二足の草鞋で格闘家生活を送っているため本腰を入れて練習できず、試合の経験すら持てない。しかしブラジリアン柔術ジム「ヘルライオン」の道場破りを1人で迎え撃つなど、根性と度胸、ハートの強さは折り紙付き。天才肌の真島と違い、真面目にコツコツ練習を積み重ねる努力家タイプ。 温厚篤実、冷静沈着だが、格闘技への思いは純粋で情熱的。どんなつらい状況でもあきらめず、頑張りぬく姿勢を真島に高く評価されている。
望月 土武郎 (もちづき どぶろう)
陣内流柔術道場の当主にして、真島零の師匠。かつて「GIGA」に参戦するため渡米し、その後行方知れずとなっている。海外では「カミソリの刃(レーザーズ・エッジ)」の異名を持つ、伝説の武術家。生きているのか死んでいるのかさえ定かではない。小柄で野性味のある風貌、得体のしれぬ強者のオーラがある。
野々宮 拓馬 (ののみや たくま)
真島零のライバル。国際的な空手組織「光臨館」出身の空手家。ロングヘアと甘いマスクが特徴。燕のように華麗で素早い軌道を描く飛燕脚を必殺技に持つ。かつて「GIGA」に参戦するため渡米し、その後行方知れずとなっている。高校時代は真島と激しくぶつかり合い、桜井美沙を巡っても争った。
桜井 美沙 (さくらい みさ)
桜井軍侍の娘。高校時代から真島零が追いかけていた相手で、野々宮拓馬にも好意を持たれている。本人の気持ちが真島と野々宮、どちらに向いているかは定かではない。大学卒業後、某飲料メーカーに就職し企画宣伝の仕事をしている。友人の沢村奈月と共に真島や三浦初の試合を観客席から見守る。格闘家の娘だけに、プロポーションは抜群、容姿も端麗、そのうえ武術も多少心得ている。 真島の帰国後は彼をサポートするようになり、新道場でもカラテビクスのインストラクターを行っている。
沢村 奈月 (さわむら なつき)
真島零や三浦初、桜井美沙とは高校の時からの親友。高校卒業後、三浦と付き合うようになる。元気はつらつ、気の強い女の子だが、彼氏が試合中に攻め込まれると思わず顔を伏せてしまうなど、女の子らしくナイーブな一面も垣間見せる。デザイナーを目指しており、真島や三浦のコスチュームデザインを手掛けることも。
玉本 英夫 (たまもと ひでお)
陣内流柔術の道場を裏方として支えながら、自身も格闘家を目指し鍛錬に励む。地味で目立たない風貌だが、仲間思いで周囲の信頼も厚い。深刻な場面でも冗談を飛ばしたりできるムードメーカー的な存在。女子高生に目がない。元は牛尾健一と同じ格闘技道場に所属していたが、真島に魅せられ陣内流柔術道場をサポートするようになった。インストラクター経験があり、新道場では打撃クラスを受け持つ。
牛尾 健一 (うしお けんいち)
玉本英夫と同じく、格闘家を目指しながら陣内流柔術道場の裏方を務める。ただ強いだけでなく、身を挺してか弱き者を助ける真島零の格闘家としての姿勢に共鳴し、ささやかながら彼の活動をサポートすることに。派手さはないが堅実に自分の仕事をこなす。律儀で誠実、志の高い男。元は玉本英夫と同じ格闘技道場に所属していたが、陣内流に理想の格闘技を見出し、陣内流柔術道場をサポートするようになった。 新道場では柔術クラスを受け持つ。
桜井 軍侍 (さくらい ぐんじ)
国際的な空手組織「光臨館」館長。桜井美沙の父親。全世界に支部を持ち、1千万人以上の弟子を抱える。伝説の空手家としてその名を轟かせ、真島零の師匠である望月土武郎とは幾多の名勝負を繰り広げたことでも有名。数多くの門弟を打ち倒してきた真島を憎むべきなのに、何かと気に掛け、手を貸す場面も。
古澤 礼司 (ふるさわ れいじ)
格闘技イベント団体「BraVe」の最高責任者で、マッチメイクも担当するコーディネーター。どんな人物で、どういった経歴の持ち主か、また何の目的があって真島零に接近したのか、すべてが謎に包まれている。リングサイドに陣取り、眼光を光らせながら真島の試合を解説する。一見にこやかだが、本性は酷薄かつ残忍。失われた真島零の記憶について秘密を握っている素振りを見せる。
ウィッチ
「GIGA」を主催するアメリカのゲームソフト制作会社「シグマ・エンターテイメント社」の委託を受け、「GIGA」内部の不正を調査する「GIGAバトル監査室」の室長。血を見て興奮し、その闘いが凄惨なほど快感を覚える究極のサディスト。
グレゴリー・ディアギレフ (ぐれごりーでぃあぎれふ)
旧ソ連の軍人将校。軍隊格闘術を身に付け、戦場で幾人も人殺しを重ねてきた殺しのプロ。誰よりも祖国を愛する愛国者だったが、戦場で仲間に裏切られたことで西側諸国に魂を売った。戦場で裏切った旧友を手にかけ、そのトラウマを抱えながら野々宮拓馬、真島零と死闘を展開。通常なら即死してもおかしくない決定打を何度受けても倒れない、不可思議な肉体を持つ。
久保田 (くぼた)
格闘雑誌「フリーファイト」の編集長。真島零が戻った陣内流柔術道場の取材に力を注ぐ傍ら、真島の失われた記憶と、背景に潜む謎を突き止めるべく、独自調査を始める。ジャーナリストにありがちな強欲で無神経なところは見られず、真島や三浦初は取材対象というより友人に近い関係で、彼らも久保田を人間として信頼している。
岡本 照子 (おかもと てるこ)
格闘雑誌「フリーファイト」の新人編集者。格闘技より超常現象やオカルト分野に興味を持つ。格闘技部門で編集をするのは本意ではないが、真島零や三浦初たちに接していくうちに仕事にも興味を覚えるようになる。三浦に一目惚れするなど、基本的にイケメンには目がない。
小鹿 順平 (こじか じゅんぺい)
小鹿心療クリニック院長。若者にからまれているところを真島零に助けられる。退行催眠を使って真島が失った6年間の記憶をわずかながら蘇らせる。世界で極秘に行われている催眠学や心理学の研究に関心を抱き、その方面の知識にも精通しているという変わり種の精神科医。
金 相宇 (きむ さんう)
テコンドーの達人で、韓国格闘技界の至宝と呼ばれている。金文世の双子の弟。山奥で育ち、極貧生活を耐え忍んできた苦労人。当初は、アメリカで行動を共にしてきた兄の文世と共に行方不明となっていた。
金 文世 (きむ むんせ)
テコンドーの使い手で、弟の金相宇を韓国格闘界の至宝にすべく韓国経済界に盛んに働きかけるなど暗躍、「GIGA」に参戦させることに成功する。当初は、弟と行動を共にしていたアメリカで消息を絶ち、行方不明となっていた。
八代 和幸 (やしろ かずゆき)
古澤礼司の運転手兼ボディーガード。超大型のプロレスラー。プロレスの理想を求めて渡米するも不祥事を起こして解雇され、バーで用心棒の仕事をしていたところを古澤礼司に拾われる。逆エビ固めやアルゼンチン・バックブリーカーなどレトロな大技を得意とする。陣内流の道場開きの際、行きがかりから真島零と練習試合をすることに。 消息を絶った望月土武郎に関して何か情報を持っているようだが、古澤への恩が邪魔をして話すことができずにいる。
柳瀬 亜利雛 (やなせ ありす)
謎の女子高生。クラス名簿を一目見て住所と電話番号すべてを記憶するなど、尋常ではない記憶力を誇る。子供とは思えない大人びた風貌とスタイル、ミステリアスな雰囲気を醸し出している。偶然の出会いから真島零に強く関心を持つようになり、彼の試合を遠くから見守る。
松原 菜々子 (まつばら ななこ)
元「GIGA」ラウンドガール。芸能プロダクションに所属し、モデルとしても活躍。前作『陣内流柔術格闘伝 真島クンすっとばす!!』では真島零に近づき、情報を盗むスパイとして働いていたが、その後行方不明となっている。抜群のプロポーションと美貌を誇り、現在でも真島にとって気になる存在である。
柏原 幸吉 (かしわばら こうきち)
新しく構えた陣内流柔術道場のオーナー。銭湯「柏湯」を営んでいたが、経営悪化に伴い店を畳むことに。同じ時期、暴漢に襲われた孫娘を真島零に救われ、その男気に報いるために土地施設の権利を真島たちに譲る。公私共に真島たちの面倒を見る好々爺。
柏原 恵 (かしわばら めぐみ)
柏原幸吉の孫。純真無垢な小学1年生。薬漬けの元格闘家に襲われたところを真島零に救われて以来、彼の熱狂的ファンになった。毎試合応援に駆け付け元気よくエールを送るが、ピンチの場面では泣き出し、周囲を困らせることも。
堤 獣蔵 (つつみ じゅうぞう)
ブラジリアン柔術ジム「ヘルライオン」所属。有望と思われる無名選手を潰してライバルの出現阻止を目論む。それと同時にマスコミに取り上げてもらって売名を働くという悪役キャラクター。ずんぐりむっくりな体格だが、ブラジリアン柔術では最高位の実力の証である黒帯をしめる。
柳瀬 ミツル (やなぎせ みつる)
ブラジリアン柔術ジム「ヘルライオン」所属の格闘家。柳瀬亜利雛の兄。寝技を得意とする。高校生のころ、古澤礼司に恐怖を植えつけられ、精神的に支配されてしまっている。「BraVe」に出場して真島零の前に立ちはだかる。年下でありながら自分より先を行く真島に強烈なライバル心と敵愾心を燃やす。長く垂らした前髪とすさんだ目つきが特徴で、全身からマイナスオーラが漂っている。
K (けー)
イスラエルで誕生した軍隊格闘術「クラウ・マガ」を身に付けた隻眼の男。真島零の失われた6年の記憶の謎を追って日本にやってきたと思われる。路上の格闘では三浦初や牛尾健一たちを子ども扱いにし、真島とも互角以上に渡り合う。格闘技に精通したかなりの強者と見えるが、身分職業は一切不明で、日本人か外国人かも分からない。
クリエイター
正体不明の人物。真島零を「生死をかけたゲーム」に参加させたと語る。真島零が格闘技の試合で勝利した後、脳内に出没する謎の黒い影で、彼の中でその運命を決定する支配者たる雰囲気を帯びる。一戦勝利するたび、失われた記憶の解明に結びつくヒントを与えては消える。その存在が誰で、何の目的で現れるのか、まったく見当がつかない。
その他キーワード
陣内流柔術 (じんないりゅうじゅうじゅつ)
戦国時代に活躍した武将・陣内佐十郎重直が考案したとされる古武術。剣術・棒術・居合術ほか、組討ちや徒手拳での攻撃も是とする本格的な格闘武術。川や野原など、あらゆる戦場でも適用される武術で、現在の柔道や合気道の原型ともいわれる。
GIGA (ぎが)
アメリカのゲームソフト開発会社「シグマ・エンターテイメント社」が主催する世界規模の総合格闘イベント。前作『陣内流柔術格闘伝 真島クン、すっとばす!!』で開催され、真島零、野々宮拓馬、金兄弟らが参戦し、激しいバトルを繰り広げた。現在はまったく開催されておらず、その理由は分かっていない。
BraVe (ぶれいぶ)
「GIGA」に取って替わるように登場した、格闘技イベント会社「D&T」が主催する総合格闘イベント。主催者である古澤礼司のマッチメイクが冴え、国内で熱狂を博している。真島零や三浦初、柳瀬ミツルたちが参戦する。