概要・あらすじ
一人暮らしの中学生の原純子は、学校に行かず日々「死にたい」と願っていた。幼なじみの北森要一郎が毎日訪れても、彼女は全く元気にならない。ある日、純子の目の前に、幻影のような青年オデッセイが現れた。彼は純子が「この星に観光に来てる旅行者」だと告げる。それ以来純子は突然明るくなり、周囲の「電波」という声をものともせず、学校に通いはじめる。
学校には太っていじめられていた丘本トモ子や、病弱体質の野川美千代らがおり、彼女らのコンプレックスを克服させるために純子は積極的に声をかけ、仲良くなっていく。一方野川のことを好きな北森は、落ち込んでいた彼女を励ますために「ODYSSEY」の名で手紙を送り、純子はそれを応援。徐々に純子を中心とした友達の輪ができていく。
しかし純子本人は幼少期に受けたトラウマが足を引っ張り続け、苦しみから逃げられないまま。高校に入ってから、父親が純子の目の前に現れたことで、家族の問題と自分自身のトラウマを乗り越える決意をする。
登場人物・キャラクター
原 純子 (はら すみこ)
学校にいかず部屋にこもっていた、一人暮らしの少女。髪の毛は茶髪に染めており、言葉遣いは荒い。幼少期に知らない人から暴行を受け、その姿にショックを受けた母に見捨てられてしまい、殺してほしいと苦しんでいた。この時のことが成長してからもトラウマになっており、時折その恐怖心が小さい女の子の姿で彼女の前に現れる。小学生の頃から幼なじみでクラスメイトの北森要一郎が団地の下の階に住んでおり、北森は何度も彼女のために部屋を訪れていた。 幻影のように目の前に現れた謎の人物オデッセイに、自分が「この星に観光にきてる旅行者」だと言われてから何もかも吹っ切れ、底抜けに明るくなって、学校に再び通いはじめる。話すときに大声をあげたり、他人には見えないオデッセイに話しかけているため、周囲の人には言動を怪しまれている。 小説好きな丘本トモ子と幼いころから仲が良く、彼女がいじめられていた時は積極的に助けた。北森が図書委員の野川美千代に好意を抱いているのを知っており、2人の仲を応援している。長谷川と仲が良いと勘違いしたチカから激しいいじめにあったが、オデッセイに打ち明けながら前向きに乗り越え続けた。 父親が帰ってきてからは、自分の過去の心の傷と母親の問題に正面から向き合う。
北森 要一郎 (きたもり よういちろう)
メガネをかけた少年。生真面目な学級委員。小学生の頃から幼なじみの原純子の団地のすぐ下の階に住んでおり、不登校気味だった彼女に全教科のノートをコピーして渡していた。純子がオデッセイの電波を聞いて突然明るくなったことを知り、病気ではないかと心配する。ドキュメンタリーが好きで、ビデオに録って純子に貸している。時折学校で人間関係に悩み、「人外魔境」という言葉でモヤモヤを表現する。 野川美千代が好きでいつも見守っているが、その行動は純子から「ストーカー」と称されていた。野川が落ち込んでいた時、「ODYSSEY」を名乗って励ましの手紙を送り、以降少しずつ彼女と接触を持つよう頑張っている。勉強しか取り柄がないためコンプレックスが強く挫折も多いが、純子からはずっと応援されている。
オデッセイ
メガネをかけ白衣を着た正体不明の青年。原純子の目の前に幻のように度々現れる。純子のことを「この星に観光にきてる旅行者」だと告げ、不登校気味だった彼女を奮い立たせた。純子は彼にいつも相談しており、他の人からは何もない空間に話しかけているように見えている。
丘本 トモ子 (おかもと ともこ)
ぽっちゃり体型のメガネの少女。内気でしゃべるのは苦手。学校では「トン子」と呼ばれていじめられており、学校にいるのを嫌がり、人を見るたびに激しい被害妄想に襲われている。本が好きで、幼いころ孤独だった原純子を「長くつ下のピッピに似ている」と称して仲良くなり、その後も彼女と物語の話を頻繁にする親友になった。純子に励まされた彼女は、後に図書委員の野川美千代と親しくなる。 長谷川から、バンドのピアノ担当として勧誘された。
野川 美千代 (のがわ みちよ)
犬の耳のようなショートヘアの図書委員。おとなしく、丁寧語で話す。身体が弱い。北森要一郎が好意を抱いている相手。女性教員の甲野に強く憧れている。字がヘタなのがコンプレックスで、甲野から返却された作文に多数のチェックが入り点数が悪かったのを見て、思い煩ってしまう。その際北森が「ODYSSEY」を名乗り、彼女に励ましの手紙を送った。 受け取った彼女は苦悩から救われ、「ODYSSEY」にお礼をしたいと原純子に相談している。実は小学校の頃入院しており、純子たちの一つ上の年齢。夏休み中はリハビリしており、「ODYSSEY」に向けた日記を毎日書いた。北森が図書館で新刊を借りているのを覚えており、純子とのつながりで話すようになる。
てん子 (てんこ)
おかっぱで四白眼の少女。友達がおらず陰気。学校ではノートにこっそりハイテンションなマンガを描いている。クラスメイトに見られた時はドン引きされたが、原純子に喜ばれてマンガ家を目指す。純子に話しかけられてからは、北森要一郎や丘本トモ子とも話すようになった。
長谷川 (はせがわ)
原純子と北森要一郎のクラスメイトの少年。短髪で、髪を逆立てており、北森には「クラスの不良」と呼ばれていた。実際は温厚な人物で、大のロック好き。チカにこっそり好意を抱かれている。純子が価値をわからず売っていたレコードを買い、最初はプレミアものだったレコードを手に入れて喜んでいたが、純子に真の価値を話し、返品して中古屋に行くよう諭す。 丘本トモ子をバンドに引き込み、ピアノを担当させた。
ピージー
長谷川の友人。バンド発表をするため実行委員会で裏から工作をした。1年のときにコンビニでエロ本を立ち読みして以来、その雑誌名である「P.G.」をアダ名にされた。女子と仲良くしたいという思いがとても強く、暴走しがち。
チカ
髪の毛をおだんごにしている少女。長谷川のことが好きで、嫉妬深い。原純子が彼と話しているのを見て腹を立て、クラスの女子を巻き込んで彼女をいじめた。思い通りにいかず苦しみつづけ、純子とつかみあいのケンカになる。
甲野
メガネをかけたショートヘアの女性国語教師。野川ミチヨが憧れている。生徒思いで、みなのいいところをしっかり見ているため、評判がいい。野川の作文を見て、漢字の間違いにチェックを入れたところ、彼女が落ち込んでしまったので、声をかけた。以降さらに親しくなり、彼女が入院してからはお見舞いに行っている。
岸田 (きしだ)
スカした雰囲気の男性英語教諭。北森要一郎に厳しい言葉を浴びせかけ、彼を失意させてしまった。後に北森がテストで良い点を再び取るようになった時、自分のおかげだと勘違いして彼を怒らせた。
クマジ
北森要一郎と原純子の男性担任教師。茶髪で不登校気味な純子をあまり良く思っておらず、厳しい言葉をかける。いじめを行っていた男子生徒を殴った純子に、内申の話を持ちだして言うことを聞かせようとした。彼にイヤミを言われる度に、純子は機転を利かせてスルーしている。
原純子の父 (はらすみこのちち)
原純子が高校に入学してから、突然現れた。メガネをかけ髪を伸ばし、よれよれのパーカーを着ている。いつもうろたえていて頼り甲斐がなく、娘に再会した時には「生きていたのか?」と驚いた。妻が死んだことを告げ、彼女が娘を「あの子はもういないの」と言いふらしていたことを打ち明ける。
原 澄江 (はら すみえ)
原純子の母親。娘が幼いころ知らない人に暴行を受けたことにショックを受け、彼女から離れていった。周囲には「あの子はもういないの」と言いふらしたため、祖父らは原純子が死亡したと思い込んでいた。
原純子の祖父 (はらすみこのそふ)
原澄江の父親で、原純子の祖父。病院で寝たきりになっており、娘と孫の区別がついていない。原澄江が娘を連れて実家に帰ってきた時、優しく迎え入れた。原純子は死んだと思い込んでいる。
北森要一郎の母 (きたもりよういちろうのはは)
メガネをかけ、髪の毛を後ろで縛っている。思春期に差し掛かった息子に手を焼いており、厳しい言葉で叱りつけている。だが、親子仲はとてもよい。原純子のことを以前から知っており、彼女の様子をしばしば気にかけては、食事に呼んでいる。
セイジ
北森要一郎のおじ。メガネをかけており短髪。お酒を飲むと気前が良くなるが、北森にはあまり好かれていない。北森のことを「よー」と呼び、彼に液晶テレビを買って与えた。
トモ子の母 (ともこのはは)
太り気味の母親。幼いころから娘には清楚できれいな服を用意して着せていた。いじめられて嘔吐し、不登校になった丘本トモ子の心情がわからず、「おかあさんみたいだから自分がイヤなんだ」と泣いていた。